明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ30作目『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006)5・6話感想

 

Task5「帝国の真珠」


脚本:會川昇/演出:竹本昇


<あらすじ>
幻の超巨大戦車「ビオパンツァー」の設計図が隠された宝石=帝国の真珠が日本に持ち込まれた。そして、その背後にはネガティブ「ダークシャドウ」が・・・ボウケンジャーは帝国の真珠がダークシャドウの手に渡らぬよう、取引場所に向かう。激突するボウケンジャーと、風のシズカ&タクミガミ!


<感想>
「悪い奴ってよくそういう手を使うんだよね。先生が言ってた。それに、お礼が欲しくてやってんじゃないよ!」


小学生のクソガキに論破されてしまう深き冒険者、すっかり舐められてしまっていますね〜。
というか今回の話で見えたことはさくら姉さんは教育者失格ということでしょうかね、女らしさ捨てたバリバリのキャリアウーマンという感じですし。
戦隊ピンクにはいわゆる「強い女=クールビューティ」の系譜があるのですが、大体タイプとして挙がるのはハートクイン、初代ミスアメリカ、タイムピンク辺りでしょうか。
シンケンピンクはどっちかといえば理性じゃなく子宮で物を考えて動いている人でしたし、そういう意味ではさくら姉さんは歴代でも珍しい「仕事に生きる女性」といえます。


しかしこんなに早い段階から子供視点でボウケンジャーとサージェスの組織としての致命的欠陥を指摘されるとは、會川先生は用意周到にこの辺りのツッコミどころへの対策を用意していたのでしょう。
第一話からしてサージェスはプレシャス回収のためなら卑劣な手段も厭わないところがありますし、そもそもサージェス自体世間からあまりいい評価は受けてなさそうですしね。
ましてやさくら姉さんのお堅いキャラクターで海老で鯛を釣るような真似されたら、この少年じゃなくても誰だって嫌でしょうし、作為的なものを感じると思います。
で、そんな堅いさくら姉さんと対照的に菜月が柔らかい笑みで対応していますが、菜月の場合は単純に精神年齢が子供なだけで、あれと同じ対応がとてもさくら姉さんにできるとは思えません。


「子供が不安になっている時は笑ってやればいい」
「おかしくもないのに笑うことはできません」
「真面目すぎるんだよお前は…たまには子供のように笑ってみろよ。冒険を楽しむには、子供のようになることも必要だぞ」
「私は冒険を楽しむつもりはありませんから」


今回の見せ所はどちらかといえば少年とさくら姉さんよりはむしろチーフとさくら姉さんの方だったともいえ、同じ「冒険者」でも心構えやスタンスが全く違っているのが面白いところです。
あくまでも「趣味の延長」として「好き」を仕事にしている明石暁と「任務」としての意味合いが強く「楽しむ」というのではなく大人の義務としてやっているさくら姉さんの違いとなりました。
さくら姉さんはあまりにも真面目過ぎるが故に不器用だから真正面から受け止めることしかできないということですが、一方でチーフの考えが100%正しいわけでもありません。
この次の話以降チーフはどんどんメッキが剥がれてメンバーからいじられるようになるのですが、もう既にさくら姉さんがここでチーフに反発しているのがその証拠だといえます。


おそらく現時点でさくら姉さんの中でチーフは「仕事はできるし頼れるけど、人間力はからっきしだなこの人」という評価になってしまっているのではないでしょうか。
そしてチーフは最終的に「自分で蒔いた種は自分で刈り取る」というさくらに対してこのような結論を出しました。


「自分のミスは自分だけで解決する、か。そういう真面目すぎる奴もまた面白い。奴と戦えるのはゴーゴーショベルだけだ。 最後まで1人でやってみろ!」


ここで面白いのは戦隊シリーズの本質である「団結」「チームワーク」に対して、リーダー自らが後ろから見守ることでかえってチームとしての信頼感を描いていることです。
同時に彼らはサージェスという企業に雇われているものの、あくまでもその本質は個人事業主の集まり」というところに集約されます。
以前にもチームカラーを分析する記事で書きましたが、公的動機と私的動機の観点で話をするなら、本作はあくまでも「私的動機」で動いている人たちだということ。
前作「マジレンジャー」があくまでも家系の宿命ありきで動いている公的動機の強い戦隊だったからその差別化もあるのですが、「最後まで1人でやる」というのがポイントです。


しかし、チーフの場合は「チームワークと個人プレーの使い分けが上手い器用なリーダー」というよりも「自分が個人プレーで目立ちたくて仕方がない冒険バカ」だから困ります(苦笑)
まあそんなこんなで最終的に少年との約束を無事に守ったさくらは笑顔になるのですが、個人的には今回の話はもう少し突っ込み切って欲しかったなあというところです。
さくら姉さんの性格の真面目さが短所となっているとか割と子供っぽい菜月との対比とか見せたい要素はあるものの、「じゃあさくら姉さんはどんなヒーローなの?」というのが今一つ見えませんでした。
現段階だとまだキャラの掘り下げが浅いので、さくら姉さんに関しては12話を待つしかないのですが、この脚本ならいっそのこと真面目さで突っ切る展開にした方が思い切りがよかったかなと。


総合評価はD(凡作)、描き方やアプローチは悪くなかったものの、やはり會川先生の場合チーフがガンガン動いてくれないと面白くないのでいまいち不完全燃焼というところ。


Task6「呪いの霧」


脚本:會川昇/演出:竹本昇


<あらすじ>
古代中央政府に反逆を起こした武将の首が祀られたという伝説が残る地・縊峪で、突如、行方不明者が相次ぐことに──サージェスはプレシャスが発動したと考え、ボウケンジャーに指令する。霧たちこめる峪の奥、プレシャスを目指して進む5人…のはずが、ふと気付くと菜月の姿が見えない。縊峪の呪いなのか?


<感想>
今回に関してはもうこの2人の台詞に全てが集約されると思います。


ガジャ「平和など口実だ!お前達は冒険に取り憑かれているだけ。プレシャスがあるとわかれば呪いも恐れずに、欲望のまま突き進む!」
チーフ「宝は自分で見つけるものさ。俺たちを熱くするのは宝への道を自分の手で切り拓く冒険。欲しいのは最高の冒険だ!」


凄いなあ、敵側に痛い所を突かれてそれに反論するどころか寧ろそれを逆手に取ってガンガン攻めていくスタイルに変えていくチーフの裸一貫ぶり(笑)
チーフのやっていることって同時配信の「ニンニンジャー」の天晴の言い分と大して変わらないはずなのですが、なぜかあっちよりは気持ちよく見られるんですよね。
最大の違いがどこか考えてみたんですが、チーフは「仕事ができる」からそれだけ偉そうなことを言ったりやったりしても筋が通っていて有無を言わせません。
一方で天晴の場合は自分の実力を「本番に強いから」と自己正当化して過大評価してしまっている上、メンバーに「引き立て役」を強要している(ように見える)所が嫌なんだなと。


なおかつ今回の場合はイエローとピンクが人質に取られているからブラックが動揺するという風に他者の視点もうまく織り込まれていますし、プレシャスの見せ方もいいですしね。
しかもオチが「俺はいいこと言ってやったぜ」風のことを言って墓穴を掘り、かえって「今のはオヤジ臭い」と牧野博士からツッコミを食らっていじられています。
この「攻めは強いが守りが弱いいじられ上司」というチーフのキャラクターは後半に向けてどんどん輪をかけて悪化していき、Task32で1つの頂点に達するのですが、その片鱗が既にありました。
まあチーフってぶっちゃけ「會川先生から見た昭和ヒーローのカリカチュア」なので仕方ないと言えますが、今見るとかなりパワハラ・セクハラまがいのことをナチュラルにやる上司ですよね。


部下たちが有能なおかげでそこまで大きな問題にはなっていないものの、現実にチーフみたいな上司がいたら絶対やらかした後の尻拭いとか押し付けられそうで嫌です(苦笑)
で、ここまで見て思ったことなのですが、チーフと天晴はどちらも「戦闘力5」ではあるんですよね、戦隊レッド列伝の基準で数値化してみると。
しかし、決定的な違いは技巧・知性・精神力・統率力などで天晴が明らかにチーフに劣っており、尚且つ「洞察力」では完全に天晴がチーフに負けているのですよ。
チーフは「冒険さえできればいい」という冒険バカではありますが、一方できちんと自己評価がきちんとできる人ではあります。


それに対して天晴は相手の力量をろくすっぽわかりもしないのに突っ込んでは仲間に尻拭いされる格好になっており、にもかかわらず本番ではなぜか運良く決まってしまっているのです。
何と言うんでしょうね、たまたま奇跡の一発逆転が常態化してしまっていることでかえって自己分析ができないのではないでしょうか……そりゃあサスケも鷹介も「1」を下すわけですよ。
チーフの場合は「自分に何ができて何ができないのか」をきちんと理解しているために、身勝手な詭弁ではありつつもそれを納得させるだけの実力・説得力があります。
対して天晴はまずそこの「自分に何ができて何ができないのか」の足元からガタガタなために、その場しのぎの出たとこ勝負を繰り返してしまっているわけです。


私が基本的にバカレッドを嫌いな理由も突き詰めるとここにあって、要するにバカレッドって基本的な行動原理が「ザコキャラ」のそれなんですよね。
以前「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と書きましたが、バカレッドに私がイライラするのはこの「負けに不思議の負けなし」を地で行く存在だからです。
大体勝負に負けるやつに共通するのは「情報不足」「思い込み」「慢心」の3つなのですが、ことバカレッドに関しては「思い込み」「慢心」が顕在化しています。
チーフがいわゆる「専門バカ」ではあっても他のバカレッドと評価が違うのはこの「思い込み」「慢心」といった部分が少なく、きちんと情報収集や分析を欠かさないからでしょう。


何だかやっと長年引っかかっていた「バカレッド」が嫌いな理由をチーフと天晴の比較を中心にして分析できましたが、そういう意味では天晴って完全にザコキャラムーブなんですよね。
典型的な三下の振る舞いというか、そこがやっぱりチーフとの決定的な差となったと綺麗にオチをつけ、総合評価はB(良作)というところでしょうか。

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村