明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)21・22話感想

 

第21話「守護獣大あばれ」


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
ブライが謎の少女から渡された獣奏剣を奏でるとき、守護獣ドラゴンシーザーが出現した。大獣神なきジュウレンジャーは一体どう立ち向かうのか?


<感想>
「ここは、どこだ?!」
「ここは、お兄ちゃんの新しいおうち、ここは時間が止まった世界。だから、ここに居るかぎりお兄ちゃんは歳を取らない。でも、一歩外へ出ればお兄ちゃんの命はあと30時間とちょっとしかないわ」


ブライ、まさかのタイムリミット付きだった!


……何でもっと早く知らせてくれなかったんでしょうか?
まあ後の展開を知った今なら真意はわかりますが、要するにドラゴンシーザーを復活させるための召喚士としてブライが必要だったということです。
批評でも書きましたが、このブライの制限時間30時間しかないというのは今回初めて出て来る後付け設定で、前回までは影も形もありませんでした。
まあただ、そういう前置きはあるにしても今回はストーリーはともかく演出面がすごく派手で久々にいいなあと思ったんですよね。


というのも、これだけ巨大戦で、しかも新メカを敵として登場させるという機会は歴代でもなかなか少ないですから。
まあ見た目といい演出といいまんまゴジラなので、全然「恐竜」という感じはしないんですけどね……ああでもゴジラ自体が爬虫類ですから、完全な間違いでもないのか。
そして新アイテムの獣装剣もまた渋くてカッコイイ、短剣だけではなく「笛」という機能を付加することで単なる戦う為だけの武器にしていません。
この辺りもゲキたちが持っている伝説の武器との差別化を考えてのことなのか、とにかくブライ兄さんとドラゴンシーザーはかなり出番的に美味しいです。


「聞けー人間ども!今日からこの俺が地球の支配者だ!」


そしてとうとう力に酔い痴れてしまったブライはとんでもない大言壮語を吐くようになり、ゲキもこれまでになく激情を露わにします。


「おのれブライ!俺は間違っていた。己の感情に惑わされ、一番大事なことを忘れていた!みんな、俺はやる。ブライをもう兄とは思わない!正義の為にこの手で必ず倒す!」


このくだりは同じ杉村脚本の「仮面ライダーBLACK」終盤の暴れ出すシャドームーンに怒りを感じて「俺はもう信彦だとは思わない!」発言をする南光太郎のくだりのままです。
ただ、あっちが第一話から丁寧にストーリーを積み重ねてそこに至っているのに対して、こちらはあまりにも設定から何から扱いが雑過ぎます
何と言うんでしょうか、杉村氏は典型的な昭和の短距離走脚本家というか、アイデアを次々と出すのはいいんですけど、その道中のプロセスやまとめ方に難があるんですよね。
だから「ZO」みたいにしっかりまとまっているときはまとまっているんですが、外れると目も当てられないような事態になることが多いというか。


まあブライ兄さんとゲキに関しては後発の「ギンガマン」の炎の兄弟との比較も含めて次回でまとめて語りますが、総合評価はC(佳作)というところです。


第22話「合体!剛龍神


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
暴れまわるドラゴンシーザーの前に5守護獣が復活した。シーザーに挑むティラノザウルス、そしてゲキもブライと1対1で戦う。


<感想>
今回は実質の前半戦クライマックスだったわけですが、結論から言うと非常に残念な出来栄え。


ジュウレンジャーのリーダー・ゲキよ。悪は元から絶ちきらねばならない。お前もブライにトドメを刺すのだ」
「やれゲキ!トドメを刺すのだ!」
「駄目だ、大獣神……俺にはやっぱり、兄の命を奪うことはできない!」
「地獄へ堕ちろー!」
「兄さん!そんなに俺が憎ければ、斬るがいい!それで憎しみが消えるなら、俺は……斬れ、斬れー!!」
「出来ない、何故だ……!?許してくれ、ゲキ。俺が悪かったー!許してくれ、両親を失い、俺は誰かを憎まずにはいられなかった。だからお前を……でもそれは間違っていた」


ここが今回のクライマックスで大獣神対ドラゴンシーザー、ティラノレンジャー対ドラゴンレンジャーというドリームマッチは嫌いではないのですが、どうにも積み重ねが不足しています
まずブライがゲキを憎む理由はわかりますが、問題はそれに対するゲキの気持ちというか感情のベクトルが中途半端であるため、全く感情移入できないことです。
地球を守るためという大義と兄を救いたいという私情の板挟みがあるのはわかりますが、前者はともかく後者の描写が圧倒的に不足しています。
そもそも前回ラストで「兄と思わない」と言い、今回だって直前までぶっ殺す気満々だったのに土壇場で日和ってしまったように見えるのです。


まあここでゲキがブライを殺してしまうと、形はどうあれ殺人になってしまいますし、正義もクソもなくなりますから殺させるわけにはいきませんが、かといって心情の変化が急じゃないでしょうか。
またそれはブライも同じことであり、この流れだと「弟への情が復讐に勝った」というより「これ以上やってもめんどくさいし寿命も短いからなし崩しに改心した」ように見えてしまいます。
伝説の戦士という綺麗な立場から一歩「復讐」という要素を追加戦士の立場から動かしたことがブライの大きな功績なのですが、そこから先の処理があまりにも雑です。
別にそれでもいいじゃないかという向きもあるでしょうが、初登場から散々復讐要素で引っ張ってきたわりにあまりにもあっさりし過ぎてて物足りない内容になっています。


また、今回の大獣神の復活が「ジュウレンジャーが頑張って大獣神を復活させた」のではなく「守護獣がマグマの中でガイアトロンエネルギーを補充して体力を回復していたから」というのも残念でした。
これだとジュウレンジャーが頑張らなくてもよかったことになってしまいますし、今までの大獣神の敗北が全て自作自演に見えてしまいかねません。
神様という非常に扱いにくい要素だからこそ扱いには細心の注意が必要ですが、本作はそもそも根本的にその辺りの慎重さに欠けてしまっています。


だからこそ、そこから6人揃っての名乗りや剛龍神への合体がうまく物語としての集約にならないのも惜しまれるところです。
しかも戦うべき敵がいないというのにそれをやっているせいでおかしな感じになってしまっており、全体的に非常に空疎な内容となってしまいました。
これならもっと尺を引っ張ってじっくり展開すべきだったと思うのですが、それだけの技量が作り手になかったのか、それとも尺不足だったのか。
何れにしても、全体的に非常によろしくない出来栄えです。


さて、ここからは「ギンガマン」の炎の兄弟との比較ですが、炎の兄弟は本作のゲキとブライを反省点として改めて一から再構築されていることがわかります。
ブライが持っていた復讐という要素をブルブラックに、そして「6人目の戦士」という要素をヒュウガに振り分けることで丁寧に物語を紡ぐことができました。
そしてリョウマをゲキよりやや未熟な感じにして、さらに「本来はギンガレッドになるはずではなかった代理戦士」とすることで葛藤を描きやすくしています。
1クール目からしっかり土台を引いて、リョウマとヒュウガ、ブルブラックとクランツという二重の兄弟を対比させることで無理なくドラマを展開しました。


ギンガマン」の2クール目中盤は傑作揃いなのですが、中でも黒騎士登場からの一連のストーリーは本作の消化不良を踏まえていることがよくわかります。
要素要素で見ていけばとても面白い要素が見えるだけに、それらの扱いがきっちり膨らみ切らずに終わってしまったのは残念です。
評価はE(不作)、良くも悪くものちのシリーズにおける追加戦士加入のエピソードの叩き台となった回でした。

 

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