明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ39作目『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015)19・20話感想

 

忍びの19「探せ!天空のオトモ忍」


脚本:下山健人/演出:加藤弘之


<あらすじ>
天晴たちは祖父・好天にキンジを弟子にしてやってくれと頼み込む。だが頑固な祖父は許すはずもない。そんなとき、登場する上級妖怪ヌエ。様々な武器をもつヌエはニンニンジャー6人の行動の先を読むかのような攻撃を繰り出し、一番刀や忍シュリケンが破壊されてしまう。それを直せる当代一のカラクリ技師がいるとキンジが提案するのだが……。


<感想>
「つまり爺ちゃんが手なずけろって言ってたやつか」
「1つ聞かせろ小僧。俺を手なずけてどうする?」
「決まってんだろ。ラストニンジャになって牙鬼から世の中のみんなを守るんだ。だから俺たちについてきてくれ!」


え?ニンニンジャーに「世の中の人々を守る」なんて使命感があったんですか!?
個人的に今回驚いたのはそこで、これまでの戦いぶりや彼らのキャラクターを見てもそのような印象は微塵も感じられなかったんですけど……。
一体これまでの話のどこに「清く正しく美しく、世のため人のために戦う正統派ヒーロー」としてのニンニンジャーが描かれていたのかさっぱり理解できません。
だって1話では天晴以外の4人がしょうもない理由で使命を拒否していましたし、一応戦うようになってからも戦う動機を問う話は特別描かれた感じはないので戸惑うばかりです。


そもそも世の中の人々を守るという意識が少しでもあるなら、凪と風花が高校の同級生を結果的に家に連れてきて危険な目に遭わせてしまった件はどうなのでしょうか?
あれこそ、使命感がない天晴たちだからとんでもないことになりかねなかったわけですし、そもそも1話で実家爆発なんてされている時点で危機意識があまりにも足りなさすぎます。
別に品行方正な昭和スタイルのヒーロー像を真正面から描くなとは言いませんが、少なくとも「守るための戦い」およびそれを実行する正統派ヒーローとしてのニンニンジャーは描けていません。
何だかこのくだりを見ていると「ゲキレンジャー」の過激気習得のくだりを思い出しますね、明らかにヒーロー側が口にすることと実際の描写が噛み合っていないというね。


ちなみに今回出てきた獅子王は設定上精霊、しかも演じるのが山形ユキオさんということで「百獣戦隊ガオレンジャー」が連想されますが、これも意図的なパロディでしょう。
見所はというと巨大戦での名乗りやアクションで、アクションは毎回何かしらの工夫が見えて楽しいのですが、問題はそこにストーリーが全く追いつかないところです。
ロボットの中の名乗りは単体でみれば好きなのですが、単体では面白くても流れで見ると全然映えないというか、妙に浮いているように見えてしまいます。


天晴を始め今回と次回は超絶パワーアップ編ということで、ロケ地や話の構成からしても「シンケンジャー」のスーパーシンケンジャー前後編を意識した作りとなっている模様。
ただ、あっちが「パワーアップの必然性が薄い」のに対して、こっちは「そもそもキャラクターやストーリーからしててんで駄目」というので、ダメさの次元が違い過ぎます。
何だろうなあ、本作のこの「やりたいことはわかるのに、その描き方やアプローチがズレている」感は……本当に痒い所に手が届かないなあ。
総合評価はE(不作)、いつもと比べるとそこまでゴチャゴチャしていないのですが、普段からもっとこれくらいスッキリ見せられないものか。


忍びの20「ザ・超絶!ライオンハオー」


脚本:下山健人/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
謎のオッチャンは獅子王ライオンハオーの精霊だった!だが、天晴たちの協力の申し出をあっさり断る獅子王。そんな中上級妖怪ヌエはさらにパワーアップ、牙鬼軍団は本気でニンニンジャーたちをつぶしに来た。獅子王を尋ねた天晴たちは再びカラクリ技師・雑賀鉄之助と会う。「アイツのことを教えてほしいなら、忍者一番刀を出せ」と天晴の刀を奪った鉄之助、攻撃を仕掛けてきた……!


<感想>
「おまえは仲間の為に何が出来る?」
「何だろうなぁ?」
「ちょっとは頭を使え」
「一度落ち着いて、仲間を見てみろよ」
「八雲と霞は頭いいんだ!風花と凪はすばしっこいんだ!キンちゃんは普通に強いんだ!だから俺も自由に暴れられた!」
「俺がみんなと居れば、みんなも暴れられて、全員でもっと強くなるんだ!」
「もう一度聞く。おまえは仲間の為に何が出来る?」
「みんなのいいところ引き出せる。でも、その為にはみんなが必要だ。おっちゃんも同じだ。おっちゃんが暴れれば俺たちはもっと強くなるし、俺たちが良さを出せればおっちゃんももっと強くなる!」


なるほど、これがネットで「天晴は自分がバカだと自覚した上で、他のみんなに頼ることができる有能なリーダー」と評される所以だったのかあ……って納得できるかボケ!!
天晴の評価が余りにも雑過ぎんだろ、だって「キンちゃんは普通に強い」ってそれ一見褒め言葉のようでいて実は軽くディスってること気づいてんのかお前は?
あと八雲と霞が頭いいは納得できるとして、風花と凪がすばしっこいというのはこれまで特別に積み重ねられてきた個性ではないと思うのですけど……。
すごいなあ、多分下山健人を始め作り手の中ではここまでで「理想のニンニンジャー」を積み重ねてきたつもりなのでしょうが、実態は全くそのようになっていないというね。


何がすごいといって、スタッフもキャストも誰一人として作品をきちんと俯瞰して見る人ができていないということであり、屁理屈だけは凄いくせにその屁理屈の理論武装すらもガッタガタ。
「みんなのいいところ引き出せる」以降の下りは「適材適所の大切さ」を訴えていて、そのための素地は1クール目で作られていたため唐突さはないのですが、そのことと納得できるものかは別です。
1クール目で出たおでんの話って要約すると天晴の中で卵が主役で他の具材は引き立て役ということですが、それをどうここで表現するのかと思いきや全く変わっていません。
要するに「天晴のいないニンニンジャーは具のないおでんと一緒である」ということが今回の結論ということになりますが、この解釈でよろしいでしょうか?


天晴の屁理屈は詐欺師の常套手段に近いところがあって、一見尤もらしいことを言っているようでよくよく考えたら単なる詭弁でしかないという。
因みに「ボウケンジャー」のチーフも詭弁を振りかざしますが、あっちはまだ仕事がきちんとできる人ですからまだマシといえばマシです。
天晴って仕事ができないくせに妙に自信家で部下を自分の手足としか思ってなさそうな節がありましたが、成る程ここまで露骨にそれを出してきましたか。
天晴の答えを要約すると獅子王のおっちゃんも所詮は俺の引き立て役だから、頑張って引き立て役を務めてくれ」と言っているようなもので、私が獅子王の立場だったら即却下ですね。


「適材適所(個人個人が自分の役割に沿った能力を発揮すること」と「自分が活躍するために仲間達を引き立て役にすること」は似て非なるものであり、本作はそもそもここを履き違えています。
2010年代になると、いわゆる「なろう系」が台頭してきた影響もあるのですが、「努力!団結!勝利!」というより「血筋!天才!勝利!」みたいなのが多くなっているんですよね。
本作なんてその典型で、天晴がこんなにツッコミどころしかないバカなのに劇中で最強クラスとされている理由って好天の直系の孫という隔世遺伝だからでしょ?
だから仕事ができなくても「爺ちゃんの孫だからえらい」ということになりますし、天晴の本質は金持ちの御曹司という権威を振りかざすスネ夫と我儘なガキ大将のジャイアンが合体したようなもの。


別にバカだから天晴が嫌いというわけじゃなくて、バカというか底抜けに明るくても一生懸命何かを頑張っているところや芯の部分がきちんとしてたら私だって高く評価しますよ?
でも天晴にそんな要素がきちんと描かれてきたかと言われたらそうはいえないし、悪い意味での熱血バカにしておじいちゃん子な訳で……むしろ今回の話は天晴を余計に嫌いになった理由が明らかになっただけですね。
それを白日のもとに晒したという意味では高く評価しますが、戦隊シリーズでやっていい話ではないし、少なくともこれを「いい話」として受け取るには今までが酷すぎました。
一度マイナス印象がつくとそれを覆すのは難しいですが、本作は何度もそのマイナス印象を溜めまくった上にこれですからね……。


今回の話で思い出したのはそれこそ「ONE PIECE」のアーロンパークでのルフィを思い出しました。

 



そう、アーロンを前にルフィが自分には肉弾戦で戦うしか能がないことを自覚し、仲間たちの長所を肯定した上で自分に何ができるかをきちんと宣言したのです。
でもルフィは天晴みたいなやつとは違って歯切れのいい男として描かれていましたし、無理に自分をカッコよく見せようともしていませんでしたからね。
かと言って決して仲間達を引き立て役になんてしないし、決して親や爺ちゃんの脛齧りというわけでもなく、ちゃんと船長やってますので全然違います。
多分作り手が想像する天晴ってジャンプ漫画でいう孫悟空やルフィみたいなやつなんでしょうけど、悟空もルフィもそれぞれ鳥山先生と尾田先生だから描けたわけで、誰しもが描けるキャラではありません。


で、今回は好天爺ちゃんが「ちょっとだけ認めてやろう」なんて言ってましたが、この人何の面下げてそんな偉そうにしてるんでしょうか?
裏切り者の弟子を出した上に獅子王すら手懐けることができなかったわけで、この人名師匠ぶっているただの無能なんじゃないのか疑惑が出てきます。
自分のことを棚上げして偉そうに踏ん反り返ってるだけの無能な指導者でしかなく、こういうのは一番上司にしてはならないタイプだなと。
そして何より話のメインだったはずの「キンジの弟子入り」が有耶無耶にされてしまっており、話の軸から肉付の具材まで全て空中分解したまま終わるという最悪の結末に。


総合評価はF(駄作)、うまく決まれば物語として大きく跳ねられたのに、そのチャンスを全部ぶち壊してしまったKing Of 駄作

 

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