明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)第6話感想

 

ドン6話「キジみっかてんか」


脚本:井上敏樹/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
愛する妻・みほ(新田桃子)が優秀な美容師として表彰されることに。ところが、雉野つよし(鈴木浩文)は、仕事でパーティーには参加できないとウソをつく。何をやってもダメな自分と一緒だと、みほが恥をかくと考えたのだ。みほにふさわしい男になりたいと切望するつよしに、介人(駒木根葵汰)は「ポイントを使えば出来る男になれる」と告げる。全てが上手くいき自信がついたつよしは、桃井タロウ(樋口幸平)を会社にスカウトしようとするが…。


<感想>
うん、今回の話はすごく面白かったです。というか、やっと「ドンブラザーズとはこうだ!」というのが少し掴めたというか、やっぱり井上先生はスロースターターな人だなと。


個人的に一番感情移入しやすいのはやっぱり雉野さんだったわけですが、その雉野さんのバックボーンがやっとしっかり描かれて、一本のキャラクターとして成立しました。
でも井上先生がこういう「いい話」を書くときって大体裏があるしまだ序盤なので、今後これが悪い方向に行かないとも限らないから要注意です。
シャンゼリオン」にしても「アギト」にしてもコミカルに見せておきながらものすごく重い球を投げてくるので、油断はできません。
しかし、敵組織である「脳人」の存在も明かされ、また雉野とタロウの違いも明らかになったことで、やっと本作の背景にあるものが少し見えた気がします。


ドラマの内容自体は月並みでしたが、雉野と奥さんの夫婦の絆をタロウが認めて「お前の勝ちだ……」は定番ながらよかったです。
桃井タロウが「ヒーロー」ならば、とにかく「社会人」であることが雉野のアイデンティティー担っていて、「ジェットマン」の竜と香に近い図式になりました。
やたらに会社内の出世にこだわり、奥さんを幸せにしようとしたり桃井タロウをスカウトしようとしたりするところなんて完全な「俗物」として表現されています。
それに対して、全く頓着しないタロウは一種の「聖人」のように描かれていて、人でなしとは言わずとも富や名声・地位といったものへのこだわりがないのでしょう。


しかもそれだけではなく、敵側の脳人も「感情がわからない」ことから、単なる「不気味な謎めいた敵」ではなく、感情を共有できないが故に苦しむというのは面白いところです。
猿原も言っていましたが、桃井タロウの中にあるのは典型的な東洋思想=禅の思想であり、無駄なものを省いてシンプルに淡々と生きているものと思われます。
だから「何のために戦うのかは俺が知っている」とか「考えても仕方ない」とか、明らかに最初から「正しい」と言われるところに立っているんですよね。
同時に、桃井タロウが私の中ではやっぱり「人であって人でなし=脳人」説が濃厚になってくるのですが、どうなのでしょうか?


「お前の勝ちだ」と言ってましたけど、多分タロウって「優しい」のではなく「自分の意に反することはしない」というだけじゃないのかなあと。
自分の奥さんのために一直線に突っ走れる不器用ながらも優しい雉野に比べて、桃井タロウは多分誰かとの関係に執着することは一切しません。
だから「これはやってはダメだ」とはいうけれど、だからといって求められもしない利他的な説法をしない、ある種の独覚者のような存在なのかなと。
ただし、脳人やヒトツ鬼のような自分の意に反する存在はたとえ何であれ容赦無く叩き潰すというドライな怖さがそこはかとなく漂っています。


それから今まで度々気になっていた変身後の高笑いが単なるギャグや演出じゃなく、「笑うことを知らない脳人」へのカウンターになっているとは思いませんでした。
戦い方を見ても思うんですけど、桃井タロウってここ数年の戦隊レッドの中ではカリスマ性があるタイプだと思うのですが、やっぱり最初から一貫してスタンドプレーですよね。
殿様で主人のはずなのに実は誰よりも団体行動を好きではなく、戦いの時以外プライベートは基本的に一人でもよくあまり協調性がなさそうな気がします。
だから鬼頭も猿原も戦いの場には何となく顔を出すんだけど、それも個人で決めたことであって義務と考えているわけではありません。


メンバーたちの個々の生活を知ってもそれに影響を受けることは少なく、「それはそれ。俺は俺」を地で行くタイプです。
だから今回だって勝負を持ちかけたのはどちらかといえば雉野であって、タロウはただ淡々と相手に向かい合うだけとなっています。
公的動機か私的動機かでいえば間違いなく私的動機ではあるのでしょうけど、恐ろしいのはその桃井タロウの姿が表向きには公的動機で戦うヒーローに見えることです。
そう考えると殺意が高めに見えるのもある意味納得で、自分の運命がこれだと決められている分自分の意に反することはしたくないのではないでしょうか。


前回の犬塚は結果として全員が共犯者のようになっていていまいち飲み込めなかったのですが、今回の話はかなりいい範囲でそつなくまとまっていたと思います。
それにしても今年の戦隊レッドは古代恐竜人類のヤマト族プリンス、「不滅の牙」の異名を持つ熱き冒険者、ひたすら無策で突っ込むバカレッド代表、とどいつもこいつも濃い奴らばっか(笑)
こりゃあ今年の戦隊レッド列伝はすごく盛り上がりそうで、最終回まで見終えた後のレーダーグラフ作成が楽しみです。総合評価はA(名作)

 

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