明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)第9話感想

 

ドン9話「ぼろたろうとロボタロウ」


脚本:井上敏樹/演出:田﨑竜太


<あらすじ>
「喫茶どんぶら」に配達にやってきた桃井タロウ(樋口幸平)は、よろよろとした足取りで倒れてしまう。そんな中、街に特命鬼が出現。ドンブラザーズが応戦するが、ドンモモタロウには気力がなく、簡単に吹っ飛ばされてしまう。さらに、特命鬼にはなぜか攻撃が通用しない。タロウの様子がただ事ではないと思った鬼頭はるか(志田こはく)と猿原真一(別府由来)は、桃井陣(和田聰宏)に話を聞くことに。タロウの病気を治すため、はるかたちはレシピを参考にあるものを作ることに。


<感想>
オトモさん、オトモさん〜♪
サ店で作ったきびだんご、300オレに食べさせろ〜♪


今回の話の内容を桃太郎の歌で表すとこれに尽きます、というかそれ以外に基本的に中身のない回なので、前回に比べると正直微妙だったかなあ
前回はわかりやすくみほと夏実を軸にして雉野と犬塚を対比させ、最終的に雉野の心の闇を明らかにするという構成が非常にぴったりとハマりました。
それに引き換え今回は単なる設定紹介やイベント消化に終始していて、ドラマとしての面白みがほとんどないに等しいので、そこを楽しめないと辛いです。
「へえ、そうだったんだ」という設定紹介はなされていましたが、演出のメリハリが今ひとつで、戦闘の演出もテンポが悪く冗長気味で間延びしたような感じに。


唯一ラストの「ジェットマン」のバス次元の回のセルフパロディのホラーシーンでゾクッとはしたものの、そこ以外が大して面白くありませんでした。
それからゼンカイブラックの変身にしてもわざわざこの回で盛り込まなくてもいいような……井上先生が仕込むギャグ自体は嫌いじゃないものの、時としてこういう物語の流れを阻害する流れがあるのは何だかなあと。
シャンゼリオン」「アギト」の頃とかそうでしたけど、井上脚本スラップスティックは浦沢脚本のそれと違ってアイデア力というか現場の空気感と役者の力で成り立っている部分が大きいです。
逆にいえば、役者や監督が面白くできなかったら完全に滑ってしまうというものなので、その意味では今回のギャグは全体的に滑っていたなあと……「タイムレンジャー」のユウリギャグ回もそんな感じでしたし。


ところで、桃井タロウがまさか某「Fate」シリーズみたいにきびだんごかそれに匹敵するエネルギー源を供給しないとぶっ倒れて動けなくなるなんて面倒臭い設定がくるとは思いませんでした。
「桃太郎がお供に食べさせる」のではなく「お供が桃太郎に食べさせる」というひねりもさることながら、ヒーローとしてあれだけ圧倒的な強さの裏にはこの美味しいきびだんごパワーがあったのだと納得です。
やはり、大きい力を発揮するにはそれ相応のエネルギーを供給せねばならず、そりゃあタロウもそれだけ食べようというものですが、こう見ると益々ドンモモタロウ=桃井タロウが戦闘民族じみてきますね。
しかもただのきびだんごじゃなく、きちんと臼と杵を使って丹精込めて作った手作りでなければならないという設定を見て、「あれ?これどっかで見たなあ」と思ったのです。


そう、「カーレンジャー」の巨大化アイテム・芋長の芋羊羹!


今回のモモタロウにフルパワーを出させるには手作りのきびだんごじゃなければならないという設定を見て連想したのはそれであり、「カーレンジャー」の芋羊羹にも実は細かい設定があるのです。
それは芋長の職人が丹精込めて作った手作りの芋羊羹でなければ巨大化できず、コンビニで買った市販の芋羊羹や腐った芋羊羹では逆に縮小してしまうというデバフ効果があります。
終盤ではこの設定を44話で曽田先生がお書きになった菜摘のモンキーレンチと対比させる形で、エグゾスの最終決戦での伏線回収も兼ねた最高のギャグとして勝利の切り札になりました。
何となくですが、地球の食べ物、特に日本の和菓子というのは職人の手作りによって作られるだけではなく大自然の力もありますから、それだけで大きなエネルギーとなるのではないでしょうか。


それこそ「戦隊シリーズと食生活」というのが直結している作品は少ないにしても、この設定で思い浮かべるのはやはり「ジェットマン」「ギンガマン」「ゴーオンジャー」「シンケンジャー」辺りです。
例えば「ジェットマン」では雷太が作った美味しい野菜が出てきており、彼が純朴な性格に育ったのも農家で小さい頃から健康的な食生活をしてきたからだろうと考えられます。
ギンガマン」ではわかりやすく料理担当のゴウキがいて「ギンガの森風」という形でレシピを工夫しており、健康的な食生活をしているからこそリョウマたちが存分に戦えることが示されていました。
ゴーオンジャー」ではわかりやすく貧乏組のゴーオンジャーと富裕層のウイングスに分かれていて、美羽が走輔に対して次のようなセリフを言っています。


「ヒーローは人を幸せにする使命がある。人を幸せにするなら、自分も幸せの何たるかを知らねば」


要するにノブレスオブリージュ、「足るを知る」を説いているのですが、実際十分な食生活をしているかどうかで戦士が使える戦闘力には大きな差が出たりするものです。
そして次作「シンケンジャー」では寿司や精進料理、お節などが当たり前でしたから、やはり侍たちも食生活を含めて金銭面はかなり充実していたのではないでしょうか。
歴代戦隊における食生活というのをいくつかの例を参照してみましたが、やはりプロフェッショナルと呼ばれる戦隊ほど高級料理というかきちんとした健康的な食生活をしている傾向にあります。
そういう意味で、今回出てきたドンモモタロウが圧倒的なパワーを振るうためにはお手製のきびだんご300個が必要という設定は一見突飛なようでいて、実は割と合理的だと思うのです。


そして今回のヒトツ鬼には実体がなく、入院していた老人の過去の悪夢が形となって出てきたものだとしたことで、鬼ごっこやだるまさんというルールに則らないと勝てないというのにも納得できます。
ただ、ロボタロウをここで出す必然性としては薄いので、その辺りはもう1つ物語としての補強が欲しかったところではあり、そこらへんの玩具反則とドラマの関連性の弱さは本作の明確な弱点でしょうか。
前回メンヘラであることが発覚した雉野と犬塚は完全に蚊帳の外ということで、メンバー内の関係性が赤青黄の信号トリオと黒桃のアングラコンビに色分けがなされているようです。
総合評価はC(佳作)、アイデア自体は面白かったものの物語としての面白さとしては今一つであり、バラバラの設定が今後有機的に結合してくれることを期待します。

 

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