明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)第7話感想

 

ドン7話「せんせいのむれ」


脚本:井上敏樹/演出:加藤弘之


<あらすじ>
はるかの高校に、人生を学ぶ特別授業の先生として猿原真一と桃井タロウがやってくる。生徒から質問が出る中、タロウは挑んできた柔道部や将棋部と勝負をすることに。その頃、貼り紙のルールを守らない人を吸収してしまう地球鬼が出現。遭遇した犬塚翼が応戦するが、地球鬼は透明になり見えなくなってしまう。


<感想>
こんなクソみたいなクオリティで「ファイブマン」をリスペクトしたつもりとか舐めとんのか!!


いやもう今回は完全に悪い時の白倉・井上コンビが出てしまった回というか、これまで見てきた中で今のところ最低レベルの出来栄えだと思います。
本当にもう「シャンゼリオン」「アギト」のような全盛期のキレは戻ってこないのかなあ……なんて思ってしまいますが、いわゆる「学園ドラマ」として見ても見れたものじゃありません。
それこそ「金八先生」「GTO」「ごくせん」をはじめとする学園ドラマを多く見てる私からすると、まず授業シーンの演出そのものに対してダメ出しを入れたいです。
「学園ドラマ」の教室のシーンで何が大切かっていかに緊迫感かつ立体感のある授業シーンを撮るかが大事であり、今回はまずそこからしてダメでした。


いわゆる「選択制の課外授業」は私も高校時代に何度か出席したことがあるので問題はないんですが、まず猿原もタロウも「先生っぽさ」がまるでありません。
まず教室の授業シーンは教師の存在感・カリスマ性が大事なのですが、若手の先生として見てもこの2人ではあまりにも迫力不足で全然威厳のある「先生」に見えないのですよね。
しかも教える内容が「空想力が大事」「自分で考えろ」というどこかで聞いたようなものばかりで、何の発見も得られない内容になってしまっていることは否めません。
そもそも「空想力が大事」というのは戦隊シリーズでは「トッキュウジャー」で潜り抜けた道ですし、「自分で考えろ」も「ジェットマンからしてそうだったじゃないか、という。


それから授業中に生徒たちが先生に生意気な口を叩いたりすることや「盗作」呼ばわりしたりするのはいいのですが、問題はその前にまず鬼頭はるかの高校生活自体が満足に描けていないということです。
これは「ターボレンジャー」「メガレンジャー」「フォーゼ」も共通で抱えていた問題点ですが、特撮で「高校生戦士」と設定することの問題点は尺の都合上「学園生活」を描ききれないことにあります。
何故ならばこれら3作は最終的にその学園生活を「ヒーロー」というところに関連させないといけないため、学園生活それ自体を満足に描くことができないという問題があるのです。
だから「金八先生」「GTO」といった「学園ドラマ」を描き切るよりも遥かに厳しい制約の中で勝負しなければならないという問題があり、本作もそこをクリアできていないという問題があります。


じゃあ具体的に素晴らしい学園ドラマの授業シーンを挙げろよという話ですが、やっぱり「金八先生」のパート1の「愛の授業」、またパート5の福澤Dが担当した「短歌合評」などは名授業です。
福澤Dは特に「半沢直樹」「下町ロケット」も手がけている名監督ですから、是非第5シリーズ〜第7シリーズの福澤演出を見てみてください。
そのため、どうしても授業シーンが出てくると無意識にでもそれらの名作と比較してしまうため、あまりにも物足りないシーンとなってしまっています。
まず授業を戦隊ドラマの1シーンに組み込むにはそもそも「はるかの高校生活」自体の掘り下げや蓄積が甘すぎるという問題があるのです。


2つ目に、今回で桃井タロウがわざわざ戦闘終了後に4人に攻撃していた理由が明らかになりましたが、結果としては単に「傍若無人な人でなし」以上にはなりませんでした。
それどころか「口実をつければ仲間たちに暴力を振るっていいのか?」という問題点も重なってしまい、それこそ「学園ドラマ」と繋げると安易な根性論のプロパガンダに見えてしまいます。
昨日書いたエポックメイキングの記事における昭和の根性論の危険性ではないですが、ギャグで描けば敵の脳人やヒトツ鬼に対抗するために仲間たちをしばくシーンを肯定してもいいのかという話です。
今回こんな言い訳を作り手が用意してしまったせいで、桃井タロウ/ドンモモタロウの変身前と変身後のギャップがなくなってしまう上に単なる「人でなし」となってしまいます。


まあ元々桃井タロウみたいな「天然系陽キャ」は一歩間違えると単なる「空気が読めない無神経なやつ」となってしまうのですが、今まではなんだかんだそこを避けていました。
しかし、今回に関してはその超えてはならない一線を完全に破ってしまったように見えてしまい、「理由をつけて仲間や生徒を甚振る悪党」という風に見えてしまいます。
「アギト」の翔一君や「ドラゴンボール」の孫悟空がギリギリで回避していたところを今回のタロウは完全に地雷踏んでしまった感じはあり、私の心の地雷を踏んでしまいました。
それだったらいっそのこともっとその傍若無人ぶりを強調した方が良かったと思われ、非常に後味よろしくない展開となってしまい遅きに失した感あり。


そのため、変身後のドンモモタロウの無双が単なるなろう系のような「俺TUEEE」でしかなくなり、単なるパワーバカの力自慢でしか無くなってしまいました。
この点似た方向性の「シンケンジャー」の殿様や「トッキュウジャー」のライトはその危うい一線をかろうじて超えなかったのが奇跡的なバランスだったのだと思います。
戦隊レッド好きな私としてはこれまでどこか神秘性を保っていた桃井タロウがただの「暴力を振るう戦闘狂」でしか無くなってしまったのは非常に残念です。
しかも学園ものとして見ても最低レベルのクオリティで、評価はF(駄作)以外にはなく、これで「ファイブマン」をリスペクトしたなどとは口が裂けても言わせんぞ!

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村