明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)第4話感想

 

ドン4話「おにぎりのおに」感想


脚本:井上敏樹/演出:中澤祥次郎


<あらすじ>
ようやく桃井タロウ(樋口幸平)を見つけた鬼頭はるか(志田こはく)は、何を考えているのか聞くためにタロウが働くシロクマ宅急便を訪れるが…。一方、コンサル会社で短期の仕事をすることになったタロウは、雉野つよし(鈴木浩文)とコンビを組んで赤字続きのおにぎり専門店を繁盛させる仕事を請け負う。オーナーシェフ・水野の握ったおにぎりはまずますだが、店のスタッフにやる気がない。タロウはスタッフの特訓をすることに。水野は100点のおにぎりを求めるあまり…。


<感想>
コンサル業ってそんな甘い仕事じゃないから!


そう言いたくなった今回の話ですが、しかし今回までの話である程度本作の骨子というか世界観のベースにあるものは見えました。
先に評価を下しておくと、総合評価はE(不作)で、その理由はコンサルの仕事に関してあまりにも作り手が無知なのが素人目にもわかるからです。
ネットビジネスが普及した現在、おにぎりの味を変えた程度では解決しませんから、まず井上先生は「Z世代(デジタルネイティブ世代)」のことをもっと勉強すべきだと思います。
やっぱりこういうところ、井上先生はしらけ世代というか昭和の感覚で物を書いているなあと思ったので、書くならもうちょっと現代のビジネスについてキャッチアップすべきです。


おにぎりの味を変えて、という手法が通用したのは精々90年代までで、現在はむしろ「個人の時代」に差し掛かっており、組織よりも個人の方が大きな力を持っています。
SNSが中心になっていることも含めて、下手な大御所の芸能人よりはヒカキンやはじめしゃちょー、ヒカルのようなYouTuberの方が影響力がある時代ですからね。
だから、やるのであればもっとネット媒体を使っての宣伝にするなど、ネットビジネスのアプローチでコンサルするという方向に変えていかないとダメだと思います。
井上先生お得意の「食べ物ネタ」をやりたかった以上のものが感じられず、そのネタ自体が面白く感じられない私にとっては何が何だかさっぱりわかりません。


しかし、今回のヒトツ鬼になった人がそうだったのですが、単なる「欲望」というよりは、もっと狭めて「承認欲求」が本作の「」のキーワードになっているのではないかと思いました。
これは正にネット社会が齎した歪さともいえるのですが、認められない非モテ陰キャ然り、68歳で若作りしているおばちゃんしかり、そして明かりを盗んだクロクマしかり。
それこそ昨日私も引用リツイートしたのですが、ある方がこのようなことを漫画にして呟いておられました。

 

 


これ、実に的確に「Z世代(デジタルネイティブ世代)とは何か?」を風刺したものだと思っていて、私がSNSに覚えた違和感の正体です。
今の若い人たちはインターネットやSNSが当たり前になっていて、その中で「いいね」やフォロワー数を稼ぐことで自らの承認欲求を満たす(満たそうとする)傾向が強くあります。
それが悪いというわけではなく、そういう社会構造を作ってしまった以上そのようなものになってしまうのは仕方なのないことですし、人間誰しもが承認欲求を抱えている生き物です。
でもそれが一方では「絆の安売り」「いいねのバーゲンセール」といった「コト消費の大量生産・大量消費」へ繋がっているという問題も同時に孕んでいます。


よくいるじゃないですか、Twitterやインスタグラムみたいなとこで大して面白くもない個人のプライベートを晒してそれに「いいね」を押しまくって満足している人たち。
最近界隈で話題になっている新世代YouTuberもTik Tokで人気を得ている人たちも結局根本の原理は同じで、要するにネットの中で他者からの「いいね」や繋がりが欲しいのですよね。
そしてその若い世代の人たちはもはや現実世界での学校の繋がりよりもSNSでの繋がりの方が大事だと言い出し、それってつまりネット空間での「友達100人できるかな?」になるのです。
人間って時代によって道具が変わっても本質はそう変わらないもので、結局根っこの部分で他者との繋がりが欲しくて認められたいのに、それを口に出すのが憚られるから口にしません。


そう見ていくと、桃井タロウが「縁」を大事にすると声高に主張しながらも必要以上の関わりを持たなかったり、また「アバター」という電脳空間設定があることも納得がいきます。
「縁を大事に」というのは昔であれば口に出さずとも自然にできていたことなのですが、それを声高に主張することは逆説的に現代がいかに人と人との繋がりが希薄かを訴えているのです。
そしてSNSのようなネット上の仮想空間がもはやアナログな現実世界に取って代わられており、正に「攻殻機動隊」「マトリックス」のような世界がそう遠くない将来やってくることを示しているのでしょう。
はるかが1話で盗作紛いで一気にクラスメイトからハブられて居場所を失ったのも、現代の人同士の絆がいかに安っぽい上辺だけのものかを指し示しているといえます。


これは完全に私の個人的な体験談になってしまうのですが、そういう世代の方々と交流して思ったのは、彼らはネットリテラシーこそ高いものの、行動力が低く既存の価値観を疑うことをしない傾向にあるということです。
ネット社会のシステムをそのまま享受する一方で、そうした情報社会が持つ問題点や歪さといった点に関しては目を向けず、批判的・懐疑的視点を投げかけるということを恐ろしいほどしません
昭和の良し悪しを見た上でそれを批評して新しいものを生み出そうという考えが内在する私からすると信じがたい感覚なのですが、もしかすると本作はそこにスポットを当てるつもりではないでしょうか。
無自覚に与えられたものを消費するという意味では、デジタルネイティブとは「ネット社会におけるバブル世代」といった方がいいのかも知れません、かつては「モノ消費」だったのが「コト消費」になっただけで。


その意味では桃井タロウが「縁」を大事にしながら自分にすり寄って忠誠を誓おうとしたオニブラザーを足蹴にしたのも、そういう安っぽい繋がりや絆が大嫌いだからと考えると納得がいきます。
今回だって衆生の困ってたやつは救いますけど、救い出したらもう顔を見せなかったのがそれを示しており、何となく本作の世界観の構造にあるものが私なりに見えてきました。
ネット社会で簡単に人と繋がれた気持ちになって承認欲求を「いいね」などで満たそうとする現代社会の闇、そういうところが本作のヒトツ鬼が抱える「悪」ではないでしょうか。

 

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