明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

ドラゴンボール(Z)レビュー番外編〜ジャンプ漫画界のベジータ=冨樫義博先生と「幽☆遊☆白書」〜

f:id:gingablack:20220317184438j:plain

出典元:https://www.amazon.co.jp/幽・遊・白書-1-ジャンプコミックス-冨樫-義博/dp/4088712730

さて、個人的な「ドラゴンボール(Z)」のレビューは前回までで終わりましたが、ここから個人的な与太話も含めた番外編を書こうかなと思います。
まずは前回までの記事で鳥山明孫悟空ミスターサタン小山高生とメタ的に見れると書きましたが、なぜこんなことを書いたかというとそもそも鳥山先生自身がそういう作家だからです。
Dr.スランプ」の悪役として登場するマシリトが典型的ですが、鳥山先生は自分の身近な人物を劇中の登場人物のモデルにすることがよくあると公言しています。
例えば2013年の映画「神と神」では中川翔子氏との対談の中で破壊神ビルスのモデルが自分の家で飼っている猫であることを明かしているのです。

 

 

僕が描く「神」って偉い感じがあんまりないんですよ(笑)庶民的にたこ焼きを食べているような神が好きです。
いかにも強そうな敵は好きじゃなくて、人間型の敵は散々やって来たので、今度はうちで飼ってる猫を見て「こんな感じにしようかな」と。


引用元:https://www.toei-anim.co.jp/movie/2013_dragonballz/special/interview.html

 


この発言からもわかるように、鳥山先生が描く世界観ではいかにも強そうな見た目の奴よりも「こいつ本当に強いの?」という見た目のやつが意外にも強いという特徴があります。
ピッコロ大魔王しかりベジータしかりフリーザしかり、そしてセル完全体しかり魔人ブウしかり、一見強そうには思えない奴らの方が戦ってみると滅茶苦茶強いのです。
逆にいかにも強そうな見た目の敵は意外にもそんなに強くはなく、これはそれまでに出て来た敵達の取り巻きを見ればお分かりだと思います。
だから、いかにも強そうな見た目の旧ブロリーが最強でビルスよりも強いと主張する小山高生ミスターサタンの言い分は的外れだよなあ、とは(笑)


横道に逸れましたが話を戻して、鳥山先生が実際のモデルにしたかどうかは別として、実際に鳥山先生と同時代に凄い作家として台頭したジャンプ漫画の作家がいました。
それこそが「幽☆遊☆白書」「HUNTER×HUNTER」を代表作として持つ冨樫義博先生であり、個人的な見立てですが、彼はジャンプ漫画界のベジータといえるのではないでしょうか。
絵の才能や画力では鳥山先生に及ばないながらも、ストーリーや発想力という部分で鳥山先生とは違うベクトルを目指し、見事それに成功して独自路線を開拓した点がベジータと似ています。
また、自分よりも結果的に多くのお金を稼いでいる漫画家の武内直子先生とご結婚なさって現在は実質のヒモ状態であるところもそっくりで、そう見ると武内直子先生はブルマなんですかね。


まあそれはともかく、冨樫先生が「幽☆遊☆白書」で台頭してきたのは1990年、丁度「ドラゴンボール」がサイヤ人編に入ってベジータが台頭してきたくらいの時期です。
そこから1994年まで冨樫先生は「スラムダンク」「ドラゴンボール」と並んでジャンプ漫画を支えるのですが、この「幽☆遊☆白書」自体が多分に「ドラゴンボール」のオマージュと言える漫画でした。
最初は主人公の浦飯幽助が探偵として活躍していきながら数々の悪人を自分の味方に引き入れていく展開、そこからバトル漫画にシフトして大規模なバトルへと発展していく点まで全て「ドラゴンボール」の追従です。
特に飛影のキャラクターはそのままベジータエピゴーネン(亜種)といえるキャラですし、暗黒武術大会の決勝戦浦飯幽助VS戸愚呂弟120%は「ドラゴンボール」の孫悟空VSフリーザ並の盛り上がりを見せました。


しかし、「幽☆遊☆白書」が本領を発揮するのは寧ろその後「ジョジョの奇妙な冒険」が打ち出した能力バトル路線に切り替えてからであり、ここからがむしろ冨樫先生の本領発揮ではないでしょうか。
特に魔界の扉編(仙水編)の序盤、それまで圧倒的な力を誇った浦飯幽助らが次々と心理戦で倒されていき、蔵馬が知能を使って勝ち抜く展開はスリリングで見応えがありました。
あれはアニメ・漫画共に手に汗握る緊張感があって、少なくとも「ドラゴンボール」にはない緻密かつ複雑、それでいて遊び心の感じられる戦いであったと思います。
冨樫先生はゲーム好きで有名な方で、スーパーファミコンなどのテレビゲームの考え方を独自に因数分解して、それを能力バトルの概念として取り入れたのは有名な話です。


また、魔界統一トーナメント編(魔界編)では浦飯幽助が自身の祖先である雷禅と戦うことになるのですが、これは「ドラゴンボール」で描かれなかった孫悟空と祖先(親子)との対決という要素でした。
そう、「ドラゴンボール」という作品が描かなかった、向き合わなかった要素やテーマと向き合った「裏ドラゴンボール」、それが「幽☆遊☆白書」だったのです。
冨樫先生はその仙水編以降で確立した能力バトルを「HUNTER×HUNTER」で完全なオリジナル要素として昇華させるのですが、これはまさに孫悟空とは違う独自路線を開拓したベジータと同じ道を辿っています。
そして、その冨樫先生はジャンプ漫画作家の中でも才能でいえば鳥山先生を除いてその時一番面白いものを提示する、というところもまた悟空=鳥山先生の二番手のベジータと似ているのです。


鳥山先生に憧れを示しながらも、決して同じ路線を目指さずに独自路線を開拓し、世界的ヒットにまでは至らなくても鳥山先生に匹敵するスマッシュヒットを放った天才漫画家
それこそが冨樫義博先生であり、だからこそ最後に言いたいのはさっさと「HUNTER×HUNTER」の連載を再開しなさい!(笑)