明日の伝説

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「ゲインロス効果」と魔人ブウ編のベジータ

Twitterでも引用リツイートしたのですが、違法バタピーさんという方の「令和になってドラゴンボールを初めて読む人のリアクションまとめ」を拝見しました。

 

togetter.com


色々言いたいことはあるのですが、とりあえず感想や考察などを見ていて思ったのは「なるほど、今の若い人たちにはドラゴンボールってこう見えているのか」ということです。
「インターネットは何も大事なことを教えてくれない」などの下りから、おそらく世代的にはZ世代、すなわち「デジタルネイティブ世代」の感想なのだろうなと思われます(間違っていたら申し訳ありません)。
特にそれを強く感じたのは魔人ブウ編であり、先日紹介したあでのい氏しかり違法バタピー氏しかり、私にとっては単なる蛇足でしかない魔人ブウ編をこんな風に見ている人もいるのだと思えました。


ただ、やっぱり「ドラゴンボール」に後から入ってきた世代は魔人ブウ編を無理に褒めちぎってる印象が強くて、特にブウ編が「悟空とベジータがこれまでのツケを清算する話」に関してはただの牽強付会にしか見えません。
リアタイでサイヤ人編からガッツリ漫画・アニメを毎週追っていた私にとっては子供心に人造人間編以降は決して手放しで褒められたものではなかったのです。
こないだも説明したようにパワーバランスの点でも、ストーリー・キャラクターの点でも人造人間編以降は限界効用理論で超サイヤ人のバーゲンセールとそれに伴うチート合戦の繰り返しでした。
ドラゴンボールも死人復活の道具として形骸化してしまい、孫悟飯の主人公化も失敗、更には悟空とベジータのキャラも迷走して初期の頃の良さを完全に失ってしまったのです。


これは誰がどう都合よく解釈しようが、作品として見た場合は完全な「失敗」であり、少なくとも鳥山先生は人造人間編以降の展開に関しては納得行っていなかった部分があるでしょう。
というか、そうでなかったら原作終了後から18年も経って「神と神」「復活の「F」」「ブロリー」「スーパーヒーロー」といった実質のリメイク作品の脚本を自ら手がけることはなかったはずです。
特に人造人間編・魔人ブウ編は納得いかない部分や無理が目立つのもあって、決していい思いはしていなかったわけであり、悟空が戦いに乗り気じゃないところからも早く連載を終わらせたくて仕方ないのだと思いましたから。
だから、私はこの人たちが感じたことや好みまでは否定しませんが、ただそのおかげで1つ気付けたことがあって、それはベジータのことに関してです。


これまで紹介してきた方々を始め、読者の多くは魔人ブウ編のことを語る時、必ず魔人ベジータのくだりからの「お前がナンバーワン」が語られます。
あれ?最初は悟飯が主人公でしたよね?しかも最終的に悟空が勝つんですよね?でもなぜだか、読者の印象では完全にベジータが孫親子を食ってしまいました。
このことがあってか、魔人ブウ編が「ベジータの成長物語」などと言われることがあるのですが、あれは成長でも何でもなく単に初期と後期でキャラが変わっただけなのです。
ドラゴンボール」に限らず黄金期のジャンプ漫画は登場初期と後期でキャラが変わることがよくありますので、ベジータが珍しいわけではありません。


だってこれ、見比べてみてくださいよ。まずは私が大好きなナメック星編の極悪人時代のベジータ

 

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初期ベジータ


次に魔人ブウ編でのベジータ

 

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後期ベジータ


そして最後に、ファンからは最大の黒歴史扱いされている「神と神」でのキャラ崩壊したベジータ

 

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黒歴史ベジータ


…………本当に同じ人物ですか?(笑)


まあ3枚目は触れない方がいいのかなと思いますが、なぜこんなにもベジータの変遷が多くの読者の印象に残ったのかというと、それは一重に「ゲインロス効果」という奴です。
詳しく説明すると、普段悪いことをしている奴が影でいいことや人のためになることをしているとそれだけで褒められ、逆に普段真面目な優等生タイプが悪いことをすると過剰に叩かれやすいのです。
わかりやすくいうと芸能界の不倫は正にこれであり、例えば石田純一のようなナンパな男が不倫の1つや2つしたところで「いつものことだから」で済ませることができます。
しかし、ベッキーアンジャッシュの渡部のように、普段真面目な優等生タイプで通っている人が不倫すると、たちまち炎上してしまい世間からは大バッシングを喰らうわけです。


よくありがちな「不良が更生したから偉い」という理屈であり、大人気の学園ドラマ「3年B組金八先生」をはじめとする学園ドラマで使われているのはこの手法になります。
要するにマイナスのイメージだった奴が先生との交流の中で改心してゼロに戻ることを言うのですが、なぜか悪人がそうなると世間の人々はとても感動してしまうのです。
ドラゴンボール」のベジータは正にこのパターンで、最初は無辜の者を次々と惨殺できる極悪人の侵略者が地球で暮らしている内に葛藤・改心しただけで読者は共感してしまいます。
そのベジータの逆が孫悟飯であり、彼はセルゲームまではめちゃくちゃかっこいい男だったのに、ハイスクール編〜魔人ブウ編で一気に株を落としましたよね?


単に真面目に勉学に励んでいただけなのに修行をサボっただけで悟空とベジータからは呆れられてしまい、さらにグレートサイヤマンで迷走を極めます。
更にアルティメット化でイキった挙句に無様に魔人ブウに吸収されてしまうなど、ベジータとは対照的にプラスだったのがほんの少しのやらかしでマイナスとなりました。
これが正にゲインロス効果ですが、気をつけなければならないのは過度に美化しすぎてしまうと感覚が麻痺して美談にしかねないということです。
このことは「こち亀」の両さんがきちんと説明してくれています。

 

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もっとも、両さんの場合は自戒の念も込めての発言だったのかもしれませんが、こういう理由もあって私は魔人ベジータから改心する下りはともかく、それをファンが過度に賛美する風潮が嫌いなのです。
私は悪人は悪人らしく散ってこそのものだと思うので、そういう意味でもフリーザ編までで死なせておけばベジータは悟空の影響をそこまで強く受けずに終わることができました。
ただ、連載が続いてしまいベジータ人気が出てしまった以上、人気を維持するために使わざるを得ずに迷走した結果がああいう風になった、というのが実情ではないでしょうか。
だから私は人造人間編〜魔人ブウ編のベジータには一定の「味」があることも認めますし感動や共感を呼びやすいのでしょうが、圧倒的な「美」があったのは間違いなく初期の極悪人時代です。