明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)45・46話感想

 

第45話「勝利のホットミルク」


脚本:井上敏樹/演出:雨宮慶太


<あらすじ>
香、雷太、アコがベロニカに捕らえられてしまった。何と3人はベロニカの生体エネルギーの供給源にされてしまったのだ。残された竜と凱は応急修理のグレートイカロスで3人を救出するため、再び戦いを挑む。凱と1杯のホットミルクを約束に、竜がトランザとラディゲの対立の隙を突いてベロニカ内に突入する!


<感想>
さて、魔人ロボ・ベロニカ後編…ジェットマン、かつてない大ビンチで残されたのは竜と凱のみ。


「凱、どんなに強い相手でも俺たちに出来るのは戦うことだけだ!修理を急ごう」


ここで凱がしっかり二番手としてグレートイカロスの破損箇所の修理を行い、小田切長官がベロニカ対策を必死に考えると各メンバーの動きがしっかり盛り込まれています。
そしてその頃、ベロニカのコックピットでラディゲが謀反を目論んでいるのですが、それに気づかないトランザは浮かれ気分でジェットマンを見下す。


「正義とは悲しいものよ。負けるとわかっていても、戦わねばならぬとはな」


もうこんなセリフを言っている時点で敗北フラグが次々立地、グレートイカロスは腹を貫かれ…この描写は当時衝撃的でした。
90年代戦隊シリーズといえば、このロボットのやられ描写が目立ちますが、ここで余計なことが起こりラディゲが謀反を起こしてしまいます。
そして今回のドラマの見どころといえばやっぱり竜と凱のこのやり取りです。


「凱!今度は俺が行く、後は頼んだぞ」
「竜!この戦いが終わったら、一杯おごるぜ」
「ああ、ホットミルクを頼む」
「砂糖抜きのな」


紆余曲折あって戦友となった竜と凱の絆、ここに極まれりといった感じですが、もうここに来ての竜と凱はしっかりナンバーワンとナンバーツーになっているのが熱い。
そしてちゃっかり凱が竜の嗜好品を把握しており、ここで初期から仕込んで来た嗜好品がお互いの個性と関係性を引き立てる道具として機能しています。
それは同時にバイラムのナンバーワンとナンバーツーであるトランザとラディゲの醜い争いとの対比でもあり、ここで改めて「悪とは何か?」が示されることに。
悪の組織がヒーローにいつも負ける理由は様々ありますが、井上敏樹ら本作のスタッフが示す悪とは結局「」にあるということでしょう。


悪の組織が負ける理由は他者の存在や価値観を認めることができないから悪の組織なのであって、そしてそれ故に足を引っ張り合い負けてしまうのです。
まあこれは上原戦隊や曽田戦隊もそうだったのですが、本作は「ヒーロー性」という表向きの仮面を剥いで生々しく描くことによってそれが克明に浮きがりました。
序盤の段階ではジェットマンが正しくこのようになりかけていたわけであり、本作は敵も見方も「等身大の正義」で戦っていることが伺えます。


「ラディゲ、貴様の命、ベロニカに捧げるがいい!」


遂にラディゲすらもベロニカの生贄にしようとしますが、コックピットに残された凱も必死に猛攻に耐え、それぞれがそれぞれにしっかり戦っているのが見事です。
「死んでもこの手を離さねえ!頼むぞ、竜うううう!」という凱の熱い叫びもカッコよく、ここに来て着実にジェットマンが「ヒーロー」になって来ています。
そしてラディゲはこのまま死ぬのかと思いきや、逆にエネルギーを吸収し、思わぬ反逆によってベロニカを弱体化させることになりました。
今回のこれに関しては完全に敵側の内ゲバなので完全に幸運だったのですが、更にトランザと死闘を演じたレッドホークの元に復活した3人が駆けつけます。


そして勝負は持ち直しますが、流石に弱体化したと言ってもグレートイカロスよりは遥かに強く、どうすれば倒せるのか?
ここで長官が改良を済ませたテトラボーイにバードメーザーの一撃を浴びせて、その凄まじいシャインスパークで倒すことに成功しました。
安易に敵側の内ゲバで逆転するのではなく、ジェットマンジェットマンで各自が自分の役割を果たした上での大逆転というのがいい展開です。
遂にトランザの額から血が流れ出しますが、これがもうトランザの行く末を暗示しているようでもあり、またここまで散々好き勝手やって来たツケが回って来ました。


そしてラディゲは行方不明に…やはりトランザ編は全体的にジューザ編を1クール使ってやり直している感じですが、ジューザ編の前振りがあることでこの流れに説得力があります。
ジェットマンのメンバーはいい気分になって祝勝会をささやかながら行うことに。


「凱、ごめんね。心配かけて」
「ああ、心配したさ。俺たちは仲間だ」


どこか気まずそうな凱と香の関係もここに落ち着き、竜と凱は約束通りお互いに奢ることに。


「ホットミルク、砂糖抜きでな」
「こっちはマッカランのストレート」


そして2人が勝利の盃を交わして終わるのですが、ここでの重要なポイントは竜と凱の友情の結実とともに、凱と香の関係の自然消滅をうまく脚本と演出によって示していることです。
どういうことかというと、香が露骨に修復をアピールしているのを凱は知っておきながら真正面から受け止めることなく「仲間」という言葉でかわして誤魔化しました
そして竜と凱の友情の中に完全に香りの存在を消滅させることによって、凱を第二話に近い状態に戻しているのです、つまり一匹オオカミへと戻ったということ。


このジェットマン全体での勝利というカタルシスの中に、うまいこと凱と香の特殊な関係(エロス)の終焉を織り交ぜることで、香もまた1つの役目を終えました。
意外にもあっけなかった凱と香の恋愛ですが、なぜこの段階で決着をつけさせたかというと、終盤の展開を鑑みるに理由は2つ考えられます。
まず1つが二番手とヒロインの恋愛だとベタすぎて面白みがないこと、そしてもう1つが竜とマリア(リエ)の関係をしっかり描くためです。
特に後者はとても大事な部分であり、ここ数話ばかり竜があまり表立って話の中心になっていないように見えますが、あくまで本作は「レッドホーク=天堂竜の物語」として描かれています。


凱はそんな竜との関係を盛り上げるために配置された飛び道具のようなものなので、一見主人公っぽく見えても彼は決して竜と違って準主役でしかないのです。
そして香もまた物語の上でやや目立ってこそいるものの、まだヒロインらしい活躍を見せているわけではないので、本当に大事なものは山場に取ってあります。
もちろんそれはバイラムにも言えることなのですが、このベロニカ編を通してこれまでの関係性がある程度清算され、ここからは次回の箸休めを挟んで激動の最終章へ向かうのです。
評価はS(傑作)、着々と物語が収束に向かう中できちんと描くべき要素が綺麗にハマっていっています。


第46話「トマト畑の大魔王」


脚本:荒木憲一/演出:東條昭平


<あらすじ>
トマト大王がみんなをトマトに変えてしまう。だが、トマト大王は異次元生命体メタモルが、雷太のトマト嫌いだった過去を利用して生み出した怪物だった。勝負の命運は雷太が過去を克服できるかにかかっている。そんな雷太を必死に励ますアコ。一方でトランザと反目し、再び人間化したラディゲが街をさまよう。


<感想>
今回は最後の雷太メイン回ですが、ギンガマン」のトマト回ってもしかしてこれの焼き直しだったのかと今更ながら思うところです。


内容としては雷太が実は幼少の頃トマトが苦手で、という農家としてそれはどうなんだ?みたいな話にしつつ、そこでアコが包容力を発揮するという珍しい回。
思えば雷太が暴走した時の抑え役にアコがいましたが、竜・凱・香を中心に本作は毒っ気が強すぎるメンバーに挟まれているため、この2人が揃うとマイナスイオンぶりが半端じゃない(笑)
トマト大王とか完全なナンセンス系のギャグですが、雷太にはこういう爽やかで軽めなテイストのものを持って来たのは意識的なバランス配分だったのかもしれません。


ラディゲが久々に生身の人間の姿に戻りながら奔走するというジューザ編と似た展開を前回からの続きとして挟みつつ、ラストはトマトで綺麗に締めくくった一本でした。
内容としては可もなく不可もなしといったところですが、トマトの芯が食われるとかトマト頭とか地味にセットのお金がかかっているのが面白いです。
なので話の濃さよりもそういった小道具などを楽しんで見る回であり、評価としてはドタバタコメディとしてC(佳作)というところでしょうか。

 

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