明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)27・28話感想

 

第27話「魔界大脱出」


脚本:荒木憲一/演出:東條昭平


<あらすじ>
ある日、アコが学校帰りに霊柩車を見かけた時、バイラムに襲われた。アコは竜たちに連絡を入れるも、駆けつけた時アコはすでに死んでしまっていた。さらに凱と雷太も死んでしまい、竜はそれがラディゲの仕業であることを突き止める。どうやらラディゲは裏次元に続いて霊界までもを支配する力を手に入れ、竜も引きずり込もうとするが、泰元上人のおかげで竜は助かった。霊媒師によると、魂を抜かれた3人の肉体は1時間で限界を迎えて朽ち果てると言う。そこで、竜は危険を承知の上で死んだ3人を連れ戻す役目を引き受けた。


<感想>
ジェットマンの迷作回、来ましたね…えーっと、作り手はこの時夏枯れで頭をやられてしまっていたのでしょうか?


「想念の力で変身するんだ!ジェットマンになれると強く願うんだ!」


本作そのようなファンタジック路線ではないのですが、まさか想像でヒーローになれるとか言い出すとは思いませんでした…しかも香に至っては滝行という無駄にハードル高いことしてますし。
今回の作戦を仕掛けたのがラディゲということですが、ラディゲはジューザ編から変態思考が出ているというか、「何をどうすればそんな発想になるの?」という面白いことになっています。
裏次元支配したから今度はあの世まで支配しますって…しかもその方法がジェットマン3人の魂を抜き取って、倒されたジゲン獣を蘇生させて倒させるというややこしい発想。
それでもなんだかんだ成功してしまっていますし、何が何やらさっぱり理解できないのですが、じゃあつまらないのかというとこれが面白いことになっています。


というかゲストに石橋雅史は卑怯だろ!(笑)


話の中身としてはあってないようなもので、もうひたすらオカルトネタを楽しむだけになっているのですが、B級ホラー映画のテイストながら、なかなかいい仕上がりに。
特にジェットイカロスとガルーダをそれぞれ竜とアコ、凱と雷太が分かれて操縦するとか、グレートイカロスの時に使ったロボ乗っ取り戦法を今度は復活した敵が使うとかも面白かったです。
ラディゲのアイデアが実現したということでしょうから違和感はありませんでしたし、敵も味方も想いの力があれば何でもなる自由な世界というのは良かった。
ちなみにこの「想念の力で変身」というのはゴーカイジャー」のジェットマン回のさりげない伏線になっています。


荒木氏が描くと竜が正統派ヒーローに見えてしまうから困るのですが、この辺りはまだ80年代戦隊の重力が強いなあと。
評価はS(傑作)、デタラメなネタを押しまくった結果めちゃくちゃな面白さが生まれているという、こういう回があってもいいよねと思わせてくれます。
がっちりまとまった回もいいけど、こういうことができる自由度の高さはまさに「ジェットマン」ならではのファジーさだなあと思うのです。


第28話「元祖次元獣」


脚本:荒川稔久/演出:東條昭平


<あらすじ>
ある夜のこと、ドライヤージゲンがジェットマンに挑戦状を叩きつける。実はバイラム内に全く居場所がなく、戦闘員たちからも忘れ去られてしまった彼の一味は何と野球などあらゆる形でジェットマンを追い詰めて行く。しかし老婆が通りかかると親切心から助けてしまい、更にジェットマンを黒焦げに追い詰めて勝利できるかと思いきや芝犬にまで懐かれてしまった。竜たちはそんなドライヤージゲンを見て、根は悪くなく救いようがあるのではないかと思い、必死に改心するように訴えて行くのだが…。


<感想>
今回もまた前回に続き迷作回ですが…うーん、昔見たときはそこそこ楽しめたのですが、今見ると微妙なところです。
ドライヤージゲンはのギャグじみた強さはそれなりに面白いのですが、どうにも荒川氏のギャグ漫画補正は本作よりもむしろ不思議コメディに近い。
通りすがりの老婆を助けたり、芝犬に懐かれてしまったりと悪になりきれな不良になり、しまいにはジェットマンのメンバーにまでこんなことを言われます。


「あなた、本当はいい人じゃありませんの?」
「お前何か無理してねえか?」
「ドライヤージゲン、俺たちはただ相手を倒すために戦っているわけじゃない。だから、お前みたいな奴には立ち直ってほしいんだ」


ついにジェットマンにまで情けをかけられるという…「改心の余地があるから助けよう!」というよりは「なんか可哀想だなこいつ」っていう憐憫の目なのがまた(笑)
荒川氏お得意の野球ネタなどを仕込み、更にロボ戦は全てドライヤーの妄想で済まされてしまうという面白いことに…ただ、この妄想がまだ妄想の域で収まっててよかったんですよ。
のちの「アキバレンジャー」になるとその妄想を現実化しようとしてますし…個人的にあんまりそういう方向性は安っぽくて好きじゃないんですが、荒川氏の妄想ヒーローの原点ってここなのかも。


見所があるとすれば野球アクションと最後の竜たちの浴衣姿くらいで、特に田切長官の浴衣姿が妙に色っぽくて艶やかですね。
というか、いくら改心したとはいえ、あんな怪物が当たり前に働いてて世間の人たちはよく驚かないなあと思ってしまいます。
あと、こんな風にギャグとはいえ敵の改心を許してしまうと善悪の境界線が曖昧になってしまい、本作が守っている一線が崩れてしまうと思うんですよね。
バイラムってそんなに簡単に改心して足を洗ってしまえる組織なの?と思ってしまうし、ギャグでやるんだったらもっと捻りが欲しいというか。


その点「ゴーカイジャー」のジェラシットが駆け落ちする浦沢脚本回はブラックジョークが効いててすごく面白かった回でしたね。
あれに関してはその時にまた解説しますが、評価としては高く見積もってもD(凡作)といったところ。