明日の伝説

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Want・Can・Mustのベン図とスーパー戦隊シリーズ

スーパー戦隊シリーズの公的動機と私的動機を中心に、Twitterに再度歴代戦隊の分布図を作って投稿してみました。

 

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歴代戦隊分布図・改訂版


これで歴代戦隊の位置付けはかなりはっきりしたのですが、問題はなぜこのような位置付けになっているのか?ということです。
公的動機と私的動機の比重を明らかにしただけでは正確さに欠けますし、プロアマだけでも議論が発展していきません。
どうにかならないものかと行き詰まっていったのですが、こちらのベン図を見た瞬間にインスピレーションが突然降って来ました。
今回はその話をスーパー戦隊シリーズに絡めてお話ししていこうと思いますので、よろしくお願いいたします。


(1)Want・Can・Mustのベン図が表すもの


今回私がインスピレーションを得たヒントはWant・Can・Mustのベン図で、ビジネスの自己分析においてよく用いられるかなり普遍性のある円グラフです。
このベン図が何を表しているかというと、人間が社会で活躍する上で以下の3つの要素の掛け合わせが重要であるとされています。

 

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Want・Can・Mustのベン図

 

  • Want(自分がしたいこと、自分が思い描く「こうなりたい」という理想像)
  • Must(周囲から求められる自分、自分を客観視した時の現実)
  • Can(今の自分に可能なこと、社会人経験やスキル)


新卒の場合、Canの部分はゼロに近く、WantとMustの擦り合わせで挑もうとしますが、ここが罠なのです。
多くの就活生がミスをしてしまうのはWant(自分がなりたい自分)の部分ばかりを見過ぎていて、Must(会社から求められる自分)をきちんと把握できてないことにあります。
Canの部分に関しては未経験故に仕方ないのですが、WantとCanの部分がきちんと擦り合わせできていないとうまくいかず、多くの就活生がここで躓いてしまうのです。
ここの詰め方をどれだけ徹底して行うことができるかによって、自分がいるべき立ち位置やなりたい自分というものが見えて来ますが、それを社会人経験のない20代前半の学生がわかるわけありません。


実際に社会人として働き、入社前と入社後でさらにこの3つにギャップが生じるのですが、ここをどう擦り合わせていくかによってビジネスパーソンとしての自立が決まるのです。
この3つの円グラフが綺麗に重なったところが真に「楽しい」とか「自分のマエストロ」というべき得意分野であり、この3つの円の重なりが広がれば広がるほど一流に近づいていきます。
芸能界でもSMAPや嵐をはじめとした超一流のステージで活躍する人たちはこのベン図が綺麗にバランスよく重なっていたからこそできたのだと思うのです。
そしてこの考え方は実はビジネスだけではなく、スーパー戦隊シリーズをはじめとするあらゆるヒーロー作品に転用できるのではないでしょうか。


(2)スーパー戦隊シリーズにおけるWant・Can・Must


スーパー戦隊シリーズをはじめとしたヒーロー作品でこの自己分析のベン図を応用すると以下のようになると思われます。

 

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スーパー戦隊のWant・Must・Can

 

  • Want=私的動機(自分は今何をすべきなのか?どのように、何のために戦うのか?という利己的欲求)
  • Must=公的動機(人類は、そして社会は何をすべきか?何のために戦うのか?という俯瞰した社会上の役割・使命)
  • Can=力と技(その公的動機と私的動機を満たすために必要な力や技、具体的には戦闘力や統率力・知性など)


こうして見ていくと、歴代のスーパー戦隊シリーズがどのような歴史を辿って来たのか、どのようにヒーロー像が変遷して来たのかがわかるでしょう。
ことヒーロー作品においてはWant=私的動機とMust=公的動機は両立しうるものではなく二律背反であり、WantのためにはMustを、そしてMustのためにはWantを低くしないといけません。
この割合によって「個人の自由意志」が重視される戦隊なのか「組織の規律」が重視される戦隊なのかが決まるのであり、ここまでは多くの人が想像できることでしょう。
そしてCan=力と技の大小やWantとMustとの連動性、釣り合いに応じてプロフェッショナル系の戦隊か、アマチュア系の戦隊なのかが決まるのです。


もちろんCanが大きい作品がいいわけでもありませんし、小さい作品だから悪いわけでもなく、それは作品ごとの特徴・個性として別個に評価するものです。
しかし、あまりにもCanが小さ過ぎると話が成り立たないので、多くのアマチュア系の戦隊ではある程度のCanを持たせています。
このCanが著しく低いのは歴代最弱とファンから評価されがちな「カーレンジャー」「メガレンジャー」辺りと見ておけばいいでしょう。
あれら2作がギリギリ戦隊ヒーローとして辛うじて許されるラインであり、あれを下回ると彼らはヒーローではなくなってしまいます。
つまりCanの大小によってヒーローを超越した存在か、人間味のある存在として見せたいかが決まるのである、この3つの兼ね合いによって作品が変化しているのです。


(3)「戦士になったきっかけ」が重要視される理由


スーパー戦隊シリーズにおいては、ファンの間でもやはり「戦士になったきっかけ」が着目されることが多く、特にこのサイトの考えは慧眼でした。

 

hccweb.bai.ne.jp


1970・80年代戦隊シリーズを原体験としてお持ちの戦隊ファンのえの氏がお作りになった「戦隊史学基礎」であり、スーパー戦隊シリーズをはじめとするヒーローの公的動機と私的動機と非常に真剣に向き合っています。
このサイトに出会っていなければ私はヒーロー作品における公的動機と私的動機を考えて作品評価をすることもなかったでしょうし、今回のような記事を書くこともなかったのではないでしょうか。
しかし、この戦隊史学基礎の考え方は「基礎」としては使えても、やはり精緻さや普遍性、応用性といったところで問題がないわけではなく、本人もブログで仰っていましたが、公平な視点とは言えません。
公的動機と私的動機の割合で戦隊の立ち位置が決まるのはいいのですが、それを数字の大小によってヒーロー性重視か人間性重視かを決めるのは決してフェアな考え方ではないでしょう。


そこでもう1つ大事なってくるのがCan(力と技)であり、これが物語の導入の段階でどれほど出来上がっているかによって、プロフェッショナルかアマチュアかが決まるのです。
多くのスーパー戦隊ファンが「戦士になったきっかけ」を重要視していながらも、長年行き詰まっていたのはこの公的動機と私的動機、そしてそれを満たすための手段という3要素のバランスに発想が及ばないからでしょう。
もしくは発想したのだとしてもうまく言語化できず、歴史がどう変化してきたのかを的確に言語化できる人が極めて少なく、結果的にウルトラシリーズやライダーシリーズのワンランク下に見られてしまっています。
しかし、本当に単なるジャリ番、ウルトラシリーズやライダーシリーズのワンランク下のシリーズだったら45作も切らさずに続いてきたでしょうか?


むしろ逆であり、一番年齢層が低い児童に向けてのシリーズだからこそ、一切のごまかしや虚飾が通用せず、真剣に戦いの動機とそのための手段を設定しなければなりません。
これらがきちんと出来てこそ真の名作と言えるのであり、さらにその中で「傑作」と評されるような作品は徹底的に「戦士になったきっかけ」とそこから生じるキャラのドラマと向き合っているのです。
もちろんライダーシリーズやウルトラシリーズも真剣にこの「戦士になったきっかけ」とそこから生じるキャラのドラマに向き合っているとは思いますが、スーパー戦隊シリーズが最もその構造が見えやすいでしょう。
「戦士になったきっかけ」を立ち上がりの段階できちんと魅力的に打ち出すことができるかどうかによってその作品が名作なのか凡作なのか、はたまた駄作に終わるのかが決まるのです。


(4)歴代戦隊での実践編


ここまでは理論を述べてきましたが、それでは実際にいくつかの戦隊シリーズ作品を例に、Want・Can・Mustのベン図を数値化してみましょう。
評価基準ですが、WantとMustは合計10点満点でWantが3ならMustが7という比率になり、Canは1〜5点満点で評価し、点数が高ければ高いほどプロの戦隊です。
数字は完全に作品を見た上での印象評価であり、絶対ではないのでご了承ください。


秘密戦隊ゴレンジャー

 

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ゴレンジャーのWant・Must・Can


電撃戦隊チェンジマン

 

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チェンジマンのWant・Must・Can


鳥人戦隊ジェットマン

 

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ジェットマンのWant・Must・Can


激走戦隊カーレンジャー

 

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カーレンジャーのWant・Must・Can


星獣戦隊ギンガマン

 

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ギンガマンのWant・Must・Can


未来戦隊タイムレンジャー

 

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タイムレンジャーのWant・Must・Can


轟轟戦隊ボウケンジャー

 

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ボウケンジャーのWant・Must・Can


侍戦隊シンケンジャー

 

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シンケンジャーのWant・Must・Can


海賊戦隊ゴーカイジャー

 

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ゴーカイジャーのWant・Must・Can

 

烈車戦隊トッキュウジャー

 

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トッキュウジャーのWant・Must・Can

 

快盗戦隊ルパンレンジャー

 

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ルパンレンジャーのWant・Must・Can

 

警察戦隊パトレンジャー

 

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パトレンジャーのWant・Must・Can


このように円グラフの割合で表してみると、実はスーパー戦隊シリーズも作品ごとにMust、Want、Canの割合や比率、バランスが大きく異なることがわかります。
こんな風に3要素を使ってスーパー戦隊シリーズをはじめとするあらゆるヒーロー作品のWant、Must、Canの比率を考えてみても面白いかもしれません。