明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)33・34話感想

 

第33話「ゴキブリだ」


脚本:荒木憲一/演出:雨宮慶太


<あらすじ>
ジェットマンの攻撃も粘着ゴキブリには全く通用しない。切り札となる新兵器ビークスマッシャーも設計者の相沢博士が死亡したため未完成。心臓部のエネルギー変換器の設計図は、相沢博士の娘・美加の潜在意識に記憶されていたのだが、父への葛藤から美加はその記憶を失ってしまっていた。


<感想>
前回でジェットマンがようやくマイナスからゼロになり、ここからがようやくジェットマンとしての本当のスタートというところでしょう。
冒頭ではまずバーでの竜と凱のやり取り、すったもんだがなくなってから急速に距離が縮まりました。


凱は竜と反りが合わないながらも、人間としての弱き部分を見つめ、その上で竜のヒーロー性を素直に受け入れることができたのです。
一方で竜もまた凱の前で無理して正論を大上段から振りかざすことをやめ、等身大の青年っぽく生きられるようになりました。
今まで1人で何十キロもの重荷を背負って戦っていたのが、この戦いで少しその荷を減らすことができるようになったということでしょう。
その反面、どうにも香が置いてけぼりを食らった感じですが、香に関しては終盤に竜絡みで思わぬ大活躍を見せてくれるのでお待ちください。


さて、そんな今回の内容はテトラボーイに続きビークスマッシャー初登場回ですが、実はスーパー戦隊シリーズで銃を強化させるのはこれがが初めてです。
原点はおそらく「チェンジマン」の剣と銃、シールドが一体化したチェンジソードだと思うんですが、後半で更なる高性能の銃はこのビークスマッシャーでしょう。
今回はそのビークスマッシャーの設計図を完成させた亡き天才科学者とその娘に関する話なのですが、これがどうもスッと入りにくい。


今回に関しては「科学者としては立派でも、父親としては失格だわ」が全てであり、それを無理矢理感動話・美談にすり替えようとする作り手の悪意が見えます^^;
まあ70・80年代のヒーローものは特撮・アニメを問わずそういう話が多いのですが、流石に90年代初頭に入ってまでこんな話を繰り返しているのは厳しいところです。
こういう話を繰り返しているから東映特撮、特にスーパー戦隊シリーズが「ジャリ番」とコケにされてしまうのではないでしょうか。
そしてもっと悪質なのは元々根っこの部分にリエを失ったことから狂気を生じた竜がそんな父親をかっこいいと信じてしまっていることです。


「お父さんの仕事はあまりに大きすぎた。君だけじゃなく、もっと多くの人を助ける大切な使命があったんだ」


……もしかして竜、ここでさりげなく自己正当化してしていませんか?(笑)


竜はいわゆる「仕事のために家庭を顧みないろくでなしの父親」を「娘を本気で心配しているいい父親」だと思い込んでいるのでしょう。
この辺り井上先生と荒木氏の違いが出たところで、井上先生はそういう父親像を正当化するようなことはしません。
それに対して、荒木氏はどうにも杉村升氏や上原正三氏の思想を強く受け継いでいるのか、ごく普通に何かが狂っているような内容に。
まさに狂気の闘争を肌で知っている世代とそうでない世代の差が出たわけですが、どうにも釈然としない話になってしまいました。


で、肝心要のビークスマッシャーですが、モーションチェイサーが完全に「ロックマン3」に出てくるゲミニレーサー(笑)
壁を反射し、しかも正確に狙いを定めて勝つ自動追尾システムなので、これまでの戦いから導き出された小田切長官の殺意の高さが垣間見ます。
巨大戦もなく普通にいい話っぽく終わりですが、玩具販促回としてはどうにも雑ですし、かといって父親と娘の話が本作のテーマに関わっているとも思えません。
ビークスマッシャー自体はすごくよくできた武器で私も好きなんですが、そのための物語が非常に雑であり、思えば「ガオレンジャー」以降の00年代戦隊が見せる雑さの原型はここにありました。


前回までが非常に濃密だった反動もあるのですが、そこそこの良脚本を書いてきた荒木氏の筆が久々に悪い方向に滑ってしまい、評価はE(不作)というところです。


第34話「裏切りの竜」


脚本:荒川稔久/演出:東條昭平


<あらすじ>
竜がテトラボーイの機密データを持って脱走、グレイにマリアとの交換を持ちかけた。取引に応じたグレイの指示によりテトラボーイを盗み出した竜は、グレイに裏切られ殺されてしまう。思わぬ戦果に喜ぶバイラムの幹部たち。だが、殺された竜は偽者で、本物はバイロックに持ち込まれたテトラボーイの中に潜んでいたのだった。


<感想>


「ふん、また仲間割れか」


開始早々このセリフで思いっきり吹いてしまいました。
まあ32話までは本当に仲間割れという仲間割れを繰り返してましたもんね竜たち…で、今回竜はリエを取り戻すために仲間たちを裏切ります。
で、そこから今回バイラムの基地に転入というものなのですが…うーん、改めて見直すと荒川脚本の雑さというか技巧のなさが目立って仕方ありません。
私は基本的に荒川脚本は高く評価しておらず、精々が香村純子の上位互換というか同人作家、上原正三エピゴーネンという印象です。


こういうスパイアクションや潜入ものは時代劇を手がけてきた伊上勝や時代劇趣味の小林靖子の方が得意な印象があります。
潜入ものって意外と繊細さや技巧が要求されるので、この2人のように登場人物同士の妙やドキドキハラハラが得意でなければうまくいきません。
荒川脚本はどちらかというと戦隊のVSシリーズやそのデラックス版である「ゴーカイジャー」などの方で強く発揮されており、基本的にお祭り企画向きの人なんですよね。
逆に井上先生や小林女史は年間の積み重ねをすごく重視されるために、テレビシリーズのようなロングスパンの物語を作るのに向いています。


大きなツッコミどころとしては竜と小田切長官があんな精巧な偽物を開発できる余裕があるとは思えないこと、また5人揃わないとグレートスクラムできないのになぜかグレートイカロスで来ていることです。
前者に関してはテトラボーイ、ビークスマッシャーとかなりの技術と予算を費やしているはずなのに、どこに竜の偽物なんて作る余裕があったかわからないし、またそれに気づかないグレイが間抜けに見えます。
そして後者に関してですが、せめてジェットイカロスジェットガルーダが同時にやって来て、レッドホークが合流した段階で改めてグレートスクラムを行うという流れならわかるんです。
そのような基本の段取りを無視して、いきなりぶっ飛んだ展開に持って行ってるので、どうにも本作が積み重ねて来たものと波長が合わず、荒川脚本の雑さが悪い方向に出てしまった模様。


「敵を欺くにはまず味方からだ」「でも僕たちは竜を信じていた」と口にしなくていいことをわざわざセリフにして言わせる野暮ったさがどうにもなあと思うのです。
それから、東條監督のパワーと勢いで押す演出は今回のような緊迫した話には向いておらず、こういうのはどっちかというと長石監督の得意技というところでしょうか。
凱の「よろしく頼むぜ相棒」など32話を乗り越えて「チームワークができるようになったジェットマン」を押し出すのはいいとしても、2話連続で微妙な出来。
評価としてはやはりE(不作)、もっと練り直しが可能なエピソードです。

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村