明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ39作目『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015)15・16話感想

 

忍びの15「妖怪、ワタシ失敗しないので」


脚本:下山健人/演出:竹本昇


<あらすじ>
牙鬼家家老・晦は今度はオトモ忍をターゲットにした。誕生させたのは妖怪フタクチオンナ、「私……失敗しないので」と交渉には自信満々の様子。フタクチオンナはロデオマルに近づき契約を結んでしまう。そして暴走を始めてしまったロデオマルを止めるために、スターニンジャ―にも契約書をつきつけるのだった。助けるべく交渉に来たニンニンジャー頭脳コンビ・八雲&霞の策は……?


<感想>
やっと少しはまともな「駆け引き」を描いてくれたかと安心しました。


今回霞メイン回を改めて描いてきたことである程度立ち位置というか、どういう位置づけにしたいのかが見えました。
同時期に連載を終了していた「NARUTO」と比べるのはあちらに失礼だと思うのですが、何となく作り手は天晴をうずまきナルト、八雲をうちはサスケ、霞を奈良シカマルの女版と見立てているのかなと。
下山健人自身もジャンプを10話だけ執筆した頃がありましたし意識は多少なりあったでしょう……となると、やたらにツッコミを入れる凪は春野サクラで地味な凪は犬塚キバポジション?
まあそんな与太話はどうでもいいとして、内容は今までより少しだけまともといえばまともですが、ただ今までに溜まった負の遺産を覆すほどの出来ではありません。


天晴がオトモ忍に乗ってロデオ丸と戦うというのも何となくナルト第一部のナルトVS我愛羅の形だけを真似たパロディと言えなくもないですしね。
シノビ丸の肩に乗っかりながら戦うアカニンジャーなんて完全にナルトとガマ吉でしたし、それを特撮作品の枠で擬似的に再生させた点に関しては褒めてやらなくもありません。
それから霞に関しては、多分「戦闘力が最強」というより「頭脳と戦略がずば抜けて高い」という感じで、力だけなら天晴・八雲・キンジに負けているんですよね。
だから真っ向勝負には向かないけれども、こういう風にテクニカルな駆け引きや策を張り巡らせた戦い方は彼女に一日の長があるという感じでしょうか。


ただ、そうなると今度はどうしてもその4人に比べて目立った特徴らしい特徴のない凪と風花が問題となってくるのですが、風花はともかく凪はやばくないか?
凪は本当に今のままだと単なる薄いツッコミ要員でしかなく、ムードメーカーとしてもタカ兄とキンジがコメディリリーフ成分強すぎるせいで割を食ってる印象に。
天晴はとにかく「清々しいまでにバカ」というのだけは一貫していて、そこだけは数少ない美点として評価しています、間違っても優秀なリーダーなんかではないけれど(笑)


今まで何だかんだ「力こそパワー!」みたいなゴリ押し展開に持って行きがちなところで、きちっとひねってテクニカルな策略を盛り込んできたのは悪くなかったです。
下山脚本は基本的に信用も評価もしていませんが、たまーにこういう悪くないヒットを打ってくるところが妙に小賢しくてムカつきます(笑)
総合評価としてはC(佳作)、やっと及第点クラスになってきたとはいえ、まだまだ基本的なキャラ造形の問題などは解消されていません。


忍びの16「父ツムジはスーパー忍者!?」


脚本:毛利亘宏/演出:竹本昇


<あらすじ>
晦の次なる作戦はニンニンジャーを尾行しアジトを突き止めることだった。戦いを終え散らばる天晴たちをジュッカラゲが追う。天晴と風花は父の日のプレゼントを買いに向かうのだが……一方旋風はスーパーへ夕食の買い物に出かけた。そこに降ってくる雨、「ご自由にお使い下さい」と横にあったカサは実は……旋風が忍者となって大活躍!?


<感想>
毛利さん、残念ながら本作で描いて欲しいのはそういう物語じゃないんですよ!


今回は思わずそう叫んでしまいましたが、今回の話は1話単位で見ればそこそこにまとまった良作だと思うのですが、何せ今までが今まですぎて全く説得力のない展開になってしまっているのが残念。
そもそも本作「家族愛」なんて「いい話」でまとめられるほどストーリーもキャラクターもそんなに王道の正統派として描かれていたわけではないと思うのですが……。
ニンニンジャーのアジトを付け狙う作戦にしても旋風の活躍にしても親子の絆にしても、1クール目からすでにそれに対して否定的というか斜に構えた描かれ方をしてきました。
まずアジトを付け狙う作戦にしても、そもそも第一話冒頭で実家爆発をやってしまっている以上、今更チマチマとアジトを付け狙われる作戦にしたところでしょうもない印象しかありません。


「家族を思う気持ちが奇跡を起こしたのかもしれやせんね」


一番家族の絆を引き裂ことしているキンジがこれを言っているところが実に本作らしいのですが、こんな程度で納得できるような形になっていませんよ本作は(笑)
だって歴代戦隊には「ファイブマン」「ゴーゴーファイブ」「マジレンジャー」のように年間通して「家族の絆」に真正面から取り組んだ作品はあったのですから。
それに前作「トッキュウジャー」も本テーマではないにしても「故郷に帰る」「家族との再会」というのをテーマにして描いていたわけですしね。
でも本作はそこまで家族の絆を強調して描いてきたわけでもないですし、むしろ「ラストニンジャの称号を偉るためなら家族であっても容赦無く殺せ」が主要な価値観かと思われます。


ラストの親子3人で仲良く買い物に出掛けるシーンや親子旋風は悪くないのですが、そこに至るまでのキャラクターの積み重ねが欠落しているため全く劇的なシーンになりません。
そもそも旋風にしても「普段はダメダメだがいざという時頼れる父親」というよりは「単なるダメな父親」としてしか描かれていないので、本気を出すシーンに説得力がないんですよね。
それこそ最近ブログで扱っている「ドラえもん」ののび太くんがそうであるように、「普段はダメだけど意外な才能のある天才キャラ」はとてもさじ加減の難しいキャラです。
あの藤子先生ですらその辺は嫌味にならないようバランスを取って描いていたのに、本作のこの持って行き方だと「だったら普段から本気出せよ」と思ってしまいます。


こういう「能ある鷹は爪を隠す」みたいな「普段はダメだけどいざという時はすごい」系のキャラっていかに普段弱いことへの説得力を出すかにあるんですよね。
普段のダメダメぶりがあるからこそいざという時に出すカッコよさが映えるわけで、本作の旋風は役者の演技力としてもその領域には至っていなかったなと。
ご家老の軍師としての用意周到さなどはいいと思うのですけど、本作は「親子の情愛」なんてものでどうかなるようないい話は描かれてこなかったわけですし。
むしろ「血筋こそパワー!」「天晴万歳!」が基本理念なので、家族というものがいい意味ではなく悪い意味で用いられてしまっています。


そのため、本作が「正統派の家族系忍者戦隊」としてだったらそこそこいい評価にできたと思うのですが、初期から下山脚本が提示してきたものがそれと物凄く相性が悪いのです。
どうしても打ち消し合ってしまい、最終的には悪いところしか残らず、評価としてはE(不作)以外の評価を下すことはできません。

 

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