明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)31・32話感想

 

第31話「戦隊解散!」


脚本:渡辺麻美、八渡直樹/演出:東條昭平


<あらすじ>
ラモンとゴーグはラディゲの命令を無視してムーを惨殺、暴れ始める。ジェットマンは出撃するが、そこに香と凱の姿がなかった。凱に魅かれはじめた香はデートの最中だったのだ。一方、魔神のビームを浴びたマリアはリエの姿に戻り、竜は喜ぶが、そこにラディゲが割って入った。そして第3のロボ・テトラボーイが出撃する。


<感想>
さあ来ました、「ジェットマン」3クール目の山場の1つである魔神編…今回と次回は非常にカロリー高い内容が盛り沢山です。
遂に念願叶った凱は香と乗馬デートに勤しみ、迎撃に出た残りの竜、アコ、雷太は魔神に惨敗してしまいました。


「公私を混同するなと言っただろう。俺たちは戦士なんだ」


いつもいつも私は竜に「一番公私混同をしているのはお前だろう」と内心思っていたのですが、やっぱりここでも繰り返される同じ説教。
まあでも今回に関しては22話と違い竜が原因で起こったわけじゃないのだから、完全に凱と香が悪いわけで、流石に擁護はできません。
しかし、本作においては「どっちが正しいか」ではなくもっとそれを超えたところにあるものを示してくれています。
凱も凱でここまで溜まりに溜まった本音を竜にぶつけますが、実に22話以来となる大喧嘩でしょうか。


「戦士には人を愛することもできないのか」
「なにぃ?」
「もうてめえの説教にはうんざりだぜ!人の為に自分を犠牲にすりゃそれでいいのか?そんな人生は真っ平だぜ!俺の夢は、俺の気持ちはどうなるんだ?」
「自分を犠牲にするのが戦士の仕事だ!」


このやり取り、第2話から事あるごとに繰り返されて来た竜と凱の対立の主張ですが、ここで改めて凱の視点から「自己犠牲」についての懐疑・批判が繰り出されています。
その上で大事なポイントは竜がこの説教をしても全然凱に届かず反発を食らってしまうのは、その説教が竜の本心からもたらされたものではないと見抜いているからです。
非常にややこしい構造になっていますが、竜は決して完璧超人のリーダーであるわけではなく、完璧超人である自分という虚像を作り上げて演じているに過ぎません。
これまで竜を竜たらしめて来たヒーロー性はあくまでも「作られたもの」であって「天性のもの」でも何でもないので、付け焼き刃な印象が否めないのは事実です。


ファイブマン」までは「「人=公」のために「自分=私」を投げ打つ」ということを避けられず、暗黙の了解として存在していましたが、改めてここで本作のテーマが再浮上。
第2話でも2人は似たようなやり取りをしていましたが、ここではもう一段階踏み込むことで凱の我儘さが逆に竜の偽りの仮面をボロボロ剥がしていくことに成功するのです。
結果として凱は香の手を引いて、第3話以来二度目の脱退を行うのですが、凱はこうして見ると相当なエゴイストですよね…「自分」を貫いているという点では竜以上というか。
竜はまだ唯一の正規戦士かつ、リエの喪失をずっと引きずっているのを必死で隠しているのですが、それすら全くないのが凱なのです。


その後、竜は残った2人と出撃して魔神を迎え撃つのですが、ここで改めてマリアの変装が解けてしまい、一気に葵リエに戻ってしまいました。


「リエが……なぜリエが……」
「私……怖い」
「大丈夫だ! もう……大丈夫だ」
(戦いが終わったら……リエ、もう一度1からお前とやり直すんだ)


このシーンは改めてリエがマリアだったことが示されるのですが、ここで巨大ゴーグが一度乱入すると、感動の再会も束の間、レッドがガルーダを、そしてブルーとイエローがガルーダで救援に。
しかし肝心要のやらかし枠であるブラックとホワイトがいないせいでグレートイカロスへの合体ができず本領発揮も不可能なのですが、その時密かに開発されていあ3号ロボ・テトラボーイがやって来ました。
このテトラボーイは「ジェットマン」のロボの中でも特に大人気であり、この自律型のスピーディーなロボは後のタックルボーイやライナーボーイなどに受け継がれていきます。
フットワークも軽く、しかも巨大バズーカへと変形でき、今回は何とかそれで凌ぎましたが、何がすごいと言って今回は久々に凱と香が完全なトラブルメーカーで終わるという。


ぶっちゃけた話、今回のテトラボーイ参戦に関してはかなり唐突な印象が否めないのですが、今回のゴーグは完全なテトラボーイの踏み台扱いとなりました。
もう少し丁寧に伏線を張って欲しかったのはありますが、今回に関しては以前から「もしかしたらまた脱退しないとも限らない」と思ったのではないでしょうか。
特に凱に関してはその色の名前通り小田切長官の中では「信用できないやつ」のブラックリスト入りをしていたことと思われます。
グレートスクラムもバードニックウェーブも5人揃わないと全開しないので、5人が揃わない時のために認めていたということでしょう。


その後ゴーグを倒してリエのものとに戻るのですが、ここでラディゲがリエに光線を浴びせて再びマリアに戻し、マリアは竜を足蹴にするという…何このSMプレイ?
いや井上先生、子どもたちに何新たな性癖の扉を開かせようとしてるんですかと言いたいところですが、ここで遂に竜が公私混同してしまいます。
さらに言うならここで一度マリアがリエに戻り、その上で主人公に期待を抱かせてすかさずマリアに戻す展開は「仮面ライダーBLACK」の終盤でブラックとシャドームーンがやったあの展開のオマージュでしょうか。
それを本作ではこの中盤に持ってくるあたり、さらにそこから先を行こうという作り手の野心が伺え、ここからどうなってくるのかが楽しみです。
評価はS(傑作)、かなりの急展開ではありますが、その分ドラマを違和感なくしっかり詰め込んでおり、瞬間最大風速はやはり井上先生ならではだなと思います。


第32話「翼よ!再び」


脚本:井上敏樹/演出:蓑輪雅夫


<あらすじ>
リエがマリアと知り、放心状態の竜。一方、凱と香は戦いをよそに二人だけの時間を過ごしていた。冷たい言葉とは裏腹に竜のことを心配している自分に気付く凱、そしてリエを取り戻すのは自分しかいないと気付き立ち直る竜。再び5人は集結し、荒れ狂う魔神ラモンを葬り去る。握手を交わす竜と凱。5人の心が一つになった。


<感想>
さあ来ました、これまでメンバーに対して散々マウントを取っていた竜の狂気が完全に暴かれた瞬間です。


「長官、喜んで下さい。リエが生きてたんです。今、呼んできますから」
「何を言っているの!?彼女はまだマリアなのよ!バイラムの幹部!
「……違う。リエは元に戻ったんだああああ!!」


ここで急な「井上ワープ」が発動しているのですが、これは明らかに竜を救出するプロセスを描く尺がなかったのでカットしたのだと思われます。
その上で長官、アコ、雷太の3人が助け出したということでしょうが、そんなことよりもここで遂に竜が第1話以来久々に発狂した姿を見せるのです。
で、前回殺されたかと思った魔神ゴーグは再び生き返るも、それと引き換えにラディゲの召喚獣という扱いにされてしまいました。
ラディゲ、ここに来てとうとう召喚士属性まで習得したようで、ここからどんどんラディゲが本格的に対応していくことになります。


肝心要の竜はまさか自分の愛していた人が今度は殺し合う関係になっていたとは露知らず、これまでも伏線はありましたが、いよいよそれが発覚し精神の平衡が決壊。
遂にリエとイチャイチャしていた頃の自分に幼児退行してしまい、自分の殻に閉じこもってしまうことになるのです。
ここで注意すべきポイントは竜はこの段階で突然に発狂したように見えますが、その前段階として物語導入の段階でリエを失ったことですでに精神は狂っています
そこから騙し騙し「地球を守る正義の味方」である自分を作り上げることで必死にそれをごまかしていたのですが、ここで遂にその竜の欠陥が露呈してしまったのです。


まあ竜のキャラクターは「マスクマン」のレッドマスク/タケルのキャラクターを更に俗っぽくした存在だと言えますが、言うなれば竜の我慢はここまででダムのように限界に達してしまったのです。
それが突然決壊してしまい、遂に竜は壊れたダムから流れ出す水のように、雷太やアコですらも見ていられないくらいの無様な醜態を晒すことになります。
そんな竜の姿を嫌いにならないで済むのはそのリエを失って狂気に走る気持ちが克明に描かれているからであり、そんな欠点さえも魅力に映るようにできているのです。
雷太とアコはデートに出ていた凱と香に事の顛末を報告すると、凱はいつもの憎まれ口を叩きますが、ここが面白い流れ。


「はっ、竜の奴に言っとけ。公私を混同するなってな、あいつが普段から言ってる台詞だ」
「そうなんだよ。いつも偉そうなこと言ってる割には、てんで情けないんだ。!!が、凱……」
「竜の悪口を言うんじゃねえ。いいか。世界中で奴を、竜をけなしていいのは俺だけだ!」


この辺り、後半で明らかとなりますが、凱がようやく竜のことを真正面切って認めた瞬間であると言えます。
凱が竜を嫌っていたのは元々根っこの反りが合わなかったのはありますが、それ以上に竜への憧れがあったからではないでしょうか。
かといって長官はとにかく「自分に打ち勝て」としか言えず、誰も竜のことを救ってあげられません。
そして凱と香が公園のブランコで壊れた竜を見ると、竜は完全に上の空の状態で2人に言い放ちます。


「竜……」
「凱、香。紹介するよ。俺の恋人、リエだ」
「竜、どうしちゃったのよ竜!?」
「なんだよ2人とも。挨拶ぐらいしてやってくれよ。なあ」
「てめええ!お前は戦士だ!根っからの戦士の筈だ!こんなお前なんか、見たかねえぜ!」
「嫌だああ!俺はここに居るんだ!リエと一緒に、ここに居るんだあ!」
「竜ぅぅ!!」
「この野郎がぁ!好きにしろ。だが俺は待ってる、俺たちはお前を待ってるぞ!」


非常に短い3人のやり取りですが、ここでのやり取りにこれまで積み重ねて来た物語の1つの集約があるともいえ、特に竜と凱の距離感が一気に縮まった瞬間だと言えます。
ここで改めて凱が口にしてくれていますが、なんというか単純な「男の友情」なんて言葉では片付けられない2人の関係性が詰まっているのです。
上でも述べたように天堂竜は戦士としてとても強い人で、しかし人間としては同時にとても脆い人であもあり、これまで竜はそれを仲間に見せないようにして来ました。
いつもマウントを取って完璧超人のふりをし続けて来た彼ですが、そんな竜が弱い部分を見せられる相手はきっと今の所リエの前だけだと思うのです。


凱はそんな竜に歪さや反感を抱きながらも、同時にそれは竜が自分にはない強さを持っているから文句も言うし罵倒するのです。
「てめええ!お前は戦士だ!根っからの戦士の筈だ!こんなお前なんか、見たかねえぜ!」に凱の竜に対する本音が全て詰まっています。
竜の公私混同ぶりに嫌気がさしつつも、自分と違い「光」の側として、言うなれば「ヒーロー性」としての象徴である竜を気がつけば信頼していたんじゃないかと。
だからこそ凱は竜の弱っているところなんて見たくないし、同時に竜を前にした時の凱もかっこ悪さや情けないところは見せたくないものです。


そんな竜と凱の関係は言うなれば「ゴレンジャー」の海城剛と新命明の関係性と同じように「背中合わせ」の関係というか、お互いに対等なライバル兼相棒で居たいのでしょう。
凱がこれまでなんだかんだ言いながらも竜についていったのは人間的にものすごくだらしなくてカッコ悪い部分がある竜でも、凱にとってはやはり自分にない強さを持った人なのです。
そして竜が虚勢を張って「公私混同をするな」と言い続けて来たのも、凱にとっては「戦士たるもの強くあれ!」という戒めの言葉であるようにも聞こえています。
だからこそ竜と凱の関係ってすごく渋いというかストイックというか、お互いに「強い自分」という対等な関係性で居たいのが本音ではないでしょうか。


逆に凱、そしてこれは終盤の竜もそうなんですが、香という女性はそんな竜と凱にとって「弱さ」「脆さ」を見せられる数少ない相手じゃないかと思うのです。
その証拠に凱は18話で自分の死が迫った時に「死にたくねえ!」と甘えていますが、香は元々自分が戦士として強くなかったからこそ、凱の弱さを見ても幻滅しません。
そしてそんな香が今度は竜の弱さを見て「どうしたのよ竜!」って言いながらも突き放さないのはそんな竜の弱さ、脆さにすくなからず共感した部分があるからじゃないかと。
竜と香に関しては改めて終盤の展開で解説しますが、ここに竜、凱、そして香の複雑な三角関係が立体的に見え、物語として1つのクライマックしに到達しました。


そんな竜はマリアが再び襲って来たことで元に戻るのですが、ここで改めて限界を突破したことでついにドMに覚醒…(リエ、もっと打て。俺の弱い心を打ち砕いてくれ)なんていうようになるのです。
まあ元々竜ってリエ相手には受身っぽいとこありましたが、結構女性からの押しに弱い点も含めてSMで言ったらやっぱりMだなあと…ちなみに凱は完全なS、そして香は隠れS、田切長官はぶっちぎりのドSです。
竜が新たな性癖の扉を開いた結果何をしたかと思えば、ついにマリアを「リエ」として抱きしめます。


「リエ、俺が必ず元に戻してやる。だが今はやらなければならないことがある、ジェットマンのリーダーとして」


ここで1つ、これまで「地球の平和を守る」という公的動機をずっと掲げて来た竜の中に「リエを取り戻す」という強烈な私的動機が芽生え、迷走気味で今ひとつ煮え切らなかった竜の方向性がついに決まりました。
というより、本当はその公的動機すらリエの喪失がなければ芽生えなかったものなので、は竜こそが一番「地球の平和を守る」から遠いところに居た人間だったのかもしれません。
複雑な人間関係を通して、井上先生の視点から「狂気の闘争」の本質を炙り出しにしていき、これ以上ないまでに自己犠牲の戦い方のおかしさを浮き彫りにすることに成功しました。
そんな竜がようやく公的動機と私的動機の整理ができたのか、さっきまで散々情けなさを見せていたくせに、まるで迷いが吹っ切れたように一気に立ち直り、この瞬間に一気にかっこいい男になります。


井上脚本のズルいなあと思うところって、普段マイナス100点とかやるのに、ある瞬間に急にふと200点を叩き出す瞬間最大風速があるところなんですよね。
ちなみに小林靖子脚本はコンスタントに80〜90点代を叩き出すのが上手い人であり、だからアベレージでいえば小林女史の方が高くあります。
そして第3話以来となる5人揃っての名乗り!


「行くぞ!」
「「「「おう! クロス・チェンジャー!」」」」
「レッドホーク!」
ブラックコンドル!」
「イエローオウル!」
「ホワイトスワン!」
「ブルースワロー!」
鳥人戦隊!」
「「「「「ジェットマン!」」」」」


第3話は「5人揃った証」として、そしてここでは「5人が真のチームとしての土台を形成した証」として、象徴的に全員揃っての名乗りを物語の集約としてうまく用いているのです。
ここからまるで今までの空中分解ぶりが嘘のようにカッコ良くなり、有無を言わさぬ連携攻撃で魔神を仕留め、更に巨大戦でもこれまでにないハイパーGアタックで倒しました。
そして竜から思わぬ反撃を受けたマリアは業を煮やします。


「お前に受けた屈辱、忘れんぞレッドホーク。この次会った時こそ、貴様をこの手で!」


そして竜はリエの墓を訪れ、ようやく竜の根っこにあるものを全員が共有したことで、わだかまりがなくなりました。


「リエ、お前の墓はこのままにしておく。お前が元に戻るまでは」
「これから始まるのかもしれねえな。俺たち5人、ジェットマンとしての本当の日々が」
「凱…」


ここから竜と凱の握手、その上に重ねられる3人の手と5人の団結がカッコ良く決まりました。
これまでどこか「同僚」「ビジネスパートナー」のような関係性だったジェットマンですが、ここからようやく「真のチーム」としての絆を育むに至ります。
とはいえ、竜の試練がまだ終わりを告げたわけではなく、今度はもっと辛い試練が待ち構えているのですが、ひとまずこれまで。
竜と凱が紆余曲折の末に友情というか絆を形成するに至り、5人が真のチームになるための土台がここでようやく整ったのです。
評価は文句なしのS(傑作)、これまでの紆余曲折を踏まえた上で物語の集約として最高の前後編であったと思います。

 

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