明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ23作目『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999)9・10話感想

 

第9話「盗まれた能力(ちから)」


脚本:宮下隼一/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
マツリは救命士の先輩・ミズキの見舞いに訪れるのだが、彼女は足の怪我のリハビリを始める勇気がなく腐っていた。そんな彼女をマツリはなんとか励まそうとするのだが、ゴーゴーファイブの任命とともに救急救命士の仕事を辞めたことを責められ、言葉に詰まってしまった。一方その頃、街では吸力サイマ獣バンパイラが人々や乗り物などから能力を奪い取っており、そこに駆けつけたマツリがゴーピンクとしての能力を結晶として奪い取られてしまう。マツリの正体がゴーピンクだと知ったミズキは戦闘に割って入り、ゴーピンクの能力を取り戻そうとするが、ゴーピンクの力は誤ってミズキに宿ってしまうが…。


<感想>
さあ、今回はマツリメイン回ですが、4話に続いて宮下隼一氏が担当していますね。8話でゴーゴーファイブというチームの基盤が出来上がってきたからか、この辺りからゴーゴーファイブも滑りが良くなります。
マツリの「私」の部分である救急救命士時代の先輩との話ですが、いわゆる「変身不能」になってしまう回であり、面白いのが「変身ブレスをなくした」でも「変身ブレスを破壊された」でもなく「変身能力を奪われた」というところです。
能力剥奪系の敵はたまに出てきますが、味方側をピンチに陥らせるための演出とはいえよくやったなあと思いますし、もう1つは改めて「マツリ以外の者がゴーゴーファイブをやったらどうか?」という疑問に答えています。
実際今回はミズキ先輩の活躍が盛り込まれていてカッコよかったのですが、やっぱり「コレジャナイ感」があって、ゴーゴーファイブは巽兄妹5人が揃ってこそのゴーゴーファイブだと示されているのです。


ポイントとしては救急救命士としての腕前・力量はミズキの方が高いことであり、だからゴーピンクとしての力量だけでいえば、もしかしたらマツリよりもミズキ先輩の方が上なのかもしれません。
それでもなぜマツリがゴーピンクなのかというと、「目を逸らすな、諦めるな」という言葉を胸に頑張ってきたからであり、今度はマツリがそれを改めて先輩に思い出せる番だったということでしょう。
マツリの献身的な姿勢と先輩のかっこよさを引き立たせる構成になっているのですが、ただこの回最初見た時はすごくいいとは思ったものの、やっぱり疑問が2点ほどあります。


1つが着想できないはずのミズキがゴーピンクの能力をたまたま得てしまっただけであんなに活躍してしまうことであり、あそこの部分は正直リアリティの観点から無理がありすぎました。
こういう風にゴーゴーファイブ以外の連中が活躍するのは構わないのですが、救急救命士としての腕前とゴーピンクとして戦えるかどうかはまた別問題となるので、その辺は気をつけて欲しかったです。
80年代の脚本であればこのレベルでも許されたかもしれませんが、一般人とヒーローの関係についてしっかり補強した前作の流れから踏まえて見ると、流石にここでの描写はやりすぎだった気がします。
活躍するなとは言いませんが、もう少し「ゴーゴーファイブではないから敵を前にすると倒されてしまう」といったあたりの描写の補強は欲しかったところです。


2つ目にゴーピンクの能力が結晶化したとのことですが、それだったらそれで新しいゴーピンク用のゴーゴーブレスを再開発すればいいだけじゃないでしょうか。
この辺り「ゴーグルファイブ」はその辺に上手い回答を用意していて、変身ブレスが2回ほど破壊されて変身できなくなったことがあるんですが、再開発することで乗り越えました。
いわゆるギンガブレスやオーラチェンジャーのように1個しかない特注品であるならまだしも、ゴーゴーブレスは特にそのような設定はなかったはずです。
モンド博士が全部を個人資産だけで作ったわけではないでしょうし、技術開発元に依頼して予備品を作っておけば簡単に解決した話だと思います。


まあ女の友情のドラマは月並みといえどよく描けていたと思いますので、これで描写のリアリティさえしっかりしていれば満点だったんですけどね。
悪くはないものの、諸手あげて傑作とは褒めにくく、評価としてはやや厳し目にB(良作)というところではないでしょうか。


第10話「誇りのイエロー」


脚本:山口亮太/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
ダイモンは救助活動における貢献度が少ないせいで、マトイはおろかショウ辺りにまでいじられてしまい、フラストレーションが溜まっていた。そんな中、ダイモンは世界一のエースストライカーになりたい里中大悟というサッカー少年と出会う。ダイモンのサッカーの腕を見込んだ大悟は自分を弟分にして欲しいと頼む。そんな中、黒煙サイマ獣チャンバーノが出現し、ゴーゴーファイブが救援に駆けつけるのだが、ダイモンはなんとしても自分が倒すのだとマトイの命令を無視して行動し、その結果排気ガス爆弾を爆発させてしまい大悟を危険に晒してしまった。ダイモンはそのことを厳しく責め立てられ、マトイに反発して家を出てしまう。


<感想>
今回の話は満を持してやって来たダイモンメイン回ですが、手がけるのは「Gガンダム」「メダロット」などで有名な山口亮太氏。
東映アニメだと「ドキドキ!プリキュア」のシリーズ構成などもやっておられて、いわゆる少年漫画・アニメなどの燃える脚本を得意としている方です。
戦隊シリーズでは本作と次作「タイムレンジャー」しか担当していないのですが、本作は作風がややライトということもあって、マッチしているようですね。


話のテーマはいわゆる「適材適所」なのですが、これまでどこかみそっかすな感じというか、役立たずな印象が強かったダイモンのキャラをしっかり立てて来ました。
他の4人がそれぞれ消防局特殊レスキュー部隊隊長、化学消防班員兼研究スタッフ、航空隊パイロット、救急救命士と人の命に関わる仕事の多い中でダイモンだけが警察官。
しかも幹部ではなくちょっと出来損ないな感じのお巡りさんなので、どうしてもマトイたち他の兄妹に比べると足手まといというか陰が薄い感じは否めません。
ここまで活躍らしい活躍を見せていなかったのですが、今回から出番がしっかりと与えられるようになり、その意味でも良かったなと。


今回登場するのはサッカー少年の大悟くんですが、演じているのは「金八先生」の第7シリーズで学級委員のシマケンを演じていた人で、子役時代からやっていたんですねこの人。
そんな彼が「エースストライカーになりたい」とのことですが、これって若い頃は誰でもがあるような錯覚ですし、私にもあったことなので気持ちはわかります。
だけど、世の中にはリーダーが向く人と向かない人、逆にアシストが向く人と向かない人がいて、ことゴーゴーファイブにおいてはその点が特に強いのではないでしょうか。
特に印象的だったのはモンド博士との会話で、けんちん汁の具材に例えながらの教え方がうまく、この辺りからモンド博士も徐々に指導者としての役割を見せています。


ゴーゴーファイブは兄妹5人の持ち味がうまーくブレンドされて成り立っとる、ちょうどこのけんちん汁のようにな。こんにゃくには鶏肉の役割は務まらならないし、逆もまた然り。それぞれの役割をきちんと果たしてるんだ」
「それぞれの役割……」
「お前には、お前にしかできないことがある。別のものになる必要はないんじゃないか?」


とても当たり前のことですが、王には王の、側近には側近の役割というものがあり、それぞれに適したところに配置されているというわけです。
逆にいえば、今回ダイモンは個人的判断によって動こうとして失敗したわけですが、それは己の本質を見失いマトイになろうとしたからでした。
確かにゴーゴーファイブのエースストライカーはリーダーであるマトイなのですが、そのマトイでもやはり弟たちの支えがなければ役割は果たせないのです。
8話の感想で「組織の歯車になる」とやや悪い書き方をしましたが、ここでダイモンにしかできない「サポート」という役目を描いたのは良かったところ。


戦闘力とリーダーシップではマトイ、知性とテクニックではナガレ、コミュニケーション力や柔軟さではショウ、そして献身さやヒロイン性はマツリ。
それぞれに突き抜けた長所がある巽兄弟の中で、ややもすればダイモンの存在は埋もれてしまいがちですが、だからこそここで軌道修正を図ったのはいいことです。
前作「ギンガマン」がそれぞれ単独でも敵を倒すことができる個人事業主の集まりだったため、そのあたりの差別化もあるのでしょうが、「ゴーゴーファイブとは何か?」をダイモンの視点から補強しました。
その上で、後半では大悟少年をしっかり守り抜いて、カッコ悪くても兄たちの到着まで無理をせずに守り続けることというのは3話でやらかしてしまった過失への雪辱戦にもなっています。
そして改めて敵が繰り出して来たボールを受け止め、逆にマトイ兄さんが決めてみせるとというのはいわゆるゴレンジャーハリケーンのエンドボールのオマージュでしょうか。


「よっしゃあ!ナイスアシストだぜダイモン!どんなに凄いエースストライカーでも、シュートは1人じゃ決められない!」
「勝利の陰に名アシストありってね!」


元々原点の「ゴレンジャー」自体がラグビーやサッカーのようなチームスポーツをモデルに入れており、「スクラム=団結」を1つのポイントにしていました。
その辺もしっかり本歌取りとして拾いつつ、チームワークの意味を拾い直しており、下手ながらきちんとドラマとして組み立て直しているのが見事です。
どうしても70・80年代戦隊だとこの辺は「出来て当たり前」で済ませてしまいがちなので、いわゆる「お約束」ではなくドラマとして向き合って描いています。
その後の巨大戦もしっかりまとまっており、ラストは大悟少年がエースストライカーではなく名アシストとして頑張ることでチームに打ち解けられたのでした。


一話完結としては月並みでありながら、その中でしっかりダイモンの長所と短所、そして少年のドラマともリンクさせて「ともに成長していく」という構図が見事です。
ダイモンもダイモンで大悟少年に教えられることがあり、そして大悟少年もダイモンやゴーゴーファイブからチームヒーローの本質とは何か?を教わる。
やや爽やかな少年漫画風の一本でしたが、非常に気持ち良く最後まで見ることができ、評価はA(名作)でしょうか。

 

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