明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ23作目『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999)15・16話感想

 

第15話「童鬼ドロップ出撃」


脚本:山口亮太/演出:諸田敏


<あらすじ>
竜神岳付近で奇妙な振動をキャッチし、ショウは調査に向かった。すると、インプスに襲われている三人の女の子を発見。ショウはグリーンホバーで救出しようとするが、サイマ獣の超音波攻撃に撃ち落とされてしまう。気絶していたショウが目を覚ますと、そこには三人の女の子が。ショウは彼女たちを山から逃そうとするが……。


<感想>
今回は6話以来となるショウメイン回ですが、うーむ、面白い面白くない以前に今回出てきた女3人組が超絶ウザすぎて、終始不愉快で胸糞悪くなりました。
もう今回に関していえば、ショウが3人に言ってみせたことが全てだと思います。


「大丈夫!?」
「大丈夫じゃねえ!俺一人の力じゃレスキューは成立しない。助かろうとする意志がなければ助かるものも助からないんだ」


この一言が全てで、何が良いと言って救出「する側」だけではなく救出「される側」の意思まできちんと組み込んだ話にしていることです。
そう、どんなにゴーゴーファイブや救出する人たちが最善を尽くしたところで、助かる側に自分で自分を助けようとする意思がなければ成立しません。
助ける側と助けられる側、双方の「生きたい」という意思があることで初めてレスキューが成立するというのを盛り込んできたのはいいところです。
ただ、そこはすごく良かっただけに、その3人組が「ムカつくけどいいところもある」のではなく「ただただウザいだけ」に終わってしまったことが残念でなりません。


しかも今回は地味にドロップが出撃しているのですが、そのドロップを「可愛い」と言ってしまえる辺りこの3人娘はどう考えても感性が奇特な方達としか思えないです。
そのドロップが今回せっかく出撃したのに、ショウたちのつまらない小競り合いに巻き込まれてしまったのが何だか気の毒でした。
そして、影に隠れがちですが今回の陰のMVPはナガレで、いつの間にかさらっと壊れたグリーンホバーを修理しており、前回に引き続き細かいメカニックを請け負うようになります。
今回の3人はぶっちゃけ最後まで好感を持てる要素が全くないのですが、この人たちは犯罪こそやっていないけど、人間的に性根が腐っていて救いようがない連中ということでしょうか。


ただ、そんなテーマを描くなら描くでもっと用意周到なキャラ設定を用意して欲しいなあと思うところで、ヒーローに難癖をつける民衆ってやり過ぎると民衆がバカっぽく見えるんですよね。
今回はモロにそれが出てしまったという形なので、是非ともきちんと軌道修正して考え直していただきたいと思うと同時に、自分はこの3人娘のようにならないようにしなきゃと思うのでした。
総合評価としてはC(佳作)というところでしょうかね、これがショウじゃなくマトイだったら確実にブチ切れて大喧嘩に発展していたかもしれません。


第16話「泥棒とサイマの卵」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
最強のサイマ獣、デモスの卵を盗んだレージ。彼はダイモンが警察官時代から捕まえようとしていた窃盗犯だった。卵を盗まれたピエールは、新たに生み出したサイマ獣でレージを狙う。だが、卵でひと儲けしようと企むレージは、サイマに身代金1億円を要求。レージの身を心配するダイモンたちは、取引現場を押さえようとする。


<感想>
今回はレージ登場回ですが、この人物は次作「タイムレンジャー」にも全く同じ犯罪者の設定で出てきます、役者も同じ人です。
そんな今回の話は「犯罪者」についてであり、ようやくダイモンの「警察官」としてのバックボーンが描かれていますが、サイマに一億円の身代金を要求するとは何て命知らずな若者か…。
うん、こういう三下系って大体最後に粛清されて終わりなんですが、本作のダイモンではそこまでできなかったのか、結局見逃したまま終わってしまったのは残念でした。


ただ、結構本質を突いたことを言ってもいて、さすがはレスキューポリスシリーズを見て東映特撮の脚本家に応募された小林女史だけあって、割と深いことは言っています。
今回のテーマはわかりやすくダイモンが次のセリフで言ってくれました。


「犯人を逃したら、その犯人はまた罪を重ねる。警察官は逮捕することで犯罪者を救うんだ。救急戦隊なんて言ってるのにお前を救えないまま警官辞めたことがずっと気になってたんだ」


ここはすごく良いところで、この小林女史が逮捕=犯罪者の救済という考え方が翌年の「タイムレンジャー」の圧縮冷凍という神がかったガジェットに繋がっているのだなと思います。
ただ、ここで難しいのは止むに止まれず罪を犯した場合は別として、そもそも逮捕することで救済されるような人は犯罪なんてしないだろうという考えがあるのです。
それに、最近ではむしろ捕まって刑務所での良い食事を味わいたいがためにわざと悪いことして捕まるという人もいるようですしね。
ダイモンのこのセリフはまだ新米の出来損ないのお巡りさんだからこそ出てくる綺麗事ではあり、まだ犯罪者の現実というものを知らないのだろうと思います。


私は正直「ゴーゴーファイブ」に深いドラマなんてあんまり期待していなかったのですが、ちょくちょくこうやってレスキューや犯罪に関する本質を突いたようなことをいうのは良いところです。
グランドライナー登場の前後編で登山バスに乗っていた銀行強盗の犯人が改心して逮捕というドラマはいらないと言いましたが、もしそれが今回の伏線として貼ったのであれば話は違います。
確かにあの話では強盗犯が最後に逮捕されることで魂を救済されたということで、ゴーゴーファイブ人の「命」だけではなく「心」もまた救おうとしていることがあの話と今回の話で伺えました。
ただし、それには1つ条件があって、前回の感想ですが犯人側に「自分で自分を救おう」という気がなければ救済はされないので、その点でもまた大事なことだと思うのです。


結果的に今回のレージは改心こそしなかったものの、それもまたリアルなところで、しかも「バカか!俺独りどうなったって、地球は変わんねぇんだよ!!」というセリフもまた本質を突いています。
そう、確かに「地球全体の運命」という俯瞰の視点で見ればレージごときどうでもいいのですが、そこを「どうでも良い」で済ませないミクロな視点の存在にも寄り添えるのがゴーゴーファイブのいいところです。
その点ではアプローチはギンガマンとは逆というか、ギンガマン「私」というか「個」から「全」へと広げて行くのに対して、ゴーゴーファイブ「全」から「個」へと降りて行く形になっています。
マクロの視点とミクロの視点、双方が大事なのですが、その点をきちんと押さえた上でミクロな人の命も、そしてマクロな地球の平和も双方を守るゴーゴーファイブのスタンスを補強しました。


また、卵を一億円で売りつけようとするというのも考えとしては浅いのですが、レージの犯罪者としてのリアルさみたいなのも肯定も否定もせずにそのまま現実として描かれているのも面白いです。
1エピソードとしては少し不満というか物足りない面はありましたが、改めてダイモンの警察官としてのバックボーンを掘り下げつつ、外の世界でダイモンと関わる人を増やせたのはいいことではないでしょうか。
評価としてはA(名作)、ダイモンメイン回は今の所ハズレがなく、今後もこの調子で順調な進行を期待したいものです。

 

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