明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ23作目『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(1999)7・8話感想

 

第7話「美しき災魔のワナ」


脚本:武上純希/演出:小中肇


<あらすじ>
コボルダはロビンソン博士が持つ世界の活断層が記録されたディスクを狙い、掘削サイマ獣モルグールを送り込もうとする。しかし、ディーナスは有効な別の作戦があると言う。その後、来日したロビンソン博士を地震研究センターの井上清美に変装したディーナスが迎えるのだが、マトイたちは博士の護衛に駆けつける。ナガレとマツリが代表して博士の護衛を果たすことになり、モンドのもとに帰るマトイに博士は自分とモンドの若かりし頃の写真を届けるように依頼する。博士を乗せた車が進む中、近くで化学薬品を積んだトラックが崖崩れに巻き込まれたという一歩を受け、ショウとダイモンが対応に向かうが、果たしてどうなるのであろうか?


<感想>
コボルダとディーナスが前線に打って出るお話ですが、この辺りから徐々にゴーゴーファイブと周囲の公共機関との関わりが描かれるようになります。
今回と次回はモンド博士の知人・友人が関係するお話ですが、海外の天才科学者とも繋がりを持っているあたり、モンド博士は典型的な「天才」なのです。
話の内容自体は良くも悪くもありがちなもので、特筆すべきポイントはというと、精々がマトイ兄さんの大げさな芝居ですかね。
面白かったのがなぜか人質にされることでマツリではなくナガレのヒロイン力が上がってしまったということなんですが(笑)


それにしても谷口賢志氏はこの段階だと本当に演技下手で、かの小林女史をして「演技下手すぎて殺してやろうかと思った」とか言うほどでしたから、よっぽど下手だったんでしょう。
しかものちに「仮面ライダーアマゾンズ」でリアル化け物の怪演を見せてくれることになりますから、別にナガレのヒロイン力が上がってもなあという。
アタッカーポンドを使って助けるというのは秀逸で面白い発想でしたが、ナガレって意外にも女の色気に弱いタイプだったりすることが発覚。
この人、多分将来的に女に騙されて酷い目に遭いそうですが、まさかその世界を実現したのが「仮面ライダーアマゾンズ」の仁だったのかな?


まあそのくらいなんですけど、今回に関しては完全にコボルダが余計なことをしたせいで失敗した気がします…ディーナスに任せていれば上手く行ったのに(笑)
ディーナスはなかなかの美人さんではあるのですが、もう少し女の色気という点ではグラマラスさやセクシーさが欲しいなと。
あんまり前作と比較は良くないと思うのですが、やっぱり水谷ケイのあの毒々しい色気には敵わんのですよ。
内容としては可もなく不可もなしといった感じで、評価はD(凡作)ですかね…やっぱりまだナガレの良さが引き出せていないと思います。


第8話「救急戦隊活動停止」


脚本:小林靖子/演出:小中肇


<あらすじ>
首都消防局の総監・乾謙二はゴーゴーファイブの正体が気がかりであった。マトイ達巽兄妹から10年ぶりに父が帰ってきたのと同時に退職させられた事実を知った乾はモンドに会うために巽家へ向かう。一方災魔一族ではドロップが地球を混乱に陥れないとグランドクロスが完成してもグランディーヌに会えないと言い、ジルフィーザが雷針サイマ獣ライマを生み出して地球に送り込んだ。父と乾総監の関係を知らないマトイが何があったのかを聞くと、乾家と巽家は江戸時代から火消しの家系でライバル同士であることが語られる。乾は10年もの間モンドが失踪していた理由について改めて問い質すが…。


<感想>
さあ来ました、ゴーゴーファイブ1クール目の傑作回、描くのは6話に続く小林女史。
今回は乾総監とモンド博士を中心にしたゴーゴーファイブのチームアップ回ですが、改めてどういう指揮系統でゴーゴーファイブが動いているかが見えると思います。
まず乾総監のキャラクターですが、モンド博士が「天才」なのに対して、乾総監は「秀才」なのではないでしょうか、発言などから察するに。
次々と実用的なものを生み出すが、反面人間性には問題がありまくりなモンド博士に対して机上の空論に終始しがちだが真面目な乾総監。


そんな2人に振り回される巽ブラザーズというのが今回の話ですが、特にドラマとしての見所は5人が戦闘中にどちらの言うことを聞くべきかというところ。
ゴーレッドが「指示は1つに!」と言うのですが、正にこれは「船頭多くして船山に登る」であって、指示系統が全く異なると組織としての歯車が途端に狂ってしまいます。
しかもその後、公共機関に無許可でゴーゴーファイブを作ったという理由で活動停止を食らってしまうという展開になってしまうのです。
私がゴーゴーファイブは公的動機の方が強いと思う理由は正にここであり、巽ブラザーズはあくまでも「組織の歯車」でしかないことが示されています。


こんなことを言っては何ですが、そもそもマトイたちがゴーゴーファイブになる前にやっていた仕事自体が国家公務員な訳であり、国家公務員って基本的に公的動機で動くんですよ。
6話でショウはパイロットになることを夢見て苦手な勉強を必死にやったとのことで、5人それぞれが自分の意思で就職したかのように描かれていますが、それも今回で示されているようにあくまで巽家の血筋です。
つまり根っこに「家系の血筋」がありきで、その延長線上に国家公務員として人の命を救う仕事に携わっているということは、悪く言えば自ら国家の犬になるということでもあります。
だからそこに至る経緯がどうあれ、一度国家公務員となり、そしてゴーゴーファイブとしてチームを組んだ以上はそこに個人の意思が介在する余地はなく、チーム単位で動くを要求されるのです。
ゴーゴーファイブが活動停止になってしまい路頭に迷うことになるマトイ兄さんたちですが、そんな中で改めて乾総監に直談判するマトイ兄さんがカッコよかった。


「総監!うちの親父、地球を守ることに懸けちゃ結構マジみたいなんですよね!ほかは結構いい加減ですけど」


ここでモンドに対する軽い批判も入れながら、しかし科学者として、人の命や地球の平和を守るという使命感は揺るぎないという思いを明らかにしています。
これの何がいいって父親のモンドではなくマトイが言うことで、かえってかっこいいセリフになっているんですよね。
そしてモンド博士の熱い想いが伺えたのがその前にあるこのやり取り。


「火消しの価値はな、炎のなかでこのマトイを振りかざすことにあった」
「何が言いたい?」
「ただ机にかじりついているだけじゃ、火は消せんよ」


つまり乾総監の欠点である「机上の空論を振りかざしてばかりで、現場のことをわかっていない」と指摘したわけですが、でもぶっちゃけここまでモンド博士は救助活動に出てないですけどね(笑)
とまあ、ここまで「ダメ親父」ばかりが強調されていたモンド博士も少しずつこの話から本領を発揮し始め、乾総監というライバルが現れたことで一気に魅力的なキャラクターに変貌しました。
同時に乾総監と一緒にマトイを振りかざしながら市民を避難させるシーンを描くことで、決して巽兄妹だけではなく乾総監やモンド博士も合わせてのゴーゴーファイブ、という本作のヒーロー像を確立。
前作「ギンガマン」とは対照的に、本作はあくまでもモンド博士や乾総監など司令官と呼べる人物の指示によって初めてマトイたちが動けるという組織の規律優先であることが示されました。


各キャラクターの掘り下げに関してはまだ完了していないものの、ここで一足先に「ゴーゴーファイブとはどんなチームなのか?」を6話からもう1段階ステップアップして話を展開しています。
ここで巽一家だけで世界観が閉じてしまいかねない話が、乾総監という国家公務員の代表にして象徴となる人が出て来ることで、ゴーゴーファイブの世界観に厚みが増すという持っていき方が鮮やか。
後半での逆転シーンもうまくハマりここに改めてゴーゴーファイブが真のチームになるという、その礎がようやくここで確立されました。
時間はかかりましたが、ラストのオヤジ同士の熱い友情の握手もまた見どころです。


「しっかり息づいているようだな、火消しの血が」
「私の血だ」


ラストは5人全員で乾総監に敬礼し、そこにモンド博が並ぶカットが示されるのですが、これまでゴーゴーファイブの名乗りのみに使われていた敬礼がしっかりとドラマとして機能しています。
ここからモンド博士にもダメ親父より熱血親父の側面が強くなるのですが、改めてゴーゴーファイブという作品の基盤をしっかり作り上げた傑作回であり、評価はもちろんS(傑作)

 

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