明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)19・20話感想

 

第19話「女戦士サソリ!」


脚本:杉村升/演出:小笠原猛


<あらすじ>
バンドーラの元に新幹部ラミイが現われた。恐竜の卵がバンドーラに渡ったとき、大獣神は倒れる。5人は卵を守って一体どう戦うのか?


<感想>
うーん、流石に色々と話を盛り過ぎて、何を見せたいのか全く伝わりません。


今回の話は新幹部のラミイ登場よりも兄弟の話の方がメインテーマとなっており、また予告で見せた大獣神がやられる場面もブライの脳内妄想という落ちでした。
先週配信分はクオリティ自体はさて置いて、「ブライの登場を劇的に演出したい」ということだけは伝わりましたし、演出的にも相当に気合が入っています。
しかし、今回は新幹部ラミイを見せたいのか兄弟のドラマを見せたいのか恐竜のタマゴ争奪戦を見せたいのか、一度にやろうとし過ぎてて1話に詰め込める量ではありません。
戦隊シリーズにおける杉村脚本は回によって出来の差が激しいのですが、その理由の1つが詰め込む情報量と見せたいものが良くも悪くも出たとこ勝負だから。


今のようにきちんと年間のドラマを綺麗に構成するだけの力量が当時のスタッフになかったのは重々承知ですが、それを差し引いてももう少し見やすくして欲しいなと。
それから現代の兄弟の絆と古代のゲキとブライの兄弟関係を盛り込んだのは対比させようという意図があったのかもしれませんが、100%無理がある展開です。
ゲキとブライはそもそも前回ゲキが兄弟である事実を知ったばかりですし、ブライの心は憎しみで一杯のままなので絆云々以前の問題なのですよね。
今回もぶつかり合ってはいるものの、そもも一方的にブライがゲキに執着しているため、この兄弟と同列に語れと言われてもなあ。


一方でラミイの活躍も悪くはないというか普通にかっこいいのですが、何せバンドーラ様のインパクトが強すぎるのと、あとは前作のマリア/葵リエが完璧過ぎましたからねえ。
ヒロインから悪役まで全部を完璧にこなしたわけで、本作はそのマリアに匹敵するレベルの悪役といったら魔女バンドーラ様がもう全てなんですよ。
だから、その部分だけを見ればいいのですが、女幹部なんて今更出さなくてももう十分なんですよねえ……第一あんまり女幹部に興味がないというか。
ものふがラリの中でしっかり格付けがされている場合は別として、今回のサソリ女に関してはそうでもないという感じです。


ここで恐竜の卵を無理に拾って争奪戦を繰り広げなくてもいいでしょうに、どうにも数々の仕込みが全然物語の中で機能していません。
本作はとにかく本筋とディテールが一本線で繋がっていないというのが最大の特徴で、いかにも昭和らしい短距離走を繰り返している感じなんですよね。
それがいい方向に転ぶといいのですが、悪い方向に転ぶと今回のように目も当てられないことになってしまうので、それがもろに出てしまったなと。
総合評価はE(不作)、ギリギリバンドーラ様の存在感故に面白く見れているというところです。


第20話「大獣神最期の日」


脚本:杉村升/演出:小笠原猛


<あらすじ>
打倒大獣神を宣言したバンドーラ。ゲキたちは対抗策を探すがバンドーラの策略で……果たして、大獣神は倒されてしまうのか?


<感想>
「わからない!バンドーラはどうやって大獣神を倒すっていうんだ!?……大獣神。身長41.7メートル。体重570トン。その力は一撃で山をも打ち砕く。恐竜剣ゴッドホーンは巨大化したドーラモンスターさえも一刀の下に切り捨てることが可能だ」


唐突に始まった大獣神のスペック説明ですが、個人的な印象としてこのような説明をいきなり始めるときは大体劇中の描写がきちんとしていない時、というのがあります。
しかしながら身長41.7メートルはまだしも体重570トンというのは「本当にそうか?」なんて思えてしまって、やっぱり特撮作品の数値設定って無茶苦茶だなあと。
で、描写としてはまあその通りだとは思いますが、大獣神って歴代でそこまで強い印象がないんですよね、かっこいいとは思うんですが。
というか、様々な形でこすり倒されている上後半に究極が控えているからか、あくまでも50%程度の力しか出せていない感じです。


で、そんな大獣神を倒すというバンドーラ様の作戦は皆既日食を狙って太陽光を遮って力を出せなくさせてやろうというもの。
大獣神はガイアトロンエネルギーと呼ばれるものを動力源として動いているため、地球から降り注ぐ太陽光がなければ本来の力を発揮できないのだそうです。
ここで初めてジュウレンジャー側の力の源が明かされたわけですが、ということはジュウレンジャー側の力も全てはガイアトロンエネルギー由来ということでしょうか。
いわゆる「ガイア理論」というやつでしょうが、ガイアトロンエネルギーとはこの時期に代替エネルギーとして注目を集めていたソーラーシステムのメタファーかもしれません。


90年代後半に入ると平成ガメラシリーズのマナ、ウルトラマンガイア、ギンガマンのアースなどはすべてこの「ガイア理論=星の力」をベースに動く作品が増えました。
その原点ともいうべきなのがこのガイアトロンエネルギーということかもしれませんが、それだったらそれでバンドーラ様に一つ申し上げたいことがあります。


昼間じゃなくて、夜間に作戦を実行すればよくね?


太陽エネルギーを供給しないとフルに力を発揮できないのであれば、最初から大獣神がフルに活動できない夜を狙う方がよほど効率いいと思います。
こんな皆既日食なんてわざわざ狙わなくても攻略できるはずなので、もういっそのことそれで簡単に攻め落としてしまえばいいのではないでしょうか。
ちなみに恐竜の卵はまたもや川に流れてしまい、まるでどこぞの桃みたいにどんぶらこどんぶらこと消えてしまうのでありました。


で、ドラゴンレンジャーが今回巨大化したのですが、この映像自体は非常にインパクトがあるものの、なぜ巨大化したかは不明です。
1つには復讐の怨念があるのでしょうが、もう1つは皆既日食という特別な現象あってのことなのかなあと思います。
歴代戦隊でも戦士が巨大化という展開は他に「カクレンジャー」のセイカイや「ギンガマン」のサヤくらいしかありません。
まあロボットのようになるという意味では重騎士ブルブラックやマジレンジャーの5人などもその例ではありますが。


しかし大獣神もやられっぱなしで終わらずに、恐竜剣ゴッドホーンである程度無双し、その後敢えてマグマの中に身を隠すことに。
この展開は衝撃といえば衝撃ですが、安易に巨大ロボに頼らず戦士を巨大化させ、また「神」と呼ばれる存在にどう弱点を与えるかの試行錯誤が見られます。
思えば30時間という制限時間付きでしか動けないという設定も完全な後付けではあるのですが、この時の巨大化がもしかするとブライの寿命を縮めていたのかもしれません。


今回は大獣神に弱点を絞って作戦を展開している分濃密な15分となっていてわかりやすいのですが、1号ロボをここで打ち負かすというのは展開として納得です。
神があまりにも強すぎると面白みがないですし、かといって簡単に一度設定したハードルを越えさせるわけにもいきませんしね。
総合評価はB(良作)、バンドーラ様の用意周到さが光る反面、ヒーロー側が完全に後手に回ってしまいどう乗り越えるのかが楽しみです。

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村