明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)13・14話感想

 

第13話「射て!黄金の矢」


脚本:荒川稔久/演出:東條昭平


<あらすじ>
メイがバンドーラの毒リンゴに倒れ、ドーララドゥーンが子供たちから若さを奪ってゆく。ラドゥーンを倒せるのは、プテラアローだけ。メイは呪いを打ち破ることができるのか?


<感想>
「まだ、プリンセスの私が居ます!」
「貴様、死んだ筈では?!」
「リシヤ族の血をそう簡単に絶やさせはしないわ!ダイノ・バックラー!」


このやり取りにあまりにも闇が深い古代恐竜人類の血塗られた歴史的背景がそこはかとなく見えてしまい、当方大変困惑しております!
思えば「ジュウレンジャー」ってOPカットからして真剣な表情で伝説の武器を構えてましたからね、表面上はコミカルに見せていても実態はあくまで血塗られた古代の戦争の続きですし。
一億数千万年前の血塗られた戦いが現代世界で再現されているという意味では「デンジマン」に連なる「宿命系戦隊」の系譜なのですが、本作は更にそこに宗教戦争・民族紛争の匂いも混じっています。
メイが単独でひたすらアクションを頑張るだけの回だったのですが、東條監督らしい絶妙な追い込み方でメイを次々と罠に陥れ、更に爆発!爆発!爆発!と某火薬戦隊を彷彿させる火薬量。


話のモチーフとしては「不和の林檎」などのギリシャ神話から取ってきたものと思われ、公園にある銅像などもかなりギリシャ神話を意識したかのような感じです。
演出的にはものすごくメルヘンチックですが、中身はリンゴの木にされてしまう子供達や蛇に苦戦するジュウレンジャーなど、緊迫した状況を醸し出しています。
この「メルヘンチックに重い話を展開する」というのが本作のベースにあるといえますが、2クール目に入って段々と路線がシリアスになりつつありますね。
それにしても「リシヤ族の血をそう簡単に絶やさせはしない」って言葉を聞くと某騎士竜戦隊の子種を残そうとした追加戦士を思い出してしまいます。


土壇場でこんなことを言うということはメイはもしかしていつも「子種を残すのに相応しい男はいないかなあ?」とか考えてるのかなあ?
まあ女性はよく子宮で感じて動くと言いますしね……でもメイに釣り合うレベルとなるとそれこそヤマト族プリンスしかいないと思いますが(笑)
で、何が良かったといって今回はメイの伝説の武器・プテラアローが久々に物語の中で活用されたことであり、伝説の武器が1クール目にして既に形骸化しつつありました。
そこで改めて「伝説の戦士の象徴」として持ち直し、どうしても身体能力で男性陣に劣ってしまうメイこと千葉麗子にしっかり活躍の場を与えたのはよかったところです。


それから今回のオチではダンがメイをからかってドタバタしていましたが、ダンはトラブルメーカーというより「好きな子にウザ絡みする小学生男子」みたいな感じになりました。
思えば一番子供と距離感が近いいたずらっ子ポジションというのはのちに「ギンガマン」のギンガイエロー・ヒカルや「シンケンジャー」のシンケングリーン・谷千明にも継承されています。
荒川氏にしては珍しいくらい真面目というか硬派に作られているのですが、前作「ジェットマン」で比較的自由なエピソードを書いていたこともあってか、今回はその反動でしょうか。
総合評価はB(良作)、決して諸手上げて完璧な出来栄えではないですが、存在感が希薄化していたメイとプテラアローをしっかり輝かせ、古代恐竜人類の血塗られた歴史が垣間見たというのはとてもよかったです。


第14話「小さくなァれ!」


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
プリプリカンへの弟子入りに失敗した妖精ドンドンと、いつも怒られてばかりの少年・トシオ。ふたりはドンドンの瓶で大きなものを吸い込んで、小さくし始めた。


<感想>
今回の話はなんだか神話っぽくないというか、どっちかといえば「まんが日本昔ばなし」みたいな感じのエピソードではないかと思いました。
巨大化と縮小というと「一寸法師」を思い出しますし、こういう子供と大人の関係が逆転するという構図もかなり児童文学書にありそうなもの。
特撮でこういう「大人と子供の関係が逆転」というものだと近いのは「帰ってきたウルトラマン」のヤメタランスの回でしょうか。
あの回も形は違えど「ゆとり」をテーマに親子喧嘩が描かれていて、あちらの場合は性格が反転するというものでしたが、今回は大きさが反転する仕組みに。


11話の魔人ランプで描きたかった回のリターンマッチといえそうな内容ですが、あちらのつまらなさに比べたら今回はかなり面白かったです。


「大人なんかやっつけてやるダ!」
「大人なんて怖くないぞ!」


もはや子供の歪んだ悪意はエスカレートしていく一方ですが、何が凄いと言って本作の子供はバンドーラの魔術によって大獣神を困らせるほどの力を持てるということです。
そしてそんな子供に向かって「罰してやってくれ」みたいなことを言う母親もいわゆる「厳しさ」というものを履き違えたために今回の騒動を生んだ形となりました。
少年の母に向かってビシッと反論したのがタイガーレンジャー。


「お母さん、あんたが一番悪い!」


ここでビシッと「子どもをそうさせてしまったのは他ならぬ母親のせい」という、まるで「金八先生」的な説教の構図が入りましたが、ここまでしっかり描いてきたのはよかったところです。
伝説の武器を手に入れる回の母親と子供の愛情に関しては主に母親の方がきちんと謝っていなかったため、どうしても消化不良な部分が起こってしまいました。
今回はあくまでもターゲットを子供と妖精ドンドンに絞ったことで話をわかりやすくしており、最後にきちんと「双方が悪い」というところへ落ち着けたのは見事です。
本作は割と序盤から意識的に「ヒーローと子供」の関係を描いてきましたが、ここでその要素を拾ってジュウレンジャーの特徴を定義してみせました。


総合評価はA(名作)、今まで見てきた中では格段に話のまとまりがよく、ジュウレンジャー5人のキャラが薄いという欠点はあるものの無難にまとまった形です。

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村