明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)11・12話感想

 

第11話「ご主人さま!」


脚本:杉村升、荒木憲一/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
魔法のランプを手に入れた子供たちは、ランプの精・ジンに願いを叶えてもらって大喜び。だが、魔女バンドーラもジンを狙っていた。


<感想>
おい、強制的に蓋をして封印って何の解決にもならんだろ!


いくら古代の産物だからといって海に不法投棄はなあ……それが許されるのは80年代までであって90年代初頭でこのエピソードは流石に許されません。
そんな今回のお話ですが、実は白倉プロデューサー補が杉村さんにガツンと怒鳴られたこよで有名な逸話があるそうですが、どっちが正しい以前にまず話の作り方がダメ。
最終的にジュウレンジャー批判に持っていかなかっただけマシですが、今回の話は「ウルトラマン」のガヴァドン回に通底するものを感じました。
子供達の願いを都合よく叶えてくれる善の存在が悪人化してしまい、それをヒーロー側が思わず倒しそうになるというベースの部分が似ています。


ウルトラマンを一方的に悪者に仕立て上げることがありきだったガヴァドン回に比べれば今回のこの話は安易に子供達のわがままを肯定していないだけマシでしょうか。
何となく今回の話を見ていると後の「オーレンジャー」のガンマジンの大元になっている気がして、杉村氏の善悪の基準や倫理観などが透けて見えてしまいました。
どうもこれは本作から一貫して思うことなんですが、杉村さんはやたらに子供を悪ガキっぽく描きたがる割には最終的に子供達に甘くしてしまうという弱点があります。
無条件に子供を性善説として信じすぎているというか、子どもってもっと残酷でそんなに物分かりのいい方ではないですし、ジュウレンジャーたちもそんな子供達を野放しにしてしまっているのです。


そんなランプ魔人争奪戦が今回の内容だったのですが、一見「子供達の夢をしっかり守る正統派ヒーロー」としてのジュウレンジャーを描いたつもりなのでしょうが、結果としてはむしろジュウレンジャーの方が酷い印象
何が酷いってラストの東京湾に沈める「臭いものには蓋」みたいな強引な解決法もそうですが、それ以上に一方的に子供達にランプの回収を迫った上で子どもの欲望を野放しにしてしまい改心や反省を促さないことです。
これは今回に限ったことではないのかもしれませんが、浮世離れしすぎている存在が故に子供達と当たり障りのない絡み方しかできないという弊害があります。
そのせいで、例えば「カーレンジャー」のシグナルマンと市太郎くんとか「ギンガマン」のリョウマと勇太くんみたいに、個に特化した深いドラマに繋がらないのです。


「子ども向けとしての分かりやすさを重視する」ことと「深いドラマを描く」ことは決して両立し得ない要素ではない訳で、もう1クールも終わりなのに全くキャラの基礎ができていません。
その上でこんな粗雑なエピソードを出してしまうのは「子ども向け」ではなく「子ども騙し」としか言いようがなく、どうにも飲み込めない話が多いのです。
せめて「願いを叶えるのには何かしらの条件や制約が必要」というのならわかりますが、今回はそれがなくランプの魔人が子どもたちの願望の象徴みたいに描かれているのは好きじゃありません。
総合評価はF(駄作)、次回も含めてここまでで最低のクオリティでした。


第12話「パパは吸血鬼!?」


脚本:高久進/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
ダンが出会った少女・ミチ。そのミチが見た吸血鬼は、なんと彼女のパパだった。一体、どういうことなのか?


<感想>
とりあえずミチは明らかに誇大妄想が酷すぎるので今すぐ精神病院か少年院に送った方がいいと思います。


何が凄いってコミカルな日常シーンで自分の父親をバットで追いかけ回す女の子の狂気なのですが、前回に引き続きジュウレンジャーがそんなミチを説教しないのは如何なものか?
まあそもそも「俺たち普段から生身で武器を振り回してるしな〜」って感じだからなんとも思わないのか、ダンもミチに寄り添っているようでむしろわがままに振り回されてしまっています。
しかも最終的に幻術で戦っていた相手なのに倒し方は結局物理で解決しているので、物語に上手く幅が出ずに勝ち筋も含めて寧ろワンパターン化してしまっている感じに。
シリアスに描くには追いかけるシーンが余りにもギャグすぎますし、反対にギャグとして見るのならばせめて「地下鉄のザジ」くらいに徹底したスラップスティックにすべきだと思います。


特撮における高久脚本自体を私はあまり評価していないのですが、今回の話はまさに上手くいかない時の高久脚本の弱点が露見してしまった感じになりました。
父親と娘の絆を描きたいのか、それともダンとミチの心の交流を描きたいのかという縦軸がはっきりしないので、横軸の肉付けとの連動性も上手くいきません。
物理的じゃない能力バトルのような要素を持ち込むのは構わないのですが、対するジュウレンジャー「一に素手!二にドス!三四がなくて、五に恐竜剣!」なのであまり盛り上がりません。
しかも5人のキャラクターも未だに立っておらずバンドーラに存在感を食われてしまっているので、本作全体の問題は解消されないまま1クールが終了。


ゲストに焦点を当てるのはいいですが、それ以前の段階として「5人のキャラを立てる」という基礎ができていないため、どうしても低空飛行に見えてしまいます。
単純に役者の演技力が微妙というのもあるのですが、根本の原因は5人のキャラがあまりにも薄味すぎてつまらないことにあるのです。
総合評価はF(駄作)、前回共々1クール目の終わりだというのにイマイチ締まらないエピソードでした。

 

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