明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)9・10話感想

 

第9話「走れタマゴ王子」


脚本:杉村升/演出:小笠原猛


<あらすじ>
大昔に滅んだはずの恐竜の卵がある?アペロ族のユーロ王子の知らせで、ダロス島へと急ぐジュウレンジャー。だが、魔女バンドーラもその卵を狙っていた。


<感想>
今回と次回は恐竜の卵前後編、「ジュウレンジャー」序盤の決戦編にして、終盤に向けた壮大な伏線にもなっています。


モチーフとなっているのは聖書の「失楽園であり、キリスト教の背景を知った上で見ないと、今回の話の流れというか背景にあるものは理解できないのではないでしょうか。
禁断の果実を誤って食べてしまい、神々から猿にされてしまって島から追放された王子たちは正にアダムとイブのようなものですが、こういうえげつない話もさりげなく織り込んでいるのが本作のとてもいいところ。
それと同時に終盤でも大事な伏線となってくる恐竜の卵争奪戦という要素も盛り込まれているため、ここまで見てきた中では一番面白かったです。
バンドーラ様も相変わらず剽軽な振る舞いしながら、やることはえげつないですし、ギャグっぽい描写の中に真実が隠れているので、とても面白く見れました。


ただなあ、ユーロ王子と少女の演技力が酷すぎて、もうちょっとマシなキャスティングができなかったものか?とは思うところで、やっぱりこの辺りキャスティングに金かけられなかったんでしょうね。
この辺りも高寺Pの戦隊で改善されている点というか、市太郎君にしろタケシ君にしろ勇太君にしろ、レギュラーの子役1人に絞ることで演技力の高い子を据えていたのだなあと思うところです。
特に「嘘なんでしょ!」のくだりとかはあまりにも棒読みすぎて見ていらせませんでした……正におままごと・学芸会レベルの大根演技で、もうちょっとマシな子たち連れてきて欲しかった。
バンドーラ様が圧倒的にうますぎるせいもあるのですけどね……やっぱりこの段階に至ってもゲキたちの演技力は初期と変わっていませんし。


そして今回は緊急事態なためか、ダロス島へ直行するのに守護獣に乗って向かうことを許可されたようです。
ほら、大獣神って基本的にスパルタブラック上司だから「ふざけんな!ダロス島まで自力でつけやゴルァッ!」みたいなことにならずに済みました。
恐竜の卵は守護獣にとっても最優先事項だったようで、ただ理不尽に厳しいだけじゃないところもよかったかなと。
ただ、「ユーロ王子は人間じゃなく猿なのさ」というのは良くわかりませんでした、「いや人間だって猿だろ」とツッコミ入れたくなります。


そんなこんなで内容的には完全に次回のための仕掛けという感じなので、総合評価としてはC(佳作)というところでしょうか。


第10話「猿はもうイヤ!」


脚本:杉村升/演出:小笠原猛


<あらすじ>
ロス島の卵を狙うバンドーラ一味とドーラコカトリス2号。ジュウレンジャーは卵を守り、恐竜を再び甦らせることができるのか。そして、ユーロたちは人間に戻れるのか?


<感想>
「ダロス島のアベロたちよ……お前たちは2度までもコカトリスに欺かれ、約束を果たすことができなかった。永久に猿のまま、その姿で暮らすのだ」
「そんな……!」
「酷いわ神様、ユーロたちは一生懸命やったじゃない!どうして分かってあげないの!?そんな神様なんて私大嫌い!」
「守護獣たちよ、我々は神ではない!失敗もする、騙されることもある!それを温かく見守るのがお前たちの使命ではないのか!」
「そうだ!卵は俺たちの手で必ず見つけ出す!だから、王子たちを許してやってくれ!」


今回のドラマのハイライトはここでしたが、うーん、個人的には正直厳しい展開です。
私は基本的に大獣神が好きではないのですが、今回に関しては完全に大獣神の言い分が正しいので、ゲキたちがむしろ甘いとしか言いようがありません。
そんな感情論が許されるのだったら、世のビジネスパーソンたちはみんな許されることになるわけで、流石にこればかりは私も認めがたい展開です。
仕事上の失敗は誰にだってあるものですが、しかしその失敗やミスにも限度ってものがあるわけで、今回のこれは流石にしてはならない類の失敗でした。


それこそ会社でいうなら社運がかかった一大プロジェクトと言っても過言ではなく、会社の今後が左右されるような極めて険しい大掛かりな仕事でしょう。
そのチャンスをしくじってしまい大ポカをやらかしたのに、「まあ今回はミスしましたけど、それを糧に成長していくんで許してください」が通じるか?という話です。
幾ら何でも恐竜の卵をしっかり確保し損ねたのをなあなあで許すというのは単なる「甘やかし」以外の何物でもなく、こればかりは流石に許せません。
それこそ「ボウケンジャー」の世界でいうなら、恐竜の卵はハザードレベル3桁〜4桁はあるであろうプレシャスなわけで、今回はそれを回収するのが役割でした。


ジュウレンジャーや現代人の手まで借りておきながらそれに失敗したというのは弁解の余地がなく、きちんと罰は罰として与えるべきだと思います。
まあ流石に「永久に猿のままで暮らせ」は酷すぎるので、もう少し罰則を緩めて「では次に恐竜の卵を確保できたら島に戻す。できなかったら永久に猿のままで暮らす」でいいでしょう。
そういう折衷案というか妥協案を提示してそれを伏線とした方が良かったと思うのですが、なぜかそうではなく「一生懸命頑張ったから許してやるか」は決して許されません。
社会に出たら過程はどうあれ「結果が全て」な訳で、もちろん途中経過が良いに越したことはありませんが、今回のこれは「過程はよかったけど結果はダメ」という奴でしたよね。


こういう時いつも思い出すのは横山光輝版「三国志」の関羽赤壁の戦い曹操を倒さなかったことを孔明に責められた時の孔明の言葉を思い出します。


軍紀を守ってはじめて強兵が生まれ、それが国を守り国を強くしていくのです」


玄徳軍の今後の運命がかかった大事な場面で関羽は一度曹操にお世話になったという義理人情との板挟みで公私混同を犯してしまい、切れなかったわけです。
それを孔明は責めたわけですが、確かになんでもかんでも規律で縛ればいいわけではありませんが、それは決して「規律を蔑ろにする」ことを意味するものではありません。
規律は規律、それを守って初めて責任感ある仕事ができるし優秀な人材が生まれる……その点で見たときに今回のこれは御都合主義のレベルじゃない結末だったのではないでしょうか。
表向きハッピーエンドでしたが、恐竜の卵を手に入れ損ねたという本来の目的が果たせないまま終わったことを諸手あげて喜んでいいものかは引っかかります。


途中経過は争奪戦含めて非常に良くできただけにラストのオチで引っかかってしまい、総合評価としてはどうしてもB(良作)にせざるを得ません。
この辺り、井上敏樹先生や小林靖子女史だったらもうちょっとうまいオチにできたのではないかと思うのですが……。

 

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