明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ46作目『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022)第5話感想

 

ドン5話「たてこもったイヌ」


脚本:井上敏樹/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
無実の罪で警察に追われる犬塚翼は、休業中のシロクマ宅配便店舗の前で居合わせた鬼頭はるかに「運命の一目惚れ」だと声をかける。翼は、はるかを人質にして逃げようと考えたのだが…一方、漫画新作のため“燃えるような恋”を体験したいはるかは、ノリノリでこの出会いを受け入れることに。そこに、桃井タロウに会うため雉野つよしがやってくる。つよしは翼の顔に見覚えがあって…。


<感想>
犬塚普通に犯罪者じゃね?


うーん、今回の話は改めてなぜドンブラザーズが作品全体として私の心に刺さり切らないのかを教えてもらった気がします。
どうも白倉・井上コンビの倫理観が平成ライダー初期で止まっているというか、「話を面白くするためなら多少違法なことしてもいいだろ」と思っている倫理観は流石にもう時代に合っていません。
指名手配犯として追われている彼ですが、いくらお腹が空いていたからといって勝手に配達予定のお客様の商品を食べちゃダメでしょ……リアルに宅配業をやっていた身からするとこれは流石にない。
桃井タロウが厳しく咎めて尻拭いしてくれたためにそこまで酷い事態になっていませんが、「食い物の恨みは恐ろしい」と言いますし、誕生日祝いで誤魔化していますが盗み食いは普通に犯罪です。


それから犬塚を追っていた刑事が実は昇進できないことを拗らせていて、というのもいつの時代の価値観なのか知りませんが、今の時代下手に出世なんてするものじゃありませんよ
これは未だに日本社会のダメなところというか、年功序列型の封建制度による出世街道なんて今の時代何の価値も意味もない化石みたいなものなので、それを最後出世して万々歳みたいにしないで頂きたい。
やっぱり白倉・井上コンビはもう老境に入った昭和世代だから、所詮その世代の価値観でしか物が見えていないし語れていないところがあって、今回は全体的に悪い意味で昭和感覚が出てしまったエピソードだなと。
いちごのショートケーキを5つ用意してというのも悪くないですが、誕生日祝いも子供の頃ならともかく大人になってまで誕生日祝われると「自分も年食ったか」となるだけなんで全然有り難みがないですね。


実はここ最近Twitterのスペースで久々に八景島氏と本作について語った時に、「ドンブラザーズは所詮60のおじさんが書いた今時の若者」と言っていて、これは言い得て妙だと思いました。
そう、扱っているテーマや道具は割と今日的なものなのに、語り口や描写の手法が90年代で止まっている為に別の意味で時代錯誤な作品になってしまっているのが見えてしまうのです。
例えるならば「ファイブマン」「オーレンジャー」みたいな……あちらが「勘違い王道」だとするならこちらは「勘違い邪道」って奴で、これならまだ香村脚本の方が現在のあり方に適応しているといえます。
あとはるかがいわゆる「漫画家になる為に刺激的な出会いを体験したい」というのも、マッチングアプリSNSでいつでも人と出会えるこの時代でその価値観は古臭すぎるぞと。


今の時代って良くも悪くもネットありきの社会になっているわけで、誤解を恐れず言ってしまえばSNSでちょっと「いいね」を押したりフォローしたりすれば簡単に人と繋がれる(繋がれた気分に浸れる)時代です。
逆にいえば、それだけ人との繋がりや絆というものがさしたる重みや深みをもたらず軽薄化しているともいえますが、どうにも根っこにある抜け切れない昭和の価値観がかえって邪魔してしまっています。
ステロタイプのヒーロー像に懐疑的というのが本作の売りだというのはわかるのですが、本作になるとどうもアンチヒーローステロタイプ化」という現象が起こっている気がするのです。
要するに「シャンゼリオン」「アギト」「555」辺りの手法自体もまたワンパターン化して行き詰まりを起こしてしまい、それが久々に手がける戦隊のテレビシリーズという形で白日の元に晒されているというか。


このコンビのやり口ってヒーロー像を解体することで「ヒーローとは何か?」という本質に迫っていくのではなく、牽強付会の理屈で自分側に引き寄せようとしているだけなんですよね。
それが若い頃はいい反骨心としてプラスの方向に働いていたのですが、全盛期をすっかり過ぎてしまった今では単に老害が自ら晩節を汚しているだけでしかないというかね。
今はニチアサにいない小林靖子女史でさえ「シンケンジャー」以降は確実に衰退していて、「トッキュウジャー」でやっと全盛期の力を後半で少し取り戻せたかならという感じでしたし。
やっぱりどんな作家・作品にも「旬」というものがあって、それを過ぎ去ってしまうとこのようになってしまうのだなあと思ってしまうのです。


で、そんな犬塚を4人が庇い立てしている為に(特にはるかは似た境遇なのか完全に「犯罪者を擁護するダメ女」になってますし)、5人の絆が「戦隊ヒーローの絆」というよりはストックホルム症候群に見えてしまいます。
要するに犬塚のために本作の常識人担当だった雉野含めて4人が共犯者となってしまったわけであり、かと言ってそれがピカレスクロマンとしての格好良さにまで昇華されているわけでもありませんしね。
正統派ヒーローには正統派ヒーローなりの一貫性が必要であるように、ピカレスクロマンにはピカレスクロマンなりの一貫性が必要であって、本作は現段階だとそのどちらにも振り切れていない中途半端な印象。
当初そこそこのスタートダッシュだったのがもうこのあたりで失速しており、総合評価はF(駄作)です。

 

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