明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ30作目『轟轟戦隊ボウケンジャー』(2006)3・4話感想

 

Task3「覇者の剣」


脚本:會川昇/演出:中澤祥次郎


<あらすじ>
諸葛亮孔明が残したという三本の武器、「三國覇剣」というプレシャスの情報を掴んだ蒼太は、さくらと真墨と共に確認に向かう。しかし、既にダークシャドウが一本を手に入れており、ダークシャドウ風のシズカに、まんまと二本目を奪われてしまう。残る一本は、三国史マニアのIT社長・山谷が持っているが・・・


<感想>
「あなたは、企業や国の秘密を奪う時、他人のことなど考えましたか?」
「考えなかった。獲物を手に入れる時のスリル、ドキドキ、その為ならなんでもやった」
「おんなじですねえ。私もこの巻物を手に入れる為だったら、どんなことでもしました」
「同じじゃない、あんたはまだ間に合う」
「間に合う?」


見所は疾き冒険者よりも明らかにブラックな過去を匂わせてくる高き冒険者


改めて見直して思いましたが、蒼太のやつ、すでにこの頃から「深く関わってはいけない人」だったのか、そしてそれを本人も自覚済みというのが恐ろしいところです。
後の回で掘り下げられますが、蒼太は多分「女好き」とか「そうそう蒼太」で軽く見せているだけで、実際はものすごく闇が深い戦隊ブルーじゃないですかね。
単なる「女好き」「ナンパ」な戦士ならバトルフランス・チェンジグリフォンブラックコンドルなどいましたが、「こいつ関わっちゃいけねえ」感を醸し出しているのはこいつくらいかもしれません。
同時配信中の「ニンニンジャー」の八雲は単にウザ絡みしてマウント取ってくるだけの小学生男子みたいなものなんで、距離の取り方さえ間違えなければ大丈夫です(因みに天晴は幼稚園児)。


蒼太はいわゆる「フレネミー(友達のふりをした敵)」というやつで、1・2話でも真墨に対してかなりつれない対応をしていましたが、それはパーソナルスペースに入られたくないのであろうなと。
今後の話でも明らかになりますが、真墨ってシャイな性格で、トゲがあるし基本的にワガママですけど、身内というか懐に入れた仲間に対しては割と優しいし面倒見もいいんですよね。
少なくともチーフに比べて「俺が俺が」感は意外となく、逆にチーフや蒼太の方が「俺が俺が」感が強いので、こういう細かいところも対比になっているのは面白いです。
でも蒼太って結構ウザ絡みもしてくるやつだから(それは菜月もだけど)、身近にいたらかなりめんどくさそうなタイプで仕事でもプライベートでも付き合いたくない(苦笑)


三国志をモチーフに物語を展開していましたが、何が酷いって一見ボウケンジャーが正統派っぽく見せていながら、巨大戦でのこのくだり。


「こちらもプレシャスの力を使いましょう。ダイボウケンのパラレルエンジンは、プレシャスの力を取り出すことが出来るんです」
「面白そうだ。やってみる」


おい!何を爽やかにプレシャスの力を任務中に使ってんだよ!


サージェスのブラック企業ぶりはファンの間では有名な話ですが、3話目にしてこれですからやはりボウケンジャーって「王道の皮を被った覇道」なのでは?(笑)
普通こういう場合、表向き何かしら「正義のため」を装っているものですが(今読んでいる『鬼滅の刃』などは正にそれ)、本作は装うどころか自分たちから欲望丸出しのトップフォーム。
何せ名乗りのキャッチフレーズが「果てなき冒険魂(スピリッツ)」ですからね、冒険さえ楽しければ何をやってもいいというトレジャーハッピーの集まりなのです。
まあ時代的に考えれば、ちょうどジャンプ漫画では「ONE PIECE」のようなピカレスクロマンが世に浸透しつつあった頃ですから、その辺りの意識も多少なりはあったのかもしれません。


しかし、物語として見ると「蒼太が具体的にどんなことをやったのか?」が明かされていないのと、ボウケンジャー側の理屈がかなり利己的なために、盛り上がりとしては今ひとつという感じに。
蒼太たちの説得が「筋の通った理屈」というよりは「牽強付会の詭弁」という感じなので(そもそもチーフからして詭弁を繰り出す人ですし)、どうしても今ひとつ話を飲み込めません。
まあIT企業とは思えないレベルのセキュリティを仕込んでいるという点は大変面白かったし、風のシズカの忍者キャラクターも面白くはなったのですけどね。
なんというか、最終的に社長が巻物を渡した理由って「この人たちなら信頼できる」というよりは「ボウケンジャーの圧倒的な力が怖い」という風に見えなくもありません。


そう、この世はとにかく財力と武力があればいいのだヒャッハー!


まあある意味で凄く昭和っぽさを感じさせる會川先生の作風が出たのですが、もうちょっとボウケンジャー側の理屈と社長側の言い分のすり合わせをして欲しかったです。
総合評価はE(不作)、とりあえず蒼太にだけは絶対に深く関わってはいけないということははっきりしました。


Task4「失われたビークル


脚本:會川昇/演出:中澤祥次郎


<あらすじ>
大雨、快晴、突風、雷と天候が急変する現象が発生する。プレシャス=マッドネス・ウェザーが何者かによって操作されたのだ。 出撃したボウケンジャーの前に現れたのはジャリュウ一族! そしてその長・リュウオーン! 世界中を熱帯に変え、生態系を破壊しようとするジャリュウ一族のたくらみを防ぐ事ができるのか?


<感想>
「限界です明石くん!君の体が!」


4話目にしていかに新装備に耐えられるかのテストを行うという、「ゴーゴーファイブ」でも1クール目の終わりにやっていたことをやるとは、攻めるねえ。
同じ日笠Pということもあるのでしょうが、本作のメカニック描写は「ゴーゴーファイブ」に匹敵する完成度の高さであり、大好きなところです。
それにしても牧野博士、サージェスの上司なのでブラックですが、しかしボウケンジャーたちのメンタルや体調を心配してくれるなんて本当にいい人。
これが昭和戦隊の鬼長官だったら「弱音を吐くな!この程度の訓練に耐えられなければ、ネガティブシンジケートには勝てん!世界は終わりだ!」とか言いそうです。


そんな今回の話はチーフの過去話ですが、個人的には會川先生の「こういう過去がありました」という作風は根本的に好きじゃないんですよね。
前回の蒼太しかり菜月しかり、「こういう過去があったから現在に繋がる」という描写は共感を得やすい反面、多用しすぎると同情を誘っているように見えてしまいます。
まあ強いて言えば2話でリュウオーン相手に言っていた「部下の命を使い捨てにする貴様は、俺には勝てない!」というセリフの中身を補強したという意味では良かったのですが。
要するに、自分の冒険のためにマサキとキョウコを道連れにしてしまったという罪悪感が今の明石チーフの原点になっている、ということでしょう。


しかしこれに関しては正直半分くらい「そう演出している」感じが強くて、どっちかといえばこの過去はチーフの「一要素」ではあっても「本質」ではないと思うんですよ。
この人の本質は7話と11話で具体的に明かされるのでその時に取っておくとして、ここではとりあえず「仲間への思いやりがある上司」という綺麗な一面を見せてきました。
そしてボウケンジャー5人の「団結」「連携」を示すかのように「カラス→すき焼き→金のシャチホコ→コルト45→ゴーゴービークル・脱出」というしりとりで繋げたのは良かったところです。
仲間たちの想いを乗せながら、チーフが己の良心の呵責・罪悪感をドリルでぶち破って仲間達と共に乗り越えて行くという見せ方は下手ながら好きでした。


で、今回はドリルを装備して倒すのですが、やっぱりロボットでドリルというと「ゲッターロボ」のゲッター2を思い浮かべてしまいます。
ドリルはやはり男のロマンということでしょうが、早めの段階で出てくるゴーゴービークルの販促にきっちりキャラのドラマを乗せて意味付けしようというのはいいところです。
そしてそんだけかっこいいところを見せたチーフですが、物語のラストで自らその信頼を落とす真似を披露(笑)


「明石くん……そろそろ限界ですよ?」
「いえ、もっと回転数を上げてください」
「え?」
「お前たちならこの特訓に耐えて新たなゴーゴービークルを乗りこなせるようになる。信頼してるぞ」


なんと本作の暗黒メンターポジションは牧野博士でもミスターボイスでもなく、他ならぬ明石チーフその人であった、というオチでおしまいです。
そうか、チーフの詭弁に当時から今ひとつ納得いかないところがあったのですが、この人いわゆる東映特撮伝統の暗黒メンターの素質を併せ持っていたのか!(笑)
スーパー戦隊シリーズには杉村升三部作の大獣神・道士・三神将やそれ以前だと「チェンジマン」の伊吹長官などの暗黒メンターの系譜があるのですが、明石チーフもその系譜だったんですね。
まあチーフの場合は後々その化けの皮が剝がれていくのでお楽しみに……それから、ミスターボイスのあのアイコン、どっかで見たことあるなあと思ったらこれでした。

 

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ミスターボイス

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クラスタ



懐かしの木曜の怪談」に出てきたクラスタ、これの意図的なパロディキャラだったんですね。
総合評価はB(良作)、チーフについてはこの回よりもむしろ7話の方が本質を描いています。

 

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