明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ16作目『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992)1・2話感想

 

第1話「誕生」


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
惑星ネメシスに封印されていた魔女バンドーラたちが復活した。バーザは地球を救うため、伝説の英雄・ジュウレンジャーを復活させようとする。


<感想>
前作『鳥人戦隊ジェットマン』から作風がガラリと変わり、タッチが随分90年代らしくなった「ジュウレンジャー」、OPから非常に凝った映像です。
OPの戦士紹介の映像が赤→黒→青→黄→桃と従来のものに戻しつつ、前作までのSF要素を一切廃して徹底した「ファンタジー」へと振り切ることで大きくガワを変えたか。
竜人類という設定なのに、いわゆる「ディノサウロイド」なビジュアルじゃないのは子供が怖がってしまい感情移入できないことと、当時の技術の限界によるものでしょう。


内容としては徹底的に子供向けに全振りしていて、これも前作「ジュウレンジャー」との意識的な差別化の結果とは思われますが、ドラマ性よりも娯楽性重視という感じ。
ただ、いわゆる昨今の「ゼンカイジャー」「ドンブラザーズ」に比べると非常に見やすくスッキリして見えるのは今見直すとかえって新鮮に感じられます。
単純に尺が短い(当時は精々17分程度だったからなあ)というのもあるでしょうけど、玩具販促重視ながらに無理して巨大戦まで詰め込んでいないのはよかったです。
私はちょうど90年代戦隊を原体験していたこともあって、やっぱりこの頃のように余裕を持って物語を展開していた時代の戦隊の方が見やすくていいなと。


パイロット監督が長石監督→雨宮監督と来て鬼軍曹と名高い東條昭平監督になったのもその辺りの意識があったのかと思われますが、ひたすらに勢い重視でイベントが流れていきます。
まずは人類が乗ったシャトルがなぜか惑星ネメシスに向けて発射→人類が誤って魔女バンドーラの封印を解いてしまう→バンドーラが自転車を漕ぎながら人類に宣戦布告。
突っ込みどころ満載の流れではありますが、1つ1つだと「なぜそうなるのか?」と思わせてしまう要素を連続してぶつけることでハイペースにボケまくり、かえって違和感をなくしています。
また、バンドーラのキャラを曽我町子氏、バーザのキャラを多々良純氏という大御所2人が演じることで一定の重厚感を持たせており、きちんと芝居として成立させているのは見事です。


しかし、だからこそ気になるのはメインのジュウレンジャー5人がイマイチパッとしないというか、キャラ付けがイマイチ弱く存在感が希薄なのは惜しまれます。
特にプテラレンジャー/メイの千葉麗子はビジュアルは歴代トップクラスなのに、技力が大根というレベルすら通り越した滑舌の悪さなので、感情移入できません。
他の4人も決してそこまで演技達者ではないなりにきちんと「ティラノレンジャー!ゲキ!」と言えてるのに対してメイは「ぷれられんら〜!めい!」と全部ひらがな読みに聞こえてしまうのです。
東條監督ほどの人に演技指導してもらってこのレベルで、しかも年間通してもそんなに成長しないので、この経験を味わうと後のオンドゥル語やら松本寛也やらタカ兄やらが可愛く見えてしまいます。


4人が戦う→捕まる→レッドが助けるという展開は後の「カクレンジャー」のニンジャレッド/サスケも多用していて、更に「オーレンジャー」の1話でもオーレッドがやっていたのですが、杉村脚本×東條演出の十八番なのか。
しかし、ゲキを演じている望月氏もアクションとスタイル自体は文句なしにカッコいいのですが、顔と演技力は中の下、といったところで、前作のネオジェットマンでも存在感が微妙でした。
それからオープニングでも登場している伝説の武器が手に入るのは4話なのですが、ぶっちゃけこの段階で既に持たせておいてもよかったのではないでしょうか。
というのも、変身前が伝説の武器のレプリカながらそれなりに見応えのあるアクションだったのに対し、変身後がレンジャーガンのみというのがあまりにも貧相過ぎます。
新堀さんによるアクションも悪くはないのですが、効果音が「パコンパコン」と大して重くなさそうなので、全然カッコいいと思えず、ここは次作「ダイレンジャー」以降の反省点となっています。


とりあえず撃退はしたものの、スペースシャトルにとらわれた子供達の救出はできずに次回へ、という流れですが、全体的には可もなく不可もなしといったところです。
全体的にはOPの映像などにも出ているように、遊園地のアトラクションのような感じで児童が面白がりそうなセンスオブワンダーをこれ以上なく詰め込んでいます。
しかし、そうした驚きの割りには後半の華々しい見せ場であるはずのジュウレンジャー登場にいまひとつカタルシスが感じられないのが残念です。
名乗りにエコーをかけるのは悪くはないのですが、アクションは変身前の方がむしろ見応えがあったので、むしろ変身しない方が強いのではないか説が浮上してしまいます。


この辺り、前作「ジェットマン」はレッドのみがプロの即戦力、他の4人は素人でまともに戦えないという構成にしていたのは変身前と変身後の違いを強調する意味でもよかったのかなと。
変身前でも強い戦隊の難しいところは、いかにして「わざわざ変身させるのか?」にあるのですが、本作はそのハードルをクリアできなかった模様。
また、別段引っ張るべきでもない人質になった子供の救出を次回に引っ張ったせいでヒーローとしてのジュウレンジャーがイマイチ活躍できていないことになります。
せっかく勢い重視でドラマ性を二の次にするのなら子供の救出はこの段階でやっておいた方がよかったと思われ、総合評価はD(凡作)というところでしょうか。


第2話「復活」


脚本:杉村升/演出:東條昭平


<あらすじ>
シャトルを取り戻そうと必死の5人の前に立ちはだかる、ドーラスケルトン。そして、さらに襲い来るドーラタイタン。そのとき、大地を割って守護獣ティラノザウルスが復活した。


<感想>
冒頭、呑気に本を読んで笑っているダンをボーイが投げ飛ばして叱り飛ばす。


「のんびり本なんか読んでる場合かよ!見ろよ、なんとかあいつをやっつける方法を考えなくちゃダメじゃないか!」
「そんなカリカリすんなよ」
「もう!奪われたシャトルの中には子供たちが居るのよ!?地球の平和を守り魔女バンドーラを倒すことが私たちの義務じゃない!」


ここでお調子者のブルーに年少組ながらもしっかり者のイエローとピンク、とキャラの書き分けがされているのですが、相変わらずメイの演技が酷い^^;
彼女が喋り始めた瞬間に物語のテンションが一気に下がってしまい、急に作品世界に入り込めなくなって冷めてしまうのはどうにかなりませんかね?
前作と違ってドラマ性重視がないが故のキャスティングだったのかもしれませんが、台詞回し自体は悪くないだけにどうしてもキャストの演技力が追いついていないのが勿体無いです。
まあ最新の「ドンブラザーズ」も役者がキャラをものにできていないことが1話では見受けられましたので、この辺りは文句を言っても仕方ないのかなと思うところではありますが。


その後ゲキの口から回想として1億7千万年前の戦いが伝説として語られるのですが、この「過去の戦いからの因縁」という設定はファンタジー戦隊に継承される要素となっていきます。
ダイレンジャー」「カクレンジャー」「ギンガマン」「シンケンジャー」「リュウソウジャー」はこの要素が強くあるのですが、その原点とも言えるシーンがここです。
それからもう1つ、ゲキがプリンスでメイがプリンセス、他3人がナイトという階級社会が設けられているところも地味ながら大きな設定の変化ではないでしょうか。
「ゲキ、リーダーはあなたなのよ!」などのメイのセリフからもわかるように、初期はおそらくレッドと他4人の主従関係のようなものが構想されていたと思われます。


この設定は本作だと形骸化してしまうのですが、後の「カクレンジャー」の鶴姫や「ハリケンジャー」の御前様、「シンケンジャー」の志葉丈瑠などにこの主従関係の設定が継承されているのでしょうね。
最新作の「ドンブラザーズ」もドンモモタロウと4人の従者たちの主従関係が仕込まれており、ギャグで流されるのか「シンケン」みたいに1年通じてテーマとして描くのか気になるところです。
で、物語は前回の続きでシャトルの中に囚われた子供たちを救出するというものですが、今回は実験的にスケルトンとナイトの怪人と戦うのですが、密度としては正直イマイチ。
まず伝説の武器のレプリカが全部破壊されたことで次回の武器入手へのフラグを立てているのですが、その後結局レンジャーガンで倒してしまうため、むしろ武器入手の必要性はないということに。


その後初めての守護獣・ティラノサウルス登場となり、ティラノレンジャーが乗って戦うことになるのですが、コックピットがメカっぽいのは許容範囲としても、登場にいまひとつドラマツルギーがありません
また、前回の感想では書き忘れましたが、変身がメダルをバックルにはめての「ダイノバックラー!」なのも個人的には微妙で、変身バンク自体も絵としてかっこよくはならず。
うーむ、これに関してはまだ過渡期だったのもあるでしょうが、本作はせっかく児童向けで玩具販促を重視している割には、変身アイテムやロボの登場そのものにカタルシスがないのが残念
せっかくビジュアルから設定から、斬新なものを数々導入しているにもかかわらず、終始このような感じでいまひとつ痒い所に手が届かない出来栄えになってしまっているのです。


つまり、設定紹介と玩具販促は前作に比べてかなり早く2ぐらいのスピードなのに対して、肝心要の物語そのもののスピードがかえって0.5〜1になってしまい噛み合っていません
これは正に前作と逆で、前作は設定紹介と玩具販促はかなり遅いながらに、物語そのものスピードがかなり早かったお陰でこの辺りの噛み合わなさをうまく処理していました。
もっとも、前作「ジェットマン」は80年代戦隊に毛が生えたSFの世界観をベースとしていたために、設定を新たに作る必要がなくその辺りをすっきり簡略化できたからかもしれませんが。
せっかく子供向けに振り切ったのであれば、もっと変身アイテム入手や巨大ロボ登場にドラマ性というか物語を作って欲しいのですが、尺の限界なのかそこまで手が回らなかったのは惜しまれます。


かなりハードルを落として児童世代を楽しませようという試みはOPとEDからも感じられますし、今の戦隊のようにひたすら情報量を詰め込んでいるわけではないので、それだけでも見やすくはありますが。
ただ、ここまでハードルを下げたのであれば、もっと玩具販促や子供向けとしてのアトラクションに注力して欲しいところではあり、そのアトラクションの部分がスカスカになってしまっています。
ティラノサウルス自体もアクションやデザインは悪くないだけに、ごく普通のイベントとして処理されてしまい、そこに劇的な説得力が感じられず消耗品として扱われてしまっている気がしてならないのです。
また、ヴィラン側のバンドーラ一味が凄くインパクトが強く存在感を発揮しているのに対して、ヒーロー側のジュウレンジャーが演技力やキャラ付けが薄味過ぎて存在感を食われてしまってるのもそれに拍車をかけています。


評価は前回に続きD(凡作)といったところで、前作との意識的な差別化には成功しているものの、かといって子供向けとして十分満足できる作りになっているとは言い難い出来栄えになりました。
あっちが立てばこっちが立たずというのは戦隊シリーズに限らずよくあることですが、今後面白くなってくれることに期待します。

 

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