明日の伝説

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『機動武闘伝Gガンダム』考察〜シャイニングガンダムとゴッドガンダムについて〜

『機界戦隊ゼンカイジャー』の批評を投稿しようと思ったのですが、なかなかうまく言語化できず、現在考案中なのでもう少し先になるかと思います。
さて、今回のテーマはちょっといつもと趣旨を変えて、アニメ作品の考察をやってみますが、その第1弾は『機動武闘伝Gガンダム』についてです。
Gガンダム」はガンダムシリーズの中における異色作と見る向きが強いですが、奥底は多分に富野ガンダムをはじめとした宇宙世紀ガンダムの残滓があります。
しかし一方で表面的な今川演出の奇抜さだったり、あるいは「ガンダムファイト」という他のシリーズでも類を見ない設定ばかりが取り沙汰され、まともな考察が進まないままです。


昔に比べて「ガンダムシリーズの1作品」と見る向きは強くなったものの、劇中の描写から機体やキャラクターなどについて様々な考察・批評をしてみようという動きが比較的少ない作品かと思われます。
そこで私の方から是非この「Gガンダム」に関する考察を書ける範囲で劇中の描写を基にしながら書いてみようとおもいますが、最初に語るのは「シャイニングガンダムゴッドガンダム」です。
Gガンダム」の中でも主人公機というだけあって劇中での活躍も華々しく、またその交代劇に関してもガンダムシリーズのみならずあらゆるロボアニメの中で最高にカッコいい交代劇でした。
そんなシャイニングとゴッドですが、劇中の描写を基にした機体の考察そのものがネットなどをザッと見回ってみても中々ないので、ここで改めて形にしてみます。

 

 

(1)GF13-017NJ・シャイニングガンダム

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出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B0052PEUFE


まずはシャイニングガンダムですが、特徴をざっくり述べるなら「格闘戦用に完全進化した初代ガンダム」であり、変形ギミックは交えながらもRX-78-2のセルフオマージュといえる機体です。
そもそも原点となる「機動戦士ガンダム」のガンダム自体が「鎧武者」をモチーフとした白兵戦用のモビルスーツですが、シャイニングガンダムは白兵戦を更に突き詰めた「鎧武者」そのものでした。
武器はバルカン砲・マシンキャノン・シャイニングソード・シャイニングショットの4つがあり(ただしマシンキャノンは劇中未使用)、必殺技が「シャイニングフィンガー」と「シャイニングフィンガーソード」の2種類です。
ドモンの気の状態に応じてノーマルモード・バトルモード・怒りのスーパーモード・真のスーパーモード(明鏡止水)の4つがあり、ドモンの戦意が高まるに応じて変身形態が増えていきます。


従来のシリーズと大きく異なるのは「気の可視化」と「変形ギミック」を融合させたところと必殺技を繰り出す時に技名を叫ぶという昭和スーパーロボットの演出手法へ先祖返りしていることです。
特に大きいのが「気の可視化」ですが、これに関してはまた別個記事を設けますが、この当時の看板漫画であった「ドラゴンボール」の界王拳スーパーサイヤ人の概念が強く影響しています。
怒りのスーパーモードでドモンの肉体が赤くなり一次的に能力が向上する(ただしその後には疲労が来る)演出は界王拳のオマージュですし、真のスーパーモードの明鏡止水は超サイヤ人のオマージュです。
とはいえ、「ドラゴンボール」以前にそもそも富野ガンダム・富野アニメでこの手の「気の可視化」自体は実験的要素として盛り込まれており、決して「Gガンダム」が初めてではありません。


わかりやすい例だと「Zガンダム」最終回でカミーユシロッコ相手に見せた怒りのウェイブライダー(通称「スイカバー」)、「ガンダムZZ」最終回でジュドーハマーン相手に見せたのもそれに類するものです。
また、「聖戦士ダンバイン」のオーラ力・「逆襲のシャア」のサイコフレーム・「Vガンダム」の光の翼などもその類ですし、何より富野監督が最初に手がけた「勇者ライディーン」も念能力で戦うロボでした。
こういった「思いの強さを念能力として可視化する」という演出はすでに富野ロボアニメで試みられており、「Gガンダム」の演出はそこら辺からカルトや宗教っぽさといった臭みを取り除いて洗練させたものです。
その「気の可視化」という概念を口が開いたり頭が怒髪天になったり、ドモンの体が赤くなったり黄金色になったりといった形で一体化させ、システムとして完成させた主人公機がシャイニングガンダムと言えます。


その上で個人的に感じたことですが、シャイニングガンダムの欠点として「怒りの感情にしか反応しない」の他に「エネルギー量が少ない」「シャイニングフィンガーが意外と破られている」が見受けられました。
まずエネルギー量の少なさですが、これは後述のゴッドガンダムと比較するとわかりますが、シャイニングガンダムは基本的にシャイニングフィンガー、シャイニングフィンガーソードを基本的に1回ずつしか使えません。
わかりやすい例だと3話のドモンとサイ・サイシーの初対決がそれで、ドモンはシャイニングフィンガーを幻影を破るために右手で1回、そして本物を捉えるために左手で1回ずつ使用しています。
なぜ2度目は左手でやったのかというと、シャイニングフィンガーは一度使用すると放出した熱を一度冷却しなければならず、またそして1回の戦闘で使えるエネルギー量が限られているのではないでしょうか。


それが目立ち始めるのがギアナ高地の修行で、シャイニングガンダムはスペックがゴッドに比べてやや低めで弱点も多いため、ドモンが強くなるにつれてどんどんドモンの肉体に追いつけなくなります。
そして23話でドモンが明鏡止水を開眼し真のスーパーモードに辿り着くと、機体性能は100%を超えた200%位にまでパワーアップしており、ここまで行くと完全にオーバーフローして追いつかないのです。
明鏡止水に目覚めた黄金の指である黄金色のシャイニングフィンガーでデビルガンダムを倒すのですが、この後マスターガンダムとの戦いの中でボロボロに傷つき、使用不可能になりました。
それはそうです、明鏡止水というドモンが手にする新形態に機体そのものが耐えられず、限界を超えた力を出しているために戦闘データは残ってもパイロットに機体が追いつきません。


そしてまたシャイニングフィンガーにも弱点があり、それは放出する熱量が分散してしまうために、威力を100%そのまま出して使えないということです。
現にドモンを裏切った師匠との初対決ではシャイニングフィンガーとダークネスフィンガーの打ち合いを行い、ドモンは師匠に負けてしまいした。
これはドモンがまだ精神面で未熟で怒りに囚われていたのもありますが、もう1つはシャイニングフィンガーの威力が相手に100%伝わりきらないのもあるのではないでしょうか。
そうした弱点を克服するために、ミカムラ博士が研究に研究を重ねて作られたのが後継機として登場するゴッドガンダムです。


(2)GF13-017NJ II・ゴッドガンダム

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出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B09NJJNB2Y


上記したシャイニングガンダムの弱点・欠点を全て克服したのが後半に登場するゴッドガンダムであり、歴代ガンダムの主人公機の中でも唯一最終回まで元気ピンピンなチートレベルといえる機体です。
シャイニングガンダムのような顔の変形はありませんが、ドモンの気力が高まることで胸の装甲が開きキング・オブ・ハートの紋章が浮かぶマルチプライヤーが露出します。
そして背面の羽根が開いて背後に日輪が浮かび上がる「ハイパーモード」になり、さらにドモンの心が極限まで高まると機体ごと黄金色になる「明鏡止水モード」まであるのです。
つまり戦闘形態としてはノーマルモード・ハイパーモード・明鏡止水の3つがあることになり、劇中で一度も負けたことのないガンダムファイト史上最強の機体といえます。


武器はバルカン砲・マシンキャノン・ゴッドスラッシュの3つでありシャイニングガンダム以上に白兵戦に特化した機体ですが、必殺技「爆熱ゴッドフィンガー」を火球として遠距離に打ち出すことができるのです。
また、特訓によってゴッドシャドー・ゴッドスラッシュタイフーン・ゴッドフィールドダッシュなどが使用可能になり、また39話では東方不敗が最終奥義・石破天驚拳や超級覇王電影弾も使用可能となりました。
エネルギー量やスペックそのものが段違いに高く、ノーマルモードですらシャイニングガンダムのスーパーモードを軽く凌駕し、さらに何度ゴッドフィンガーを使ってもエネルギーが無尽蔵にあるのか疲れ知らずです。
しかもガンダムシリーズの伝統である「最終回ではボロボロになった機体を乗り捨てる」すらもなく、最終回でデビルガンダムを撃破しても無傷で元気ピンピンであり、この意味でも異色の機体といえます。


で、上記のシャイニングガンダムの弱点は全て克服されているのですが、中でもここで特筆しておきたいのは「爆熱ゴッドフィンガー」で、シャイニングフィンガーとは明確な違いがあります。
まず1つ目が関節部分のマニピュレーターが螺旋状になっていてドリル効果を与える為にシャイニングフィンガー以上の突貫力を生み出すことを可能にしているのです。
そして2つ目にゴッドフィンガーや石破天驚拳を使用する際に前腕の「ゴッドカバー」を覆い被せることでその熱を逃がさず収束させることによってエネルギーを凝縮しています。
これによって、シャイニングフィンガーと違い無駄なエネルギーロスを防ぎ、相手の機体の急所のみを的確に貫いて勝つことを可能にしているのです。


その証拠に、ゴッドフィンガーはシャイニングフィンガーとは違い、貫手で相手のコックピット(対戦相手の腹部)を射し貫き、上空に掲げてエネルギーを全てそこに集積させます。
そしてそのエネルギーが全て溜まったところでドモンの「ヒート!エンド!」と共にエネルギーを一気に放出し爆発させるという仕様になっており、シャイニングフィンガーと比べて物凄くテクニカルな必殺技です。
シャイニングフィンガーも相手の機体の頭を掴んで潰すという点で合理的な技ではあるのですが、爆熱ゴッドフィンガーはその応用技として完成度の高い技で、劇中でも負けたことがほとんどありません。
ゴッドフィンガーを破られたのは37話のサイ・サイシーとの再戦のみであり、この時だけはサイ・サイシーが弁髪刀を使って事前にゴッドガンダムの右肘にダメージを与え、真・流星胡蝶剣で破りました。


その後師匠の東方不敗との再戦でもダークネスフィンガーと引き分けだったことなどを考えるとサイ・サイシーも十分に凄いのですが、とにかくシャイニングフィンガーと違い破られたことはほとんどありません。
このように、荒唐無稽に思われるGガンダムのバトル描写ですが、このように劇中の描写と設定を基に考察していくと、実はかなり筋の通った合理的な技であり機体であることがご理解いただけたことでしょう。
ただ、「Gガンダム」は前述したように今川演出だとかその辺のことばかりが語られる為、なかなか真面目な方向性での考察・研究が十分になされていないことがネックであります。
そこで今回のこの時期がその足がかりになればと思い、まずはこの2機の機体解説と共に強さや技の描写などを私なりに言語化してみました。


(3)シャイニングガンダムゴッドガンダムの強さの序列


さて、それでは最後に劇中の描写を基に、シャイニングガンダムゴッドガンダムの強さの序列を考察しますが、ここで話題となるのはシャイニングガンダムのスーパーモードとゴッドガンダムのハイパーモードの比較です。
何故ならば、23話で真のスーパーモードに行き着いた時のシャイニングガンダムマスターガンダムとデビルガンダムを歯牙にもかけず圧倒しており、劇中でもかなり高い性能を発揮しています。
しかしその後ゴッドガンダムに乗った時は「シャイニングガンダムより強い」という設定ではあるものの、割と苦戦する描写も目立つのでゴッドよりこの時のシャイニングの方が強いのではという議論があるのです。
実際39話でガンダムヘッドが出てきて迎え撃とうとした時にはガンダムヘッド3体の攻撃をまともに受けていましたが、23話のシャイニングガンダムはそのガンダムヘッドを物ともせず掠めるだけで破壊していました。


これは間違いなく明鏡止水のオーラによるものなのですが、確かにこの描写を見比べると39話のゴッドガンダムよりも23話のシャイニングガンダムの方が強そうに見えても仕方ないでしょう。
なぜそう見えるかというと理由は2つあって、1つは「明鏡止水によって機体が黄金色になっているかどうか」という違い、そしてもう1つが「機体をきちんと乗りこなせているかどうか」という違いです。
シャイニングガンダムガンダムファイトの始まりから11ヶ月近く使っており、ギアナ高地での決戦の時には既に100%ものにして機体を使いこなしていたことが考えられます。
エヴァでいうところ「シンクロ率」というやつですが、「Gガンダム」で実は隠れたテーマの1つに「機体性能や潜在能力をきちんとパイロットが引き出せているか?」があるのです。


どれだけ機体性能が高くても、そしてどれだけ潜在能力が高くてもそれを普段から訓練によって引き出し本番で有効に発揮できなければ勝つことはできません。
この点で見てみると、23話のドモンは自身の潜在能力としてあった明鏡止水という真のスーパーモード、そして長い間乗りこなしたシャイニングガンダムの機体性能をフルに発揮していました。
だからこそその集大成としてギアナ高地マスターガンダムをボロ雑巾のごとく圧倒し、さらにデビルガンダムを単独で撃破してしまうほどの強さを発揮していたのです。
この点39話ではまだドモンがゴッドガンダムの性能を100%引き出せておらず慣れきっていない、また明鏡止水の力を引き出しているわけでもないため23話ほどの強さを引き出せていないのでしょう。


実際後半まで含めて見ても23話のドモンとシャイニングガンダムは相当に性能が高く、「ドラゴンボール」でいえばフリーザ戦時の超サイヤ人孫悟空、セルゲーム時の超サイヤ人2孫悟飯と似ています。
一時的に凄まじい潜在能力を発揮して格上の相手との実力の差を詰めて勝つというものですが、この時はあくまでも神がかった奇跡を引き起こして勝ったかのような感じでした。
つまり23話で一時的な火事場のくそ力のようにして引き出した真のスーパーモードを今度は自分の実力として引き出せるようになって、初めて真のキングオブハートとして勝てるということでしょう。
そのためにドモンはガンダムファイト決勝大会の1ヶ月で強敵を相手に様々な実戦経験を積む必要があり、45話の師匠との再戦で23話の強さを自力で引き出せるようになったのです。


このスーパーモード・ハイパーモード・明鏡止水といった「気の可視化」に関しては別個で記事を設けますが、まずはシャイニングガンダム(以下SG)とゴッドガンダム(以下GG)の力関係を比較してみます。
比較するのはSGノーマルモード・SGバトルモード・SG怒りのスーパーモード・SG真のスーパーモード・GGノーマルモード・GGハイパーモード・GG明鏡止水の7つで、結論からすると以下の通りです。


GG明鏡止水>SG真のスーパーモード≧GGハイパーモード>GGノーマルモード>(超えられない壁)>SG怒りのスーパーモード>SGバトルモード>SGノーマルモード


こんなところでしょうか。
23話のSG真のスーパーモードは今見直してもやはり相当の強さだったといえますし、またGGノーマルモードとSG怒りのスーパーモードに超えられない壁を設けたのはドモンが比較にならないほど強くなっているからです。
ギアナ高地でもう一度修行をやり直して強さの本質を見つめ直したドモンとそれ以前のドモンは大きな差がありますが、その1つの指標が「錆びた刀で木を着ることができるか?」にあります。
シャッフルの中でも東方不敗やシュバルツクラスと対等に渡り合うにはこれが必要だったわけであり、新シャッフルのメンバーの中でもドモンはやはり別格ではないでしょうか。