明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ26作目『忍風戦隊ハリケンジャー 10 YEARS AFTER』(2013)感想

脚本:宮下隼一/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
「10年前の戦いは間違いだった!!」
世界各地で謎の連続爆破事件が発生した。被害は何れも宇宙統一忍者流の支部。事件の真相を追うハリケンブルーとハリケンイエローがたどり着いた犯人は、なんとハリケンレッド=椎名鷹介だった! 「何故だ! どうしてなんだ!?」と問う2人に、彼は語る、10年前の戦いは間違いだった・・・、と。 その言葉は真実なのか? 10年の歳月が彼を変えてしまったのか? 新たな「決意」と「戦い」を迫られる―。


<感想>
東映特撮YouTubeで配信されたのでチェックしましたが…うーん、ぶっちゃけ「だから何?」しか浮かびませんでした。一言で言って退屈です、寝てた方がマシなレベル。
そもそも私は原典であるTVシリーズの「ハリケンジャー」自体をそこまで高く評価していないのですが、本作はどうもそのTVシリーズの悪いところだけが突出してしまった印象。
もちろんいい点もないわけではないのですが、どうにも「オリジナルキャストの同窓会」の域を抜け出るものではなく、演出も脚本もこれといって目新しいものはありませんでした。


問題点は色々ありますが、大きく分けると以下の要素に集約されます。

 


(1)内容が単なる役者のプロモーションビデオでしかない


最初に本編の内容自体が単なる役者のプロモーションビデオにしかなっておらず、上記しましたが単なるオリジナルキャストの同窓会の領域を抜け出ません。
特に七海がバスローブ一枚で家の中でアクションするシーン、そしてJUN烈(純烈)の歌謡シーンなんて完全に中の人ネタとして入れた以外の意味はないでしょう。
それが何かしら作品としての面白さやキャラ造形の掘り下げに寄与していれば評価できますが、全くそんなことはなく物語の核とも繋がっていないのです。


まず七海のアクションシーンは10年前のリアルタイム当時のビジュアルならまだ刺さったかもしれませんが、この「10 YEARS AFTER」でそれをやるのはきついものがあります。
そもそも私は本作の1年前に放送されていた「ゴーカイジャー」で過去作のオリジナルキャストが出演すること自体に納得行かない部分がありました。
というのも、リアルにヒーローをやっていたところから10年も経てば余程のことがない限り老化に伴うビジュアルの劣化は避けられませんし、実際既に引退した人が無理に出ているのを見るのはきついです。
それはハリケンの3人も同様に「ゴーカイ」出演の時点で既にヒーローとしてのオーラはなくなっており、中でも七海役の長澤奈央に関してはそれが目立ちます。


また、カブトライジャーの中の人である白川氏に関しても同様にビジュアル自体はかなり細身で綺麗になっていますが、同時にカブトライジャーとしての尖りがなくなって完全な別人です。
そりゃあずっと純烈のボーカルを繰り返していればそうなるのも当然でしょうが、だからこそ出て欲しくはなかったし、演技力も当時と比べて下がっていたのが目立ちました。
今回は鷹介役の塩谷瞬氏がシリアスな演技をしていて、そちらは然程悪くはなかったのですが、そもそも鷹介自体がそんな演技の似合うキャラじゃないのでただの「シリアスぶってる人」にしか見えません。
正直こんなので金取るのかと思わせるレベルであり、本作の役者をずっと応援している人か、「ハリケンジャー」ならどんな内容でもOKという人以外は向かないでしょう。
少なくとも私にはやっぱり向いていなかったかなと思わされました。


(2)なぜ10年後も戦い続けているのかが疑問


2つ目に、本作を「物語」として見た場合の一番の疑問はどのようにしてジャカンジャが復活し、そしてまたハリケンジャーがなぜ人知れず戦い続けているのかがわかりません。
本編でも触れられていた通り、ジャカンジャは本作の10年前に既に滅んだという設定になっているわけで、それを復活させようと思ったらそれ相応の納得できる理由が必要になります。
しかし、本作で復活していたのはなぜかフラビージョとウェンディーヌだけであり、サタラクラやサンダールなど他の暗黒の槍や怪人が復活していない基準がわかりません。
強いて挙げるなら、やはり(1)で述べた役者の都合が考えられますが、劇中での整合性が取れるような説明がなされていないために、素直に世界観に入り込めないのです。


また、ハリケンジャーもゴウライジャーも卒業後は一般的な職業に就いていたにもかかわらず、どうして大人になってまでヒーローとして戦い続けなければならないのでしょうか?
特に吼太はもう既に二児の父親になっていたのですから、ハリケンイエローを他の子達に継承して引退しても良さそうですが、なぜかそういう描写や設定すらありません。
せめて、「ジャカンジャが消えた後でも地球には脅威となる存在が現れ、ハリケンジャーとゴウライジャーは戦い続けていた」とか納得できる説明は欲しかったところです。
いずれにしても、TVシリーズで忍者学校は卒業したわけなので、これ以上鷹介たちがヒーローとして戦い続ける意味がなくなってしまっており、そこのフォローが足りません。


最初に鷹介がやっていた「10年前の戦いは間違いだった」や後述する天界のことに関しても、やたら重々しく物語の核として持ち出した割には大して奥行きのあるドラマに発展しませんでした
そもそも鷹介自体TVシリーズでもそうでしたがシリアスが似合わないバカキャラですし、しかもその内容が「天界を人質に囚われていたから」というしょうもなさで、それをわざわざ秘密にして裏切る理由がありません。
それならいっそ鷹介が天界と出会ったことで厨二病を覚醒させたとかの方がまだ似合いそうですがそんなことはなく、蓋を開けてみれば物凄く大味な中身のない葛藤でしたとさ。
まあこれに関しては期待して見ていなかったのでそんなことだろうなあとは思いましたが、悪い意味で期待を裏切らない話だったのには失望しました。


(3)鷹介と天界の交流自体が盛り上がりに欠ける


3つ目に、鷹介と天界周りの設定・ドラマがまるで面白くありません。
「レッドと子供キャラの絡み」という意味でも、TVシリーズのテーマでもあった「伝説の後継者」という意味でも、なぜこの設定にしたのかが不明です。
まずハリケンジャー自体が特別に子供に優しいヒーローという印象がなく、子供に優しいキャラならまだ鷹介より子持ちの吼太がやった方が説得力があります。
そして2つ目に天界の正体が「邪悪なる意志が消滅する寸前に残した聖なる意志」というのもまた無理のある後付け設定であり、如何にも取ってつけたように見えてあざとい設定です。


鷹介に助けられた結果シュリケンジャーの後継者となった彼ですが、そもそも「なぜ忍者になろうと思ったのか?」の内面描写が不足しているので、彼がシュリケンジャーになってもちっとも盛り上がりません。
大体天界役の橋本仰未自体が子役とはいえ学芸会レベルの演技力なので人質のシーンも迫力がありませんし、シュリケンジャーの後継者になることで生じる劇的な変化や物語の重みがないのです。
それに原典のシュリケンジャー自体御前様絡み以外では基本的に正体不明の忍者という感じでしたし、その御前様との主従関係自体も終盤で唐突に持ち込まれた設定だったので個人的な興味も薄い。
むしろ天界=シュリケンジャーというネタをやりたいがために無理矢理設定をこじつけて作ったことが丸わかりなレベルであり、肝心要のここが盛り上がらなければどうしようもありません。


例えるなら、大したことなさそうなオンボロの老舗だけれど中にあるのは極上に美味しい和風料理、という感じを出したかったのでしょうが、蓋を開けて見たら犬も食わない産廃レベルです。
そんなものを食べるために私は本作を見たわけではないので、あまりの設計の稚拙さにガッカリしました。


(4)零の槍バット・ゼ・ルンバも面白くない


そんな天界を人質にした今回の黒幕である零の槍バット・ゼ・ルンバの設定やドラマにもまるでひねりがなく、デザインも壊滅的にダサい上に台詞回しや行動はクソダサい厨二病のオンパレード。
ジャカンジャに入った元地球忍者という設定はどこか「ゴセイジャー」のブレドランを彷彿させますが、そのことによって生じるハリケンジャーやゴウライジャーとの対比にまるで面白みがありません。
これならまだブレドランの方が(ネタ的な部分も含めて)まだそこそこにキャラは立っていたといえ、私は好きじゃないですが彼がやりたいことは一貫していました。
ブレドランは元護星天使で、最後は「救世主ブラジラ」となって「地球の浄化」を目的としており、いわゆる「善悪の相対化」をやろうとしたことが窺えます。


しかし、本作のルンバは別にそのようなハリケンジャーやゴウライジャーとの対比となるキャラではありませんし、何ならその役目はTVシリーズで既にゴウライジャーが通った道です。
ゴウライジャーも「アレ」の入手のためとはいえジャカンジャ側についたこともありましたから…まあ強いていえば「完全に闇落ちしたゴウライジャー」というところでしょうか。
かといって、復讐の要素があるわけでもなく、そもそもなぜジャカンジャについたのかの経緯もよくわからないため、天界同様キャラとしての面白さは皆無です。
まあ既存のキャラクターを貶めるような真似をしなかっただけマシなのかもしれませんが、なぜこんなクソダサいオリジナルの敵キャラと戦わなければならないのかわかりません。


総じて言うならば、本作はメインライターの宮下氏とチーフの渡辺監督が揃ってこの出来栄えなのかとガッカリするレベルです。
まあそもそも大元の「ハリケンジャー」自体がお世辞にもクオリティの高い作品とはいえないのですが、本作はその「ハリケン」の悪い部分だけが際立つ出来となってしまいました。
やっぱり単なる同窓会フィルム以上のものではなく、全体的にとっ散らかっていて何もかもが中途半端、強いていえばラストのアクションシーンだけはそこそこよかったと思います。
評価はE(不作)、美点が全くなかったわけではないだけマシですが、お世辞にも褒められたレベルではないので、期待して見ると確実に損をしてしまうこと間違いなしです。

 

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