明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)39・40話感想

 

第39話「廻せ命のルーレット」


脚本:荒川稔久/演出:蓑輪雅夫


<あらすじ>
凱と香のデート中にグレイとスナイパーキャットが現れた。すぐさま竜たちが助けに来たが、スナイパーキャットに凱以外の4人が人形にされてしまう。この戦いで凱に心臓部を奪われたグレイは、4人の人形と自らの心臓部を賭けたルーレット勝負を凱に挑む。果たして凱はグレイの計算能力に打ち勝つことができるのか。


<感想>
冒頭、のっけから凱と香のラブシーンから始まるのですが、うーん、今見直すとクサいなあ^^;


「いつ来るのかな?バイラムを倒して、本当の恋人同士になれる日が」
「すぐに来るさ」
「本当?」
「ああ。賭けてもいいぜ」
「残念だな、その賭は負けだ。賭けてもいい」
「生憎だな。俺は負ける賭けは絶対にしないんだ」
「私もだ」


何でもかんでもすぐに酒かタバコか女かギャンブルかといった大人の事情に繋げる辺りが実に「ジェットマン」らしい展開です。
グレイはバイオ次元獣スナイパーキャットを呼び出すと、ブラックコンドル以外の4人を捉えて人形にするのですが、一方で凱もグレイの心臓部分のパーツを奪取。
まさに「ひとりの戦い」なわけですが、地味にこれが終盤の展開の伏線になっているのかと思うと、凱がここで一対一でグレイと勝負する意味は大きいのだなと。
そして、その地球のピンチがかかった状況でやるのがなぜかカジノ対決という…なぜここでカジノなのかとは思いますが、でもこれが通用してしまうのが本作らしいです。


凱は普段がカジュアルな格好というのもあって、スーツ姿が似合いますね、蝶ネクタイでも凱が着ると様になるからすごくカッコいい。
ちなみに竜はスーツ姿よりも道着とかの方が似合うので、そういう意味でも本作は着る服装にキャラクターの個性が出ているのはいいと思います。
凱と小田切長官、そしてグレイとマリアというシチュエーションが独特の緊張感を生み出しており、こういう時は双方ともきちんと信頼しているのはいいでしょう。
ただ、ここにトランザとラディゲが加わらない辺りが本当に野党集団のバイラムという感じですが、勝負は基本的にグレイ優勢で進むことに。


「所詮馬鹿で下等な人間に過ぎぬということか、あははははっ。残りのチップは1つ、大逆転の自信はあるまい」
「あるね、終わりだ。俺はこの勝負に命を賭ける」
「つまらない意地は張らない方がいいわよ」
「闇雲に意地を張るほど、馬鹿じゃないでしょ。最後に勝つ自信はあるわよねぇ?」
「俺は勝てる賭けしか乗らねえ」


田切長官が凱、グレイ、マリアを完全に上から目線で煽ることによって、勝負に緊張感が増していきます。
歴代でも数少ない女性司令官の小田切長官ですが、例に漏れず私も大好きな長官の1人です。
しかもここで長官までもが命を賭けるという展開に。


「私の命も、上乗せするわ」
「長官……!」
「5人の命は私の命よ」


そして最後の勝負もグレイがしっかり決める…筈だったが、なぜか台が傾き、勝負は最終的に凱の勝ちということに。
トリックとしてはテトラボーイがバレないように外で建物ごとカジノを傾けていたというイカサマによって勝ちを得ました。
ぶっちゃけこの落ち自体は予想の範疇でしたが、ここで大事なのは「目には目を、歯には歯を」という理屈が成立していることです。
グレイは「卑怯だぞ!」と言っていますが、グレイだって十分に卑怯な手を使っているのであり、また凱も決して正統派とは言えないアウトロー


「どんな形でも勝ちは勝ちだ。ただし、こいつは返すぜ!今度は真っ向から勝負だ!」


で、そのあとは普通に5人揃ってキャットスナイパーを倒すのですが、個人的にはおそらく「007」シリーズのカジノロワイヤルのオマージュをやりたかったと思われます。
ぶっちゃけ内容としてはどれも表層止まりの二番煎じなのですが、ここまでに積み重ねてきたキャラの演技力と関係性のおかげで面白い作品となりました。
今回は荒川さんの脚本が良かったというより、役者の演技と演出の力によって脚本の内容の拙さを補ったという感じではないでしょうか。
あんまり料理に例えたくないのですが、個人的な荒川脚本の評価は「レンジでチンしかできない癖に一流のレストランを気取っている羊頭狗肉の似非料理人」です。
まあでも、脚本が微妙でもそれを時として役者の演技や演出が超えてしまう瞬間があるので、これがあるから映画やテレビの世界というのは面白く、評価はB(良作)でしょうか。


第40話「命令!戦隊交代せよ」


脚本:荒木憲一/演出:東條昭平


<あらすじ>
トランザへの対抗心からラディゲ、グレイ、マリアが協力し、隕石ベムが誕生した。反バードニックエネルギーの前にジェットマンは無力化してしまう。そんなとき、5人の前に新戦隊ネオジェットマンが現れた。ネオジェットマンジェットイカロスを操り、隕石ベムに対抗するが……。


<感想>
さて来ました、ジェットマン終盤に向けた前後編の入りとして、とても評価の高い前後編です。
内容としては、ぶっちゃけ「帰ってきたウルトラマン」のベムスター編をベースに、根っこの部分で「ザンボット3」終盤の展開を下敷きにしています。
で、のっけからラディゲはトランザにボコられてました(笑)


「長生きしたけりゃ、んー?その反抗的な目を止めるんだな!」
「どうしたラディゲ?なぜ、奴に逆らう?」
「おまえ達、このまま奴の言いなりになるのか?!俺は嫌だ!そう、俺の足下に跪かせてやる!俺に力を貸せ。お前達の力がどうしても必要なのだ」
「「うむ」」


ここでなぜか「トランザを蹴落とすために」結束する3人の姿が面白く、決して「打倒ジェットマンではないのが見所ではないでしょうか。
で、その後ラディゲが発見した隕石を地球に引き寄せようとするも、当然ジェットマンに邪魔されてしまいます。


「グレーイ!」
「俺に任せろ!」


しかし、ホワイトスワンとブルースワローがマリアたちの作戦を邪魔し足止めしようとします。
ラディゲが踏ん張りすぎて崖から落ちてしまうところも含めて、ここ数話まじでラディゲにいいところなしです。
ラディゲの何が良いって良くも悪くも「小物」であるところがいいなあと思います、決して大物ではない。
ただ、ここはジェットマンの連携がよくなっているシーンでもあり、5人のチームワークが非常に良くなっています、


で、その隕石から登場した隕石ベムですが、これってTwitterのフォロワーさんが指摘していましたが、デザインといい能力といいネーミングといい、「帰ってきたウルトラマン」のベムスターに似ています。
隕石ベムの特殊能力はバードニックウェーブを無効化する体質であり、ジェットマンは初めてここに来て完全な天敵として負ける形となりました。
ジェットマンは今まで仲間割れや連携不足などでピンチに陥ったことはあっても、意外にもスペックの上で負けたことはさほどありません。
精々がセミマルくらいでしょうか、パワー不足ゆえに苦戦したという展開はほとんどなかったので、ここでそれを示して来たのは良かったです。


「もはや翼をもがれた瀕死の鳥」
「ついにジェットマンの最期だ!」
「見てるかあ、トランザ!ジェットマンを倒し、地球は俺達が頂戴する!!」


で、面白かったのがここからネオジェットマンと一条総司令が出てくるという展開になりました。
出ました、歴代屈指の嫌味な上司としてファンから散々言われていますが、まあここまで露骨に嫌味な奴だと、逆に感想書きやすくて良いですね(笑)


「何者だ?!」
「君たちは?」
「邪魔だ!とっととスカイキャンプに戻ってろ!」
「昼寝でもしてるんだな」


そして一気に主導権を持って行かれたジェットマン5人と小田切長官ですが、ネオジェットマンって次回への続きも含めると「プロの戦士」というよりは「ゴレンジャー予備軍」のオマージュでしょうか。
とりあえず訓練だけは受けているし力もあるけど、実戦経験による勘などがないために、予想外のアクシデントへの対応ができないなどといったところは実に2代目キレンジャーこと熊野大五郎っぽいです。
まあこれが元々のジェットマンだったと言われればその通りかもしれませんが、露骨に見下した態度や言動を取るあたりは全然プロフェッショナルとは言えません。


「我々の体にはバードニック反応路が埋め込まれ、エネルギーが尽きることはない」


しかも改造人間であるところは「ジャッカー」「フラッシュマン」のオマージュにもなっており、どれだけ一条総司令が非情(というかクズ)であるかがわかります。
展開としては少々安っぽい感じはしますが、この番組にあった「とりあえず素人に戦わせるくらいなら、プロに戦わせれば良いのではないか?」をここでやりたかったのでしょう。
しかし、結果としてはジェットイカロスジェットガルーダも久々に両方ともやられて次回に繋がりますが、内容としては前回よりも密度が高かったです。
やや唐突感はありますが、ただここまで来るのに時間とお金がかかったのだと思うと、一条総司令たちがむしろとても不憫に見えました。


一応根拠がないわけではなく、38話で「戦士に選ばれなかったものの嫉妬・羨望」は描かれてましたが、ここでそれがうまい形で伏線として機能していると考えれば筋は通ります。
昭和ウルトラテイストもここに来てうまく世界観の拡張に繋がり、話としても面白くなったので、評価はA(名作)です。

 

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