明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)35・36話感想

 

第35話「鳩がくれた戦う勇気」


脚本:荒木憲一/演出:東條昭平


<あらすじ>
アコは手術が必要な重病を患っていた少女・恵理と出会う。怖さから手術をなかなか受けようとしない恵理は、何かと戦う勇気を必要としていた。毒ガスネズミとの戦いで目が見えなくなったアコを助けるために、病を押して恵理が立ち上がる。


<感想>
久々のアコメイン回なのですが…うーん、個人的には非常に受け入れ難い展開。


そもそも私はこういう「辛い難病を抱えている子供がヒーローに勇気をもらって手術を受ける決意をする」という感動ポルノじみた話が凄く嫌いなんですよね、あまりにもわざとらしくて。
それにそんな少女のためにわざわざアコに盲目というハンデを背負わせて戦わせる意味もよくわかりませんし…あと何で今回使われている鳥が鳩なのかもよくわかりません。
鳩はよく「平和の象徴」と言われますが、はっきり言って鳩なんてマジで迷惑なだけです、糞は散らかすし仕事場の倉庫の中に勝手に入ってきますしね。
私も数年前に働いていた職場の倉庫の中によく鳩がいたのですが、パチンコ使って撃退というのを繰り返しており、もう本当に鳩にはうんざりしているのです。


また荒木脚本と東條演出ということで「歩くゴミ」を意識したように環境問題を意識したのかと思われるのですが、これも結局導入でそれっぽく言及しただけ。
盲目に陥ったアコをなぜか竜たちが放置して助けに来ない理由もわかりませんし、悪い意味で一人の戦いをアコに強いているのも非常によろしくない
まあ鳩に襲われるラディゲ様の描写は面白かったんですけどね、池ぽちゃなんかするような敵幹部なんて本当になかなか見られるもんじゃないですよ。
まあ逆に言えばそこ以外は話としても演出としても面白いものはなく、個人的にはぶっちゃけ微妙な一作ですね。


似たような話だとウルトラセブン38話の手術を受ける少年の話がありますが、こういうのを見るたび思うのは「お前らクソガキはヒーローからの助言がないと何もできないのか?」という話です。
ヒーローと子供キャラを関わらせるのを悪いとは言いませんが、手術を受ける決意をするための口実にヒーローを利用するのはどうかと思います。
そういうのは医療カウンセラーがやるべきことであって、ヒーローたるジェットマンがやるべきことはあくまでも違うところにあるのですから。
やりたい内容に対して、その中身や表現の方法が全く伴っていないという典型的な失敗作のセオリーになっていて、評価F(駄作)です。


第36話「歩く食欲!アリ人間」


脚本:井上敏樹/演出:雨宮慶太


<あらすじ>
田切長官以下5人の鳥人戦隊は日頃の戦いから離れ、長野県の牧場へ休息に出かけた。戦士たちは、パラグライダー、サイクリング、露天風呂と大自然を満喫する。一方バイラムでは、子供であることを馬鹿にされたトランが、幹部たちを見返してやるため休息中の戦士たちの元へ向かっていた。


<感想>
今回は3クール目の終わりにして、実質の4クール目への導入を兼ねた回なのですが、地方ロケ回ということもあってか、完全な息抜き回。
場所は長野県のレッドウッドイン、今でも大人気の観光スポットで、天然温泉もある宿泊施設として有名なところだそうです。
長野県は本当に天然温泉がよく、私もここではないのですが一回だけ大学時代の学友に連れて行ってもらったことがあります。


コメントにもありましたが、冒頭の息抜きシーンは本当にジェットマンというメンバーの仲の良さが伝わってきますね。
もちろん最初からこうだったわけではないんですが、32話までを経て非常にいい感じにメンバーがまとまってきています
で、特に良かったのがバレーボールのところで凱が香と一緒にみんなを見守っているシーンで、あれだけ馴れ合いが嫌いだった凱が本当に丸くなってきました。
もちろん元来の身勝手さも残っているのですが、ここからの凱はクールでかっこいいシーンが目立つので、そういう意味でも変化が自然に出ていていいですね。
また、この「全員が楽しんでいるのを俯瞰で微笑ましく見守る」というのは最終回のさりげない伏線になっており、そう思うと楽しくもあり切なくもあります。


逆にここからがターニングポイントですが、バイラムではとうとう今までが嘘のように一気に仲間割れするようになります。
グレイとマリアが渋くクラシック音楽に耽っている最中にとらんが邪魔してしまいますが、ここからのやりとりが見ものです。


「邪魔だ失せろ!」
「グレイ、まあそう怒るな。トランは子供なのだ、まだ芸術を理解できる歳ではない」
「くっ!」
「笛や太鼓が欲しい年頃というわけか、ふふ」


ここでラディゲも登場し3人揃ってトランを「子供」とばかにするのですが、いよいよ終盤に向けてバイラム崩壊の兆しが見え始めてきました。
このバイラムの仲の悪さといったら歴代でも相当なもので、思えば翌年の「ジュウレンジャー」のバンドーラ一味が和気藹々としていたのはバイラムとの意図的な差別化だったのだなと。
で、子供だ子供だとバカにされ憤慨したトランはいよいよ反抗期に突入です。


「見ていろ、今に見ていろ!僕だって、僕だって子供のままじゃないんだ!」


で、トランはなぜだか竜たちが宿泊しているレッドウッドインへ向かい…何でこういう時に限ってジェットマンのいるところへ向かうんだろう?
まあトランが単純にガキなだけということもあるでしょうが、単なるアリ人間の話を描くためにわざわざ長野県に出向く理由が薄いのは惜しまれるところです。
まあその後の牛の白骨死体とかアリ人間と化して色々食欲を貪る香は結構ギャップがあって面白いのですが、でも香って序盤で結構はっちゃけたとこ見せてるだけにリアルにやりそうで怖い^^;
そしてそんな香をアリ人間にした恨みは当然ブラックコンドルが許すわけがありませんが、ここからが見もの。


「てめえ、ガキだと思っていたがもう手加減はしねえ!罪を償え!香を玩具にした罪をな!」
「よせ、凱!バイラムといえども相手は子供だ」
「子供?僕を、僕を馬鹿にするのか!?」


その後は普通にアリバズーカが出現し、ジェットマンがこれを迎え撃って香が正気に戻ります。
「よくも乙女に恥をかかせてくれたわね!」って言いますが、あんたは言うほど乙女じゃないですよ(笑)
むしろ物凄く図太い神経の持ち主なので、どっちかというとアコの方が本質的にはずっと乙女なんだよなあ。
「私、本当は少食です!」と言っていましたが、こんなことをアピールする辺り、絶対痩せの大食いと見ました。


で、問題はここからで、ジェットマンからも散々子供と罵られたトランは一気に大人3人組に追い詰められていきます。


「敵に情けをかけて貰った上、このザマとはな」
「まさにアリのように踏みつぶされたというわけか」
「ふ、しょせん子供」
「ははははははは」
「ハハハハハハハハ」
「ふふふふふ」


もう何かあれなんだろうなあ、色々負け続きだっただけに、幹部全員ストレス溜まってたんだろうなあと想像できます。
マリアは竜に抱きしめられ、グレイは竜に出し抜かれ、ラディゲは鳩に襲われて池に落っこちて…うん、こうなったのも納得です。
これまでノーダメージだったトランが一気に「子供だから」というだけで散々笑い者にされるという、くだらないながらものすごく笑える展開。
で、その結果どうなったかと言うと…。


「見ていろ、今に見ていろ!僕の、僕の怒りが成長を早める!!うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


怒りのスーパーモードに入ったトランは何故だか広瀬匠氏演じる美形悪役へと完全体進化を遂げました。
まず怒った理由が「子供だからばかにされた」というのも、そして成熟期を飛ばして一気に完全体に進化したのも凄いですが、改めて見ると凄い進化です。
どうしてぽっちゃりだったガキがこんな美青年になるのかという話ですが、まあ正直トランはイマイチ影が薄かったですからね。
子供幹部だと迫力がありませんし、どうしてもそこは大人にした方が良かったのかもしれませんが、でもここからトランは一気に存在感を発揮します。


単なる箸休めの回ではありますが、中身は意外にも充実していて、プライベートシーンもアクションシーンもドラマシーンも盛り沢山でした。
幕の内弁当のようにぎっしりと詰まっており、総合評価はA(名作)

 

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