明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズと限界効用逓減の法則

昨日、Twitterで私のフォロワーと色々話していたのですが、その中で「どんなシリーズ物もある程度の所まで行くと限界を迎える」ということがあります。
これは何事にも当てはまる1つの真理なのですが、専門用語で「限界効用逓減の法則」というものがあり、長年続けているものはどこかで必ずこうなるのです。
今回はいくつかの事象を例に取りながら、限界効用逓減の法則を当てはめて解説してみましょう。

 


(1)限界効用逓減の法則とは?


限界効用逓減の法則とは「一定期間に消費される財の数量が増加するにつれて、その追加分から得られる限界効用は次第に減少する」という法則です。
これだけだと「何のこっちゃ?」なことだとおもうので、まずグラフを見ながらわかりやすく解説していきましょう。

 

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限界効用逓減の法則


このように、最初の段階では物凄く数値が高くなるのですが、ある程度の所まで極まるとそこで青天井になってしまい、頭打ちになってなだらかになってしまうというものです。
例えば、食事に関して説明すると、例えば最初のビール一杯目を飲んだ時の満足度を二度目、三度目と飲んで行くうちに得られなくなっていきます。
よくお金持ちが毎日キャビアやフォアグラなどの高級料理を食しているかというと決してそんなことはなく、普段は質素な食事をしています。
それは毎日そんな食事をしているとかえって刺激不足になってしまい、1回目食べた時の感動を忘れてしまいかねないからです。


例えば最初にめちゃくちゃ美味しい食べ物に出会ったとしても、大体3日目くらいで飽きます。
美人は3日で飽きる、ブスは3日で慣れる」と言いますが、これも限界効用理論が働いているからです。
どんなに美しい人でもそうでない人でも、毎日顔を突き合わせているとそれが日常となり当たり前になります。


(2)結婚が人生の墓場と言われる理由


人間関係で最もわかりやすい限界効用逓減の法則はというと結婚が正にそれで、結婚が人生の墓場と言われる理由もここにあるのです。
これは特に恋愛の延長線上で結婚した夫婦にありがちで、結婚前はすごく楽しい日々だったのに、結婚した途端に夫婦関係が冷めてしまうことがよくあります。
そして気がつけば主婦は女子会、男は仕事仲間との飲みなどでお互いの愚痴をめちゃくちゃ漏らしまくるという本末転倒な結果となるのです。
こうなる理由もその1つには限界効用逓減の法則があり、毎日一緒にいることが当たり前になってしまい、倦怠期に入ってしまうことになります。


つまり、結婚式までで気持ちが最大限まで高ぶって1つのゴールに達した後、それ以上の刺激は得られなくなり頭打ちとなるのです。 
では解決策がないのかというとそんなことはなく、具体的な解決策がいくつかあります。
まず1つ目がマンネリを回避するために夫婦が別個に新しい個人的趣味を始めること…お互いのプライベートが充実すれば、それだけでマンネリは避けられるのです。
子育てが終わって自分のことに時間を割く時間が増えると、習い事や教室に行く主婦などが増えますが、これも限界効用理論によるマンネリを打破するためにあります。


2つ目は夫婦揃って社交的な場に出ることであり、これはメンタリストのDaigo氏も仰っていましたが、夫婦で共通の友人・知人を作るのはマンネリ打破になるのです。
2人の関係だけで閉じてしまうから広がりがないだけで、新しい人間関係を広げれば、そこからまた新しい関係が出来上がり、夫婦関係に新たな刺激がもたらされます。
そして3つ目、これはもう最後の手段ですが、思い切って離婚し関係性をリセットすることであり、夫婦関係を断捨離することがお互いのためになることもあるのです。
離婚というと日本ではマイナスのイメージがありますが、夫婦の絆を一度手放すことで、かえってそこから解放されて身軽になることもあります。


(3)「ドラゴンボール」に見られる限界効用逓減の法則


さて、次に私が大好きなジャンプ漫画黄金期の名作「ドラゴンボール」に見られる限界効用逓減の法則を見て行きましょう。
これはもう非常に分かりやすく、ナメック星編(フリーザ編)までとそれ以後になり、ドラゴンボール」はもう実質フリーザ編がクライマックスなのです。
クリリンの死と引き換えに超サイヤ人に覚醒した孫悟空フリーザ最終形態の極限のバトル…「ドラゴンボール」であれ以上のバトルはまずないでしょう。
しかも最後はナメック星消滅まで行きますから、あそこは漫画もアニメも最高潮であり、強さのインフレ自体はもうあそこで1つの到達点となるのです。


その後人造人間編でトランクスやベジータ孫悟飯までもが超サイヤ人になれるようになっても、ぶっちゃけそんなに強くなったようには見えません
そもそもレッドリボン軍の復讐という要素自体が物語としては極めて矮小化されたものであり、それがフリーザより強いと言われても説得力がないでしょう。
実際セルゲームにしてもブウ編に行っても、数字自体は増え続けているはずなのに大して強くなったように見えないのは正にこの限界効用理論が働いているからです。
原作者の鳥山明先生もフリーザと悟空の戦い以降は強さの表現をどうするかに苦心したと仰っていましたが、正に人造人間編以降のドラゴンボールはこの例に当てはまります。


だから超サイヤ人2だの3だの、そしてフュージョンだのポタラだのというのは結局じゃぶじゃぶ水嵩を増しているにすぎません。
言ってみればもう超サイヤ人に覚醒した時点で孫悟空デジモンで言うウォーグレイモンレベルまで進化しているわけです。
それ以上続けようとすると「ドラゴンボール超」の「神の気」がそうであるように、別の概念を導入するしか方法はありません。
ポケモンでいえば人工的に能力を引き出すメガ進化であり、「ドラゴンボール超」の悟空とベジータは正にそうやって進化しています。


(4)スーパー戦隊シリーズと限界効用逓減の法則


そしてここでようやくスーパー戦隊シリーズの話になりますが、スーパー戦隊シリーズも結局は「タイムレンジャー」、行って「ガオレンジャー」までで表現が青天井になります。
もうこの辺りまででシリーズの文法やお約束としてやるべきことややれることはほとんど出尽くしてしまい、実は「ガオレンジャー」以降は大したパラダイムシフトは起きていません。
もちろん、中には「ボウケンジャー」「シンケンジャー」「ゴーカイジャー」「トッキュウジャー」「ルパパト」など、転換点と言えそうな作品はいくつかあります。
しかし、これらも結局は超サイヤ2や3と同じように水嵩が増しているか、もしくは「神の気」の導入と同じように外付けハードディスクによる容量増設に過ぎないのです。


ガオレンジャー」で大量の玩具販促によるパワーアップに走り出してから、シリーズはどんどん物語やキャラをじっくり描く余裕が失われつつあります。
分かりやすい例がゴーオンジャー」のエンジンオーG12ですが、あれなんかはもうひたすら玩具販促の物量を詰め込んだために物語とキャラを犠牲にしているのです。
玩具売上が回復しながらも、なぜ視聴率が回復しなかったのかというと、それはキャラクターや物語の力が弱いからであり、「ゴーオンジャー」は歴代でもキャラの魅力が薄い作品となっています。
だからこそ「シンケンジャー」がそのあたりを打破しようとした感じはありますが、その「シンケンジャー」ですらも00年代の玩具販促のノルマに押し負けた感じがあるのです。


とは言え、スーパー戦隊シリーズはそれでも毎年一から作ろうという気概は見せているので、まだ本当の意味での限界値は来ていないのかもしれません。
ただ、制作陣の中に次世代を担える人がいなくて、今もう頼れる人が脚本家だと香村純子氏やそれ以前の井上敏樹先生、また演出家も柴崎氏や中澤祥次郎氏を最後に新世代は出ていないのです。
来年の「ドンブラザーズ」で平成の「アギト」「555」を手がけたスタッフ陣がわざわざ戦隊シリーズに来たのも、そろそろシリーズが本当の意味で頭打ちとなるからかもしれません。
かといってスーパー戦隊シリーズを終わりにして新しい企画をスタートできるのかというと、それも難しいのが現状です。
何となくここ数年のシリーズとしての行き詰まりなどをみるに、大元の原因はこの限界効用逓減の法則にあるような気がしましたが、皆様はいかがお考えでしょうか?