明日の伝説

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戦隊レッド列伝 ギンガレッド/リョウマ(『星獣戦隊ギンガマン』)

戦隊レッド列伝、第三弾は『星獣戦隊ギンガマン』(1998)に登場するギンガレッド/リョウマです。
各パラメータは戦闘力、技巧、知性、精神力、統率力、そして人間力の合計6つを元に5点満点で判断します。
このパラメータは決してシリーズを跨ぐものではなく、作品内での描写に基づく相対的なものとご理解ください。
その上でランクをS、A、B、C、Dの5段階判定し、総合的なキャラクター考を最後に述べる形式です。


S(超強い、一騎打ちで幹部クラスを倒せる猛者)
A(かなり強い、他のメンバーよりも一歩抜きん出ている)
B(強い、他のメンバーより少し上程度)
C(普通、他のメンバーと大体同じくらい)
D(弱い、他のメンバーと比べても劣っている)


ギンガレッド/リョウマ(『星獣戦隊ギンガマン』)

 

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<パラメータ分析>
戦闘力:5
技巧:4
知性:4
精神力:5
統率力:3
人間性:5
数値合計:26/30
分析結果:S(超強い、一騎打ちで幹部クラスを倒せる猛者)


<キャラクター考>


「やっぱり兄さんのアースは凄い!星獣剣の戦士に選ばれるのも当然だな、俺なんかとは出来が違うよ!」


こんな自己肯定感の低い台詞を爽やかに言っていたリョウマは最初の段階だとどこか頼りなさそうに見えたが、そんな彼が兄ヒュウガを喪失しアースを覚醒させるところから物語はスタートする。
歴代戦隊の中でも気弱で温厚な青年が本気で怒った時に本領を発揮するという少年漫画のような展開はあるが、それを物語の導入として持ってきたのは本作が初めてではないだろうか。
兄ヒュウガをも遥かに凌ぐ強力な「炎のたてがみ」でヤートットを焼き尽くし、「倒す!」という彼らの強い思いに呼応して飛んでくるギンガブレス…歴代の中でも空前絶後の戦士誕生の瞬間だった。
その後リョウマは覚醒直後とはいえ炎のアースと星獣剣一本でバルバンの幹部連中を圧倒し、続く第二章ではバルバンの魔人コルシザーを単独で撃破してしまう圧倒的な戦闘力を持っている。
決して戦士としての資質が低いわけではなくむしろとても高いのだが、それでも兄ヒュウガに比べて技巧や知性・精神面などで初期は甘さが目立ったことも確かだ。


そんなリョウマは統率力はそこそこであるが、その代わりに人間力が非常に高く、周囲への気配りと笑顔を絶やさないし、勇太に対しても常に優しい理想のお兄さんだった。
戦士として未熟さや甘さを抱えつつも、5人の中で戦闘力は最強であり剣術もアースも兄ヒュウガとほぼ互角、ハヤテたちもそんなリョウマがギンガレッドであることを疑ったことはない。
ではそんな彼が最初から完璧なギンガレッドに見えたかというと話は違い、彼がギンガレッドになったのはあくまで兄ヒュウガの代理人としてなったに過ぎない。
星獣剣の戦士になるには過酷な選抜競争を潜り抜けねばならず、リョウマは最終段階でヒュウガとの比較で落選してしまったことが第一章から示されていた。


星獣剣の戦士に任命されることはそれだけで誉高いことであり、「ギンガマン!それは勇気あるもののみに許された、名誉ある銀河戦士の称号である!」とはそういう意味である。
ギンガマンは確かに代々受け継がれていく形式だが、いわゆる世襲制でも偶然に選ばれるのでもなく、実力第一で選抜されるために幼少の頃から星を守る戦士としての自意識を高く持って準備してきた。
それが本作のヒーロー像の根本にあり、世俗から隔絶してギンガの森という異世界で3,000年もの間熟成させてきた使命感や戦闘技術、戦闘知能は歴代でもトップクラスに高い。
ただし、3,000年もの間実戦経験をしていなかったこともあり、バルバンの想定外の襲撃に後手に回ることもあり、総合戦闘力は初代の頃に比べて衰えているとゼイハブからは言われていた。
だから兄も故郷も失いシルバースター乗馬倶楽部という住処と青山親子、そして星獣たちしか頼れるものがいない中で、凶悪な宇宙海賊バルバンと戦う使命を背負ったリョウマのプレッシャーは相当なものだっただろう。


そんなリョウマだが、兄譲りの戦士としての自負心は高く、第六章で星獣たちが一度仮死状態に陥ったとしても、決して諦めることなく前向きに挑み、第七章では勇太を相手に宣言した。


「そうさ、俺たちは死ぬわけにはいかないんだ。必ず生きて、星獣たちと一緒に新しい力を手に入れてみせる!」


この言葉がリョウマというキャラクターおよびギンガマンのヒーロー像の根源を示したものであり、リョウマたちの戦いは「自己犠牲」ではなく「未来を生きる」ための戦いである。
だから、バルバンとの厳しい戦いの中で、辛く苦しい時や選択の葛藤に迫られる瞬間がありつつも、リョウマたちは屈託無く爽やかに苦難と悲しみを受け入れて戦い続けるのだ。
このスレたところがない純朴な正義感の強さこそがギンガマンギンガマンたる所以であり、そういう銀河戦士の象徴としてリョウマというキャラクターは存在する。
だからそんな彼が唯一の弱点とも言えたのが兄・ヒュウガへの思いであり、モークも指摘していたように兄へのコンプレックスが弱点となっていた。
そしてそんな彼の甘さを第二十一章では復讐鬼である黒騎士ブルブラックから突きつけられるのだが、リョウマは転生を解かれ厳しい状況ながらもこう言い放つ。


「でも俺は今までそうやって戦ってきたんだ!そのせいで弱いなら、弱くったっていい!その代わり俺は、何度でも立ち上がる!守りたいものがある限り!何もかも犠牲にして勝ったとしても、その後に何があるんだ?あなたの戦い方では、終わった後に何も残らない!」


ここではっきりとリョウマは自己犠牲の戦い、すなわちバルバンに勝つためなら人間性も何もかもを押し殺した黒騎士の戦い方を否定した。
そして、その後ギンガの光での試練、二十五章でヒュウガを救うか星を守るかという公と私の葛藤を潜り抜け、戦士として大きく成長していく。
だからこそ、改めてヒュウガが帰ってきて、戦士としてのヒュウガは依然としてヒュウガが上でもリョウマははっきりと宣言した。


「俺、戦っていけると思うんだ!星獣剣の戦士として、バルバンを倒したいんだ!」


最初は義務的な側面もあり、心の何処かで兄へのコンプレックスを抱え続けていたリョウマはいつの間にか星獣剣の戦士の資格に誇りを持つようになる
そしてそれは同時に兄ヒュウガを超えたいという憧れゆえのコンプレックスの奥底にあった思いに違いはなく、ここからリョウマたちの本当の戦いが始まった。
だが、そんなリョウマはまたもや三十八章にしてヒュウガがアースを捨てたことで兄弟の絆を引き裂かれ、またもや運命に翻弄されることになる。
終盤になると戦いも激化していき、リョウマたちの顔つきも険しくなるが、そんな中でもリョウマたちから星を守る戦士としての心構えが失われたわけではない。


そして最終章、1年間かけて「星を守る」という公も、そして「故郷を取り戻す」という「私」も全てを大事にして戦ってきリョウマは自らの答えを示した。
それは自己犠牲の戦いという本作が目指すヒーロー像の本質から外れたことをしてしまったヒュウガを説得して引きずり戻し、アースを復活させることである。
第一章の伏線回収であると同時に、クランツがブルブラックを説得した第二十五章の伏線回収でもあり、ここでリョウマの兄超えの物語は完結した。
それは同時に長年戦隊シリーズの呪縛になっていた「自己犠牲」と「復讐」を真っ向から否定した瞬間でもあり、戦隊シリーズのヒーロー像が大きく変わった瞬間でもある。


鳥人戦隊ジェットマン』で示された自己犠牲と復讐を前提とした戦いへのアンチテーゼ、そしてそこから「どんなヒーローが求められるのか?」がレッドホーク/天堂竜を通して示された。
だがそんな彼も一番大切な人である葵リエを救うことはできず、自己犠牲と復讐を真正面から否定できなかったため、それこそが後発作品に残された課題だったのだ。
そしてその答えを7年越しにリョウマとヒュウガという炎の兄弟を中心に展開することで提示したのが本作であり、それは同時に旧世代のレッドから新世代のレッドへという世代交代をも意味する。
あまりにも理想主義に過ぎるが、脚本でしっかりそのドラマに説得力を持たせて見事な大団円へ持っていった、ある意味最も主人公らしいレッドと言えるのではないだろうか。

 

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