明日の伝説

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戦隊レッド列伝 シンケンレッド/志葉薫(『侍戦隊シンケンジャー』)

戦隊レッド列伝、第二弾は『侍戦隊シンケンジャー』(2009)に登場するシンケンレッド/志葉薫です。
各パラメータは戦闘力、技巧、知性、精神力、統率力、そして人間力の合計6つを元に5点満点で判断します。
このパラメータは決してシリーズを跨ぐものではなく、作品内での描写に基づく相対的なものとご理解ください。
その上でランクをS、A、B、C、Dの5段階判定し、総合的なキャラクター考を最後に述べる形式です。


S(超強い、一騎打ちで幹部クラスを倒せる猛者)
A(かなり強い、他のメンバーよりも一歩抜きん出ている)
B(強い、他のメンバーより少し上程度)
C(普通、他のメンバーと大体同じくらい)
D(弱い、他のメンバーと比べても劣っている)


シンケンレッド/志葉薫(『侍戦隊シンケンジャー』)

 

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<パラメータ分析>
戦闘力:5
技巧:5
知性:5
精神力:5
統率力:5
人間性:1
数値合計:26/30
分析結果:S(超強い、一騎打ちで幹部クラスを倒せる猛者)


<キャラクター考>


「頭が高い!一同控えろ!!」


まさか時代劇『水戸黄門』で使われていた言葉をスーパー戦隊シリーズで聞く日が来ようなどとは誰が想像しえただろうか?しかもその言葉を発しているのは歴代初の女性レッドである。
同じようなことは彼女のお目付役である丹波も家臣たちを前に言ったのだが、丹波が言うのと薫姫が言うのでは全く発言の重みが違う、正に鶴の一声である。
見かけは小柄な中学生でありながら、中身はとてもそうは思えないほどに豪胆で男前、時代錯誤なところはあれど決して人心を理解できない愚かな上司ではない。
ただし、彼女もやはり丈瑠同様に小さな頃から志葉家の運命に縛られ、女性としての楽しみも人間性も全てを押し殺して封印の文字習得や剣術、モヂカラの訓練に日々を費やしてきた。


彼女が現れたのは劇中終盤だけだが、そのたった5話でも非常に様々な側面が描かれ、侍としての側面から上司としてのできの良さまで含めて完全な丈瑠の上位互換である。
志葉家の嫡子だけあってモヂカラも丈瑠より遥かに強く、体格では丈瑠に劣っても技巧に優れ、丈瑠たちが5人掛かりで苦戦した相手すらも簡単に倒すことができた。
そんな彼女の存在感はかえって家臣たちにとっては「出来すぎて嫌な奴」のように映ってしまい、しかし決して「嫌なやつ」ではないから憎むこともできないのだ。
かといって、彼女が台頭してきたことで志葉家を追い出された丈瑠を放置しておくこともできず、家臣たちは薫姫と丈瑠のどちらを取るかという選択に迫られる。
彼女はそんな家臣たちの胸中を理解することができず、それに気づいたのは四十七幕で迷って動けなかった流ノ介に黒子が言った次のセリフだった。


「勿論、姫は守らなければならない、当然だ。が、人は犬じゃない。主は自分で決められる」


この言葉を裏でひっそりと聞いてしまった薫姫はここで初めて自分が起こした行動によって怒った混乱の意味を理解し、後ろめたい顔つきを見せる
志葉家十八代目当主としての宿命を優先したことと引き換えに丈瑠を、そして家臣たちを縛り付け追い詰めてしまったこと、それを理解できていなかったこと。
家臣たちの心が丈瑠に向かっている中で、彼女もまた自分がしてきたことの過ちに苛まれるが、そんな彼女の存在を救ってくれたのは源太である。
寿司屋でよければ、お供するぜ」と侍ではなく丈瑠の幼馴染だった彼が寄り添ってくれたことが彼女にとってどれほど大きな心の支えとなったことだろう。
そんな彼女も四十八幕で初めて影武者であった丈瑠と一対一で話すことになった時、初めてそれまで誰にも明かしたことがない胸中を口にする。


「でも、会わなくても1つだけわかっていた。きっと、私と同じように独りぼっちだろうと…幾ら丹波や日下部がいてくれてもな。自分を偽れば、人は独りになるしかない」


ここで初めて薫姫もまた決して自分の意思で戦っていたのではなく、女性としての楽しみや本心を押し殺して戦ってきたという背景が見えてくる。
皮肉なことに孤独になるしかない宿命を抱えていたのは丈瑠だけではなく、姫もまた同じであり、ようやくここで2人は通じ合うことができたのだ。
封印の文字を習得したにもかかわらず失敗した以上、彼女の役割はもはや前線で戦う侍としてではなく司令官としての役目しか残されていない。
そこで丈瑠と家臣たちとの絆を大嘘から真実に塗り替えるために、彼女が取ったのは次の選択だった。


「私の養子にした」


志葉家当主の権限をもって、薫姫は丈瑠を志葉家十九代目当主へ正式に任命することで、晴れて丈瑠と家臣たちは本物の殿と家臣になったというわけだ。
しかし、どうしても問題は残ってしまう…それは望まぬ戦いを強いられてきた丈瑠を再び志葉家の業に引きずり戻して戦いに縛り付けることである。
そもそも自分の意思で選んだわけではないこの戦いを丈瑠が自分で意思したものなのかどうか、それを確かめる術は丈瑠にも薫姫にもなかった。
それでもドウコクが封印できない以上倒すしかこの世を守る方法はなく、だからこそ養子縁組を組むという志葉家のシステムを利用した裏技に頼ることになる。


最後の戦いでも彼女はできる限りのアシストをし、見事ドウコクを倒すことはできたものの、彼女もまた世の表舞台からは姿を再び消すこととなった。
正に彼女こそが本作における真打ちだとも言えるが、丈瑠と表裏一体の薫姫の存在もまた本作がどのようなヒーロー像を提示しているかを視聴者に示しているといえよう。
ちなみに視聴者の間には彼女と丈瑠が結婚するのではないかとの噂も流れたらしいが、これだけシビアな現実を描いて最後に結婚となるとそれは「愛」で逃げたこととなる
それに、あくまでも丈瑠と薫姫は孤独な運命を抱えた似た者同士であって、決して男女の情愛などないのだから、結婚したところでその孤独を減じるものにはならない。
だからこそ、丈瑠自身の意思かどうかという確認はできなかったものの、彼を志葉家当主として養子縁組を組んだのは作品として合理的な答えだったと言える。

 

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