明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)49・50話感想

 

第四十九章「奇跡の山」


脚本:小林靖子/演出:長石多可男


<あらすじ>
モークが死んだことでギンガマンたちは頼れる司令官を失ってしまい、さらにヒュウガと分断されていたブクラテスはシェリンダに重傷を負わされてしまう。バルバンは度重なる作戦失敗を受け、痺れを切らしたゼイハブの怒りがついにバットバスへ向けられてしまった。そのためバットバスが自ら出撃して地球魔獣を復活させることにする。一方リョウマたちは星獣たちからギンガブレスが祀ってあった雄叫び山に地球魔獣を呼び寄せるための仕掛けがあることを聞き、雄叫び山と向かった。ヒュウガも何とか間一髪で瀕死のブクラテスを救出し、ゼイハブが体内に星の命を体内に埋め込んで無限の強さを得ており、ナイトアックスはそれを砕ける唯一の武器だと教えられる。


<感想>
さあ、地球魔獣編もいよいよまとめとなりましたが、倒れたブクラテスの顔を思い切り踏みつけたシェリンダですが、ようやく駆けつけた黒騎士ヒュウガに救われます。
そしていよいよブドー編以来静かに船長からバットバスへ向けられる怒り。


「なあバットバス、船のねえ宇宙海賊ってのを聞いたことがあるか?」
「そーんな間抜けなもんがあるかよ~」
「その間抜けが今の俺たちよ!」
「バットバス、俺は結構痺れ切らしてるんだぜ」
「わ、わかりやしたよぉ。地球魔獣はこの俺がなんとかしますって。この俺が本気出しゃ一発ですよぉ。へへへへへ」


ここで改めてバットバスが船長には絶対逆らえないことが示されるのですが、一番信頼していた腹心の部下だけに、この失態は許せないのでしょう
言ってみればサンバッシュやブドーの完全な上位互換ですが、サンバッシュほど無能ではなく、かといってブドーのような「出来過ぎる嫌なやつ」でもありません。
ここら辺をしっかり演じ切っているのはそれこそ渡辺氏の演技力の見事さですが、本作は本当に声優の演技も見事で全然見ていて飽きませんね。


「ボック、モークをいつか、ギンガの森へ連れて行こうね」


ここで改めてサヤとボックの絡みが描かれるのですが、やっぱりサヤはボックと組んでマスコットキャラとしてのわちゃわちゃを出せばよかったと思います。
無理にヒュウガへの憧れとかアイドルだとか変な属性を持たせて迷走するよりは、ただでさえあまり目立たなかったボックのキャラも生きたと思うんですよ。
戦いに前のめりな戦士としての使命感はそのままに、ボックとの絡みを見せることでサヤらしさを引き出してみんなの癒しになるという展開の方がよかったでしょう。
サヤとボックは個人的にリョウマと勇太の関係性とはまた違った意味で癒しなので、そこを押して掘り下げればうまいアクセントになったと思います。


そしてギンガマンはビズネラが考えた策略をヒントに、地球魔獣を誘き寄せる方法として雄叫び山を利用するという作戦を選択しました。
3,000年前の決戦としてダイタニクスを誘き寄せるために使ったのが雄叫び山であるということで、山の祠に仕掛けがしてあるとのこと。
第一章ではギンガブレスが封印されている祭壇という設定しかなかった雄叫び山の設定がここでまたもや伏線回収されています。
それと同時に始まりの場所が最終決戦の約束の地へと収束していくという流れもまた熱く、いかにも「伝説の戦士」という要素を綺麗に使いこなしているのです。


一方第三勢力のヒュウガはブクラテスから、今まで内緒にしてきたゼイハブの正体と秘密を明かします。


「黒騎士、よく聞け。ゼイハブを倒す方法は奴の右胸に埋め込まれた、星の命を砕くことじゃ」
「星の命…!?」
「ゼイハブはダイタニクスを使っていくつもの星の命を宝石に変えてきた。じゃが3,000年前、奴は星獣に瀕死の重傷に負わされた。その時、このワシが奴を救ってやったんじゃ!宇宙で最も邪悪な力を持つ、奴の星の命を使ってな!」
「奴はその星の命から無限のエネルギーを得ておる!」
「それを砕けるのがナイトアックスというわけか」
「そうじゃ。これを砕けるようになれば、ゼイハブの星の命も、砕ける筈じゃぁ……!」
「それはお前の!星の命なんじゃないのか?」
「?!」
「復讐の為に何もかも捨てるのやめろ。砕くのはゼイハブの星の命だけで十分だ」


ここで改めて本作のメインテーマを織り成す一要素であった「復讐」をヒュウガが持ち出すのですが、このセリフはブルブラックと一体だったヒュウガだからこそ言える台詞なんですよね。
第二章でダイタニクスの特殊能力としてのみ触れられた星の命が改めてゼイハブとブクラテスの力の源であることが示されており、ここもまたギンガマンや黒騎士と対になっています。
この展開で素晴らしいのは魔獣といい星の命といい、実はバルバンが使っている力の源がギンガマンと同じ「星の力」であるということでです。
これはいわゆる「仮面ライダー」が提示した「ヒーローとヴィランが同一の力で戦っている」という設定の本歌取りであり、後に高寺Pが制作する「仮面ライダークウガ」にも繋がっています。


ギンガマンもバルバンも同じ力をルーツに持ちながら、ではその両者を分ける決定打は何なのかというと、それこそがまさに「力を使う者の心」なのです。
第十七章でリョウマが勇太に言って聞かせた「力や技だけが戦士の条件ではない」「戦士に必要な強さや勇気はそこからは生まれない」が黒騎士のみならずバルバンにも適用されます。
アースを始め、星獣剣もギンガブレスも獣撃棒も機刃も、そしてギンガの光も星獣たちも、すべての力にギンガマンは感謝と畏敬の念を忘れず、謙虚に誠実に戦ってきました。
それに対してゼイハブやブクラテスらバルバンは私利私欲のためなら人を捨て、星を捨て、そして魔獣ですらも簡単に捨ててしまう悪逆非道で、まさに力に飲まれた者たちです。


それは要するに「守る物を持たない」ということであり、またゼイハブの故郷の星がすでに星の命という宝石になっていることからも、実質は地球魔獣と同一の存在となりました。
守るべき者を持った存在と持たない存在、どちらが正しいかはわかりませんが、私利私欲にたんを発しようと何だろうと、ゼイハブたちのやっていることは結局「自己犠牲」であることに変わりありません
だからこそ、ギンガマンはバルバンや黒騎士と違い「自己犠牲をせずに全部を大事にする」という形でヒロイズムを表現しており、この辺りの持っていき方が鮮やかです。
また、ナイトアックスでしか星の命を砕けない(とブクラテスとヒュウガが思い込んでいる)理由はナイトアックスがいわゆる「反アース」の武器だからでしょう。
ギンガマンたちの「星を守る力」に対してナイトアックスは破壊に特化した力であり、もっといえばブクラテスの私怨が篭った復讐の象徴なのです。


そして最後の決戦に向かうギンガマンの元へ青山晴彦さんと鈴子先生までが駆けつけてくれました。


「心配で来ちゃいました」
「鈴子先生、戦いが終わったら、ギンガの森、案内します」
「はい」
伝説の力、信じてますよ」


ここでしっかりとギンガマンにとって支えとなってくれた青山親子と鈴子先生の存在までも使い切ってくれるのが大変嬉しいところですね。
そして決戦に駆けつけるのですが、作戦としてはバットバスとヤートットをハヤテたちが陽動作戦で相手にし、その間にリョウマが単独で雄叫び山へ向かいます。
一方で場面がまたもやヒュウガとブクラテスに切り替わり、その小屋にシェリンダの追手が迫るのです。


「行くんじゃ。アースを捨てたこと無駄にするな!」
「ブクラテス!」


をしてヒュウガは小屋から寸前で脱出し、ブクラテスはヤートットを巻き込んでの自爆となり、結局のところゼイハブへの復讐を果たすことなく死にました。
これもまた形を変えた「自己犠牲」であり、しかしその自己犠牲が決して物語として肯定されることはなく、虚しく命を散らしていきます。


「ブクラテス、死んだか」


ヒュウガとブクラテスの関係はここで終わるのですが、距離がそれなりに縮まって別の絆のようなものが芽生えつつも、あくまでヒーローとヴィランである以上分かりあえません。
この辺り、小林女史はどうあろうと「善悪の相対化」は絶対にしない人で、特にこと「ギンガマン」においては、それをしないが故にこそヒーロー作品として成り立つのですから。
そして場面はリョウマへ切り替わり、龍馬は雄叫び山に辿り着いてほこらを調べると、穴の下に落ちてその奥で仕掛けを発見し、それが発動すると風の通り道が開き、星獣たちの教え通りに山が吠えます。


「これが雄叫び山の叫び!」


ここで新たに発覚する雄叫び山のギミックを回収しつつ、ハヤテたちもまた作戦成功を知りギンガルコンに乗って山へ駆けつけ、そしてリョウマが楽山仕掛けたところでヒュウガと再会します。
感動の再会もそこそこに、久々に揃った6人でバットバス魔人部隊らと最後の決戦となりました。


「決戦だ!行くぞー!」
「銀河炸裂!」


地球魔獣を引き寄せつつ、しっかり戦っていくのですが、ここでもう1つ残っていたギンガグリーンとシェリンダの因縁をしっかり拾います。


シェリンダ!」
「決着を付けようか、ギンガグリーン」


剣を交え、間合いが離れると容赦無くキバショットを繰り出し、それを防御したシェリンダが指からビームを放ちます。


「ギンガグリーン、今日こそお前を跪かせる」
「それはどうかな?」
「なにぃ?」


グリーンはノーガードで「来いよ」と挑発し、激昂したシェリンダの突撃を冷静に交わした上でビーム攻撃を耐えしのいで必殺技を食らわせます。


「疾風一陣!!」


これで完全に決着はつきましたが、やはり第二十四章のブドーと同じように、戦い足りないシェリンダも執着で最期の一太刀をグリーンに浴びせ、グリーンも敢えてそれを受けました。

 

「私の……勝ちだ」

 


こうしてシェリンダも散っていくのですが、これまで様々な幹部の最期を切なく描いてきた本作において、このシェリンダの最期もまた切ない私小説のような終わりとなりました。
ハヤテの「私」の部分を形成していた一因でもあるシェリンダですが、冷静で頭が回る癖にダイタニクス絡みやハヤテ絡みだと激昂しやすさが玉に瑕な彼女。
そんな彼女が負けた原因はどこにあるのかといえば、やっぱりダイタニクスをあっさり乗り捨てたこと、そして仲間を平然と見捨ててきたことにあります。
もっといえば第二章でギンガの森のエネルギーを搾取してダイタニクスを復活させようなんて禁忌を犯した時点で、彼女の運命は決まっていたのかもしれません。


確かに一騎打ちとしては物足りないといえばそうかもしれませんが、四十六章の感想でも書いたように、あくまでもギンガマンが戦う目的は「星を守るため」です。
だから、シェリンダの執着にムキになって戦うと、それはもはや完全な私闘となってしまい、ハヤテが星を守る戦士型単なる戦う生物兵器になってしまいます。
そうなれば行き着く先は黒騎士ブルブラックやブクラテスしかなく、同じ小林女史の作品でいえば「シンケンジャー」終盤の外道に堕ちかけた丈瑠と十臓のようになるでしょう。
だからこそ、敢えてシェリンダに思いを尽くさせ、最後はその一撃を甘んじて受け入れたのです。


「てめえら、許さん!」


まるでヒーローみたいなことを言い出すバットバスはその後ギンガマンを吹き飛ばしますが、そこにおびき寄せた地球魔獣がやってきました。
そして地球魔獣はなんと成長エキスごとバットバスを食ってしまったのです!(笑)
バットバス、あんだけ活躍期間が長かったわりに見せ場らしい見せ場がなく散ってしまいます。
サンバッシュ、ブドー、イリエスはそれ相応の華々しさがあったのに、なぜバットバスはこんなことに?


しかし、これは物語の流れを踏まえれば当然で、第四十七章でバットバスはビズネラを自分の利益のために裏切る真似をしました。
要するに四十章のビズネラとまんま同じことをしたわけであり、ならばそのお返しにビズネラ以上のものを見せないといけません。
となると、やはり地球魔獣に成長エキスごと食われるという形しかなく、落とし所としてはひどいですが納得ではないでしょうか。
しかも、これってずっと掛け声の時に言っていた「作戦失敗した奴はてめえで頭を食いちぎれ」がまんま形になったものでもあります。


自分で言い聞かせていたことが自分に跳ね返ってくるという最高の因果応報で、幹部たちがどんどんそれぞれに相応しい形で散るのです。
そして、地球魔獣が成長しないようにギンガマンはリョウマを中心にアースを書き集め、5人のアースで増幅させたアルティメット・炎のたてがみを発車します。


「やったのか?!」
「やったぞ!地球魔獣を倒したぞ!」


まあこのセリフが出るときはよほどのことがない限り倒せていないのえ、案の定地球魔獣は巨大化してきました。
魔獣ダイタニクスとは対照的にグロテスクさや禍々しさを強調したデザインですが、ここからさらに口裂け女ばりに大きく口を開けて雄叫び山を食べてしまいます
この絵面がすごく衝撃的だったのですが、これに似た系統というとやはり「ゴジラビオランテ」でしょうか。
ビオランテもこういう大きな口でゴジラを丸ごと飲み込もうとしましたが、本作はこういう東宝怪獣映画や円谷プロ大好きな高寺P趣味全開です。


「山を食べた!」
「こいつ、本当に星ぐらい喰うぜ!!」
「みんな、バルバンを倒すぞ!この星を守る為に!」


そして最終決戦へと臨むギンガマンと黒騎士ですが、その前にゼイハブの元へヤートットからの報告が入ります。


「でで、伝令っス!地球魔獣の成長に、成功したっス!」
「おお!」
「伝令っス!バットバス様が、魔獣に食われたっス!」
「なに?!食われた?」
「伝令っスー!シェリンダ様も、ギンガマンにやられたっス!」
「なにぃ!ぬぅぅぅぅ……シェリンダ……!」


ここで改めてゼイハブのラスボスとしての存在感を強調しつつ、シェリンダだけはおそらく愛人のような存在だったことが伺えます。
ゼイハブとシェリンダの関係はその後ドルネロとリラ、ドウコクと太夫に継承される要素ですが、ここまでしっかりキャラクターを使い切っています。
また、ここでゼイハブが無敵の存在だと示されているので、組織としては決して最後まで脅威を失わずにすみました。


「野郎ども!地球魔獣を手に入れるぜ!出発でーい!!」


1人でバルバンを背負ったゼイハブ、果たしてギンガマンと黒騎士はこの決戦にどう勝つのでしょうか?
初期からやってきたテーマがどのように収束するのか、ぜひとも楽しみにしつつ評価はS(傑作)です。


最終章「明日の伝説」


脚本:小林靖子/演出:長石多可男


<あらすじ>
バットバスごと急成長エキスを飲み込んだ地球魔獣が誕生してしまい、雄叫び山を食べてしまう。リョウマたちは魔獣ダイタニクスを倒した時の教訓から、再び魔獣を生み出さないように完全に焼き尽くすようギンガイオーの攻撃に炎のアースを加えて攻撃する。しかし、地球魔獣のスペックはダイタニクス以上なのか炎のアースを加えた攻撃は一切通用せず、さらにギガライノスとギガフェニックスが駆けつけても通用しない。更にそこにゼイハブがやってきて城をドッキングさせたために地球魔獣はさらに強くなった。ヒュウガはゼイハブを何とかしようと捨て身の一撃でゼイハブを切り離すことに成功し、ブクラテスの遺言通りゼイハブの右胸に埋め込まれた星の命を狙うが…。


<感想>
さあ来ました、拙ブログのタイトルにもなっており、今だにスーパー戦隊シリーズはおろかあらゆるヒーロー作品の中で、個人的にこれ以上はないであろう伝説の最終回。
もう何百回と見直してますし、冷静に客観視できるようにはなりますが、それでもこの最終回だけは私の中にずっと残り続けています。
シンケンジャー」の最終回も素晴らしかったんですが、やっぱり本作の最終回にはどう足掻いても敵わんなと…では見ていきましょう。


「こいつ、早く倒さないとまずいぜ!」
「だが下手に攻撃すれば、魔獣の破片から新しい魔獣が生まれてしまう!」

「じゃあ、どうすれば!?」
「焼き尽くすしか方法はない!ギンガイオーの攻撃に俺のアースを合わせてみる!」
「リョウマ、かなり力を使うぞ」
「これ以上、この星を荒らさせるわけにはいかない!」


そしてまずは銀河獣王火炎斬りを行いますが跳ね返されてしまい、さらに救援に駆けつけたギガライノスとギガフェニックスまでも圧倒する地球魔獣。
さらにそこにゼイハブが駆る城がやってきてドッキング…まあ明らかにパイルダーオンなのですが、作品のテーマのみならずこんなところまで「マジンガーZ」のパロディをやらなくてもいいのに(笑)


ギンガマン!てめえらには返しても返しきれねえ3,000年分の借りがある。これがその例だ、遠慮無く受けとりな!」


さらに性能アップした地球魔獣Zは星獣たちを蹂躙し、さらに巨大な口にギガライノスたちを飲み込もうとします。
リョウマは激怒して火炎流星弾を使うのですが、これも跳ね返されてしまい、リョウマも疲弊が来ました。
そこでダイタニクス戦の時同様にまずはブルタウラスがゼイハブを引き剥がすことにします。


「みんな、魔獣を頼む!俺はゼイハブをなんとかする!野牛裂断!!」


ここでしっかり魔状に叩き込んで白は物の見事爆発炎上、シェリンダの剣も砕け散り、さらにヤートットも城ごと死んだことでしょう。
星の命で不死身の体となったゼイハブが生き残り、黒騎士はナイトアックスでアドバイス通りに叩き込もうとします。


「なるほど、狙い所は掴んで来たってわけか。だがな!てめえには俺は倒せねえ!」


やっぱりゼイハブは圧倒的な強さで、一対一でもそう簡単に状況は覆らないのです。
そして疲弊しきりながらも、気力を振り絞って立つギンガレッドのもとに集まる仲間たち。


「この星を!守るんだ!!」
「リョウマ、一緒にやろう!」
「俺たち、ずっと一緒に戦ってきたんだからな!」
「もう一度合わせよう、私たちのアース!」
「今度は絶対うまく行くって!アースを信じようぜ!」


改めてここで戦隊の象徴である「団結」という要素をこの5人のアースを合わせる絵にし、さらにそこにギガライノスとギガフェニックスも集います。
ギンガマンだけではなく星獣たちと力を合わせて初めて勝てるという本作の基本構造をしっかり貫いたのは良かったです。


「リョウマ!撃て!!」
「ギンガ大火炎!!!」


最終回限定の超必殺奥義であるギンガ大火炎はまさにウルティメイトプラズマのごとき威力を見せるのですが、えーっと…これで逆に地球の生態系崩れたりしませんよね?
アースを使いすぎたのと星を使いすぎたせいで魔獣が大量発生しないか逆に心配なのですが、こういうサービスを盛り込んでくれたのが見事です。
しかもここで初期から示された炎の戦士のアースが「汚物は消毒じゃあ!」みたいな感じでしっかり星の浄化につながるという意味でも良くできていました。
思えば炎で敵を焼き尽くす要素はのちの「シンケンジャー」のドウコクを倒すのが志葉家の火のモヂカラというところにも繋がっていますが、ここがその原点です。
決着はかなりあっさり着きましたが、そもそも地球魔獣はダイタニクスに比べると経験値がない上に、やっぱりラスボスに相応しいのはゼイハブなのでここで切り上げて正解でしょう。


そして、ゼイハブの右胸を黒騎士のナイトアックスがいよいよ捉えるのですが、なんとそこに星の命はありませんでした
どの時点で埋め変えたのかはわかりませんが、おそらくブクラテスが謀反を起こした時から、密かにビズネラあたりにやっておいたのでしょう。
こういう抜け目のなさ、ネガティブシミュレーションの見事さもしっかりとゼイハブの恐ろしさとして描写されています。
合流したギンガマンは黒騎士から星の命を埋め変えていたことを知らされ焦ります。


「てめぇらなんぞにこの俺は倒せねぇよ。俺がてめぇらをぶっ殺す!」
「なに?!」
「その前にこの星を壊して汚して、また魔獣を調達しなきゃなんねぇがな」
「そんなこと絶対にさせない! 行くぞ!!」
「馬鹿が」


ここでゼイハブを倒せる唯一の頼みの綱であるナイトアックスすら砕け散ってしまい、とうとうゼイハブを倒す手段すらなくなってしまいました。
そして青山親子とボックもまた車で応援に駆けつけます。


「リョウマ、ハヤテ、ゴウキ……」
「勇太、勇太が先に負けてどうする?リョウマさんたちは絶対勝つ。そう信じて応援するんだ。リョウマさんたちに届くように、大きな声で」
「パパ。みんなー、頑張ってー!」


ここで一般民衆の代表にして狂言回しだった青山親子をしっかり使い切りますが、現実はシビアで今度はヒュウガが殺されそうになります。
しかし、間一髪リョウマが炎のたてがみで助け出しているのですが、今回最高の見せ場が、本作の真のクライマックスが描かれるのです!


「俺は戦う!戦ってゼイハブを倒す!例えナイトアックスがなくても、例えアースがなくても、俺はこの星を守りたいんだ!」
「兄さん、アースはあるよ」
「!?」
「兄さんの中に、アースはある」
「リョウマ」
「アースは星を守る力だろ。星を愛する心があれば、アースは生まれるんだ。星を守って戦っている限り、兄さんの中にも大きなアースは生まれる筈だよ。自分を信じるんだ。教えてくれたのは兄さんだろ」


ここで完全に思考が凝り固まってだんだんとブルブラック寄りになっていたヒュウガをリョウマがこれまでの成長を積み重ねた上で、その黒騎士の魂ごとしっかり救い上げます。
そして最後の伏線回収される第一章でのあのやり取り、リョウマにとっての戦士の原点です。


「リョウマ、聞くんだ。お前にも大きなアースはある筈だ。自分を信じていないだけだ」
「兄さん……!」
「お前の力を俺は信じてる」


ここでの説得とヒュウガのアース復活をご都合主義だと批判する人もいたそうですが、話の流れとしては全く違和感がなく、むしろ年間の積み重ねで見るとこの結末以外はあり得ません
そもそも一度無くしたはずのアースが復活する展開は第四章のアースを復活させるヒカルで描かれているのですから、それも伏線になっています。
また、前回の感想で書きましたが、ブクラテスが開発したナイトアックスはあくまでも私怨で作ったものであり、ブクラテスの復讐の象徴です。
つまりは星を「守る」ためではなく「破壊する」ためのものであり、反アース、反ギンガマンの力でしかありません。


だから、魔獣からゼイハブを引き剥がすつなぎとして使うことはできても、それでゼイハブを倒す決定打とはならなかったのです。
ナイトアックスで星の命を砕いてしまうことは本作が提示する「星を守る戦士」というヒーロー像の本質から外れたものですし、また物語としてブクラテスの復讐や自己犠牲を肯定することになってしまいます。
だからこそ、ナイトアックスで倒すという結末ではなく、ここで改めてリョウマがヒュウガを救済するのが当然の流れであり、同時にそこにこそ本作が目指すヒロイズムがあります。


「リョウマ……」
「俺たちのアースで、ゼイハブを倒そう!」


ここで一年間の成長とともに、真のギンガレッドとなったリョウマが第一章で救えなかったヒュウガ、そして二十五章で救えなかったブルブラックをしっかり救済するのがリョウマというキャラの集大成としてよくできています。
また、映像で直接に明示されていませんが、ヒュウガがこのラスト1クールでやっていたことは要するにブルブラックがやっていたことの疑似的な追体験でした。
そしてそのブルブラックは最後の最後にクランツの幻影に説得されて救われたのであり、リョウマがヒュウガを救う構図は二十五章の綺麗な伏線回収にもなっています。
つまりクランツがかつてブルブラックにやってみせたことを今度はリョウマが生きてそれを成し遂げており、二重にも三重にも物語としてよくできているのです。


そしてこれは今書きながら思ったのですが、炎の兄弟が赤色という明るい色で、黒騎士兄弟が黒色という色だったのは「光と影」の対比であると同時に「生と死」の対比でもあるのかなと。
黒騎士兄弟が「死」という形で成し遂げられなかった無念さを炎の兄弟が「生」という形で成し遂げるのが重なります。
本作はとかく自己犠牲や復讐に対して一貫して否定的でしたが、それがここでカタルシスとして見事に結実しました。


「てめえらもつくづく馬鹿な野郎たちだな。奪って壊してこその星じゃねぇか。守る価値なんざありゃしねえ」
「お前には、絶対わからない……この星に、どれだけ大切なものがあるか!」
「この星は、絶対守る!」
「これぐらいで、負けないぜ!」
「この星が生きている限り、私たちは戦う!」
「だったら星と一緒に心中でもするんだな」
「やめろー!!」


ここで青山親子も駆けつけ、ゼイハブは大砲を彼らに向けますが、全員がしっかり「星を守るために戦う」という構図が絶妙です。
そしてそこ真のヒーローとなったリョウマとアースを復活させたヒュウガが並び立つ!


「ゼイハブ!お前は終わりだ!」
「何?」
「兄さん、行くぞ!!」
「「炎の!!たてがみ!!!」」


ここで第二十六章以来繰り出されるダブル炎のたてがみによって見事に星の命を砕きました。
星の命を砕くのに「星を壊す力」ではなく「星を守る力」で一貫して解決したのが妙味。
同時に「公のために私を犠牲にする」こともその逆もしない「公も私も全てを守る」というギンガマンのヒーロー像の集大成として、最高のトドメでした。


「星の命が!!こんな馬鹿な……!」
「ゼイハブ!星を傷つけるおまえから星が離れたんだ!お前を倒す!」
「この星を守る為に!」


そして今ここに、完全に全てを取り戻した真のギンガマンが完成を迎える!


「「「「「「ギンガ転生!!!」」」」」」
「ギンガレッド!リョウマ!」
「ギンガグリーン!ハヤテ!」
「ギンガブルー!ゴウキ!」
「ギンガイエロー!ヒカル!」
「ギンガピンク!サヤ!」
「黒騎士!ヒュウガ!」
「「「「「「銀河を貫く伝説の刃!」」」」」」
「星獣戦隊!」
「「「「「「ギンガマン!!!」」」」」」


ギンガマン!それは、勇気ある者のみに許された名誉ある銀河戦士の称号である!!」


この名乗りは最終回サービスということで「ジェットマン」以来となる役者さんが中に入っての名乗りとなっています。
もうここまで来たらあとはもうひたすら勢いで押し切るだけ、有無を言わさぬ連携でトドメを刺すだけです。


「黒の一撃!!」
「「「「「ギンガの閃光!!」」」」」
「炎一閃!!」


ここでよかったのはリョウマが四十四章でゼイハブにやられたリターンマッチをしているところで、ようやく3,000年の因縁に終止符を打ちました。
そしてここで終わりではなく、もう1つ、ギンガマンの私的動機だった「ギンガの森の復活」が描かれます。
ギンガの森の民たちから祝福を受け、リョウマたちは感極まって泣き始めました。


「きっと星がリョウマ達に返してくれたんだね、森を」
「繋がってるんだよ、星と人は」


もうこの大団円のカタルシスは最高の映像で、戦隊の最終回でこれほど「大団円」という言葉が似合うエンディングも他にないのではないでしょうか。
そして命を散らして種に戻ったモークも復活しました。


「みんな!また会えて、こんなに嬉しいことはないよ!」


そしてギンガの森での日常が再会し、リョウマと勇太の追いかけっこ、ハヤテとミハルのイチャイチャ、サヤとヒカルの追いかけっこ、そして鈴子先生とゴウキのデートが描かれます。
最後に星獣の絵をしっかり描いている晴彦さんも忘れずに収め、そしてリョウマとゆうたがしんみりと別れの時が来ました。


「もう、毎日会えないね」
「勇太、俺たちはいつもここに居るよ!」


ここで改めてギンガマンロスに陥るであろう視聴者の感情を代弁するように勇太が寂しさを口にし、リョウマがそれを「いつもここにいる」と肯定して、最高に綺麗な締め。
そう、いつの時代でも振り返ればそこに、ギンガマンというヒーローは存在する…この「ヒーローをストレートに肯定する」のが本作のとても素敵なところです。
そして全員で一緒に駆け出し、ラストはボックの言葉で締め、やることを全部やり通した完璧な最終回でした。


いやあ、久々に見直しましたが…もう最高の最終回でしたね。というか、終盤はマジでカロリー高すぎて、感想書いてるこちらとしても相当に神経がすり減るほどです。
構成全体については感想総括で書くとして、改めて見直してまたもや再発見ができたシリーズであり、同時に年間の構成としてこれ以上のものはないと言えます。
まあ細かい点で気になるところはあるのですが、大筋のストーリーとキャラクター、年間の構成はしっかり描くべきものを全部描き切った作品でした。
王道中の王道を行きながらも、決して「お約束」で済ませるのではなくテーマと向き合って描いてくれた「ギンガマン」は何年経っても古びない普遍性がありますね。
他のシリーズとも絡めた感想や考察などについては総括で書くとして、評価はもちろんS(傑作)

 

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