明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)35・36話感想

 

第三十五章「ゴウキの選択」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
ゼイハブは裏切りを働いたブクラテスに重りをつけて海の底に沈め、砕いたイリエスの魂をダイタニクスに投与することで心臓のみが復活し、腐敗を防ぐことができた。改めてバットバスが行動隊長、そして参謀にビズネラがついたことで新しい作戦をスタートする。その作戦とはダイタニクスの心臓を復活させるために、あらゆる建物を粉砕してガラスの破片を集めることだった。一方ゴウキは遂に鈴子先生に告白しようと決心し、ヒカルは「慰める会、準備しとくか」とぼやく。ゴウキが花を持って学校に向かうと、そこには岸本俊介と名乗る別の学校の先生が花束を持ち、鈴子先生に告白しようと目論んでいたのだった。


<感想>
さて、ここからがバットバス編となりますが、その第一弾が第二十八章以来となるゴウキメイン回というのはなんの冗談でしょうか?(笑)


これまでサンバッシュ、ブドー、イリエスと立ち上がりの段階はすごくシリアスに盛り上げてきただけに、バットバスの立ち上がりがいきなりギャグテイストというのがが面白い。
いやまあそろそろ鈴子先生との恋愛に関しては決着をつけなければならないとは思っていましたが、ここで取り上げてきたのはある意味良かったのかもしれません。
本当の意味でのバットバス編は三十七章から始まりますから、その前に2人の恋愛模様を描いておきたかったというところではないでしょうか。
監督は諸田敏監督で「シャンゼリオン」からの流入だと思われますが、以後戦隊シリーズの中堅どころを担ってくれる重鎮となる監督です。


まず冒頭のシーンでは樽爺がいきなり海に投げ捨てられ、改めてバットバスが行動隊長に任命されます。


「折角動き出した心臓だ。ダイタニクス復活は何を犠牲にしてもやりとげるんだ」
「任せてくれ船長。これからの復活作戦は全部心臓への一点集中だ」


ここでさらっと言われていますが、ゼイハブの「何を犠牲にしても」という言葉に注目です。
そう、本作ではヒーロー側ではなく敵側が自己犠牲をやっているという歪な構造がここに伺えます。
その上でバットバスの作戦の目的が全て「ダイタニクスの心臓にエネルギーを集中させて復活させる」と内容が具体化されました。
この違いはかなり大きく、ダイタニクス復活の手法がそれぞれの幹部でそれぞれに異なっているところも大きな違いです。

 

  • サンバッシュ…とにかく復活のエネルギーを集める、手段は問わない
  • ブドー…復活のエネルギーとして十分すぎるギンガの光を手に入れる
  • イリエス…人間を魔術で生贄に捧げてエネルギーを集め、ダイタニクスを復活させる


このように、幹部ごとに作戦の系統がまるで違うのも本作の妙味であり、ヒーロー側だけではなくヴィラン側もしっかり1クールごとに差別化を図っています。
その上でバットバスはダイタニクスの心臓部を復活させることでダイタニクスを復活させるという手法がお見事。
で、バットバス魔人部隊といえば、作戦前のこの掛け声が特徴です。

 

「俺たちは?」
「「「バットバス・魔人部隊!」」」
「目障りなのは?」
「「「ギンガマン!」」」
「強えのは?」
「「「俺たちだ!」」」
「よーし野郎ども、ビズネラから作戦を説明させる」


そしてビズネラを参謀として招き入れて説明し、今回の作戦は大量のガラスを集めることにあると説明した上で次のセリフ。


「作戦失敗したやつは!」
「「「てめえで頭を食いちぎれ!」」」


みなさん、この言葉をぜひ覚えておきましょう、終盤になってこれが細かい伏線となっています。
こういった1クールごとの幹部の使い分けと演出の変化は視聴者を飽きさせない工夫として、非常に評価の高い部分です。
で、ヒュウガは激しく傷ついたゴウタウラスを回復させるために、ゴウタウラスがいる山奥へと1人サバイバル生活をすることに。
リョウマを中心にヒュウガを心配する面々ですが、ヒュウガは自分よりもゴウキを心配してやれと見ると、ゴウキはとうとう鈴子先生に告白しようと決心。


「よし、慰める会、準備しとくか」


初っ端ゴウキが振られることが前提なヒカルがさりげなく酷いのですが、まあ元々美女と野獣みたいな恋愛でしたからね。
しかしここまで引っ張っておいて振られるというオチは鈴子先生が酷いことになるので、オチはもう成功するのだと見えています。
そこで大事なのは恋のライバルを持ってくることで、そこで出てきたのが鈴子先生に思いを寄せる岸本先生。
ちなみに演じるのは「カーレンジャー」のレッドレーサー・陣内恭介役の岸祐二氏であり、ヒュウガに続いて2人目の元レッド登場となりました。
……なんだろう、同じ元レッドなのに、ヒュウガ兄さんはめちゃくちゃかっこよくて、岸本先生が残念な猿顔というこの扱いの差は?(笑)


まあ「カーレンジャー」の恭介自体がそれまでのレッドに比べて割といい加減でちゃらんぽらんな部分の目立ったレッドでしからね。
しかも公式に「猿顔の一般市民」な上、同じような系統の猿顔レッドを「メガレンジャー」の健太でもやっていましたし。
あ、そういえば小川輝晃氏もよくよく見ると猿顔だから、本作はプロの猿顔とアマチュアの猿顔という2人の猿顔が同時に存在するのか!
そう思うと、リョウマがいかに顔立ちの整った好青年であることかがわかろうというのものです。


2人は鈴子先生に惚れていることを一瞬で理解し、どちらが先に花を渡すかで勝負しますが、演出が完全にスラップスティックコメディ。
いわゆるチャップリンやバスターキートン時代のサイレント映画を見てるみたいで、ゴリラVSモンキーという猿顔代決が面白かったです。
結果として鈴子先生には2人まとめて叱られ、花瓶を買いに街に出るものの、そこでガラスを集めるためにビルを破壊しようとする魔人部隊と遭遇します。
ちなみにバットバスは第一章の段階でビルを粉砕していたためにこの描写も決して唐突なものではありません。
このギャグじみたビル破壊とガラス集めというギャグとシリアスが入り混じったような作戦がデタラメな面白さになっているのです。


その作戦を勇太くんに影響されたのかは知りませんが、鈴子先生勇気を振い出して襲われている一般市民を助けようとした鈴子先生が銃撃で負傷、入院となりました。
なんでこんな行動に及んだのかはわかりませんが、勇太くんが「先生!僕こんなことが活躍をしたんだ!」とか鈴子先生に自慢していたのでしょうか?
で、その勇太くんの話を聞くたびに内心(私もこのままじゃいけない。ゴウキさんたちのように強くなければ!)と思ってこのような行動に出たのでしょう…ならば納得です。
しかし、それはあくまでも鈴子先生の主観の話であって、客観的に見ればゴウキが自分のせいで鈴子を危険な目に合わせた(と思った)ことには変わりありません。
そこを容赦なく岸本先生が突いてきます。


「ハッキリ言う。鈴子先生には、もう近づくな!」
「え?」
「先生が無茶したのは絶対お前の影響だ。戦いにも巻き込まれるし、それなのにお前は先生を守れないんだからな」
「そんな、俺は先生を」
「守れない。だいたい先生が怪我をした時、お前は何をしていた?戦ってただろ。当然だ、戦士なんだからな。でも、鈴子先生のことは守れなかった」


ここで単なる鈴子先生争奪戦から思わぬ「公と私のどちらを取るのか?」という問いを改めて形を変えて突きつけたのが面白い。
この「戦士としての大義を取るか、それとも鈴子先生という私を取るか」はリョウマと黒騎士を通して第二十五章で描かれたことでもあります。
ただし、リョウマはもう早い段階で覚悟を固めていたこともあり、答えには迷いませんでしたが、リョウマほど芯が強くないゴウキは迷ってしまうのです。
もちろんこれに関しては半分以上恋のライバルを1人でも減らしたし岸本先生の私情が混じっているのですが、強ち間違いばかりではありません。
その上で、ゴウキは「好きな女1人守れない奴なんか要らない」と言われて、涙ながらに使命を取ったゴウキは次のように言うのです。


「そうですよね」
「え?」
「馬鹿だな俺、そんなことに気付かなかったなんて」


ここでゴウキは第十一章同様に鈴子先生よりも星を守る使命を取ってしまうのですが、今回ばかりは状況が違います。
十一章では単なるゴウキの勘違いであり、鈴子先生に付き合っている人などいなかったので、最終的にはハッピーエンドで、過失もありません。
しかし、今回は正真正銘の恋のライバルがいる上に、半分ほど自分の過失で怪我をさせてしまったのは事実です。
だからこそゴウキはどこぞの天堂竜みたいに鈴子先生を好きな自分に蓋をして自分は戦士なんだと必死に言い聞かせます。


しかし、これが本当にギンガマンが前半2クールで確立してきたヒーロー像なのかというと、そうではありません。
再三繰り返していますが、本作が提示したヒロイズムはあくまでも「公も私も双方を大事にする」であり、「公のために私を犠牲にする」のでも「私のために公を犠牲にする」でもないのです。
だからゴウキはここで本質から外れたことをしてしまっており、当然ながらそんな破れかぶれでバルバンを倒せるわけがありません
第十一章で倒せたのは心の底で鈴子先生を好きな自分を信じていられたからであって、今回はそれすらないのです。


ここからが今回の白眉ですが、鈴子先生は松葉杖をつきながらも病院を飛び出してゴウキのいるところへ駆けつけます。
ゴウキが反対しようと「戻りません!」と言い、足元に飛んできたヤートットを松葉杖一本で倒してしまう鈴子先生。
この辺り少年の勇太くんと違い大人の強さがありますが、この松葉杖はきっとオリハルコンでできているに違いありません。
勇太くんに続いて伝説の戦士の仲間入りを果たした鈴子先生はゴウキに向かって言い放ちます。


「誰が守ってほしいって言いました!?私、自分のことは自分で守ります!だから、大丈夫です」


うーん、個人的にはリョウマと一緒に訓練してきた勇太くんに比べて、鈴子先生がこういうことをするのはちょっと場違いな感じもあります。
勇太は最初から丁寧に投石→破壊工作→体当たりと積み重ねてきたので説得力があるんですが、鈴子先生はこの辺りの持っていき方がやや雑。
しかし、ここで大事なのはその鈴子先生が安易な「か弱いヒロイン」ではなく、自分で戦える強さを持った存在だと強調されたことにあります。
リョウマが勇太くんを導く存在であるならば、ゴウキは逆に民衆に支えられる存在であり、メンバー一の怪力でありながら心の脆さとのアンバランスさが対照的です。
鈴子先生の支えによって改めて「そうか、鈴子先生を諦めなくてもいいんだ」となったゴウキは再びらしさを取り戻して、愛の力で投げ飛ばして宣言します。


「バルバン!これ以上はさせない!」
「行くぞ!ギガレッド!リョウマ!」
「ギンガグリーン!ハヤテ!」
「ギンガイエロー!ヒカル!」
「ギンガピンク!サヤ!」
「ギンガブルー!ゴウキ!銀河を貫く伝説の刃!星獣戦隊!」
「「「「「ギンガマン!」」」」」


久々のフル名乗りからのギンガの閃光→閃光星獣剣&獣装の爪という三連コンボでトドメを刺し、あとはいつも通り巨大戦を消化して、ハッピーエンドへ。


「ゴウキさん、私、私だけを守ってくれるより、星を守って戦っているゴウキさんが……好きなんです」


この鈴子先生の「好き」が「LIKE」か「LOVE」かはわかりませんが、多分ニュアンスからすると「LIKE」でしょうか。
まだ鈴子先生自体が恋愛経験なさそうですし、ここからじっくり時間を重ねて「LOVE」になっていくのだと思われますが。
で、岸本先生は散々ゴウキの足を引っ張って鈴子先生をゲットしようとしたツケが祟ってフラれるオチEND。
ちなみにこのゴウキと鈴子先生の恋愛をさらにひねったのが「タイムレンジャー」のドモンとホナミになります。


今回は全体的にコメディ調で前回ほど突出して面白い感じはないのですが、まずゴウキと鈴子先生の恋愛関係に決着をつけたのはよかった。
その上で「公を取るか私を取るか」を問うた上で、鈴子先生が「私なら大丈夫」と宣言したことでゴウキが自分らしさを取り戻したのが気持ちいい展開です。
評価としてはA(名作)、まずまずのスタートではないでしょうか。ゴウキメイン回は基本的にハズレの回がなく面白いですね。


第三十六章「無敵の晴彦」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
バットバスはダイタニクス復活のために、ビズネラが仕入れてきた鉱石を凄まじい炎の力で蒸してダイタニクス復活の力にしようとして魔人ボンブスを送り込む。一方ギンガマン側はシルバースター乗馬倶楽部の日曜大工に励んでいたハヤテと晴彦がモークの作った特殊接着剤を誤って両手に落としていまい、手が離れなくなってしまった。接着剤はモークの葉を使えば解けるのだが、その時間はわからず、最悪の場合一週間はかかるらしい。その頃ボンブスはヤートットに爆弾を仕掛けさせ、リョウマたちは各所に別れて爆弾を外そうとするが、その爆弾はギンガマン対策のため、一度触るとくっついて離れないようにできていた。


<感想>
前回に続き、今回も諸田監督演出なのですが、この回は「シンケンジャー」三十七幕の元ネタとなったハヤテと晴彦さんのメイン回です。
ただ、この回は元々晴彦さんではなくヒカルの予定だったのですが、肝心のヒカル役の高橋氏が左手首を怪我していたので、急遽晴彦さんに差し替えられたとのこと。
おかげで晴彦さんの活躍が見られたのはよかったといえばよかったのですが、いま見直すと正直アクション以外に特に面白みは感じられません。
子供の頃は楽しんでたんですけどね、今になって見直すと晴彦さんが単なる「痛い人」にしか見えず、やるんだったらせめて工夫は欲しいところです。


勇太くんが活躍し、鈴子先生も活躍したので晴彦さんもそろそろ活躍をということだったのでしょうが、晴彦さんの身体能力が化け物すぎて、ギャグ補正でも微妙でした。
本作は確かに「ヒーローと一般人」の視点を組み込んでいるのは事実で、それをリョウマと勇太くんを中心に展開してきましたが、その関係性は序盤から丁寧に積み重ねています。
勇太くんもただギンガマンに憧れているだけでヒーローとして活躍したわけではなく、「一般人だからこそできること」という無理のない範囲で組まれていました。
しかも勇太くんにしても鈴子先生にしても「命の危機」に瀕するというハードルをクリアしたことでようやく戦えるラインに立っているわけですし。


晴彦さんの活躍はそういう代償を支払うことがないままに、「一回やって見たかったんですよ」で始まる大人の暴走がそのまま物語で肯定されてしまいました
小林女史も直前で急遽差し替えになったので間に合わせられなかったのでしょうが、晴彦さんを活躍させるならさせるで、もっと独自のひねりは欲しかったところです。
元々はハヤテとヒカルが手をくっつけて行動するうちに心が通じ合うという話にしたかったのでしょうけど、そういう話にできなかったのも残念。
晴彦さんがやっていた部分を全部ヒカルに置き換えると、あんだけ無茶なカースタントやるのも「ヒカルらしさ」として納得できるのですけどね。


よかったポイントとしてはリョウマたちが同じように爆弾でくっつけられていて命の危機に瀕していたこと、そしてヒュウガ兄さんが急遽応援に来てくれたことでしょうか。
戦闘シーンで晴彦さんが活躍したのはよかったんですが、やっぱりこのパートをヒカルがやった方が違和感はなかったと思います。
アクションのレベルは非常に高かったので、総合評価は甘めにつけてD(凡作)というところかなと。
さて、次回からはいよいよ4クール目、物語がいよいよ大詰めの段階へ入っていきます、覚悟して見届けましょう。

 

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