明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)31・32話感想

 

 

第三十一章「呪いの石」


脚本:小林靖子/演出:小中肇


<あらすじ>
鋼星獣がギンガマンの仲間入りを果たしてしまった最大の過失の責任として、ゼイハブはイリエスに対しダイタニクスの復活が一日遅れるたびに褒美の金貨を一枚減らすと言い渡す。一方ギンガマンの方では、ハヤテが珍しく勇太と2人で買い出しに出るが、ハヤテが勇太に説いたのは「戦士の心構え」ではなく「ごく当たり前の日常を大切にすること」だった。勇太がもっと戦士に相応しいもの教えて欲しいとハヤテにすがって歩いていると、新しく開店した占いの館に出くわす。そこはイリエス魔人族のガーラガーラがダイタニクス復活のために仕掛けた罠であり、ハヤテと勇太はそうとも知らず占いを受けてしまう。


<感想>
今回は実に二十一章以来となるハヤテメイン回ですが、シェリンダとの因縁に加えて今までありそうでなかった勇太とハヤテの一対一の絡みがしっかり描かれています。


思えば本作で勇太と一番絡んでいるのはリョウマですが、ゴウキやヒカルともそれぞれのメイン回で一回ずつは絡んでいて、距離感の取り方もまた違うんですよね。
これまで絡んできた回から印象で判断すると、勇太くんの中のメンバー評はこんな感じ。

 

  • リョウマ…自分を戦士として優しく導いてくれる理想のお兄さん
  • ゴウキ…すごく優しいお兄さんだけど、どこか臆病者で自分が逆にリードしてあげなきゃ
  • ヒカル…子供のようなやんちゃさは面白いけど、トラブルの元でもあるのが玉に瑕


こんな感じでしょうか、サヤとはまともに一対一で絡む場面がありませんし、ヒュウガもあくまで「リョウマのお兄さん」というだけで、特別に仲がいいわけではない。
そう見ると勇太くんの交友関係の中でどうしてもリョウマが絶対的存在になるのですが、そこでもう1人ハヤテはどうなんだろう?というのが今回の趣旨。
ハヤテの冷静さや落ち着きはヒュウガのそれとは異なるもので、常に慌てない冷静さを真似しようと思ってもうまく行きません。
それどころかヒカルから「ハヤテのあれは性格だから真似しようと思ってできるものじゃない」と窘められてしまいます。


そして今回の占い魔人ですが、これまで微妙な作戦ばかり続いていたイリエスが何と割と作戦が通用するようになってしまいました。
しかし、そんな状況においてもハヤテは淡々としているので、勇太はつい堪えきれず感情が出てしまうのです。


「そういうの冷たいって言うんじゃないの?!」
「……勇太」


これはまんまヒカルとサヤが第十三章でリョウマを厳しく窘めたモークに対して言った時と似たようなものですが、それとはまた少し違います。
ハヤテの場合はモークと違ってやや説教癖が強いだけで、決して無感情というわけではないと思うんですよ。
ヒカルへの説教だってヒカルに成長して欲しいからいうのであって、単なるいじめっ子じゃありませんし。
基本的にハヤテは滅多なことでは怒らず理性的である、というのがリョウマとの最大の違いでしょうか。


この辺りはおそらく勇太くんの中で無意識にリョウマとの比較もしていると見受けられます。
何か言いかけるハヤテだが、そこへ雪辱に燃えるシェリンダがいつものテーマ曲とともに登場しました。


「ギンガグリーン、貴様のトドメは私が刺す!」
「勇太、離れてろ。ギンガ転生!」
「その体では満足に戦えないだろう。だが手加減はしない。それが宇宙海賊の流儀だ!」


ここからハヤテとシェリンダのリターンマッチとなるのですが、ハヤテが右足と左手を石化されていて満足に動かせないために、シェリンダに足蹴にされてしまいます。
この状況はもしかすると第二の天堂竜コース(元恋人に足蹴にされてしまった結果ドMに覚醒する)かと思わせておいて、勇太くんがここでまさかの体当たり!
勇太くんの活躍を振り返ると、これまで第七章の投石、第十七章の自在剣機刃による破壊工作、さらに第二十八章で体当たりとターニングポイント別に活躍が織り込まれています。
私はリアルタイム当時最終決戦でついに星獣剣を使えるようになるのではとまで思ってしまったのですが、ここでハヤテのドM覚醒を避けられたのは良かったです
もはや完全にギンガマンの一員と化している勇太くんですが、改めてハヤテはこのように言います。


「大丈夫、残された時間はある。まだな」
(あの時、ハヤテは1時間しかないって言ったんじゃないんだ。1時間もある、って言いたかったんだ、大丈夫だって。そうだよ、 どんな時でもチャンスとか出来ることって、きっと残ってる。ハヤテはそれを信じてるんだ。だからいつも冷静でいられるんだ!)


ハヤテの冷静さは無根拠だとか冷血漢だとかではなく、きちんとその裏に根拠があって言ってることであり、根底的にはリョウマたちと同じなのです。
第二章でも置かれた状況を冷静に分析しつつも、あくまで前向きに戦う姿勢はリョウマたちと一緒というポイントが的確に示されたのも好印象。
ただし、ハヤテの優しさはリョウマやゴウキのようなわかりやすい優しさではないし、ヒュウガ兄さんのような巧みな人心掌握でもありません。
優しさを冷たく厳しく表現するのがハヤテという人なので、どうしても勇太くんには取っつきにくい人だという印象があったのでしょう。


ここからさらにハヤテは機転を利かせて、封印によって赤化した手でシェリンダの剣を受け止め、その後勇太くんはシェリンダの攻撃の巻き添えを食らってピンチに陥ります。
ここで秀逸なのが勇太くんがどれだけ活躍しようとその後はすぐにピンチとなるところで、あくまで勇太は等身大の小学生に過ぎないという見せ方が秀逸。
何がすごいと言って、単なる賑やかしの子供レギュラーに終わらず、狂言回しからヒーロー、ヒロインまであらゆる顔を備えているところが勇太くんの素晴らしいところです。
歴代戦隊で子供のレギュラーキャラとなると「ゴーグルV」のコンピューターボーイズ&ガールズや「ダイナマン」の夢野発明センターへ遊びに来る子供達を思い出します。
他にも「カーレンジャー」の市太郎くんや「メガレンジャー」のタケシくん辺りでしょうが、勇太くんほど大きく印象に残ってないんですよね。


やっぱり視聴者代表視点をになっているだけではなく、リョウマの前では強さに憧れる少年、父親にはやや厳しい態度の息子、そしてゴウキを逆にリードしてあげる優しい子供といろんな顔を見せています。
しかも頭の回転も速く人情の機微も小学生ながらに理解できるほど頭がいいので、ちょっとでき過ぎている気はしますが、やはりリョウマやヒュウガと並んで非常に完成度の高いキャラクターです。
で、ここからがさらなる今回の白眉なのですが、封印の解除には成功したものの、瓦礫の下敷きになってしまった勇太を見て珍しく取り乱すハヤテがしっかりできた表現でした。
勇太はとっさにベンチの下に隠れて下敷きを回避し、今回ハヤテから学んだ冷静さの本質を学んで実践、そしてハヤテをいつになく愛おしく抱きしめるところが素晴らしい。


「ハヤテ、どうしたの?」
「良かった、良かった勇太!」
「ハヤテ、ごめん」


こうして改めて「雨降って地固まる」な感じで深まった2人の関係ですが、とにかく良かったのは勇太くんが一方的にハヤテから教わっただけに終わっていないところです。
ハヤテはミハルという婚約者がいることもあって、将来勇太のような息子を持つことになるから、リョウマとはまた違った感情を勇太に対して持っているのでしょう。
リョウマから見た勇太は幼かった頃の自分を見ているようであり、素直に慕って来る少年だから優しく、そして時に厳しくリードする、まさに「兄と弟」の関係性。
それに対してハヤテと勇太は「父と息子」のような感覚で、どこか慈しむように勇太のことを愛している部分があり、それがこの抱擁でしっかり示されています。


ハヤテの責任感の強さや冷静さは思えば元来持っている性格だけではなく、何よりもミハルという婚約者がいることでメンバーの中で一足早く責任感が芽生えていたのでしょう。
ヒュウガの場合はリョウマをリードしていくことと「炎の戦士・ギンガレッド」の元々の資格者だったことから生まれる「戦士」としての責任感の強さです。
同じ「最年長で責任感が強い」というキャラ付けでも、ヒュウガとハヤテでは立ち位置も中身も異なるものとして書き分けているところが小林女史のキャラ付けの妙味。
勇太がハヤテから、そしてハヤテもまた勇太から学ぶことで成長しているというのがいいところで、成長要素が比較的薄いハヤテも違った角度で成長しているのだなと。


「ハヤテ、リョウマたちと合流できるか?敵はかなり手強いんだ」


ここで改めてモークの冷静さも織り込まれるのですが、モークの冷静さは「人間ではない司令官」だからこそ来る冷静さであり、同じ「冷静」でも描き方はまるで違うのです。
そしてハヤテと勇太はそのままシェリンダを放置プレーで置き去りにするのですが、これがまたシェリンダの恨みを買うことになってしまいます。


「待て!ギンガグリーン!戦え!戦え、戦え!」


もはや壊れた機械のように「私と戦え!」しか言えなくなっているのですが、普段がNo.2の抑え役として機能しているシェリンダがハヤテ絡みだと感情むき出しなのもポイントです。
この辺りはハヤテと対照的なキャラ造形を狙ってそうしたのでしょうが、「冷静なように見えて奥底は意外に感情的」というのがハヤテとシェリンダに共通しています。
しかし、その上で決定的な違いはシェリンダは「欲」を剥き出しにしているのに対して、ハヤテは決して欲に流されることなく強烈な自意識でコントロールしていること。
この場合は状況が状況だけにシェリンダに構っている暇はないのですが、もう1つ重要な事実が隠されていて、それが序盤にも書きましたがギンガマンはあくまで「組織戦」としてバルバンを見ていることです。


だからハヤテにとってはシェリンダも結局「倒すべき敵」の1人であって、因縁こそつけられたとしても、そのシェリンダとの関係に特別な執着はありません。
しかし、シェリンダは何としても自分に意識を向けさせたいがために、事あるごとに執着する…シェリンダの場合ハヤテと違って守るべきものや人がいないのもありますが。
このハヤテとシェリンダの関係性をさらに突っ込んだのが「シンケンジャー」の茉子と太夫になるのですが、茉子は太夫の深淵を覗いたことで「同病相憐む」になったのが違いかなと。


その後はいつも通り黒の一撃とギンガの閃光で仕留めての巨大ロボ戦なのですが、ここから先の巨大ロボ戦は終盤のダイタニクス戦と地球魔獣戦を除いて基本つまらないです。
まあ元々本作は巨大ロボ戦を売りにした作品じゃないですし、私も巨大ロボ戦は基本的に作品評価の上では重視していないのですが、ここからのギンガイオーは基本かませ扱いなんですよね。
鋼星獣を活躍させるための引き立て役扱いでフィニッシュだけを飾る形になってしまうので、前半の無双ぶりが嘘のように弱体化してしまいます。
この辺りは本作の数少ない反省点・欠点として残ってしまい、それを見事に解消したのが翌年の「ゴーゴーファイブ」になるのですが。
ただまあドラマが非常に面白い出来ですし、小中監督の演出も初登板にしてはしっかりできていたので評価はA(名作)でしょうか。


第三十二章「友情の機動馬」


脚本:武上純希/演出:長石多可男


<あらすじ>
リョウマは街中で偶然ぶつかった女子高生の百合子を助けたが、それを見ていた兄の一郎からリョウマが百合子を襲ってると勘違いして殴ってしまう。しかし、側に居合わせた勇太の説明で誤解は解け、リョウマはシルバースター乗馬倶楽部に案内したり、逆にリョウマが兄の一郎からバイクを紹介してもらったりと仲良くなった。一方、バルバンではイリエスがメドウメドウの妹であるメルダメルダを送り込んでおり、いろんな人を襲撃していた。ある日、シルバースター乗馬倶楽部からの帰り道、百合子は敵の能力によりペンダントの中に閉じ込められてしまい、またもや一郎との関係がギクシャクしてしまうが…。


<感想>
本作最後の武上脚本回となりましたが、ここに来て鋼星獣に続いて「バイク!?」というのはどうかと思いますが、今回新たに登場したのが…ギンガの光を1つに集めることで形成されるガレオパルサー。
どういう機能のバイクなのかというと、こちらです。

 

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完全に体当たり用に特化したロードセクターの発展形であり、全身をそのバイクの中で保護して突撃という身も蓋もないもので、これだけは劇中で一回も負けたことがありません。
敵であるメルダメルダも一郎もバイク趣味だったそうですが、バイクというとサンバッシュを思い出すので、サンバッシュ編でこれを出してくれればなあと思ったものです。
敵側が単にバイクが趣味だったからというのはどうかと思いますが、ただし本作の大事なポイントである「パワーアップと物語上の意味づけ」はしっかりと守ってくれてていました。
その点だけでも非常に大きいところで、リョウマと一郎の友情の象徴として、新たにギンガの光から誕生させるというロジックは発想の転換として上手かったと思います。


というか、ギンガの光は持ち手の才能次第でいかようにも姿を変えうるチートスペックなのですが、その代わりリョウマしか乗れないという形でうまく制約を持たせました。
どれだけ売れたかはわかりませんが、獣装光ギンガマンとはまた異なるギンガの光の強化形態をしっかり作って幅を広げてくれたのは大きいかなと。
それから一郎と百合子の兄妹との友情ドラマに関しては月並みではありますが、まあまあ印象に残る回ではあり、この一郎を演じている役者さんがまたとても爽やかな人なんですよね。
ちょっと直情径行なところが玉に瑕ですが、一度和解してしまえば決して後腐れもなく「ありがとう」を素直に口にしますし、同じ爽やか好青年のリョウマともすぐに仲良くなれました。


また、女子高生である百合子の淡い恋も描きつつ、そこで簡単に恋愛に持っていかれるのは嫌だったので、絶妙に避けてあくまで淡い恋に収めて「友情」として収めたのも好印象。
というか、本作において恋愛関係は基本的にハヤテとゴウキでお腹いっぱいなので、これ以上恋愛戦隊にしない意味でもリョウマにラブロマンスを持ってこなくてよかったと思います。
ただでさえリョウマには兄のヒュウガ、そして勇太くんを中心に人間関係は充実しまくっているので、今更そこで恋愛要素を持ってこられても微妙ですし。
内容としては可もなく不可もなしといったところですが、個人的にリョウマが初めて勇太くん以外の一般人と関係性を築いたこと、そしてその関係性の構築がよかったことも込みで評価はC(佳作)とします。
かなり淡白な感想となってしまいましたが、内容的にはかなり薄いので、まあ高く評価してもこのくらいかなと。

 

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