明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)29・30話感想

 

第二十九章「闇の商人」


脚本:小林靖子/演出:長石多可男


<あらすじ>
リョウマたちは勇太と共に年に一度のギンガの森のお祭りである「星祭り」を行うことになり、勇太も手伝う。その時勇太は「戦士の誓い」を覚えるようヒカルが言うが、ハヤテに誦んずるよう言われると詰まっていうことができない。ヒュウガは戦士の誓いを「覚えることが重要ではなく、戦いの中で実践することが大事」なのだと言う。一方バルバンの方では、闇商人ビズネラが巨大な兵器をバルバンに売りつけようと営業に来ていた。イリエスシェリンダは「信用ならない」とその慇懃無礼な態度や物言いが気に食わなかったが、あることを条件にビズネラはギンガマン側にとって脅威となる作戦を立てるが…。


<感想>
ここから三十六章まではやや箸休めの回が続くのですが、今回と次回はその中でもちょっと異色の前後編となっています。
というのも鋼星獣の登場に関しては元々の予定になかったことであり、後から判明したことですが、スポンサー側の無理矢理な横入れだったそうです。
あらかじめ話しておきますが、小林女史はこの話が来た時に相当怒って「もう書かない」と自暴自棄になりかけたのだとか。
なんでも「宇宙探査ロボ」として出してくれとのことで、前作「メガレンジャー」の続編「ギガレンジャー」の没案を流用したものだそうです。


そのため、本作はパワーバランスが悪いと言われてるようですが、でもぶっちゃけ00年代以降と比べたら全然マシな方だと思いますね。
次回できちんと明かされますが、無理のない意味づけをしていますし、00年代戦隊なんてある時期以降ひたすらロボット全合体とかって無茶苦茶なことやるじゃないですか。
アルティメットダイボウケンの十体合体とかエンジンオーG12の十二体合体とかサムライハオーとか「もうやめてくれ」と言いたくなるようなものばっかです。
もし「ギンガマン」が今の戦隊の商業的ノルマでやったらギンガイオーにブルタウラスが合体して、更にギガライノスとギガフェニックスも合体するでしょうね、もう物語もキャラの良さもまるで無視して


それこそ「全星獣合体!」とか言い出して、上記したような全合体ロボも真っ青の気持ち悪いデザインのロボットを出すんだろうなと思うと、本当にそんなことにならないでよかった。
98年という玩具販促にばかり阿るようになっていく前の時代の作品だからこそ、どれだけパワーアップしても星獣を全部合体させようなんて無茶なことをしないだけでもありがたい。
話を戻して、そんな感じで作られているのがこのギガライノス・ギガフェニックス編なので、なんとか擦り合わせには成功したものの違和感は多少なりともあります。
まずは星祭りの準備のシーンですが、ギンガマンは故郷を離れてからもこういう風に故郷であるギンガの森の行事を忘れず大事にしているところがとてもいいです。


その中で「戦士の誓い」なのですが、この言葉がまたギンガマンらしさを表していて、実にいい言葉です。


「戦士とは日々においても戦いにおいても、心に平和を忘れず、持てる力全てを惜しまず、諦めず、振り返らず、また、仲間を信じ、苦難と哀しみは受け入れる。全ては星を守る為に」


今回これをヒカルが覚えることで成長に繋がっているのですが、そろそろヒカルメイン回が欲しいなと思っていたので、ここでまたもやヒカルメイン回が来てくれたのは嬉しい限り。
また、この言葉が本当にギンガマンらしく、特に「苦難と哀しみは受け入れる」の部分がね…なるほど、ギンガマンが黒騎士と違い「復讐」に陥らなかったのはこの言葉のお陰です。
マイナスなことや辛いことがあっても、そこで復讐に身を窶すのではなく「それも運命」と受け入れて対処することで、あの非常に気高い超一流の戦士の魂に繋がっているのでしょう。
苦難と悲しみを「あってはならないこと」とするのではなく、それすらも「必要なこと」として飲み込んでしまえる圧倒的な強さこそがギンガマンが凡百のヒーロー作品と違うところです。


一方バルバンの方では宇宙の闇商人ビズネラがジャガーバルカンもどきの兵器を持って来て、星獣たちを葬り去るであろう兵器としてお勧めする。


「それは信用できんな。お前は我々が荒らした星の残り物を漁る、いわばハイエナだ。そのお前がどうしてそんな兵器を持っている?」
「はっはっはっはっは、ところが思わぬ拾い物もあるんですよ。落ちているのは鉄クズだけとは限らないのでね」


ここでどうしてもデザイン的にもキャラクターとしても浮いているビズネラをバルバン側からその出自・背景とセットで語らせることで説得力を持たせます。
そしてビズネラはヤートットとともに街へ繰り出すと、ヒカルとヒュウガを拉致した上で、最強のヒュウガを人質にアースを吸収しようとします。
改めて一対一になったことでヒカルとヒュウガの関係が描かれるのですが、次の台詞のやり取りがとてもよかったです。


「ごめん俺、強がっちゃって……このザマだ」
「弱音を吐くな。戦いは始まったばかりだ」


ヒカルがこんな風に謝る相手はヒュウガだけじゃないでしょうか…あの厳しいハヤテでさえもヒュウガには頭が上がりませんし。
それくらいギンガマン5人にとってヒュウガがいかに絶大な存在であるかがこうした細かいやり取りからも伺えるのです。
まあ泣き虫だったリョウマを覚醒へと導いて来たのですから指導者としてもすごいのでしょうが、思えば天堂竜や志葉丈瑠に足りないのはこうした人心掌握術だと思います。
それぞれ天堂竜が「完璧超人であろうとすることで現実逃避している」、志葉丈瑠が「完璧超人であろうとすることで家臣たちを遠ざけ正体を暴かれないようにする」という違いはありますが。
そういうのが一切なく本当の意味での完璧超人として描かれている黒騎士ヒュウガはやっぱりリョウマと並んで一番好きな追加戦士・番外戦士ですね。


そしてヒュウガはヤートットにボコボコにされながらも、改めてヒカルに戦士の誓いを諭すように、ヒカルの中に染み込ませるように説くのです。


「戦士とは……日々においても戦いにおいても、心に平和を忘れず、持てる力全てを惜しまず、諦めず、振り返らず、また、仲間を信じ、苦難と悲しみは受け入れる」
「苦難と悲しみ……」
「そうだ、全ては星を守るために」


ここでヒカルが出した答えはアース吸収装置を破壊し、自決するという、本作らしくない「自己犠牲」が描かれているようでした。
翌日に再び現れたビズネラ相手にしっかりと啖呵を切り、リョウマとは別の形でグングン成長しているヒカル、めちゃくちゃカッコよかったです。
それと同時にこのヒカルとビズネラの因縁もまた終盤で重要な要素となってくるので覚えておきましょう。
止むを得ず、ビズネラはヒカルを解放するのですが、ここでヒカルがアースを放つ意味が第四章とまるで違うものになっています。


第四章では自分のためだけにわがままで使っていたアースですが、今回は仲間のため、何よりヒュウガのために行ったことでした。
もう半年も戦い続けたことで自然とヒカルも他者のために地球のために戦い続けることができる戦士へ成長していたということでしょう。
改めて戦士の誓いを誦んずるヒカルがこれまた素晴らしい。


「戦士とは……持てる力、全てを惜しまず、諦めず、振り返らず……」


ここでヒカルは待ってましたとばかりに渾身の蹴りを入れて奪われたギンガブレスとブルライアットを取り返します。
そう、やっぱりヒカルは自己犠牲のためではなく、仲間のため、ヒュウガのために戦ったのです。


「また、仲間を信じ!はあ!!」


ヒカルがアースを高々と空に掲げてリョウマたちに知らせ、そして改めてビズネラを雷のアースで吹き飛ばしギンガ転生!


「苦難と哀しみは受け入れる――銀河転生!」


そしてキバナイフでヒュウガを助け出したギンガイエローはヒュウガにブルライアットを渡す。


「…全ては星を守るために。これでいいだろ?」
「ああ、上出来だ。騎士転生!」


ここでヒカルが言葉の重みを1つ1つ噛み締めつつ、苦難と悲しみを受け入れつつ、でも決して「自己犠牲をしない」形でヒカルの成長を描いたのが見事です。
前半はどこか「俺が俺が」な面もあり、お調子者の側面もあったヒカルが今回ヒュウガというハヤテの完全な上位互換と組んだことで甘さがなくなりました。
逆にいうと、ヒカルはようやく精神的にリョウマと対等の域に来ているというか、かつてリョウマが立っていたステージへ来たということです。
つまりハヤテの説教をもう必要としないほどに精神が成熟し、合流しても調子に乗ることなく宣言しました。


「星祭り、出ないで死ねるかって…せっかく戦士の誓いを覚えたんだからさ!」


少年っぽいあどけなさを残しつつ、やはり死を厭わない自己犠牲ではなく星祭りをみんなで一緒に見るため、未来のためにヒカルはあの行動に及んだのです。
そしてビズネラは改めてヤートットを呼び出し、リョウマの「銀河炸裂!」という合図とともにいつもの燃えるバトル。
肉弾戦はどうかと思われたビズネラですが、意外にも強く、これはもう完全にブクラテスの上位互換が出ましたね。
智略も作戦も一切の無駄がありませんし、かといってブドーみたいに周囲から反感を買うような立ち居振舞いもしませんから。


そしてここが今回すごかったのですが、ビズネラはやられる振りして黒の一撃とギンガの閃光の強力なエネルギーを吸収するという神業を披露しました。
ええ、星獣復活のエネルギーを吸収しようとして失敗したサンバッシュとは雲泥の差です、哀れなりサンバッシュ。
同時にギンガの閃光が初めてトドメを刺せなかった瞬間でもあり、ここで必ずしも無双ではない形で持って行ったのは見事です。
毎回毎回ギンガの閃光が無敗を誇っていたらそれはそれで面白くありませんからね。


そして、星獣たちはギガライノスとギガフェニックスと戦うことを拒否し、改めて彼らも星獣であることが明かされました。
だからコントローラーのエネルギーとしてアースを必要としていたという展開もうまく、次回へ引き。評価はA(名作)でしょうか。


第三十章「鋼の星獣」


脚本:小林靖子/演出:長石多可男


<あらすじ>
闇商人ビズネラがバルバンに高額で売りつけたのは鋼星獣のギガライノス・ギガフェニックス・ギガバイタスである。星獣を兵器に改造した挙句、同じ星獣同士戦わせようとするビズネラのやり口にギンガマンは深い悲しみとともに怒りを感じていた。ギンガマン側を追い詰める手柄を立てたビズネラは一気にゼイハブの信用を勝ち得て、コントローラーをイリエス魔人族のバルキバルキに預ける。リョウマたちは今日が星祭りの夜であることを思い出し、そんなお祭りの日に星獣同士で殺しあっていいはずがない、きっとギガライノスたちにも星を守る心が残っているはずだとし、鋼星獣を元に戻そうと奔走するのであった。


<感想>
さて鋼星獣の後編ですが、ギガライノス・ギガフェニックス・ギガバイタスはバルバンに滅ぼされた星の星獣の残骸を回収して兵器としたものでした。
ここでいわゆる「仮面ライダー」「ジャッカー電撃隊」のようなサイボーグヒーローを星獣に持って来たところが見事です。
五星獣ともゴウタウラスとも違う「鋼の体にされてしまった星獣たち」というアンチテーゼとしてうまく機能しました。


「かつては星の為にバルバンと戦った星獣たちも、今や私の操り人形」


ビズネラが前回に引き続き、なぜバルバンと闇取引ができるほどの悪党なのかがこの台詞回しからも補強され、同時にバルバンが裏世界でそういう取引をしていたことも判明。
ここで星獣たちを倒さない理由も「商談を成立させるため」という一線の引き方がしっかりしていて、そのあと見事にゼイハブ船長たちから気に入られました。
ちなみにイリエス自身はビズネラを高く評価したからというより、「金貨が倍になるから」という理由で受け入れてしまうのがもう強欲塗れな彼女らしい。
その後コントローラーは緑の大猿バルキバルキに預けられるのですが…えーっと、こいつどう見てもサンバッシュ系の脳筋ですよね?
基本的にねちっこい変化球タイプが多いイリエス魔人族の中で、久々にやられ役な感じの脳筋な敵が出てまいりました。


一方ギンガマンは元星獣たちを操ったビズネラへの怒りとともに、改めて同情し、星祭りの意味と絡めて星獣の意味を再定義します。


「今夜は星祭りだったな」
「星獣は星から生まれる、星を守る為に。そして何千年もの間には死んでいった星獣もたくさんいる。でもそんな星獣たちの心は死なない!きっと生きてる…そう信じて、星を守る全ての心を一つにして、平和を願うのが星祭りなんだ」
「心を一つに?」
「その飾りは星獣や戦士たちの心を繋げた象徴だよ」
「そんな日に、殺し合っていい筈ないよ。星獣が、あの星獣たちだって、きっと悲しんでると思う」
「ああ」
「助けよう!あの星獣達を!なんとかして元の、星を守る星獣に戻すんだ!」
「……星獣達の心は死なない」


ここで改めて初期から提示されている「ギンガマンと星獣の絆」をきちんと示してくれたのはよかったところで、本テーマではないにしても「星獣あってこそのギンガマンと黒騎士」というのがよかったところです。
第七章でギンガイオー誕生に際して自在剣機刃をギンガマンと星獣たちの心の絆として機能させてくれたのですが、そこでもう1つゴウタウラスや鋼星獣の心を結びつける象徴に星祭りを持って来たのがベスト。
ただ、ここまではすごく良かっただけに、鋼星獣を説得して仲間にするくだりが物凄く雑に処理されてしまったのは小林女史の大変よろしくない一面が出てしまったところです。
これは後年の「タイムレンジャー」「シンケンジャー」でも出てくる弱点なのですが、小林女史はキャラクターのドラマはとてもいいのですが、巨大ロボの玩具販促は致命的なまでに不得手だなと。


だって、必死に感情で訴え続けたら仲間になりましたって、そんな甘いものじゃないでしょう…それってスパロボで言うなら東方不敗レベルの救いがない悪党をたった一回の説得であっさり味方にするあり得なさです。
本作は何度かこういう「奇跡」を肯定して来ましたが、それを実現するためには何かしらの重い代償が必要であり、常に「痛み」を伴うものでした。
具体的に列挙すると以下のような感じです。

 

  • 第一章…ヒュウガの死と引き換えにリョウマがギンガレッドになる
  • 第二章…故郷の封印と引き換えに星獣が地球へやってくる
  • 第七章…死のリスクと引き換えに星獣が仮死状態から復活しギンガイオーが誕生する
  • 第十三章…モークが瀕死の中で獣撃棒を生み出す
  • 第二十三章…ギンガの光を一度敵側に奪われる展開を経て獣装光ギンガマンが誕生する
  • 第二十五章&第二十六章…ブルブラックの死と引き換えにヒュウガが復活し、黒騎士ヒュウガが誕生する


こんな風に本作は常にストレスとカタルシスがセットになっていて、何か大きいものを得ようとしたり、大きなことを成そうとしたりする際には常にヒーロー側が何かしらの代償を払っています。
しかし、この鋼星獣が仲間になるに際しては鋼星獣側は重い代償を払っているにもかかわらず、肝心のギンガマンと黒騎士が代償を払っていないというのが悔やまれるところ。
元々予定になかったために小林女史もどう書いていいかわからなかったのでしょうが、前回と今回の冒頭までがすごく良かっただけに、この後が盛り上がりに欠ける展開となってしまったのは残念です。
本作は歴代戦隊の中でも特に「物語による積み重ね」を重視しているので、この点がきちんと鋼星獣側にも適用されなかったのはなんか嫌でした。


で、鋼星獣ですが…えーっとこれはあれですか?


ギガライノス?

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ギガフェニックス?

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ギガバイタス?

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昭和特撮ロボのオマージュを持って来ているのですが、これで動物っぽいデザインまで似せており、しかも特撮もモーフィングから、それぞれの元星獣のモチーフと重ねているのは良かったです。
反撃のカタルシスはすごく良かったので、そこに至るプロセスが本作らしくない雑な展開だったのはどうにもなあと思ってしまいます。
ラストの星祭りで改めて6人+勇太で「戦士の誓い」を斉唱するところは良かったんですけどね…で、失敗したビズネラは脳筋のバットバスと徒党を組むことに。
ここから第4クールへのさりげない仕込みが行われたところで次回へ続きますが、評価としてはなんとも微妙でE(不作)といったところかな。

 

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