明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)27・28話感想

 

 

第二十七章「ミイラの誘惑」


脚本:荒川稔久/演出:辻野正人


<あらすじ>
ヒュウガが戻ってきてリョウマ、ハヤテと稽古に励む中、サヤは改めてヒュウガに乙女の表情を浮かべる。そんなサヤをからかうヒカルに対して、サヤは本気で怒り殴り合いのすったもんだに発展する。一方バルバンでは死んだはずの黒騎士が生きていたという想定外の事実にショックを受けつつも、次の作戦に移行することにした。その作戦とは魔人モルグモルグに女性の若さを吸い取らせることであり、その途中でヒュウガは女子高生に抱きつかれてしまい、サヤはそんなヒュウガを見て思わずショックを受けてしまう。果たしてヒュウガが女子高生に近づいた意図とは何だったのであろうか?


<感想>
さて、今回からようやく真の意味での3クール目の始まりというところですが、今回は二十一章以来の荒川脚本回というとことで、内容的にはまずまずといったところ。
そもそもサヤメイン回自体あまりいい回がなかったんですけど、この回はサヤの可愛さや純情可憐さよりもヒュウガ兄さんの完璧超人ぶりの方が際立つ構成だったような(笑)
まず冒頭のシーンでの訓練はすごくかっこいいのですが、ここでのやりとりはサヤよりもむしろゴウキとヒカルの反応が面白かったです。


「そりゃあ何たって…」
「何たって、サヤはヒュウガに恋をしてるんだもんな〜」
「え、そうなのか?」
「違うよもう!私にとってヒュウガは優しいお兄さんで、戦士として尊敬できる先輩!」
「へえ、どうかな~」
「怒るよヒカル!」


ここでヒカルがいたずらっ子精神を発揮し、そこにゴウキが「え?」という反応がとても美味しいのですが、反面サヤの株が一瞬で暴落しました
だってあんなにキラキラ乙女してたと思ったら、からかわれてマジギレして握りこぶしって…うん、「いい女」とは程遠いですね。
というか、そもそもサヤのヒュウガへの憧れというのはスーパー戦隊シリーズだとなかなか掘り下げられない要素ですから。
しかもその方向で行くとやはり兄弟で絆の強いリョウマの方がすごくドラマチックな関係性にありますし。


また他のメンバーとの関係性で見ても、リョウマとはヒュウガをめぐるライバル関係ですし、いわゆる乙女担当はゴウキの女子力が高すぎますし。
ハヤテにはミハルという婚約者とシェリンダというライバルがいるので女関係は間に合ってますし、ヒカルはそもそもサヤとは基本犬猿の仲です。
で、残ったのが勇太くんとモークとボックなのですが、勇太くんは当然リョウマとの関係が最優先ですし、モークは司令官だし人間じゃないから微妙。
となると…やっぱりボックなのでしょうか?個人的にはボックとサヤのマスコットキャラ同士を強化しておけばよかったのではないかという気がしますが。


で、バルバンの作戦は乙女の若さを吸い取ること…うん、まあ荒川脚本らしい作戦だなあと思いつつ、作戦規模が急にショボくなりすぎです
本作は小林女史以外が担当すると、バルバンの作戦のレベルが地球規模からご当地ヒーローレベルに下がってしまうから困ります。
また、女子高生に魔人が乗り移っていたところからのヒュウガとサヤのミスリードに関してもうまく描けていたとは言えませんし。
前回に続き、ヒュウガ兄さんを改めてギンガマンの一員として馴染ませようという努力は見えますし、かっこいいのですが、サヤのキャラ立てには寄与していません。


女子高生との交流という点でも微妙なエピソードで、結局作り手はサヤをどういう方向性に持っていきたいのかいまひとつ見えず。
荒川氏としてもサヤというか、ギンガマン自体が描きにくいヒーロー像だったんじゃないかというのはこの辺りからも伺えます。
そう考えると「タイムレンジャー」の女らしさをばっさり捨てたユウリや「シンケンジャー」のことははサヤの反省があってできたキャラなのだなと。
リョウマとサヤってさりげなく気質が似ているので、この2人をハイブリッドに融合させて侍少女にしたら見事にことはになるんですよね。


評価はD(凡作)、つまらないわけではないのですが、かといって特筆した面白さがあるわけでもなくまあまあなところ。


第二十八章「パパの豹変」


脚本:武上純希/演出:辻野正人


<あらすじ>
勇太はその日ゴウキと共に鈴子先生とデートに向かう予定で、ゴウキに父親の晴彦から教わった恋愛のアドバイスを伝授する。しかし、その様子をたまたま晴彦が見てしまい、ピクニックに行くはずだった自分よりもゴウキと鈴子先生とのデートを優先されてしまったことにショックを受けていた。一方バルバンではダイタニクス復活の魔力を得るために、人々の温かい心を奪い去り洞窟の奥にある結晶へ注入することでエネルギーに変換する作戦を魔人ヒエラヒエラに実行させる。そのヒエラヒエラの罠にかかった晴彦は息子の勇太を邪険に扱うようになってしまい、勇太は今までひどい扱いをしたせいで父親に嫌われたのではないかとショックを受けたが…。


<感想>
相変わらず作戦失敗続きのイリエスにあきれる他はないゼイハブ船長。


「イリエス、どうやらてめぇの手下の魔術とやらも、大してアテにはならねぇようだなぁ」
「そんな、たまたま邪魔が入っただけですわ」
「言い訳する暇があるなら、さっさと魔獣ダイタニクスの封印を解いてみせろ!」


もはや完全に「どうせこいつはダメだろ」と諦めているゼイハブのぞんざいな対応を見るに、サンバッシュやブドーの時とは違って最初から信用残高ゼロところかマイナスの領域に突入しているバルバン。
しかもこれで誰一人としてフォローしないあたり人間関係がめちゃくちゃシビアで、こんな殺伐とした人間関係だから負けてしまうのではないかというのが納得されうる次第です。
唯一の味方は叔父のブクラテスですが、ヒエラヒエラを使い人間の思いやりや優しさを抜き取って111人分集めるというとても非効率な作戦を展開していました…これで本当に復活するんかいな?
そんな中、相変わらず晴彦父をぞんざいに扱う勇太くん。


「約束って!?パパとの約束は?」
「とにかく、今はパパの相手してる暇ないの、じゃあね!」
「じゃあねってそんな!パパを見捨てる気か!?」


勇太が向かった先はシルバースター乗馬倶楽部にいるゴウキ…しかもゴウキと鈴子先生のデートを特別にセッティングしていました。
……うん、あまりにも残酷すぎる人間関係のヒエラルキーが描かれているのですが、おそらく勇太くんの中で優先順位はこんな感じ。


リョウマ>ハヤテたち他のメンバー>鈴子先生>>>(超えられない壁)>>>父・晴彦


ああ、切ない……一番杜撰な扱いを受けてしまうダメ父親・晴彦さん(涙)
ゴウキを待ち合わせ場所へ案内する勇太は父親からもらったアドバイスを伝授する。


「あ!そうだ、そういう時はこうやって手を握って、相手の目をじっと目を見ればいいって……パパが言ってた!」


ここで父親の晴彦のことを何だかんだ信頼している勇太の姿が見えたのがいいところで、しかし父親の晴彦がそれを見てショックを受けてしまいます。
ゴウキをデートに送り出した勇太は家に戻るもヒエラヒエラの罠にかかり人間の心を失った父親らから家を叩き出されてしまう…まあ今までの粗雑な扱いが裏目にでることに。
その勇太はゴウキに泣きつこうとしたところで、ゴウキはギンガブルーとしてリョウマたちとともにヒエラヒエラを迎え撃ち、久々のギンガ獣撃弾を受けて氷となりました。
その後ブルーはまたもや第十章の時と同じように、鈴子先生とのデートに駆けつけるのです。


「なんか前にもこんなことあったような気が……」
「「「「……あ!鈴子先生!」」」」
「え?」


ここで鈴子先生の事情を知らない黒騎士ヒュウガの「え?」という演技が美味しいのですが、戻ったゴウキは道で泣いている勇太を発見。
話を聞いたところ、勇太くんの視点では父親に冷たい対応を取り続けた上に約束を破ったからこうなったのではないかと思い込んでいるところがよくできています。
同時にこれまで「少年」の顔が強かった勇太に「息子」としての顔がきちんと出始めたのがとてもいいところです。
しかし、約束を破った責任はゴウキにもあるから一緒に謝ろうというのはよかったのですが、まだそこまで深い信頼がない鈴子先生に「待っててくれるさ」はどうなのでしょうか?


その後は勇太くんと父親の軋轢から一気に緊張感のある洞窟のシーンへ…ゴウキは勇太のことを放っておけないと追いかけ、リョウマ以外のメンバーも勇太くんを心配しているのがいいところです。
他のメンバーがヒエラヒエラを相手にしている間、勇太は父親の心を取り戻すと意気込み、そこにゴウキが駆けつけてイリエスを食い止めている間に勇太が結晶を体当たりで破壊しました。
すごい、伝説の戦士に弟子入りした勇太が投石→機刃による破壊工作に続いて「体当たり」まで覚えてしまい、このまま行くと素で星獣剣とか使いそうで怖いです。
頼むからそのスキルは戦い以外にの目的で使わないでほしい…間違いっても友達との喧嘩に使ったりしちゃダメだよ。


そして奪われた感情エネルギーは人々の中に戻り、ここでしっかりと勇太が普段は言えない謝罪の言葉を口にし、改めて青山親子の関係が深まりました。
まあこれはいわゆる「失ってみて初めて分かる親子のありがたみ」なのですが、そろそろ晴彦さんの扱いをよくして欲しいと思った絶妙のタイミングできてくれたのです。
その後は黒の一撃とギンガの閃光によってトドメを刺し、さっくりと巨大戦でトドメ、今更ですが「イリエス魔人族はしつこいんだ」がバルバエキスを飲むときの口癖となります。


「パパ、今度は一緒にピクニックに行こうね」
「ああ」


こうして大団円となりますが、ここから鈴子先生に仲間たちが入り混じってのコミカルなオチで、まあ仕方ありません。
そもそもゴウキと鈴子先生との恋愛自体がみんなで応援しようというものでしたからね。
アクションとしてはまあまあでしたが、きちんと青山親子の関係について掘り下げてくれたのはよかったところです。
さらにゴウキと鈴子先生のキャラクターも守られ、今回は月並みながら安心して見られました。
評価としてはB(良作)というところでしょうか。

 

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