明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)感想前半2クール総括

前半戦が終了したので、熱が冷めないうちにまとめておきます。

 

 

 

(1)前半2クール分析表

 

話数 サブタイトル 脚本 演出 評価
1 伝説の刃 小林靖子 田崎竜太 S(傑作)
2 星獣の再来 小林靖子 田崎竜太 S(傑作)
3 大地の知恵 小林靖子 辻野正人 A(名作)
4 アースの心 小林靖子 辻野正人 S(傑作)
5 必殺の機刃 小林靖子 長石多可男 A(名作)
6 星獣の危機 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
7 復活の時 小林靖子 田崎竜太 S(傑作)
8 愛情の料理 武上純希 田崎竜太 E(不作)
9 秘密の子猫 武上純希 辻野正人 D(凡作)
10 風の笛 小林靖子 辻野正人 S(傑作)
11 戦士の純情 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
12 悪夢の再来 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
13 逆転の獣撃棒 小林靖子 田崎竜太 S(傑作)
14 二人のサヤ 荒川稔久 田崎竜太 E(不作)
15 恐怖のしゃっくり 武上純希 辻野正人 D(凡作)
16 心の故郷(ふるさと) 小林靖子 辻野正人 A(名作)
17 本当の勇気 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
18 謎の黒騎士 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
19 復讐の騎士 小林靖子 田崎竜太 S(傑作)
20 ひとりの戦い 小林靖子 田崎竜太 S(傑作)
21 トマトの試練 荒川稔久 辻野正人 B(良作)
22 光の出現 小林靖子 辻野正人 A(名作)
23 争奪の果て 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
24 ブドーの執念 小林靖子 長石多可男 S(傑作)

 

(2)前半戦総括コメント

 

いやあ、改めて見直してみましたが、歴代でもおそらく群を抜くアベレージの高さであり、これに匹敵する完成度の作品となるとなかなかないのではないでしょうか。
もちろん好みも大きく影響しているのですが、客観的に見ても無駄なエピソードや外れの回がほとんどなく、第一章から2クールかけて「ギンガマンとはどのようなヒーローか?」を丹念に紡ぎ上げています。


まず本作を理解する上で大事なのはギンガマンのヒーローとしての立ち位置が初代「ゴレンジャー」およびその正当な後継者である「チェンジマン」「オーレンジャー」の系譜にあるということ。
設定面は「ジュウレンジャー」以降に端を発するファンタジー系なのですが、そこに昭和戦隊が持っていた諸要素を丁寧に吸い上げあながら、それを本作独自の形に洗練させています。
具体的には3,000年前から続く宿命の戦いを「デンジマン」から、復讐という要素を「フラッシュマン」「ライブマン」「ジェットマン」あたりから、伝説の戦士や兄弟という要素を「ジュウレンジャー」から。
そして、特殊能力の「アース」を「チェンジマン」のアースフォースからいいとこ取りで集約させつつ、それらを無駄なくがっちり詰めていって1つの戦隊へと作り上げているのです。
つまり歴代戦隊20年分の集大成であるということを理解しておかないと、本質を理解できないのではないかと思います。


そのため、本作は前二作の「カーレンジャー」「メガレンジャー」や後の小林女史の「タイムレンジャー」「シンケンジャー」「ゴーバスターズ」「トッキュウジャー」と比べてもあまり考察の必要がありません。
私は大好きなので本作の魅力をかなり長く書いていますが、このような文章が必要ないほどに子供にとっても大人にとっても理解しやすく万人受けしやすいストーリーやキャラクターになっています。
リョウマたちは主題歌にもあるように強く優しく、そして誰よりも熱い「星を守る」という強い使命感を持った戦士たちですが、ここで大事なのはリョウマたちは物語開始時点ですでに十分な力と技を持っていること。
だから、「ジェットマン」「カーレンジャー」「メガレンジャー」のような「弱い奴が1年がかりでヒーローになる」というボトムアップとはアプローチが違います。
実際未熟者のリョウマにしてもヒカルにしても戦闘力は十分にあるわけで、それこそ使命感の強さや覚悟といった点でも間違いなく歴代トップクラスの上質な戦士たちでしょう。


しかし、そういうプロフェッショナル系の強い戦隊にありがちなのが「結局力があるから正しいのではないか?」という疑問であり、「オーレンジャー」はここをクリア出来なかったのです。
大義としての使命感は持っていながらも、その内面を十分に描けていないから、彼らがどういう思いを持ってどんな覚悟で戦っているのかという人間性がはっきりとわかりませんでした。
本作はそこで最初にギンガマンの精神的支柱であるヒュウガを第一章で死なせ、そして第二章では故郷であるギンガの森を失わせることで、それらを取り戻すのを彼らの戦う内的動機としています。
そうすることで人間味を持たせつつ、また外の世界での青山親子や鈴子先生ら一般人の視点を狂言回しとして使うことで、受け手にすんなりと作品世界に入りやすくしているのです。


その上でリョウマたちは「大義のために自己犠牲をする戦い」ではなく「必ず生きて全てを守り未来を生きる戦い」であることを第七章で宣言することで、ヒーロー像を確立しました。
基礎土台をしっかり構築した上で、サンバッシュ魔人団との戦いを展開し、その終わりである十二章でリョウマたちの精神的弱点となりうるヒュウガを出して揺さぶることに成功。
十三章でリョウマの精神的弱点を浮き彫りにしつつ、モークとの絆の強化も兼ねてのパワーアップなど非常に幸先のいいスタートとなりました。
そして十七章でリョウマと勇太の関係を通して「力と心のあり方」を本作なりのアプローチで噛み砕いて「力や技だけではなく、心も大切」と教えます。
それが十八章以降にギンガマンのアンチテーゼとして登場する黒騎士の登場で具現化し、復讐鬼に陥った黒騎士との対比でギンガマンのヒーロー像が逆説的に浮かび上がるのです。


そんな中でリョウマの奥底の思いが明かされていく中で主人公として大きく跳ね上がり、一気に心の試練を乗り越えつつ、黒騎士との立場が二十三章のギンガの光争奪戦でついに逆転しました。
そして2クール目の終わりをギンガの光という強大な力の制約とギンガマン5人のチームの結束力強化に使っており、元々強かったものたちがさらに強くなっていくストーリーなのです。
前作「メガレンジャー」までが紡ぎあげてきた平成の戦隊シリーズの本質を受け継いで、ニュースタンダードの正統派ヒーローとして作られています。
だから本作は「星を守りたいという気持ち」を手にするまでの物語ではなく、既に星を守る力と技を持っている者が「その力を何のために使うのか?」を問うのです。


それと逆説的に宇宙海賊バルバンは戦いのために何もかもを捨てて、星も人も大事にせず、部下ですらも駒扱いしかしない、仲間同士で内輪揉めを日常的に起こします。
単にギンガマンと対照的であるだけではなく、壊して奪うことが悪の本質にあるとすることで「守るべきものを持つ」ギンガマンとの大きな対比になっているのです。
そしてその両者の中間に第三勢力として黒騎士が入ることでうまいことヒーローとヴィランの本質がしっかり浮かび上がる構成になっています。
だから強さも弱さも、星も星に生きる人も全てを大事にし、全てを守るというある種の理想論にすぎるギンガマンのヒーロー像が絵空事ではなく説得力を持つのです。


リョウマたちは非常に高い戦闘力と使命感を持ち前のめりに戦う戦闘民族でありながらも、それをむやみやたらに誇示しません。
あくまでも謙虚に誠実に自分が持っている力を受け止め戦い続け、それを積み重ねていくことであれだけの強さに説得力を持たせているのです。
ヒーローの強さは決して力にあるのではなく、その力をどう使うかによって決まってくる…ごく当たり前のことなのですが、この当たり前こそ説得力をもって描くのは難しい。
その高いハードルを見事に前半2クールで描ききり、ブドー編完結まで突っ走ってみせました。
ここから後半戦、イリエス編とブクラテス編を残すのみとなりましたが、彼らがどのようなことを成し遂げてくれるのかをじっくり見ていきましょう。

 

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