明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)21・22話感想

 

 

第二十一章「トマトの試練」


脚本:荒川稔久/演出:辻野正人


<あらすじ>
たまの息抜きということでリョウマたちは勇太の誘いを受け、海水浴に出かけることになった。海岸には鈴子先生もいて、ゴウキはバスで寝ている間に顔に落書きされていたことにも気づかず舞い上がってしまう。バーベキューの肉を焼いている最中、鈴子先生は実家で収穫したトマトを差し入れとして振る舞うのだが、ハヤテだけは食べようとしなかった。その様子を見ていたゴウキはハヤテを見て思うところがあったのか、鈴子先生と2人きりで何やら作戦会議を行っていたようだ。一方バルバンも配下の者たちが追い込まれ後がなくなって着たブドーはギンガの光が姿を潜ませるものとしてトマトを挙げ、魔人砲烈道を送り込んだ。


<感想>
今回は十四章以来の荒川脚本回ですが、やっていることは馬鹿馬鹿しいながらも、ナンセンス系ギャグとして程々にまとまっていたと思います。
ハヤテとゴウキという、これまたあまり横の絡みがない2人を中心に展開させつつ、さらに第十一章以来の鈴子先生も再登場させるなど、箸休めの回としては良くできているのです。
また、基本的にシュールギャグな中でもブドーと黒騎士の一騎打ちなどシリアスなシーンがあり、この2人だけはそんなギャグの勢いに流されずシリアスを貫いています。


全体的には最後のメッセージが全てだと思います。


「食べ物はみな大地の恵みだ。好き嫌いをなくせば、それだけ幸せも増えるし、頑張る力もわいてくる!」

 


今回のテーマって第六章に続きNHK教育番組「おかあさんといっしょ」のテイストが強いのですが、思えば普段のコミカルなシーンでのBGMってどこかNHKっぽいんですよね。
モークやボックのビジュアルにキャラクター性もNHKっぽいですし、ヒーロー作品は決して「教育」である必要はないですが、本作ではその「教育」の側面も強く描かれています。
リョウマと勇太の関係がそうなんですが、他にもヒュウガとリョウマだったり、鈴子先生と勇太くんだったりと色々ある中で「大人は子供に何を伝えるべきか?」を組み込んでいるのかもしれません。
面白かったのはゴウキと鈴子先生が一計を案じていたところで、単なる好いた惚れただけではなく、普通の大人の会話ができるのも大変良かったところです。


「すまん!俺が、俺がトマトをおいしく料理できていれば、こんなことにならなかったのに……!」
「ゴウキ、どうしてお前が泣くんだ?」
「後はお前だけだったんだ。リョウマもヒカルもサヤも嫌いな食べ物をこっそり料理に混ぜて出していたら、その内に好き嫌いがなくなっていったんだ。だから、なんとかお前にも嫌いなトマトを食べてもらえるようにと思って、夜も寝ないで考えていたんだが……好き嫌いはないほうがいい。体も丈夫になるしなんでも食べられるって嬉しいことだ。そんな嬉しいお前に、してやりたかったのに……」
「お前のその気持ちには応えたい。けど、俺にはどうしてもトマトが……」


ここで改めてゴウキの主夫スキルについての裏づけやロジックが判明しましたが、リョウマの好青年な優しさ、ハヤテの間接的な優しさと違うゴウキの母親的な優しさが示されています。
その上で好き嫌いをなくすためのレシピの工夫をしていて、そのおかげでみんながすくすくと育っているというのが改めて「大自然で育った」というバックボーンの掘り下げになって良かったところです。
同時に力強いゴウキがこんなに繊細なオトメンだったことも浮き彫りとなりましたが、でも教育的に本当に好き嫌いをなくすことは大事であり、偏食は絶対にさせてはいけません。
私も昔は卵と牛乳が大嫌いだったんですが、いつの間にか克服していて今は普通に食べられますから…因みに食物アレルギーは完全な病気なので絶対に無理矢理食べ出せてはダメです。


で、他のメンバーが水着になるなかゴウキだけが頑なに脱がないのですが、流石にあの肉体を全国の子供達に見せるわけには行かないとなったのか…意外だったのは前原さんのバランスのいい筋肉
決して筋骨隆々ではないものの、貧相ではなくしっかりと鍛え上げてあり、あの重たい民族衣装を当たり前に着られるわけだと納得です。
バルバンの作戦も今回は完全にトマトとまたもや小規模になりましたが、四将軍の中では一番弱いであろうエドモンド本田魔人を嵐の羽ばたきとギンガ獣撃弾で仕留めます。
内容的にはまあ可もなく不可もなしなんですが、メンバー内の二番手と三番手が「トマトの好き嫌い」というくだらないことでシリアスに葛藤するというめちゃくちゃ面白い状況。


末吉氏も照英氏もとことん真面目にやることで一周回ってある種の面白さが生まれており、また教育番組などのメッセージとしてもそこそこにまとまっています。
その上で鈴子先生との絡みであったり、ブルブラックとブドーの一騎打ちと細かいネタが仕込んであり、ギャグとシリアスのバランスがいい回でした。
評価はB(良作)、次回から二十六章まで続く黒騎士編の終焉に向けて、いい箸休めではないでしょうか。


第二十二章「光の出現」


脚本:小林靖子/演出:辻野正人


<あらすじ>
リョウマたちは川原で剣の稽古をしていたが、ヒカルとサヤが突然喧嘩を始めてしまう。原因は前日の夜にサヤが作ったケーキをヒカルが勝手に食べてしまったせいであり、その喧嘩に巻き込まれてハヤテも頭を怪我していた。罰としてハヤテは2人に買い出しを命じ、リョウマたち3人は勇太に「いつものこと」と言う。一方でブドーも完全に追い詰められ、ギンガの光が姿を潜ませる最後の場所は清く湧き出づるものと記されており、街の地下水脈を狙うが、ギンガマンと黒騎士の邪魔が入らないように「阻みの壁」で街一帯を閉鎖空間にしてしまう。人々は外へ出られなくなるばかりか、酸素不足で窒息死しそうになるが…。


<感想>
さあ来ました、ここから二十六章まで物語がノンストップで面白くなっていきます。
今回の話はそこに入るための嵐の前の静けさと言える回ですが、やや静かでありながらも要所要所でしっかりネタが詰め込まれているので、最後まで飽きさせません。
あまり絡みがない最年少のヒカルとサヤの喧嘩、クビがかかったブドーの最後の賭けとそれを邪魔しようと目論むイリエスとブクラテス、邪魔されないようにドーム状の見えない壁を作る怒涛武者。
静かでありながら、第二十三章以降で爆発することになるネタの仕込みは全てここで出来上がっており、まずは冒頭でヒカルとサヤの喧嘩からスタートします。


「お前らな、これは訓練だぞ。喧嘩じゃない」


ここで叱責するハヤテがガチの不良っぽくて怖いのですが、この喧嘩は特別なものじゃなく日常茶飯事のレクリエーションなんだなとわかる空気です。
で、その喧嘩の原因はサヤが頑張って作ったケーキをヒカルが勝手に食べたからとのこと…これはどう見てもヒカルが悪い(笑)
勇太は「そんなことで喧嘩したの?」と茶化して笑ってすが、いやいや食い物の恨みは恐ろしいものですよ。
私も小学生の頃、遠足のために買っておいたおやつを勝手に兄に食われてガチギレして大喧嘩に発展したことがあるからです。


それに食いしん坊なヒカルだったら注意書きがしてあったとしても勝手に食ってしまいそうだなあと妙に納得してしまいます、ドーナツ大好きですしね。
ただ、じゃあヒカルだけが悪いのかというとそうでもなく、サヤがきちんとヒカルの目の届かないところにしまっておけば良かっただけでしょう。
リョウマがそれを「まだまだ子供だからさ」というと、2人から責められますが、ハヤテが厳しくいさめます。


「いいや、リョウマの言う通りだ。2人とも今日買い出し当番だったな?ちょっと行って頭冷やしてこい!」
「いいの?あのままで」
「あれぐらいいつものことだ」
「付き合い長いからさ。逆に謝るきっかけが難しいだけなんだ」


ここで年長者3人組と年少者2人組という構図になり、サヤの方が少し年上ということが描かれ、改めてギンガマンは仲良い戦隊だなあと。
で、もうここらが潮時だとゼイハブたちは着々とブドー処刑の準備を進めつつ、ブドーは焦ることなく最後の将軍である怒涛武者を出します。
声優がドルネロを演じている大友龍三郎氏なので、こういう感じの悪役をやらせたらやたら似合いますね。
聖なる泉の水脈を求める怒涛武者はギンガマンや黒騎士の妨害を防ぐ為に結界を張り巡らセテ見えな壁を作るのです。


ギンガマンは結界の外の年長組と結界の中の年少コンビに分断されてしまい、怒涛武者は胡座を欠いたまま、ギンガイエローとピンクの剣技を受け止め…いやそれ敗北フラグだって。
必殺技というのはある程度ダメージを与えて弱らせて「ここぞ!」という時に使うから必殺技なのであって、いきなり使っても倒せるものではありません。
結界内部は酸素不足で人々が酸欠状態になり、ヒカルとサヤは怒涛武者を倒すか結界を破壊するかで揉め始めますが、普通に考えれば結界の破壊を優先した方がいいでしょう。
ただ、こういう冷静な判断は基本的にハヤテに任せているためか、やはり年少者2人だとそこで喧嘩になってしまう模様。


そしてその中でヒカルは改めてケーキ屋に飾ってあるケーキを見かけて、サヤの用意したケーキがヒュウガの誕生日用に作ったものだと気づいてしまいます。
そこで改めてヒカルは自分がやらかした過失の重さに気づき、しかし素直に謝れないからと怪我したサヤに顔を背けながら包帯がわりをあげる描写が秀逸です。
いわゆる腐れ縁みたいなもので男女の情はないのですが、こういう嫌味のない爽やかな男女の青春・友情を描いているのが長所ではないでしょうか。
そしてサヤと合流したヒカルはヤートットを誘導尋問してつなぎ目の場所を聞き出す辺りはさすが戦闘民族ギンガマンだなと。


さらにそれだけではなく蚊帳の外であるリョウマたちもまた壁を無理矢理に壊そうとするブルブラックとの衝突という形で巨大戦を確保しています。
あの剛火炎ですらも易々と防いでしまうのですが、ここで黒騎士は前回に続き心臓の痛みによってやむなく撤収するという形になりました。
この心臓の痛みによる撤退には明確な理由があるのですが、一体何が黒騎士に起こったのか謎を呼びます。
そして無事にギンガイエローとピンクが綺麗な連携でつなぎ目を破壊しレッドたちと合流するのですが、そこからギンガ獣撃弾を放つも全く効きません。
これで完全に詰み寸前かと思いきや、ついにギンガの光が出現!このまま出なかったら嫌だなあと思っていたので、いいタイミングで出てきました。


ここから物語が激化していきますが、今回はつなぎとしてはやや静かではあったものの、相変わらず脚本と演出が非常にいい感じに作用しています。
飽きさせない工夫が凝らされているので、評価はA(名作)。さあ、ここからは傑作続きです。

 

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