明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)19・20話感想

 

 

第十九章「復讐の騎士」


脚本:小林靖子/演出:田崎竜太


<あらすじ>
ゼイハブ達は黒騎士ブルブラックの話を聞きつけ、彼の故郷の星を襲い滅ぼした3,000年前の過去を思い出す。黒騎士は弟のクランツを人質に取られた上、ゼイハブに目の前で殺されてしまったのだ。黒騎士はそこから3,000年もの間積み重なった復讐に思いを馳せていると、相棒のゴウタウラスもまた地球へ降りてきた。ただでさえギンガマンに阻止されて厄介だったギンガの光争奪戦に黒騎士が加わったので、対抗策としてブドーは最強を誇る四将軍の1人である砂爆盗を送り込んだ。砂爆盗は「灼熱の星を象ったもの」で太陽の形をした彫刻を襲撃したが、そこにギンガマンと黒騎士もまた現れ、混戦となるのだが…。


<感想>
今回は黒騎士のバックボーンと「戦う動機」について掘り下げており、次回と併せて「ギンガマンがどういうヒーローか?」ということの掘り下げを行っています。
同時にその黒騎士の掘り下げを通して改めてリョウマのかっこよさも浮き彫りとなっており、私は黒騎士やバルバンよりもやはりギンガマン側で見てしまうのです。
戦隊ファンや特撮ファンの中にはヒーロー側よりも敵側の方に思い入れを持つ人もいるようですが、私は基本的にヒーロー作品はあくまでもヒーロー側がきちんと立っていることが前提にあります。
主人公であるレッドを中心とした5人の戦いの動機や戦士であることの成り立ちといったバックボーンの強固さと積み重ね、そしてそれが1年でどこまで到達できるかを見ているのです。


だからそれに相対する黒騎士ブルブラックや青山親子、外の世界にいる人々、そして宇宙海賊バルバンの存在は私にとってはヒーロー側のテーマをいかに補強してくれるかでしか見ていません。
そのため、基本的にギンガマン5人以外のキャラクターへの思い入れは私は薄く、ブルブラックもバルバンも誤解を恐れずにいえば「ギンガマンの引き立て役」なんですよね。
悪い意味じゃなく、バルバンが悪として映えるほど、そして黒騎士の影が濃いほどにギンガマンの光の色がよ立引き立つ格好となります。
そういう意味では今回描かれた黒騎士の悲しき過去はどうでもよくて、問題はそれが今の黒騎士のキャラにどう影響しているか?黒騎士の復讐がどうギンガマン側とどうつながるか?ということです。


まず冒頭の過去のシーンでは黒騎士の過去がしっかり描かれ、改めて黒騎士の故郷が滅ぶ様からバルバンがいかに悪辣な外道であるかを描いています。
クランツを人質に取った上で船長自らバッサリとクランツをぶっ殺すシーンは見ていてトラウマもので、今の戦隊だと表現の規制がかかってできないんじゃないかと思うレベル。


「甘えなあブルブラック。こんなお荷物背負って戦おうってのが間違いよ。その甘さ、結局なんの足しにもならねぇってこと、教えてやるぜ」


ここで改めてゼイハブおよびバルバンの非情さも強調され、「守る者を抱えることが戦士としての致命傷である」という容赦ない現実を突きつけます。
また、ここでブルブラックとクランツという、リョウマとヒュウガの暗黒面を体現したIFの存在を出すことで、ブルブラックの復讐に説得力を持たせているのです。
しかもこのバッサリクランツが斬られるシーンは十七章でヤートットに殺されそうになる勇太の話ともリンクしていて、「あの時もし勇太が殺されていたら?」を表現しています。
さらにこのシーン自体が終盤の展開での伏線になっているのですから、そういう意味でも絶対に見逃してはならないシーンです。


ここでなかなか成果が上がらない黒騎士にゼイハブら上層部は痺れを切らします。


「ブドー!てめえに任せた以上そう簡単に交代させたんじゃ俺のメンツも立たねぇ」
「はっ!」
「だが俺も気が変わりやすいからな。あんまり長引くようじゃ、てめぇの命保障はできねぇぜ」


ここで改めてゼイハブのキャプテンシーを描きつつ、同時にその悪辣さがバルバンの仲間割れやはいいんにも繋がっています。
ブドーもそれを覚悟の上で四将軍の1人・砂爆盗を繰り出し、彼が狙うのは「灼熱の星を象りしもの」です。
前回だと「なんかシリアスぶった謎の人」だった黒騎士がここで一気に「復讐鬼」としての顔を見せ始めたことで演出もガラリと変わっています。
黒騎士がオコゼ魔人と戦っている情報をモークがキャッチし、ギンガマンはギンガ獣撃弾で攻撃しますが、全く通用しません。
前回に続き、完全に獣撃棒が役立たず状態なのですが、でもまあダメージをきちんと与えていない以上通るわけもないですからね。


黒騎士はバルバンへの復讐のためなら何もかもを犠牲にしてもいいと、一般人がいるのも構わず攻撃を仕掛けます。


「黒騎士!どうしてこんな無茶をした?!」
「バルバンを倒す為だ」
「お前!バルバンさえ倒せばそれでいいっていうのかよ?!」
「そうだ」
「そんな?!どうして?!」
「奴らは私の星を滅ぼした。私の弟を殺した、そういうことだ」


同じバルバンを倒すという立場でありながら、この衝突で改めてギンガマンとブルブラックのスタンスの違いが見えます。
バルバンを許せない気持ちは同じで、ギンガマンはそれを「星を守るため」の力として規定し、しっかり抑制して使っているのです。
しかし、ブルブラックは戦闘力や使命感の強さなどはギンガマン以上でありながら、心が完全に復讐に染まっています。


「黒騎士ってさ、私たちと似てるね。黒騎士もふるさとと弟を」
「黒騎士の戦いはその復讐というわけか」
「わかるけどさ、俺だってバルバンぶっ潰してやりたいし」
「でも俺はあんな戦い方は嫌だ」
「黒騎士の気持ちはわかる気がするよ。あの時はただ、怒りに我を忘れていただけだと思う」


ここでそれぞれ黒騎士をいろんな角度から慮る5人ですが、特にリョウマの「怒りに我を忘れていた」というセリフが絶妙。
実際第一章でのリョウマは怒りに我を忘れて復讐鬼として戦っていましたから、その姿と黒騎士はやや似ているのです。
しかし、リョウマはそこで復讐に囚われるのではなく、仲間たちとの関係性や青山親子、星獣、モーク、ボックとの絆を大事にしています。
あくまでも「星を守る」こと、そしてその先にある「ギンガの森をもとに戻すこと」があるから戦えるのです。
ではその魂の拠り所を失ってしまった場合、ギンガマンはどうなってしまうのか?そんなギンガマンのアンチテーゼがブルブラックとなります。


そのギンガマンとブルブラックが後半でもう一度砂爆盗と対決することになるのですが、ここで幼稚園児がオコゼの人質にされてしまうのです。
ちなみにこの幼稚園児の女の子を演じるのは悠木碧氏、「仮面ライダー555」にも出演しキュアグレースの声優も演じています。
そう、仮面ライダーBLACKに続き、ギンガマンもまた未来のプリキュアをここで守っていたのです、素晴らしい!
そしてここからが本作のドラマの見どころで、黒騎士には人質が一切通用しません。


「ブルブラック、聞こえねえのか?」
「今の私に人質など意味はない」


3,000年前の状況をオーバーラップさせつつ、あの時の二の舞は絶対に演じないとする黒騎士の復讐鬼としての壮絶さが本領発揮です。


「てめえ、何考えてやがる!?」
「3,000年の間、貴様等バルバンを倒すことだけを考えていた」
「貴様、いいんだな?」
「やってみろ。だが同時に貴様の命もない!」
「黒騎士!やめろ!あの子を死なせるわけにはいかない!」


さあ来ました、ここで圧倒的ヒーロー力を見せにかかるギンガレッド。黒騎士の体にしがみついて止めにかかります。
爆烈射砂を受けながらも、リョウマ自身の言葉ではっきりと伝えるのです。


「駄目だ黒騎士!ここであの子を見捨てれば、どう戦おうとそれはバルバンと同じだ!」


ここで改めてリョウマを通して本作の善と悪、正義の形がしっかりと定義され、リョウマのキャラクター自体も一気に跳ね上がります。
復讐という要素自体はリョウマたちギンガマンも持っているもの、しかしそのために一線を超えることをリョウマたちはしません。
むしろそうさせないためにこそ、バルバンとの戦いに備えて3,000年もの間臨戦態勢で力を磨き続けて来たのですから。
リョウマは第三章、そして第七章と「なんの為に戦うのか?」を宣言していますが、今度は十七章での勇太とのやり取りを踏まえてうまくつなげました。


あの回でリョウマは「力や技だけが戦士の条件じゃない」「戦士に必要な強さや勇気はそこからは生まれない」と「力と心」の関係を説いています。
それを踏まえた上での黒騎士ブルブラックはまさに「力や技だけを追い求め、その為に心をないがしろにしてしまった悲しき生物兵器」なのです。
同時にそれは昭和特撮で用いられた古典的な復讐型ヒーローと言えるのですが(仮面ライダーV3ライダーマンなど)、黒騎士はそういうキャラクターとして出て来ました。
つまり昭和ヒーローのアンチテーゼでもあり、同時に第一章で死亡したヒュウガの暗黒面を体現した存在であると言えます。
またそれが正統派ヒーローでありながらも、内面に人間味をしっかりと持ち合わせているギンガマンとの大きな差別化にもなっているのです。


歴代で復讐鬼としての一線を超えた存在というと「フラッシュマン」「ライブマン」「ファイブマン」が挙げられるでしょうか。
また現在YouTubeで配信中の「ジェットマン」のレッドホーク・天堂竜やドラゴンレンジャー・ブライも復讐鬼の系譜なのですが、これはまたそれぞれの作品感想で語ります。
とにかく、ここで大きいのは黒騎士という強力な「」が生まれたことでギンガマンの「光」がしっかり輝く展開になり、逆説的にギンガマンのキャラクターが補強されたことです。
そしてリョウマが黒騎士を止めている隙にハヤテたちが救出し、改めてギンガレッドは黒騎士にブルライアットを渡すと、黒騎士も見事に決めます。


「黒の衝撃!!」


袈裟斬りでしっかりと決め、復讐鬼としてのブルブラックもまたしっかり格を保ち巨大戦へ…なんと負けなしだったギンガイオーが初めて合体解除まで追い込まれたのです。
戦力的にかなり不利なギンガマンですが、ここで改めて重星獣ゴウタウラスを呼び、目からのビームで巨大化(これは後の「マジレンジャー」へ継承)し、戦います。
この巨大特撮もまた五星獣と違う重厚感があってかっこよく、スペインの「イスパーニア・カーニ」のパロディBGMも相まって完全に闘牛士という雰囲気です。
そして重騎士ブルブラックも圧倒するのですが、流石にオコゼ魔人は強くて追い込まれます…しかし、そこでギンガレッドとピンクがすかさずキバショットで援護するあたりがやはり戦闘民族だなと。


「騎獣合身!合身獣士ブルタウラス!!」


そしてツインブルソードを使った野牛英断で倒し、今回は完全に等身大戦と巨大戦の双方で黒騎士に華を持たせる形となりました。


「私は星をなくしてから、ずっと1人だった。仲間はいらん、ゴウタウラス以外は。それにお前達は甘すぎる。あんな戦い方では絶対にバルバンに勝てん」
「でも、復讐だけで手段を選ばないとしたら、それは…!」
「ギンガの光を手に入れバルバンを倒す。今の私にあるのはそれだけだ」


完全に復讐鬼としての一線を超えてしまっている黒騎士と復讐鬼になることなく気高い精神を持ち続けて戦うギンガマン
純粋培養の伝説の戦士でありながら、王道を歩み続けて来た者達と邪道を行き続けてきた者…同じような悲しみを持ちながらも、その違いをきちんと出して来ました。
ここから物語はグングンと本質へ迫っていくのですが、今までの物語の蓄積を踏まえた上で物語のハードルが上がり、総合評価はS(傑作)となります。


第二十章「ひとりの戦い」


脚本:小林靖子/演出:田崎竜太


<あらすじ>
ブドーはギンガの光が姿を潜ませるものとして「夢より覚めぬもの」を挙げ、四将軍が1人・氷度笠を送り込む。夜の街で人々や生物が次々と体温が下がり眠りに落ちるという現象が起こり始めた。バルバンの出現を察知したリョウマたちは氷度笠と戦い始めるが、リョウマ以外の4人もまた体が凍って動けなくなってしまう。ボックやモークも似た状態に陥るが、炎のアースでそれを打ち消せるリョウマにだけは効果がないのだ。24時間経つと眠りに落ちた人々が死んでしまうという聞いたリョウマは単独で氷度笠を倒そうと出ていくことになるのだが、その前に黒騎士ブルブラックが立ちはだかるのだった。


<感想>
さあ来ました、私がリョウマメイン回の中でもトップクラスに気に入っている傑作回。好きなエピソードTOP5にも挙げており、先日もこちらで記事を書いています。

gingablack.hatenablog.com


さて、黒騎士との衝突を経て、改めて青山親子に黒騎士の話をするギンガマンですが、ここでリョウマはいつもの好青年ぶりを勇太に発揮。


「俺たちは故郷はなくしたけど、仲間と一緒だし、それに勇太もいるだろ」


ここで素晴らしいのはブルブラックのことを全否定するのではなく、認めるところは認めつつきちんと冷静に黒騎士のことを伝えていることです。
しかし一方で黒騎士を見られずにごねている晴彦さんがガキの駄々っ子みたいで面白く、そこですかさずゴウキの手料理でムードが和やかになります。
そんな仲良しこよしのギンガマンとは対照的に、バルバンの方ではブドーに対抗するブクラテスがギンガの光の手がかりを見つけるが、それはただのブドーの下書きでした。

 

「ははは、ブクラテス、お前にしては早まったな」

 

このさりげなくブクラテスをあざ笑う慇懃無礼さがいかにもという感じなのですが、人格者に見えるブドーも所詮は悪党なのです。
そんな今回の作戦はブドー四将軍の1人、北風小僧の寒太郎風の氷度笠が出陣し、世界中の人々を眠らせにかかってしまいます。
その氷の針を受けた人が次々と熱を奪われてしまうのですが、やっていることは第三章のサンバッシュ魔人と似ていながら、目的が「ギンガの光を炙り出す」ことにあるのです。
見事に差別化を図りつつ、氷度笠軍団とギンガマンの夜戦が非常にかっこ良く、基本的に昼間の戦いが多いので印象に残ります。


「眠れ。ギンガの光を誘い出す、深く冷たい眠りに落ちろ」


これでリョウマ以外はハヤテたちも青山親子も、そしてモークもボックも冬眠してしまい、1人で戦うしか無くなってしまいました。
ここで強制的にリョウマが孤立無援で戦う状況を作り出し、しっかりとキャラを追い詰めていきます。
一人で大丈夫なのかという話ですが、ここでリョウマの元にブルブラックが邪魔しに来ました。


「今バルバンの邪魔をされては困る」
「何!?どういうことだ!」
「決まっている。ギンガの光を待つのだ。せっかくのお膳立てを利用しない手はない。奴はその後で倒す」
「そんなことしてたら、みんな死んでしまう!どいてくれ!」
「多少の犠牲は仕方ないだろう」


前回に続き、今度は黒騎士がリョウマを妨害するのですが、何が恐ろしいといって目的を果たすためなら非情な手段を辞さない黒騎士の執念深さ。
復讐鬼としての一線を超えた表現として「バルバンの作戦を逆手に取る」というのは想像以上の外道ぶりの表現として秀逸でした。
同時に復讐のためなら何もかもを捨ててしまえる、何も失うものがないブルブラックの怖さも示していて、自己犠牲の戦い方のアンチテーゼとしてうまく機能しています。
そして止むを得ず戦うことになるギンガレッドとブルブラックですが、やはり一対一で戦っても黒騎士の方が強いようです。
決してリョウマが弱いわけではなく、ブルブラックがそれ以上に強いのだから仕方ない…どんなヒーローにだって負けるときはあります。


「仲間と馴れ合い、守るものを抱え込んでいる限り、バルバンと対等に戦うことはできん!貴様のこの弱さがその証拠だ!」
「それは違う!」


ブルブラックは3,000年前にゼイハブから突きつけられた言葉をリョウマに叩きつけるのですが、ここで意図的に黒騎士がバルバンと同質の存在になっていることを示すのです。
そして冬眠中の猫を守ったリョウマはダメージで変身解除となるのですが、それすらも甘いのだと黒騎士は詰ります。


「それだ、その甘さだ。守るものがある限りそれは弱点となる」
「でも俺は今までそうやって戦ってきたんだ!そのせいで弱いなら、弱くったっていい!その代わり俺は何度でも立ち上がる!守りたいものがある限り!」


前回の「ここであの子を見捨てれば、どう戦おうとそれはバルバンと同じだ!」に続き、ここ数話のリョウマは完全な名言製造機です。
改めて「星を守るため」に戦い続けるギンガマンの象徴であるリョウマがギンガの森の民代表として戦士たる所以を言葉にすることで、リョウマの芯の強さを表現。
それは同時に正規戦士でない者が星を守る戦士でなくなった者と対峙したことで浮き彫りになったものであると言えます。
小林女史はこうしてその人の思いや本質を浮き彫りにするために追い詰めることがありますが、リョウマはそんな主人公の中でも圧倒的に「強い」んですよね、精神が。


「何もかも犠牲にして勝ったとしても、その後に何があるんだ?あなたの戦い方では終わった後に何も残らない!」
「貴様!!」


更にここで、リョウマは黒騎士の「戦い方」を否定するのですが、重要なのは「復讐そのもの」ではなく「復讐をどう昇華するのか?」を論じていることです。
リョウマたちギンガマンも広義の意味では「復讐」を抱えて戦っているのですが、彼ら5人はそれすらも「星を守る」という使命にしっかり昇華しています。
その上で「公のために私を犠牲にする」ことも「私のために公を犠牲にする」こともせず、「公も私も双方を守る」というギンガマンの理想的なヒロイズムが見えました。
だからこそリョウマたちは星に住む人々も星獣も、守れるものは全て守りたいし、恋愛だって友情だって絆だって、全部をしっかり持っているヒーローなのです。


もちろん自己犠牲がかっこ良く見えるヒーローもありますが、本作が目指すヒーロー像はそことは別のところにあります。
その理想をしっかり体現してくれるからこそ、私はギンガマンが歴代戦隊の中でも殿堂入りするくらいに大好きなのです。
また、ここで面白いのはリョウマが予想以上にタフな反論をしてくることで動揺している黒騎士のリアクション。
躍起になって否定するのですが、もうこの段階で黒騎士の行動原理には綻びが見えており、第二十六章に向けて非常にいいやり取り。


黒騎士がここまで焦る理由はリョウマの中に亡き弟・クランツを見ているわけであり、言ってみれば黒騎士から見たリョウマは「星を守る戦士に成長したクランツ」なのです。
つまりクランツのなり得たかもしれない姿をまざまざと黒騎士は見せつけられているわけであり、どれだけ必死になって否定しようとしても、否定することができません。
決してリョウマとブルブラックのどちらかが正しいのではなく、どちらも欠けているものがあることが示された上での持っていき方が見事です。
それと同時にリョウマ程歴代レッドの中でも自分が持つ力に向き合って、それをしっかり実行に移して行動してきたレッドもいないと思うのですよね。
言っていることとやっていることをしっかり一致させるということを特に意識的に描いているのがリョウマであり、だからこそ強さも弱さも、そして憧憬も共感も全部を併せ持った最高のレッドです。


そこからギンガの光が飛び出してきたので成功と思わせるのですが、それはイリエストブクラテスが共謀で仕掛けた罠であり、今回も失敗に終わります。
ここからは挿入歌「ギンガ転生!」をかけて騎馬での一騎打ちとなるのですが、スピーディーさといい迫力といい、「シンケンジャー」終盤の丈瑠と十臓よりもありますね。
派手なCGやエフェクトを使わない分リアリティがあって、孤独に追い込まれた状況ということもあって凄まじい緊張感が生まれています。
しかし、やはり剣の腕は圧倒的に向こうが強く、倒れてしまうリョウマ…しかし、ここで決して弱音を吐かずに一度星獣剣をホルダーに収める。


そして北風小僧が刀を抜く瞬間に居合術によって急所である腹に一撃ドスを食らわせるのですが、これ決まったと思いきや、なんとブルブラックが横槍を入れていたのだ!
ここでもまたブルブラックは邪魔するのですが、結果として共通の敵ではあるものの、リョウマと黒騎士の戦い方のどちらが正しいかはこの段階で答えを出さないのがうまいですね。
普通の戦隊ならあっさり片付けてもいいところを本作は有耶無耶にせず丁寧に扱っているので、ここでしっかりそれを見せてきたのがいいところでした。
巨大戦では銀星獣ギンガレオンがサポートしつつ、ブルタウラスがとどめを刺し、何とか時間内に全員の命が救われます。


「貴様等にバルバンは倒せん。いつかはその甘さが命取りになる」
「認めない、黒騎士。俺はあなたの戦い方を」


前回、そして今回とリョウマが自身の「弱さ」を露呈させながらも、決してブルブラックやバルバンと同じにならずに戦う所以をしっかり言葉にすることで見事に立ちました。
戦闘のプロでありながら上には上があることを黒騎士を通して示しつつ、しかし「力や技があれば、それを笠に着て何をしてもいいわけではない」というギンガマンのスタンスが強固になっています。
ここからは基本的にギンガマン側にとって辛い試練が続くのですが、ストレスの与え方とカタルシスへの持っていき方が絶妙で、全盛期の小林脚本のキレが凄まじい。
また戦隊だから「みんなで力を合わせて戦う」のではなく孤立無援で戦うしかない中で逆説的に仲間の大切さを示すというのも絶妙に機能しています。


チームヒーローだから「一人一人は弱くてもいい」とは言えない今回の状況で、シビアな現実を突きつけつつも、それに屈せずベストを尽くすリョウマの芯の強さが浮き彫りとなりました。
その上でこの力の差をどう覆し、ギンガマンが黒騎士やバルバンを超えて真のヒーローになっていくのかという期待感が生まれ、評価はS(傑作)です。