明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)13・14話感想

 

 

第十三章「逆転の獣撃棒」


脚本:小林靖子/演出:田崎竜太


<あらすじ>
ゼイハブがギンガの光を内密にしていたサンバッシュに呆れ、イリエスとバットバスが自分を次の行動隊長にと名乗り出る。しかし「こいつは遊びじゃねえ」と一喝すると思わずたじろぐが、ギンガの光に関する手がかりをつかんでいたブドーが次の行動隊長に任命される。一方ギンガマン側でもギンガの光を巡ってバルバンとの戦いが激化していくことを危惧していたが、ヒュウガのことで心ここに在らずなリョウマは話を聞いていない。モークはヒュウガがリョウマの弱点であると容赦無く指摘すると、リョウマは外へ飛び出してしまう。リョウマはどこからともなく聞こえてきたモークの言葉を思い出してそれを振り切ると、怪しい虚無僧の集団を見かけた。


<感想>
さて、ここから第2クール、ギンガの光争奪編もといブドー魔人衆編へと入っていきます。前回までのウェスタンな感じとは打って変わって、和風のテイストに。
まずは魔獣ダイタニクスの船上でブドーが刀を振るうカットに始まり、ゼイハブはサンバッシュが隠し事をして不義理を働いていたことに文句を言う。
そのサンバッシュが死んだことでイリエスとバットバスは名乗りを上げるのですが、ゼイハブは厳しく「遊びじゃない。失敗すれば死刑だ。そこら辺わかってんのか?」と戒めます。
ここでサンバッシュだけに厳しいのではなく、イリエスやバットバスに対しても上司として平等に厳しい姿勢を見せることで公平性を保つというバランス。


そんな中、既にギンガの光について具体的な方策を立てているブドーが頭一つ抜けたプレゼンを行います。


「ギンガの光はいろんな物の中に姿を潜ませるエネルギー体じゃぞ。なにをどうやって探すつもりなんじゃ?」
「ギンガの光が潜む物は言い伝えによればわずか数種類。その全てをここに書き出してござる。これを1つ1つ当たってゆけば、必ずやギンガの光に行き当たる筈」
「よーしブドー、次の行動隊長はてめえに決まりだ」


ダイタニクス復活のための具体的な方策を持っていない2人に対して、ブドーは抜群のプレゼンを見せることでゼイハブ船長の信頼を勝ち得ました
このブドーのプレゼン能力の高さは大人になった今見直すと目を見張るものがあり、作戦に具体性がきちんとあるかどうかが大事なのです。
物事は何でも段取り八分と言いますが、ブドーは前回部下にスパイさせたことの報告を元にしっかりと方策を立てています。
それと同時に、割とヒャッハー気味だったサンバッシュとは違い、冷静沈着な知性派としての一面を見せることでしっかりと差別化を図っているのです。
というか、君らは是非その高いプレゼン能力をもって外道衆に転職してはどうかと思うのですが、でもまあ外道衆は基本ヒャッハーだから反りが合わないか。


一方ギンガマン側はギンガの光争奪戦で戦いが激化していくことが予想されるも、リョウマはサンバッシュとの戦いから兄への思いを引きずっていた。


「あの戦いであそこまで追い込まれたのは、君自身のせいだということはわかっているね。リョウマ、ヒュウガへの想いが君の弱点になっている。そんな弱点を持っていては戦士として失格だ!」


ここで1クール目の段階ではあまり露呈することがなかったリョーマの精神的弱点であった「兄・ヒュウガへの思い」についてしっかりと触れています。
第五章、第十二章でリョウマの未熟さをヒュウガを通して触れているのですが、基本的に優等生気質でメンバーへの気遣いを欠かさないリョウマの精神的欠陥が見えてきました。
それを容赦なく指摘するモークは何も間違ったことは言っていないのですが、やっぱりまだ人心掌握に関してはまだ完璧ではなかった模様。
モークの厳しさを表しつつ、リョウマがこれからに向けて克服しなければならない問題を浮き彫りにすることで、いよいよ「真のギンガレッド」になるための物語が動きます。


「モーク!そういう言い方ないだろ!」
「そんなに簡単に忘れられるわけないじゃない!」
「酷すぎるボック…」
「だがどんな時も冷静に対処してこそ戦士だ」
「モークのは冷静っていうより冷たいんだよ!少しは人の気持ち理解しろよな!」


ここでヒカルとサヤとボックがモークに反論してリョウマの肩を持つのですが、ヒュウガの存在はリョウマだけではなく、ハヤテたちにとっても大切な存在だと示されているのです。
ヒカルが言うようにモークの場合は「冷静」というよりは「冷徹」に見え、言葉に温かさというか温度が感じられないのがハヤテやヒュウガとの違いでしょうか。
ハヤテやヒュウガの場合は厳しいことも言いますけど、決してリョウマたちの人格を否定するようなことまでは言いませんからね…「戦士失格」は流石に言い過ぎかと。
しかし、ここでモークもめげることなく、「何が足りないのか意見を聞かせてくれ」と学習意欲があるところが素晴らしく、司令官でありながらモークもまた完璧ではないのです。


その後リョウマは思いを一旦振り切ろうとするのですが、ここでリョウマの兄へのコンプレックスが単なるコンプレックスに終わらないのは彼が補欠繰り上がりで戦士になったから
兄への尊敬・憧れが同時にコンプレックスになっているリョウマですが、それとは別に「自分が本当にギンガレッドでいいのだろうか?」という思いもどこかにあるはずなのです。
もちろん決して戦うのが嫌ということはありませんし、臨戦態勢で戦う心算はあり、戦績も十分に残しているとはいえ、兄ほど上手くやれていないと思っているのではないでしょうか。
そんな複雑な思いが渦巻いているからこそ、リョウマの複雑な胸中に視聴者は共感を寄せることができるのであり、このあたりのバランスは絶妙です。
この後、2クール目の終わりにかけてそんなリョウマの甘さを指摘してくる第三者が立ちはだかることになるのですが、この段階ではまだそれが露呈しません。


リョウマは怪しい虚無僧集団に遭遇するが、途中で見失う…この辺りの大胆な演出の切り替えも田崎監督が実にいい味出してます。
話はバルバン側に入れ替わり、ブリッジの一角に和室をセットし、正座で墨を擦っていたブドーが短冊に歌を書き出し、第一の標的は「樹」と発表する。


「尺八で ギンガの光 探し出し」


宇宙海賊なのに和歌や短歌を知っているというのが驚きですが、ブドーの住んでいた故郷っていわゆる「シンケンジャー」の世界線や「ONE PIECE」のワノ国みたいなとこなのかな。
BGMも雅楽など和風のものに切り替わり、こういう立ち上げの段階では田崎監督が担当することで上手く決まりました。
話はギンガマン側に戻り、ヒカルとサヤをハヤテとゴウキがたしなめていたところ、モークから連絡が入ります。
ブドーが先ほど街に派遣したのは虚無僧部隊であり、特殊な宇宙カビをサンプして、地球上のあらゆる樹々が後数時間死滅の危機に瀕するというとんでもないことに。
それに気づいていたリョウマが戻ってきて、モークと和解します。


「リョウマ。私の言い方はきつかったか?」
「ははは、モークの言ってることは正しいよ。俺なら大丈夫だ!」


決してモークを単なる無神経な存在にせず、きっちり批判されたリョウマ側からフォローすることで上手くまとまり、その虚無僧軍団を迎撃することに。
戦隊恒例の広場でギンガマンが久々にフルで名乗りを上げ、虚無八率いる魔人衆と対決します。
しかし、サンバッシュ魔人団とは違い、ブドー魔人衆は剣戟のプロであるため、リョウマたちは星獣剣やキバカッターを使っても勝てません。
さらに機場の逆鱗すらも跳ね返され、魔人殺法・幻の舞いという幻術まで見せ始め、1クール目のサンバッシュ魔人団とは違う老獪な強さに苦戦するギンガマン


ここできっちりブドー魔人衆がサンバッシュ以上の強さだと見せた上で、自分の体が壊れるかもしれないというリスクを冒して新装備を開発します。
第五章でも星獣剣の偽物を開発したモークの開発能力がこの土壇場で発揮され、モークもギンガマンに影響される形で新兵器を渡すのです。
ボックが運んできた種を思い切って下に投げると、獣撃棒が中から飛び出し、「剣術には剣術を」ではなく「剣術には棒術を」という別の対策法を持ってくるのが見事。
しかも単なるパワーアップではなく、ギンガマンとモークを繋げる絆の象徴として描かれており、星獣剣、機刃としっかりパワーアップアイテムに意味づけをしています。


新開発武装ということで若干の唐突さはあるものの、きちんとギンガマン5人への配慮を忘れないところが非常に良くできたところです。
そしてモークの新開発装備を戦闘のプロ・ギンガマンは即座にものにして使い熟し、猛火獣撃で虚無僧の幻術を破ってしまいます。
その上で最後は全員揃ってのギンガ獣撃弾で虚無八を木っ端微塵に粉砕し、バルバエキスを飲む虚無八。
せめて最後のご奉公」と決めセリフが変わり、飲むときの容器も瓢箪に変わっており、こういったところも細かい工夫が凝らされています。
あとはもういつものギンガイオーコンボで決めて宇宙カビが全て除去され、モークも復活。パワーアップ祝いも兼ねて和解しました。


「私も君たちに影響されているようだね、悪い傾向だ」
「ははは、モークありがとう。助かったよ」
「助かったのは私の方だ。ありがとう、みんな」


何がいいと言って、お互いに「ごめんなさい」ではなく「ありがとう」という前向きな感謝の言葉で締めくくっているところです。
「冷静さ」を軸にして、ブドー魔人衆の入れ替えとともに敵側の戦力に説得力を持たせ、さらにギンガマン5人とモークの関係性も強化。
リョウマの精神的欠陥を浮上させるとともに、単なるパワーアップじゃなく、それを通して物語上の意味づけをきちんとしています。
また、今回改めてギンガマンが剣術・体術・アースに加えて棒術までもができるプロ中のプロという設定がさらに補強されました。


非常によく練られたシナリオと演出で、前回からしっかり物語としての格を落とさずに展開したので評価はS(傑作)


第十四章「二人のサヤ」


脚本:荒川稔久/演出:田崎竜太


<あらすじ>
ある日のこと、リョウマたちはサヤに瓜二つのアイドル・星野美咲の写真をサヤに見せる。バルバンの方では、ブドーがギンガの光が姿を潜めるものとしてカメラを指定し、魔人札僧正を送り込んだ。手当たり次第にカメラを破壊して回る札僧正をギンガマンたちが相手にしていると、サヤに攻撃を浴びせて去っていく。その側にはたまたま星野美咲が居合わせており、戦いに巻き込まれた影響で怪我をしてしまい、ギンガマンは至急彼女の手当てをする。マネージャーはサヤに美咲と入れ替わって仕事をして欲しいとマネージャーに頼まれるわけだが、果たしてうまく誤魔化せるのであろうか?


<感想>
前作「メガレンジャー」より荒川稔久氏が初参戦でのサヤメイン回なのですが、結果からいうと微妙な出来
荒川脚本だからということではなく、「サヤと瓜二つの人物」というせっかくの美味しいネタをフルに生かし切れていないというのが大きいかもしれません。
強いて本テーマにかかっている部分があるとすれば「二人のレッド」、すなわちリョウマとヒュウガの「炎の兄弟」にかかっているというところでしょうか。
ただ、せっかく本人のそっくりさんと入れ替わるというネタなら、それこそ小林女史に描いて欲しかったところで、どうにも上手くキャラクターが膨らみません。


サヤをパワフルな強い子として描くというのはまあ違和感がなかったんですけど、星野美咲みたいなアイドル級として描くというのがまあ荒川脚本らしいなと。
劇中のヒロインをアイドルにして見せることにやたらと情熱を注ぐので有名な人ではありますが、じゃあ面白いのかと言われたらそれは別問題で全く面白くないです
特に本作は小林女史が提示している「3,000年もの間臨戦態勢で準備してきた戦闘民族」という強固なバックボーンがありますから、そこを抑えた上でのテクニカルな脚本じゃないと正直厳しい。
一見シンプルなようでいて、その実とても緻密に設計されているのが小林女史が提示するヒーロー・ヒロイン増ですから、サブライターがなかなか自由に遊べないと思うんですよね。


おそらく今回のアイデアって荒川氏が考えたものというよりも、小林女史がプロットを振ったものだと思うんですよ、というのもネタはまんま「ジャンパーソン」の二人の真壁ジョージネタだから。
でもあっちがめちゃくちゃ面白くできていてこっちがつまらない仕上がりになっているのは、この2人のどっちがサヤなのか?というミスリードから生じるサスペンスをうまく描けていないからでしょう。
こういう「自分のそっくりさんと入れ替わる」というネタはいかにして劇中でのプロセスを盛り上げるかに意味があるのであって、そこの盛り上がりを欠いてしまうと面白味がありません。
というか、確かにサヤ、というか当時の宮澤寿梨氏を可愛く描きたいというのはわかるのですが、そもそも小林女史自体がその真逆を行く「戦う女」という芯の強いヒロインを提示する人ですからね。
それこそこの世の水と三途の川の水の関係じゃないですが、小林脚本と荒川脚本は相性が悪いというか、特に女性像に関しては水と油のような相性の悪さだと痛感しました。


サヤが真っ直ぐな頑張り屋であるという、実はリョーマと似たような芯を持っていたのはいいとしても、そこからリョーマとの差別化をしっかりと図れなかったのが残念です。
終盤まで見てもそうなんですけど、サヤというキャラの軸にあるものってほとんどリョウマと被っていて、特に「ヒュウガへの憧れ」という点が被っています。
しかし、兄ヒュウガとの関係性でリョウマとサヤのどちらが濃厚な関係を描けるかといったら、少なくとも本作のメインテーマ的にいえばリョウマだよなと。
いわゆるBL的なものじゃなく、「兄の代わり」としてギンガレッドをやっているところからリョウマのキャラクター性が生じているので、サヤにはそういう悩みがないんですよね。


というか、そもそも荒川氏自身が「アバレンジャー」のムック本のインタビューで語ってましたけど、荒川氏は「ジュウレンジャー」や本作のような古典的なタイプのヒーロー像が苦手だなと。
だからこそ「ジェットマン」「カーレンジャー」「メガレンジャー」のような王道とは違うところにある自由度の高いヒーロー作品の方が書きやすいみたいなことをおっしゃっていました。
本作のカッチリとしたヒーロー像に荒川氏の提示するファジーなアイドル路線が合っておらず、バルバンの作戦も含めて内容としてはいまいちで、総合評価はE(不作)です。

 

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