明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)9・10話感想

 

 

第九章「秘密の子猫」


脚本:武上純希/演出:辻野正人


<あらすじ>
ある日のこと、隕石がギンガットのいる森に落下し、翌朝ユウコという少女がギンガットに似た猫と不思議な赤い石を発見する。サヤもギンガットを探しに森を訪れたのだが、肝心のギンガットを発見できない。モークによると隕石の影響で森の聖なる力が奪い取られたとのことだった。一方その頃、バルバン側ではサンバッシュは隕石の力を使い魔獣ダイタニクスの復活させようとゼイハブに提案し、魔人マンディガーを森に送り込む。森の中でサヤはギンガットらしき子猫を抱えたユウコと出会うのだが…。


<感想>
本作の料理担当のゴウキに対抗してお菓子作りに励むサヤ…うん、素晴らしい心がけだと思うけど、一体何と戦ってんの?(笑)


というか、第三章、そして前回と段々「オトメン」になってきているゴウキ…本作随一の女子力の高さを誇り、サヤの花の戦士たる所以をどんどん奪っていっています。
残っているのはヒュウガへの憧れなんですが、そうなると今度はリョウマが障壁になるしと、めぼしいポイントが男性陣に奪われてしまっているのが…。
サヤに関しては総合評価で書き損ねましたけど本作の数少ない欠点の1つでして、演じる宮澤寿梨氏は好きなんですけど、サヤのキャラ立ては上手くいってないんですよね。
そもそもここまで目立った活躍もしてませんし、リョウマとヒュウガ以外のキャラがそこそこメイン回を貰えているだけに、ようやく回ってきたメイン回がこれかと。


今回はユウコという少女とサヤの交流ですが、うーん、やっぱり「伝説の戦士と外の世界の子供」という絡みで見ると微妙です。
というのも、それは既に第一章からリョウマと勇太少年がやっていることですし、勇太少年が子役ながら演技達者なのもあって、余計にユウコを演じている子の演技力の下手さが目立ってしまいます。
それからユウコが「かわいい」と言っていた小型ギンガットが全然可愛くない…いやその後巨大化してデザインがリファインされたギンガットの方は可愛かったんですけどね。
まあ、それよりも今回はサンバッシュの名言ならぬ迷言の方が際立っていました。


「成功したら俺様の手柄、失敗したら先生の責任ってことだ」


何そのジャイアニズム…いやまあどうせそんなことだろうと思いましたけど、改めてサンバッシュのサンバッシュたる所以を見た気がします。
そんなマインドじゃギンガマンに負け続けて当然だわ…で、魔人マンディガーと共に出撃しますが、銀河戦士で最弱のはずのサヤに真っ向勝負であっさり負ける(笑)
すごいなあ、戦隊シリーズにも様々な幹部がいますが、ここまで「やられ役」感が酷い典型的な三下幹部もそうそういますまい。
まあ逆に言えば最弱のはずのサヤですら実力は一級品ということで、伊達に3,000年間も臨戦態勢で準備してきたわけではありません。
過酷な選抜を勝ち抜いた生え抜きのエリートが選ばれているわけで、唯一正規戦士でないリョウマでも強さは5人中最強ですからね。


で、今回の魔人は結局ギンガレッドが二刀一閃で倒し、これで余計にギンガレッド最強伝説の1ページが刻まれることとなりました
ということで今回サヤの活躍はサンバッシュを1人でやっつけただけなのですが、彼女に1人で行動させた結果浮き彫りになったのは女性らしさよりもむしろ力強さという。
まあ本作はリョウマが気遣い担当、ハヤテがしっかり者担当、ゴウキがオカン担当、そしてヒカルがやんちゃ担当と女がする役割を全部男がやっているんですよね。
シンケンジャー」でもそうだったんですけど、やっぱり小林女史はいわゆる「男受けするかわいい女の子」を描けない人なのだなあと。


ただまあ改めてサヤとギンガットについてもう一度触れてくれたのは嬉しかったですし、リファインしたギンガットのデザインは可愛さが出ていて良かったです。
話の内容としては可もなく不可もなしといったところでしたが、前回のような不快感や違和感はなかったので評価はD(凡作)でしょうか。


第十章「風の笛」


脚本:小林靖子/演出:辻野正人


<あらすじ>
ハヤテの吹く笛の音色をいたく気に入っていた勇太だったが、途中でリョウマとハヤテが喧嘩を始めた。普段滅多に喧嘩することがない2人だったが、サヤによるとその日はハヤテと婚約者のミハルの結婚式の日だったらしく、ギンガの森が封印されなければ2人は結婚するかもしれなかったのだ。リョウマはハヤテに特別な日だから帰ったらどうかと助言するが、ハヤテは戦いが終わるまでは二度とギンガの森には戻らないという約束をもう破るのかと頑なに拒む。一方、バルバン側は魔人ストイジーが巨大スピーカーを用いてとんでもない騒音を起こし、その振動で魔獣ダイタニクスを揺さぶり起こそうと企んでいた。


<感想>
さて、ようやく来ましたハヤテメイン回。これまで厳格なイメージのあった二番手のハヤテですが、この回をもって一気に掘り下げます。
今回は本筋に直接影響しないサブストリームでありながら、改めてハヤテに好感が持てるようにしっかりとキャラが肉付けされていくのです。
リョウマとの友情、ミハルとの婚約、笛の名手である風の戦士としての所以、さらには同じNo.2のシェリンダとの因縁とうまく盛り上げて来ました。


また、この回は辻野監督の演出も秀逸で、まず山のロケーションを非常に美しく撮っていて、もはや芸術と言えるくらいに綺麗な画が多いんですよね。
それから今回のテーマは「音」ということもあり、ハヤテとミハルの笛の音、クラシック音楽、街中から聞こえる雑音と佐橋先生の音楽もまたいい味を出しています。
改めて「ギンガマン」がこれだけ壮大なスケール感を誇る物語になり得たのは佐橋俊彦大先生の音楽の力が改めて大きいのだなと。
そんな感想を持った今回の話ですが、まず冒頭で笛を吹いているシーンからして非常に叙情的で、いつもの爽やかな始まりとは違うしんみりした感じがいいですね。


「どうしてお前はそうお節介なんだ!?」
「そっちこそ、どうしてそう頑固なんだ!?」


滅多に喧嘩することがないリョウマとハヤテが珍しく口論になったので、勇太がサヤたち3人に聞いてみると、ハヤテにはミハルという婚約者がいて、今日がその結婚式の日だったこと。
ギンガの森が封印されなければ、2人は無事に結婚していたかもしれないことが補足説明されるのですが、ここでの3人が改めて「大人」として色っぽくなっているのがいいですね。
特にサヤの表情なんてある意味長石監督よりも非常に色気たっぷりに撮られていて、辻野監督も長石監督に負けていられないと思ったのでしょうか、いい味出してます。
ちなみに回想シーンに出てくるミハルを演じるのは田中規子氏であり、本作より5年前の不思議コメディシリーズ「シュシュトリアン」にレギュラー出演されていた方です。


一方、バルバンの方では、度重なる作戦失敗に苛立ちを募らせていたシェリンダが説教。


「もういい加減海に浮かんでいるのは飽き飽きだぞ。いつになったらダイタニクスを動かせるんだ!」


ここで改めて「操舵士」にしてNo.2であるシェリンダの存在をしっかり主張しており、第二章以来サブリーダー格としての存在感をしっかり出して来ました。
船長に斬られるかと思ったサンバッシュだったが、今回思いついた当てずっぽうの作戦は騒音の振動でダイタニクスを揺さぶって復活させるというもの。
いつも外しまくっていたから今回も外れかと思いきや、なんと偶然にも当たってしまい、正にこれこそビギナーズラックというやつでしょうか。
え、えーっと…樽爺ことブクラテスは一体何だったのかと思うのですが、まあブクラテスはコメディリリーフ兼トラブルメーカーですからね。


ブクラテスに関しては2クール以降にも目立ってその特徴が描かれますが、一言で言えば「ミスター余計なことしたがり」であり、バルバン壊滅の一因を担っています。
で、ギンガマンはその騒音に苦戦するのですが、ここで転生を解いたハヤテが改めて笛を吹く描写を入れて音をかき消し、サヤが改めて笛の音の効果を説明。


「ギンガグリーン、貴様何を?!」
「知らないの?風の戦士の吹く笛は邪悪な音を消す力があるのよ!」


第六章でもこの風の笛を吹いていたハヤテですが、ここで改めて風の笛の効果とともにそれを作戦の一部として利用してくれたのは嬉しかったです。
そういえば笛というと「シンケンジャー」のことはも笛を吹いていましたが、それを作戦の中に活かしたことってなかったような…。
シェリンダは同じサブリーダー格のギンガグリーンの存在が許せず、攻撃して風の笛を壊して気絶させるも、ギンガマン側も負けじと反撃して敵側を撃退して両者痛み分け。
ここで細かいポイントですが、あくまでバルバン側は「ギンガグリーン」という風に変身後の姿でしかリョウマたちを認識していないこと。
そして、ハヤテたちギンガマンもあくまで「バルバン」としか呼ばず、ゼイハブ以外は基本的に個人名で呼ぶことはなく、これも終盤で大きく機能してきます。


痛みを抱えるハヤテとリョウマが新たな風の笛を作るために、ギンガの森の風の木と似た材質の木を求めて山へと向かうのですが、ここで改めリョウマとハヤテの友情を強化。
何とか新しい風の笛を作り終えたリョウマとハヤテは音をかき消すために囮の作戦を考案しつつ、しっかりリーダーとサブリーダーの関係性が掘り下げられます。
リョウマが絡むとそこにはマイナスイオンが発生するのですが、改めてハヤテに「柔らかさ」を与える意味でもリョウマがレッドでよかったなあと。


「リョウマ、今日ギンガの森へ行けって言ってくれたのは嬉しかった。行くわけにはいかないけどな」
「ははは、ホントに頑固だな。なんでミハルがおまえを選んだのか、不思議だよ」
「俺もそう思う………リョウマ」
「ん?」
「死ぬなよ」


これまで直接的な絡みが描かれなかったレッドとグリーンの関係を掘り下げつつ、ハヤテの知略・技巧面をしっかりと描写しています。
戦闘力自体はリョウマの方が上なのですが、知性ではハヤテに分があるという書き分けもまた秀逸です。
シェリンダがハヤテへ因縁をつけていき、貝の笛で2つの風の笛をかき消すのですが、ここで消えたのがハヤテではなく偽者のリョウマという描写も秀逸。
視聴者をうまく騙しつつ、そこからいつも違う笛の音をこだまとして反映させることでバルバンの作戦を完全阻止、といい感じに対比が決まりました。
作戦成功したハヤテはその後ギンガ転生して、改めてシェリンダとの一騎打ち、見事にグリーンが勝利し傷を負わせることに成功させます。


「ギンガグリーン、この決着は必ず!」


女幹部とサブリーダー格の絡みというと「シンケンジャー」の茉子と太夫を思い出しますが、あっちは女同士の同病相憐むみたいな感じ。
こっちはそういうのがなく、純粋な敵同士、ライバル同士としての関係という感じで、お互いにしっかりとキャラが立ちました。
そして作戦成功したレッドとグリーンは3人とともに合流して機刃の逆鱗で一気に撃退、そのまま巨大戦もギンガイオー無双で仕留めます。
ラストはご馳走をつまみ食いするヒカルを嗜めるゴウキを描きつつ、外ではリョウマとハヤテが静かに風の笛を吹くカットで渋く締め。


非常に叙情的なエピソードでしたが、脚本・演出ともに非常にクオリティが高く、長石監督とはまた違った味で情感を描くことに成功しました。
辻野監督の魅力ってなかなか言語化しにくいのですが、長石監督はどっちかというと役者の表情やアップを多めに撮って色気を出す演出なんですよね。
それに対して辻野監督は情景描写や音の演出など、やや間接的に情感を炙り出す感じで、第三章と第四章も、そして前回もそんな感じで撮られています。


また、今回の話でハヤテとミハルを通じてギンガの森での暮らしが描かれており、ギンガマンの故郷への思いがきちんと描かれているのもよかったところです。
あくまでも「バルバンを倒して星を守る=公」とともに「ギンガの森を元に戻す=私」もまた視野に入れて戦っているのがギンガマン独自のヒロイズム。
その上でギンガの森がどんな場所なのかの象徴に婚約者のミハルを持ってきたことで、一気にギンガの森の描写に具体性が増して説得力倍増です。
思えば「ゴセイジャー」に足りなかったのはこういう描写であり、護星界がどんな場所なのかの具体的な描写がなかったので、感情移入できなかったんですよね。


そして改めて思ったのですが、ギンガマンは歴代戦隊の中でも変にすれたところがなく純朴な戦士であるというのがいいところです。
たまたま選ばれてなりましたではなく、あくまでも地球の平和を守るために力と技を磨き上げてきた戦士であるというのが大好きなところ。
そしてバルバンもそれと対をなすように理想的な悪役として描かれており、評価はもちろんS(傑作)です。

 

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