明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ22作目『星獣戦隊ギンガマン』(1998)1・2話感想

 

 

第一章「伝説の刃」


脚本:小林靖子/演出:田崎竜太


<あらすじ>
ある森の奥、青山晴彦と息子の勇太は取材に来ていたが、勇太はゲームに夢中で聞こうとしない。そこには「ギンガの森」という特殊な民族がいて、「アース」という不思議な力を持ち平和に暮らしていた。その日はちょうど第133代目の戦士が誕生する儀式の日であり、炎の戦士であるリョウマとヒュウガが訓練をしていた。そこにハヤテたちも駆けつけ、選考から落ちたリョウマは彼らを祝福しつつ、祭料理の材料を取りに向かう。しかし、結界の側で取ろうとしたところ、誤って外に出てしまい、リョウマは勇太と鉢合わせになってしまう。星獣剣継承の儀式の後、長老オーギはギンガの森の民に、そしてリョウマが勇太にギンガの森の伝説を語って聞かせるのだが…。


<感想>
さあ来ました、我が人生のバイブル『星獣戦隊ギンガマン』の感想をガッツリ書いていきます。
もう何百回と見て来た作品ですが、「シンケンジャー」を書いてしまったら、もう勢いに乗って「書いてしまえ!」ということで、流ノ介ではありませんが、こういうのはもう勢いです。
既に歴代戦隊の総合評価を書いているので、それらも踏まえつつ、改めて本作の魅力をしっかり一話ずつ言語化していければということで、よろしくお願いします。


冒頭はまず若本氏のナレーションから始まり、ギンガの森があるところを俯瞰からアップで映し、空飛ぶドングリこと森の妖精ボックのカットが映り、そこから青山親子へ。
そう、いきなり伝説の戦士であるギンガマンが出るのではなく、まず青山親子が森に取材に来たという始まりであることがとても大事なのです。
青山親子はいわゆる本作における「狂言回し」の役割を担っているのですが、いわゆる「外」の世界にいる一般人代表として視聴者の感情を代弁してくれます。
また、大人の晴彦の方が伝説に夢中であり、息子の勇太君は逆にこまっしゃくれていて、気怠そうにゲームしているという性格の描写も見逃せないところ。
こういう視点を過不足なく描写することで、視聴者が素直に作品世界へと入り込み感情移入しやすくしているのです。


さて、その青山親子が来た山の奥には結界が貼られており、そこにはまるで古代の世界からそのまま現代にやって来たとしか思えない原住民の姿と世界がありました。
ここで「第一章 伝説の刃」というテロップが出る演出も絶妙で、いきなりアクションで飛ばすのではなく、ギンガの森がどういう場所なのかをしっかり描写していきます。
撮影当日たまたま雪が降っていたこともあって、それが余計に幻想的な雰囲気を醸成しており、また長老オーギを演じる有川氏の演技や住民たちも違和感なく画面に映りました。
ギンガの森の住人は「アース」という特殊な力を持ちながらも平和に暮らしている…そしてそのアースが何なのかを直後に出てくるリョウマとヒュウガの訓練を通して描写。


リョウマの「炎のたてがみ」はとても小さく、そしてヒュウガの炎のたてがみが大きい…この一瞬だけでもヒュウガがリョウマより遥かに上というのがわかります。
ヒュウガを演じたのは元ニンジャレッドの小川輝晃氏、本作においてはいわゆる70・80年代型の完璧超人レッドの象徴として出てきており、リョウマがそれとは違う新世代のレッド
また、この「アース」とは総合評価でも書きましたが、「チェンジマン」に出てくる神秘の力・アースフォースをファンタジー戦隊風に洗練させた設定になっています。
そしてその後ハヤテ、ゴウキ、ヒカル、サヤの4人が現れますが、この1シーンでギンガマン5人のキャラクターと関係性が描写できているのが素晴らしい。


全盛期の小林女史の脚本の力もそうですが、役者の表現力もよく、特にゴウキを演じている照英氏のガチガチの緊張しいな感じなどはかなりリアルです。
またここでリョウマが落選したことやヒカルがいたずらにアースを使ってハヤテに説教されるワンシーンがあり、この描写は第四章への伏線となるのでお覚えておきましょう。
本当にこの序盤のシーンだけでも、ギンガの森の世界観やギンガマンたちのキャラクターと関係性までちゃんと説明できています。
その後のシーンで星獣剣を継承するハヤテたちですが、ここでバルバンの復活を示しつつ、リョウマは森の外で勇太少年と出会って森の伝説を話すのです。


ギンガの森の伝説とは3,000年前にあった初代ギンガマンとバルバンの戦いであり、2つの力が1つとなってバルバンがこの地球の海底深くに封印されたというもの。
つまり、いつバルバンが復活するかわからないために、ギンガの森の民は常に臨戦態勢で準備してきたという、歴代でも恐ろしく戦闘知能が発達した民族です。
ここが「ジュウレンジャー」との大きな違いであり、「ジュウレンジャー」では伝説に関して一億数千万年も眠っている間にすっかり忘れていました。
しかし、本作ではバルバンが来る時に備え、しかも外の世界にいる連中に力を悪用されないように準備して来たというのが大きな違いです。


とはいえ、勇太君はあくまでも科学の時代の中で生きて来たために、そのような伝説を迷信で嘘だと笑い飛ばしてしまいますが、ここで怒ったりせずに「まあ無理もないか」というのがリョウマらしい反応ですね。
ちょっとやそっとのことでは怒らないリョウマのどっしりした包容力も描かれていきますが、しかしその時に地震の影響で宇宙海賊バルバンが復活。
ここのバルバンのやり取りもまたギンガマン側と同様に1シーンでバルバンの幹部たちと関係性が描かれており、さらにゼイハブ、シェリンダ、ブクラテスの立ち位置も描写されています。
ゼイハブ船長もまた凄まじいカリスマ性と統率力を誇っており、歴代戦隊でヒーロー側もヴィラン側もここまでワンカットでわかりやすく伝えている作品はなかなかありません。


アイキャッチを挟んでBパート、バルバンが街を襲撃しますが、ここでサンバッシュがバイクと銃、ブドーが刀、イリエスが魔術、そしてバットバスが斧で砕くとそれぞれの能力を発揮。
ギンガマン側はバルバンが復活したと睨んでギンガブレスを雄叫び山へと取りに向かうのですが、第一話にして馬で駆け抜ける描写が「シンケンジャー」へ継承されています。
そしてギンガブレスを受け取ろうしたところで襲ってくるゼイハブ船長、いきなり5人は生身での戦闘シーンとなりますが、流石に鍛えられただけあって生身でも余裕です。
しかし、ヒュウガに襲いかかるゼイハブの戦闘力は圧倒的で、フックと剣だけでヒュウガを追い詰めてしまいます…初代ギンガマンはもっと手強かったそうですが、一体どれだけ強かったのでしょうか?


そこにリョウマと勇太も居合わせ、リョウマは思わず助けに行くものの、アースの力がまるで違うために歯が立たず…ここで前半のアースの実力差が前振りとして生きてきます。
そしてゼイハブは剣で地面を真っ二つにし、ヒュウガを裂け目に入れてしまう…きました、この第一章最大の見所であるリョウマとヒュウガのやり取りです。


「…リョウマ、聞くんだ。お前にも、大きなアースはあるはずだ…自分を、自分を信じていないだけだ!」
「兄さんッ!」


そう、ここでいきなり「ヒュウガの死」という形でなし崩しにリョウマが星獣剣の戦士になることに…「お前の力を…俺は信じてる」がもうね、泣かせにかかってきます。
戦隊シリーズで大事な人の死というと「ジェットマン」の竜とリエの死もありますが、本作のリョウマとヒュウガは正規戦士の兄とその代理人という形でひねっているのです。
シンケンジャー」では物語のオチとして使われた「代理人のレッド」を本作では導入の段階で用いて、旧世代のレッドから新世代のレッドへという王道として使っています。
このヒュウガの死をスプリングボードとして、視聴者を一気にここでストーリーへ引き込み、ここまで穏やかだったリョウマが遂に怒りの雄叫びを上げる!!

 

「兄さん…うわあああああああああああ!!!だああああああああああ!!!うわあああああああ!!」

 


このリョウマの覚醒シーンは「ドラゴンボール」の孫悟空超サイヤ人に覚醒するときや孫悟飯超サイヤ人2に覚醒するとき並のかっこよさです。
少年ジャンプで用いられる「怒りによる覚醒」を本作は導入の段階で持ってきて、ここで私はもう一気にハートをぶち抜かれ、リョウマを大好きになりました。
そして繰り出されるリョウマの炎のたてがみ…なんと兄をも上回る威力で大量のヤーットットをあっさり殲滅、その勢いに乗って叫びます。


「許さない!お前たちは…俺が!俺たちが!!」
「「「「「倒す!!!」」」」」


ここでのリョウマたちのアースと思いに雄叫び山が反応し、ギンガブレスが5人の元へ…リョウマも一気にヒーローの顔つきに変わり、遂に伝説の戦士が誕生する!


「行くぞ!銀河転生!!ギンガレッド!リョウマ!!」
「ギンガグリーン!ハヤテ!!」
「ギンガブルー!ゴウキ!!」
「ギンガイエロー!ヒカル!!」
「ギンガピンク!サヤ!!」
「銀河を貫く伝説の刃!星獣戦隊!!」
「「「「「ギンガマン!!!」」」」」

ギンガマン!それは勇気ある者のみに許された、栄誉ある銀河戦士の称号である!」

 

リョウマの覚醒から一気にこの名乗りまで持って生き、伝説の戦士を誕生させ、なぜ「ギンガマン」と名乗るのかまで完璧に説明…歴代で見ても戦士のデビューとしては空前絶後の完成度です。
しかもそこからさらに終わらず、リョウマの「銀河炸裂!!」という音頭で一気にリョウマたちは襲いかかり、まず4人が星獣から受け継いだアニマルアクションでヤートットを倒していきます。
主題歌に乗せてのスピーディーなアクションも素晴らしいですが、何と言っても素晴らしいのはヒュウガから受け継いだ星獣剣を抜き、幹部たちの攻撃すらも物ともせず突進するリョウマ。
そのまま4幹部たちを一蹴しゼイハブへ詰めていきますが、やはり変身してもゼイハブは強い…剣とフックで振り回され…しかしここでもくたばるリョウマではない。
すぐさま炎のたてがみを繰り出して圧倒し、さらに星獣剣にアースを込めた必殺技を繰り出す!


「炎一閃!!でやああ!!」


覚醒直後とはいえ、かのシンケンレッドもかくやと言わんばかりの圧倒的な戦闘力であり、単純な戦闘力や実績だけでいえば、リョウマも間違いなく歴代トップクラスには入るでしょう。
しかし、まだ判断力その他で兄・ヒュウガに劣っているのは事実であり、ここからどうやって真のギンガレッドになって行くのかという壁が示されています。
最後にレッドが見つめた星獣剣に4人の星獣剣が重なり、高々と掲げるシーンはこの第一話の締めくくりとして完璧なカットであり、全く隙のない第一話です。
ストーリーからキャラクターから、そして世界観から伝説からすべての内容を過不足なく詰め込み、弱いと思われていたリョウマの覚醒からギンガマン誕生、そして戦闘シーンまで詰め込んでいます。


前作「メガレンジャー」までの二作を経験した高寺Pが「王道中の王道を行く正統派の戦隊」として小林靖子女史をメインライターに抜擢して集大成として作り上げた本作。
玩具販促のスケジュールもまだそこまで厳しくなかった90年代後半という時代の幸福も手伝って、非常に濃密な第一話でございました、それをまとめ上げた田崎監督も見事。
こりゃあ平成ライダーパイロット監督請負人となるわけです。幕の内弁当のごとき充実度・完成度であり、評価はS(傑作)以外にありません。


第二章「星獣の再来」


脚本:小林靖子/演出:田崎竜太


<あらすじ>
3,000年の封印から目覚めた宇宙海賊バルバンだったが、予想以上のギンガマンの強さに攻めあぐねていた。しかしそれ以上に彼らの船・ダイタニクスの封印が解けないことの方が問題である。一方ギンガの森ではヒュウガを弔う儀式が行われ、リョウマたちは改めてバルバンと戦う決意を固め、星獣の再来を信じた。ゼイハブはダイタニクス復活のエネルギーを集めることを決意するが、幹部たちが喧嘩を始めたのでサンバッシュがコルシダーと共に自動車に目をつけて復活のエネルギーを集めて回る。一方その頃、操舵士シェリンダはサンバッシュが上手くいかなかった時の保険として次の策を行動に移していた。


<感想>
新しく誕生したギンガマンの誕生シーンから、まずはバルバンのところへ。ギンガマンと切っても切れない腐れ縁のような関係にどうすればいいか考えていた。
しかし、それ以上に深刻だったのが肝心要の海賊船である魔獣ダイタニクスの封印が解けないことであり、ゼイハブは魔獣ダイタニクスのスペックについて説明する。
魔獣ダイタニクスは単なる銀河中を飛び回る海賊船というだけではなく、星をボロボロに破壊した後、星の命を宝石に変えることが出来、地球は一番この中でも上等の宝石になると睨んでいる。


まずこのシーンで特筆すべきことはゼイハブ船長の判断力の高さであり、魔獣ダイタニクスが復活しないことにはギンガマンと星獣を攻め落とすこともできないと優先順位を的確に分析していること。
2つ目に魔獣ダイタニクスが星の命を宝石に変えられる能力を持ち、地球はその中でも一番上等なものになるとしたことで、地球を攻めることに説得力を持たせています
しかもこの星の命は終盤に物語の核に絡んでくる重要な伏線でもあり、思えば第一章といい第二章といい、小林女史の丁寧かつ完璧な段取りが組まれているのです。
それと同時に、リョウマたちが戦うべきバルバンの悪としての脅威がしっかり説明されており、もうこの段階でヒーローもヴィランもきっちり描写を済ませています。


一方ギンガの森ではヒュウガの魂を送る儀式が行われ、森全体が悲しむ中リョウマはヒュウガから託された星獣剣を複雑な心境で見ますが、そのあとの5人のやり取りもまたいい。


「バルバンのやつら、絶対ぶっ潰してやる!」
「しかし、奴らを封印する手段はもうない。それに3,000年前、戦士たちと戦った星獣たちもいない。かなり厳しいぞ」
「俺たちだけで十分だよ!炎の戦士もリョウマが後を継いだし」
「いや、確かに俺たちの方が不利だと思う」
「リョウマ!」
「でも!俺は戦う、持てるアースの全てを賭けて!」
リョーマ!」
「奇遇だな、実は俺も同じ考えだ」


ここで泣き虫のゴウキをヒカルが叱りながら、まず最年少で未熟者ながらギンガマン一の正義感を持つヒカルが息巻き、それをハヤテが厳しく諫めます。
リョウマもそれに賛同しつつ、しかし自分たちにできることを前向きにやるという判断力の高さを見せ、兄・ヒュウガが失われたことから思考を切り替えているのです。
流石は3,000年もの間バルバンとの戦いに備えてきた戦闘民族というところですが、ハヤテも厳しいことを言いつつ、奥底はリョウマたちと同じ気持ちというのがいいですね。
また、リョウマも一緒に訓練してきたから一緒に戦うことを仲間たちもすんなり受け入れているのが5人の仲の良さや距離感を絶妙に表現しています。
ここで星を眺めるリョウマのカットとともにサブタイトルが出て、物語がスタートしますが全体的にここまで無駄のない入りです。


バルバンは魔獣ダイタニクスを復活させるためのエネルギー集めの為に作戦を立てるが、最初にトランプカードを4人に配り、サンバッシュが当たりました。
この辺り、直接的に明示されていませんが後々の展開を考えると、一番やられ役っぽい感じのサンバッシュにわざとジョーカーが飛ぶように細工してあるのかなと。
第一話で街を襲撃するシーンで既にバットバス>イリエス>ブドー>サンバッシュという感じの力関係だったので、四軍団の力の差はもうここで示してあるのでしょう。
戦いはまず強くない奴から行かせる時点でゼイハブの船長としての器が示されており、武力に極振りしていて頭脳面が残念だったドウコクとの違いが示されています。
ただ、サンバッシュって基本的にボーゾックに居そうなヒャッハー系なので、シェリンダは失敗したときのことを考えてある行動に出るのです。


そして青山親子が森の取材から帰るところで青山親子のボケとツッコミの関係を描写しつつ、街中でサンバッシュ一味が街を襲うシーンに遭遇。
ここで「バルバンだ!」と前回ギンガマンとバルバンの戦いを見た勇太が冷静に判断し、それを知らない父・晴彦が狼狽える…息子の方がしっかり者です。
ボックは街へ偵察に行っていたのか、森全体にバルバンの襲撃を知らせるが、街へ5人が行こうとした時にシェリンダが結界をあっさり破って侵入してきました。
その目的はギンガの森にあるエネルギーを吸い尽くしてダイタニクス復活に利用すること…単に敵が味方の基地へ攻め込むだけではなく、その理由も納得行くものです。


ヤートットとギンガの森の民が戦闘に入りますが、剣や弓、吹き矢などが登場し、長老オーギまでもがアースを使うなど、ギンガマン以外のメンバーも戦闘力抜群。
流石にバルバンとの戦いに備えてきただけあって戦闘力が高く、ギンガマン5人がこれだけレベルの高い戦闘力を持った中で選抜を勝ち抜いた生え抜きのエリート戦士であることが示されます。
その為、ファンタジックな設定でありながら、その実態は「ゴレンジャー」「チェンジマン」のような職業軍人戦隊に近く、「シンケンジャー」もこの系譜です。
まあ「シンケンジャー」の場合は実力による選抜ではなく家系の世襲なので、実力がそんなに高くなくてもなれてしまうし、自負心や覚悟もギンガマンに比べるとやや低めではありますが。


シェリンダが仕掛けたエネルギー吸収ボムは星獣剣はおろかアースだろうと破壊できないものであり、このままなす術なしかと思われたところで長老オーギが最終手段を発動し、森を封印します。
ここでリョウマたちに衝撃を与えつつ、オーギは「大事なのは森を守りことではない!星を、人々を守ることだ!」と諭し、改めてギンガマンが正統派の正義の味方だと強調。
加えて、戦隊にありがちな「ザル警備じゃね?」に対して「侵入されてエネルギーが悪用されないようにセキュリティ対策はバッチリです」なところがギンガの森の民の戦闘民族たる所以です。
ただし、前回のヒュウガの死に続き森まで失うことになったので、リョウマたちとしてはもう完全に退路を断たれ詰み寸前という状況なので、「シンケンジャー」よりもハードな戦いとなります。
逆に言えば、シンケンジャーは「封印する手段がある」「基地である志葉家に外道衆は攻め込むことができない」「家族が全員死んだわけではない」のですから、客観的にはそこまで厳しくないのかなとも。


獣装馬に乗ったリョウマたちは後ろを振り返らず街中へ繰り出し、森が沈んでいきますが、このAパートだけでも非常に濃厚なドラマが展開されています。
Bパートに入り、命を危うく失うところだった青山親子をギンガマンが助け、リョウマと勇太が再会し、そのままバルバンとの戦いへ。
炎の戦士を受け継いだリョウマが改めて「この星獣剣に賭けて、お前たちを倒す!」と宣言し、改めてギンガ転生。
この太陽をバックにした名乗りも美しく、改めて「大自然の力を元に戦う伝説の戦士」であることが強調されています。


戦いの方は前回に続き4人がアニマルアクションを見せ、ギンガレッドもライオンの動きと体術でコルシザーを投げ飛ばした後は、銃撃を避けつつ、お返しの炎のたてがみで吹き飛ばし、炎一閃で撃退。
前回に引き続き圧倒的な戦闘力ですが、リョウマは兄ヒュウガがスペック高すぎるだけで、実力も判断力もかなり優秀なことが示されており、5人の中では最強の戦闘力です。
しかしリョウマでさえこれだから、改めてヒュウガや2クール目から出てくるブルブラックがどれだけ強いんだという話ですが…倒されたコルシザーはバルバエキスを飲みます。


「バルバンの魔人はバルバエキスを飲むことで巨大化する。だがそれは自らの命をも縮める、正に最後の手段なのだ!」


戦隊シリーズ定番の巨大化システムですが、本作ではバルバエキスというドーピングによる巨大化、しかも二度と後戻りできないことをここで強調するなど無駄のない説明。
ギンガレッドは単身で突っ込みますが吹き飛ばされてしまい、終わりかと思われたその時、ついに銀河を守護する五星獣が再来しました。
このミニチュアセットといい、東宝円谷プロの怪獣映画路線のクオリティを再現できてるところが凄く、怪獣映画マニアの高寺Pのこだわりが強く出ています。
全員で戦うというわけではなく、リーダー格のギンガレオンがリョウマに乗ってくれと指示し、リョウマが乗るとアースの力が増大しますが、ここも秀逸な描写です。
ロボットの頭に乗る演出は「ダイレンジャー」「カクレンジャー」で見られた演出ですが、本作ではそこに乗ることによってギンガマンのアースと星獣のアースを増幅させて使うことで意味付けをしています。
同時に「ギンガマンと星獣の2つの力を合わせて初めてバルバンを倒せる」という伝説で語られ内容通りになっており、ここまでの描写に一切の無駄がありません。


必殺技・豪火炎により圧倒的な火炎放射でコルシザーを吹き飛ばしたリョウマ、星獣たちが地球にとどまって戦ってくれることでなんとか首の皮一枚で希望をつなげました。
その後は沈んだ森のことを偲ぶリョウマたち…この雪景色がそんなリョウマたちの切なく儚い心境を的確に表していて、壮絶なスタートとなっているのです。
そんな本作のパイロットですが、22作目というだけあってか、このパイロットだけでも20年分の歴史の蓄積の集約を感じさせる構成となっています。
ギンガマンとバルバンのキャラ描写や基本設定の説明、更にヒュウガの死とギンガマンの誕生、故郷の喪失と星獣の再来、というストレスとカタルシスがセットになっているのです。


戦隊シリーズにおいて、パイロットはアクションシーンの派手さばかりをメインにして、キャラ描写や基本設定の説明が希薄になることが多いのですが、本作はそれを回避しています。
バトルシーンは後半に見せ場として取っておきつつ、順序よくキャラとストーリーを噛み合わせて物語を展開し、非常に気持ちのいいスタートです。
また、無理に巨大戦まで一話で詰め込まずにじっくり余裕を持って物語を展開しているため、情報量としては90年代後期のこの時代が一番私の肌に合っているなと。
何よりギンガマンたちが地球を守る使命に対して一直線で躊躇いがないのが見ていて気持ちよく、本当に「理想のヒーロー」を徹底的に詰めて体現した感じ。
かなり長々と書きましたが、やっぱり思い入れが強い戦隊なので、どうしても長く書いちゃうよねそりゃ…評価はもちろんS(傑作)です。

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村