明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)感想後半2クール総括

熱の冷めないうちにまとめておきましょう。

 

 

 

(1)後半2クール分析表

 

話数 サブタイトル 脚本 演出 評価
25 夢世界 小林靖子 中澤祥次郎 A(名作)
26 決戦大一番 小林靖子 中澤祥次郎 S(傑作)
27 入替人生 小林靖子 竹本昇 S(傑作)
28 提灯侍 小林靖子 竹本昇 C(佳作)
29 家出提灯 大和屋暁 加藤弘之 C(佳作)
30 操学園 石橋大助 加藤弘之 F(駄作)
31 恐竜折神 小林靖子 中澤祥次郎 C(佳作)
32 牛折神 小林靖子 中澤祥次郎 C(佳作)
33 猛牛大王 小林靖子 中澤祥次郎 E(不作)
34 親心娘心 小林靖子 長石多可男 S(傑作)
35 十一折神全合体 小林靖子 長石多可男 A(名作)
36 加哩侍 大和屋暁 竹本昇 F(駄作)
37 接着大作戦 石橋大助 竹本昇 S(傑作)
38 対決鉄砲隊 小林靖子 加藤弘之 A(名作)
39 救急緊急大至急 小林靖子 加藤弘之 S(傑作)
40 御大将出陣 大和屋暁 渡辺勝也 S(傑作)
41 贈言葉 小林靖子 渡辺勝也 S(傑作)
42 二百年野望 小林靖子 竹本昇 S(傑作)
43 最後一太刀 小林靖子 竹本昇 E(不作)
44 志葉家十八代目当主 小林靖子 加藤弘之 S(傑作)
45 影武者 小林靖子 加藤弘之 S(傑作)
46 激突大勝負 小林靖子 柴﨑貴行 S(傑作)
47 小林靖子 中澤祥次郎 S(傑作)
48 最後大決戦 小林靖子 中澤祥次郎 S(傑作)
49 侍戦隊永遠 小林靖子 中澤祥次郎 A(名作)

 

(2)後半戦総括コメント


さて、後半戦も無事に終了となりましたが、いやあ4クール目の話は四十三幕を除いて全部面白かったです。
基本的にS(傑作)A(名作)しかないので、4クール目は本当に気合を入れてきっちり全てのキャラクターを使い尽くしました。
中でも特筆すべきはやはり影武者展開からのお家騒動でシンケンレッド・志葉丈瑠を「ヒーロー」でも「人間」でもない「生物兵器」として描いたのが良かったところ。
最初に見たときは「ヒーローを私闘に走らせて何の意味があるのか?」と思ったのですが、これは「クウガ」〜「555」辺りの平成ライダーを見てないと理解できない展開です。


小林女史は「龍騎」「電王」で様々なヒーロー、ヴィラン、そして生物兵器を描いていましたし、本作はその意味で初めてスーパー戦隊シリーズの中に平成ライダーの文脈を持ち込んだと言えるかなと。
逆にいうと、平成ライダーが担っていた難解で複雑なドラマを前作「ゴーオンジャー」までは持ち前のコミカルさとバカレッドで乗り切っていたとも言えますが。
しかし、そんな手法が何年も続くわけじゃなく、「もうバカレッドはいいよ」と食傷気味になっていたところでこのドシリアスな「シンケンジャー」を「アンチ00年代戦隊」として持ってきたのが見事
特に志葉家を抜け出て完全に空虚になった丈瑠の「ビックリするほど何もない」は本当に痛烈な一言で、00年代戦隊シリーズの中身の無さを揶揄するとともに、丈瑠がいかに歪なヒーローかを描いています。


そしてそこに斬り合いだけが執着として残っている十臓を二十六幕以来の因縁の相手として戦わせることで、十臓を「アンチ志葉丈瑠」として浮かび上がらせ、2人の対比が綺麗に決まりました。
はぐれ外道である十臓と太夫に関してはいわゆる「仮面ライダー555」のオルフェノクみたいなもので、一度死んでいながら人間としての肉体と怪人としての肉体を持った中間体みたいな感じです。
まあ演じる唐橋氏も「仮面ライダー555」で海堂直也というオルフェノクを演じていましたし、その辺りのオマージュも兼ねてのキャスティングだったのかもしれません。
最終的に丈瑠と十臓が「ヒーロー」でも「人間」でもない領域を超えた深淵の戦いを描いたことで、正義や善悪の曖昧さという複雑さを描き、通常の戦隊フォーマットからさらに脱却を試みたようです。


しかも、志葉丈瑠は最終的に「絆」というもので救われるわけですが、同時にそれは丈瑠にとって「呪縛」にもなるものであり、小林女史はスーパー戦隊シリーズの「団結」のいい面も悪い面も描いています。
「五つの力を一つに合わせる」という戦隊シリーズの本質の1つである「団結」ですが、それをお約束だと思い込みすぎると最終的にはファシズム的な宗教じみた「みんなでGO」になりかねません。
みんなで仲良く敵をやっつけようねというのは悪くないけど、それに甘んじてしまうと横の関係性がなあなあになったり、もっと大事なことを見落としたりし兼ねません。
そして00年代戦隊はその意味で「ジェットマン」〜「タイムレンジャー」までが作り上げた平成戦隊の文法やお約束のレールに乗っかって甘えていたのではないでしょうか。


そうした安易な流れに「待った」をかけたのが會川昇先生の手がけた「ボウケンジャー」であり、続く「ゲキレンジャー」もその流れに乗ったわけですが大失敗。
仕方なくもう一度概念としての「00年代戦隊」をやってガス抜きした「ゴーオンジャー」を経て本作「シンケンジャー」でしっかり歯止めをかけたという感じです。
もちろんチャンバラ時代劇とか殿と家臣とか、色々仕込みはありますが、シリーズ全体で見るとやはり「アンチヒーロー」「アンチ00年代戦隊」という位置付けになるのではないかと。
だからこそ小林女史が理想として描いた「ギンガマン」とは完全に逆の構成になっていて、「代理人のレッド」が導入ではなく落ちとして使われる点も含めて比較すると面白いかもしれません。


2クール全体の構成で見ていきますと、4クール目がしっかり充実してまとまった分3クール目のグダグダ具合が気になるところで、物語が遅々として進まないんですよね中盤は。
それが惜しまれるところで、同じ女史の「ギンガマン」「タイムレンジャー」はたとえ中盤でも中弛みはなく、常に大筋がしっかり動いて面白くなっています。
しかし、本作では中盤で盛り込まれている数々のイベントが大筋の物語に影響を与えないので、パワーアップとストーリーが完全に分断してしまっているのは残念
また、キャラの完成度で見ても丈瑠はまあ主人公だからいいとしても、源太の完成度が終盤のお家騒動に入るまで迷走気味で便利キャラクターの域を出ませんでした。


それから家臣たちも流ノ介、千明、茉子は見せ場がそれなりにありましたけど、ことはは後半だと実は四十幕しか見せ場という見せ場がもらえておらず、空気気味です。
あと、丈瑠と十臓の戦いがしっかり尺を取って描かれた反動で茉子と太夫の因縁がかなりあっさり気味に終わってしまったのも個人的には物足りませんでした。
その辺り、もう少し家臣たちにもスポットを当ててキャラの掘り下げが行われていれば、それこそ「ギンガマン」「タイムレンジャー」に匹敵する完成度になり得たかもと思います。
その分薫姫の圧倒的ヒーロー性とラスボスのドウコクのインパクトで盛り返した感じはありますが、年間の構成は完璧とはお世辞にも言い難いところです。


まあそもそも宇都宮Pが初だったこともありますが、本筋の「殿と家臣」を中心にした「アンチ00年代戦隊」をやるという目論見自体は成功しています。
ただし、そのために脇のストーリーやキャラ付けが雑になっている部分があり、どうも「木を見て森を見ず」とは逆の「森を見て木を見ず」になってしまったようです。
この辺りは宇都宮Pの雑さが出たところというか、高寺Pと違って整合性や設定をきっちり詰めずに余白を残してしまう人の短所が出た部分でありましょう。
また、大和屋脚本や石橋脚本もいまいち上手く機能しているとは思えず、結局小林女史だけで年間のストーリーを持ったという感じです。


アクションで見て行くと、等身大戦は面白かったのですが、巨大戦が小林女史メインライターの作品らしくあまり盛り上がらないのが残念。
また、感想でも繰り返し書きましたが、ラスボスのドウコクが出てくるまでは過剰なパワーアップの繰り返しに見えてしまい胸焼けがしました。
猛牛バズーカも恐竜折神も最終決戦で使われていなかったので、この辺りも盛り込めたらよかったのかなあとは思いますが。
登場武器の物語上での意味づけやパワーアップ折神の必然性についても、もう少しきちんと定義づけをして欲しかったところです。


とはいえ、最終的にまとめるべきものはしっかりまとめきって見せたので、何とか盛り返すことには成功しました。
諸手挙げて傑作とはいえませんが、起承転結の「起」と「結」がしっかりできた名作ですね。
後のことは総合評価にも書いていますので、後半の総括はここで終わりとします。
これにて、一件落着!

 

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