明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)43・44話感想

 

 

第四十三幕「最後一太刀」


脚本:小林靖子/演出:竹本昇


<あらすじ>
アクマロは裏見がんどう返しの術を用いて、この世に地獄を出現させようとするが、そのためには十臓が再び裏正を使う必要があった。丈瑠たちが戦いのダメージで撤退を余儀なくされている中、目を覚ました源太が目の前に十蔵が倒れているのを発見する。「今倒せばアクマロの企みを阻止できる」と息巻く源太であったが、彼は十臓と裏正の正体や背景事情を考えると、迂闊に殺せないのであった。


<感想>
今回はアクマロの最期にして、実質最後の源太メイン回、更には十臓の裏切りと内容的にはてんこ盛りなのですが…うーん、いまいちうまくまとまり切らず。
個人的にはどうにも源太関連のエピソードはいまいちというか、やっぱりここまで見ても「不思議コメディからの住人がシンケンジャーの世界に迷い込んだ」としか見えません。
まず、十臓を殺すのを躊躇い失敗してしまう源太という流れ自体に説得力がなく、そもそもなぜこのように考えるに至ったのかがわからないのです。


「俺はやっぱ侍になりきれねえ!外道衆は許せねえけど、家族の魂救いてえって奴をどうしても剣で止められねえ。だから!だから頼むしかねえ、裏正を諦めてくれ。この通りだ!頼む!」


このセリフ、本来なら「あの能天気で明るい源太にもこんな一面が!」ということかもしれませんが、「そもそも本作のメインテーマはそこでしたっけ?」と思ってしまいました。
源太が人間の体を持つ十臓を斬れない、非情に徹しきれないキャラなのかというと、割と十臓以外の外道衆はなんの葛藤もなくバッサバサと斬ってきたので、寧ろ覚悟は決まっている方では?
それこそ十九幕では流ノ介相手に「命をかけて守る!これだけはぜってえごっこじゃねえ」って言っているわけで、それは要するにこの世の人を守るためならたとえ人間だろうと斬るということだと解釈しました。
だからこそ、ここで急に日和って十臓と裏正のことを深くまで考えたら迷いが生じてしまって斬れなかったというのは単なる「甘さ」以外の何物でもありませんし、また十臓は救済の余地があるキャラでもありません


たとえば十臓と源太の間に友情が芽生えていたり、あるいは源太が外道衆を斬って捨てることに葛藤や躊躇いが描かれているようであれば話は別です。
仮面ライダー龍騎」の主人公・城戸真司みたいに「ライダーバトルを止めたい」という願いを持って非暴力を終始訴えるキャラクターならわかります。
しかし、真司はそれを最初から最後まで持ち続けていたからこそあのキャラクターに説得が出たわけですし、何より世界の運命をかけた戦いじゃないですしね。
一方の源太がその真司のようなキャラクターかというとそうではありませんし、どちらかといえば「開発と居合術の天才」という便利キャラの側面が強かったのです。


また、ここに持っていく展開の前振りとして、茉子が太夫の過去を知って躊躇いが出ますが、あれは茉子のキャラクターだから説得力があったんですよ。
小さい頃から親の愛情を知らずに育って人間性がすっぽり欠落していて、本人はそれを埋めるように丈瑠や流ノ介に構うことで自分の存在意義を満たそうとしていました。
そんな茉子だからこそ、太夫の深淵を覗いてしまって逆に深淵から覗かれることに説得力があったのですが、源太はそういう「闇」とは無縁のキャラクターです。
というか、そもそも十臓が一貫して因縁がある相手はあくまで丈瑠だけであって、源太に関しては「便利な寿司屋」程度の認識しかありません。
少なくとも十臓の方から源太個人を認識して何かしらの個人的感情が芽生えたことなどないので、どうしても感情の方向性が食い違ってしまっています。


「情けねぇ。考えた挙げ句、俺はこんなに甘い」
「それでこそ源ちゃんだろ。格好良かったよ」
「私にはとても出来ない。源太、多分お前のような侍が私たちには必要なんだ。殿たちもきっとそう思ってる」
「行こうぜ。地獄なんかこの世に出してたまるかよ」


で、最終的に源太がなぜか流ノ介、千明と友情を形成しているのですが、このシーンも今ひとつうまくまとまり切らず
そもそも流ノ介との友情を描いた十九幕自体が話の構成としてうまくいったとはいえませんし、そもそもシンケンジャー5人が非情なチームというわけでもないでしょう。
確かに侍としての使命にはストイックな連中ですが、かといってはぐれ外道だろうと容赦無く殺すみたいなところは本作のテーマにはなかったものでした。
だから、どうにもこの「非情になりきれない源太」と「侍として既に一線を超えている流ノ介と千明」の構図が今ひとつうまくはまりません。


それから十臓がアクマロをバッサリ斬って裏切るというのも意外性を出したかったのかもしれませんが、元々十臓は満足できる斬り合いができればそれでいいのです。
だからアクマロのことをぶった斬ろうが別に驚きではありませんし、寧ろそれだけわかりやすい十臓のキャラを掴めなかったアクマロがただのあほということになりかねません。
どうにもこの「一緒にやってきた仲間から煮え湯を飲まされる」的な展開がイマイチ綺麗な構図にならず、またもやここで物語全体のピースがてんでバラバラな状態に。
源太メイン回の最後がこういう終わり方というのも個人的には微妙なところで、年間の総合的なキャラクターの完成度においては源太は他の5人に比べて甘いです


んで、そんな風にバラバラな物語の上に出てきたのが今の今まで存在すら忘れられていた恐竜折神…えーっと、なんでもっと早くから使わなかったのか?
まあドウコクは仕方ないとしても他のアヤカシに関しては普通に恐竜折神さえあればクリアできるという状況はいくらでもありましたよ。
しかもまたもや源太の閃きであっさり倒しちゃうものだから、クリスマス決戦編としての盛り上がりがますます微妙なものとなってしまったのです。
その分十臓にとってはアクマロをぶっ倒して下克上し、終盤にとって更なるステップアップとなったのですが。


ラストのクリスマスももっと明るい感じにすればいいのに、源太が神妙な顔をしているせいでイマイチ明るくなりきれず。
というか、本作のジメジメした作風でこういうクリスマスのしんみりした感じは合わないような…評価はもちろんE(不作)で、イマイチ乗り切れませんでした。


第四十四幕「志葉家十八代目当主」


脚本:小林靖子/演出:加藤弘之


<あらすじ>
謹賀新年、志葉家の屋敷では新年の挨拶が行われ、全員着物を着ておせち料理を食べたりかくし芸披露会をしたりして楽しく過ごしていた。するとそこにいつもとは違う格好の黒子が手紙を持参して現れ、丈瑠と彦馬はその姿を見ると表情が一変する。一方、外道衆の方はというと、骨のシタリが薄皮太夫の帰還を知るや否や、ドウコクの復活を早める前に志葉家当主の抹殺を目論んでアヤカシを差し向けるのであった。


<感想>
さあ、やって来ました最終章…ここから最終幕までは怒涛の伏線回収です。
みんなが正月で浮かれているところにやって来たとんでもない豪速球…それは何と真の志葉家十八代目当主であった!!


「無礼者!この御方をどなたと心得る!この御方こそ、志葉家十八代目当主、志葉薫様にあらせられるぞ」
「は?」
「え?」
「はぁ?!」
「姫の御前である。控えろお!」


もうこのラストカットが今回の話の全てであり、丈瑠は本物の当主ではなかったことがついに判明。
いやまあそれまでも伏線という伏線はたっぷり序盤から仕込まれていましたが、私が初めて見たときもこのオチは正直予想範囲内でした、なぜか周囲は驚いていたようですけど。
ちなみに作り手の方でも松坂桃李と脚本家、プロデューサーあたりだけが先に知っていて、家臣たちや彦馬爺の中の人は知らされていなかったそうです。
だから、このラストで姫が出て来たときの丈瑠以外の5人が見せる反応は演技を超えたリアルなものになっていて、こんなところまで用意周到に作り込んでいます。


その姫と呼ばれる人のスペックもとんでもなく高く、丈瑠が苦戦して倒せなかったアヤカシを簡単に倒してしまえるほどに強いのです。
何せスーパーシンケンジャーなし、獅子折神一体だけでアヤカシを倒してしまうのですから、まさに「真の志葉家当主」に相応しい。
そして何と言っても超絶男前!いやもうね、スーパー戦隊シリーズでこんな男前なヒロイン見たことないですよ。
いわゆる「女傑」とは違うし、孤高のクールビューティとも違う、完全に中身が「男」「雄」なんですよね薫姫って


演じる夏居瑠奈氏は正反対の性格だそうですが、まずビジュアルの時点で完全に他を圧倒し食ってしまう程の存在感です。
まだ全貌をあらわにしていませんし、具体的な伏線回収については随時触れていきますが、歴代のスーパー戦隊この貫禄は中々いないでしょう
前例では「カクレンジャー」の鶴姫や「ハリケンジャー」の御前様がいましたが、薫姫のインパクトはその2人を完全に凌駕しています。
まあ鶴姫は基本キャンキャン吠えてるだけで、どちらかといえば頼りなさや女らしさの方が目立ったので、あんまり貫禄がありません。
また、御前様にしても「シュリケンジャーの当主」であって、ハリケンジャーやゴウライジャーの当主ではありませんから本筋への影響はないのです。


その点薫姫はもう物語全体に影響を与える存在として中核にドンと存在し、狙い澄ましたようなラスボス感で圧倒してきます…寧ろドウコクよりもラスボス感が強い(笑)
いやもうこれだけで今回は凄いのですが、さらに細かいのがその前に丈瑠を捕まえて聞き出す茉子とそれを遠目に眺める千明の描写を挟んでいたこと。


「やっとチャンス作れた」
「なんだ?話って」
「そんなに警戒しないでよ。まあ、確かに、突っ込む気だけど」
「何を?」
「ずっと引っかかってること。丈瑠が何を抱えているのか?殿様としてなのか、丈瑠としてなのか、全然わからないけど、それ、私たちも一緒に抱えられないのかな?」


これまでの茉子のキャラを活かしつつ、ラストへの前振りとして丈瑠と茉子のプライベートなやり取りを挟んだのはとても良かったです。
しかもそれを蚊帳の外にいた千明が覗いていたのも絶妙なバランスで、あとはここに源太と流ノ介とのやり取りが入れば完璧じゃないかと。
このやり取りがあるからこそアヤカシとの戦闘で意図的に5人と距離を取って1人で戦う丈瑠の焦りようにも説得力が出ます。
あれは明らかに丈瑠らしくなく、いつもなら協力して戦うところがここに来てまたもや孤独になってしまうのです。
その前振りがあるからこそ、ラストのオチがまさにオチとして機能し、同時にここまでの物語のどんでん返しとして機能する。


まさに「拍手の嵐真打ち登場」という感じで、薫姫のスペックと男前さが堪能できた今回、ここからどうなっていくのか楽しみです。
冒頭におせち料理などで楽しんでコメディで終わらせるのかと思いきや、更なる爆弾を落としていろんな意味で視聴者を困惑させにかかるという。
評価はもちろんS(傑作)、ここから怒涛のラスト5話がどう展開され、どう伏線回収がなされていくのかを楽しみに見ていきましょう。

 

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