明日の伝説

好きな特撮・アニメ・漫画などに関する思いを書き綴る場所。更新停止

スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)41・42話感想

 

 

第四十一幕「贈言葉」


脚本:小林靖子/演出:渡辺勝也


<あらすじ>
突如地上に現れた血祭ドウコクの襲撃により重症を負ってしまった丈瑠。家臣たちはドウコクの圧倒的な強さにショックを受け、ことはもまた何やら悩みを抱えた丈瑠を見て自分の存在意義に再び迷ってしまう。一方、外道衆はアクマロが繰り出したアヤカシによって、人々が次々と食べ物を欲しがる「餓鬼」にされていた。丈瑠とことは以外の4人も餓鬼にされてしまい、ことはは1人自分を責めるが…。


<感想>
さて、遂に来ました、ことはメイン回。一応それぞれのキャラメイン回は今回をもって終了し、あとはもう丈瑠と茉子が実質の主人公という状態で話が進んでいきます。
冒頭早速ドウコクの絶望的な強さに驚愕する家臣たちですが、ここまで過剰武装だと思われていたパワーアップを「しゃらくせえ!」と一蹴するドウコクの強さはとても良かったです。
これだけ武器が充実して実戦経験も積んでチームワークもできたからドウコクにも勝てるよね?と思わせておいてそれらをねじ伏せる展開はよくやりました。
同時にドウコクの強さが圧倒的だからこそ、序盤〜中盤で伏線として出ていた「封印の文字」という設定にもしっかりとした説得力が出ています。


さて、それを受けて今回はことはメイン回ですが、ことはがこんな風に自分のことで悩むのは二十二幕「殿執事」以来で、それまではなんだかんだみんなと仲良くやっていました。
しかし、物語も終盤に差し掛かって戦いが激化した中で、丈瑠と茉子の異変に気がつきつつ、再度自分の中に押し込めていた不安・不満がぶり返したということでしょう。
切ないのは自分のことで手一杯なことはが丈瑠と茉子の抱えているものに薄々気がつきながらも、それを自分に相談してもらえないことを「信頼されていない」と受け取っていることです。
しかもそんなタイミングで更にことはの姉からの手紙…自分にとって「憧れ」でもあり「コンプレックス」の元でもあった姉の存在はことはの人格面に一番大きく影響を与えてしまいます。


特に見ていて気の毒だと思われたのが、爺との次のやり取りでした。


「気に病むことはない。逆の立場であれば、お前も誰かをかばったであろう」
「でもうち、お姉ちゃんの代わりが出来てへん。殿様やみんなが優しくしてくれるのに甘えてたんです」
「どうかな。皆がそれほどお前を甘やかしているとは思わぬが」
「うち、最近殿様の様子が変やなって思ってて……でも、茉子ちゃんも気付いてはるみたいなのに、うちに心配かけへんように何も」


ここでことはの謙遜にして自己卑下とも取れることはのコンプレックスが吹き出しましたが、これってやっぱり最初のターニングポイントは第六幕だったと思われます。
千明にガツンと「お前バカにされてヘラヘラ笑ってんじゃねえよ。マジムカつく」みたいなことを言われたのがはっきりと効いたのではないでしょうか。
で、その千明はどんどん成長して頼れる存在になっていって、親との屈託も乗り越えていたし、モヂカラも剣術も今ではことはよりも強いかもしれません。
メキメキと強くなっていって強さを獲得していく千明に対して、自分はいつまで経っても前に進めないまま…しかも他のみんなも成長してますしね。


流ノ介も心の壁を乗り越えて自分の足で立ってますし、茉子姐さんも親の愛情をしっかり三十四幕で克服してから隙がなくなりました。
そんな中で自分だけが取り残されているのではないかと思っても不思議ではなく、更にその上でことはの姉、茉子、そして丈瑠を神格化してしまう憧れと表裏一体のコンプレックス。
そのねじくれた複雑な想いこそがことはの悩みの本質であり、思えば茉子や丈瑠ら年長組に対して抱いていた尊敬は実は後ろ向きな想いだったことが明らかになります。
ちなみに似たような思いは「ギンガマン」のギンガレッド・リョウマも持っていたのですが、リョウマの場合は前半の段階でそれを完璧に克服してましたからね。
それに戦闘力も判断力も非常に高いから、ことはほど深刻に抱え込まずしっかりと割り切って前に進める度量があったのではないでしょうか。


そんな中で改めてことはの姉の手紙を見つめ直し、そもそも「姉の代わり」だと思うこと自体が「甘え」であること、ことはの悩みは所詮「思い込み」でしかなかったことに気づくのです。


「頑張ってるシンケンイエロー……うちのことや」
「誰の代わりでもない、お前にしかなれない、シンケンイエローだ」
「うちしかなれへん、うちしか、シンケンイエローに!」


個人的にはシンケンジャーで一番男前なのは終盤に登場する姫なのですが、その次くらいに芯の強さという意味ではことはが物凄く男前だと思います。
まあ戦隊でも屈指の鋼メンタルであるリョウマを女イエローにしたのがことはですから、強そうで当たり前なんですが、それを演じたのが森田涼花氏でよかったです。
ことはの「天然ながらも、物凄く芯が強くブレない」という外柔内剛なキャラクターは彼女にしか演じられないでしょうからね。
茉子を演じる高梨氏は逆に一見凄く頼り甲斐のあるお姐さんに見えて、意外と芯の部分はブレやすく脆くて繊細なところがあるんじゃないかと思います。


ここでやっとことはは自分の足で立って歩くことができ、姉への屈託を乗り越えたことでようやく「真のシンケンイエロー」へと覚醒、ここからの猛反撃はカッコよかった。
そこからのスーパーシンケンイエローは丈瑠がまだ病み上がりということで彼女しか戦えないことに説得力が出て、ようやくここで壁を乗り越えた感じです。
今の力関係でいえば、ことはと千明はもうほとんどイコールじゃないかと思いますが、そこから巨大戦の「ダイシンケン・大回転斬り」は面白いですね。
いつもとバリエーションを変えたのもあるんでしょうが、何よりあのゴテゴテしたお立ち台に乗ってるずんぐりむっくりがジャンプして攻撃なんて誰も思うまいて(笑)


そして殿も迷いを振り切って真のシンケンイエローになったことはを見て安心し、再び殿様として戻るのですが、この「姉の代わり」ということはのネタも重要な終盤への伏線です。
丈瑠と茉子といい、ことはといい、どうして小林女史は攻めてこないのかなあと思ったのですが、やっとここで出してくれてよかった。
評価はS(傑作)、ところでサブタイトルを聞いて「金八先生のあの卒業ソング流れないよね?」と思ったのは私だけじゃないはず。


第四十二幕「二百年野望」


脚本:小林靖子/演出:竹本昇


<あらすじ>
アクマロが同じ場所に現れ続ける傾向を見て、彦馬爺は外道衆に作戦があるのではないかと睨んでした。そして、アクマロが関与していると思しき外道衆の出現場所のデータを集計した結果、何と地図上で一直線に結ばれることが判明する。これはアクマロが仕掛けた大がかりなプロジェオクトであり、その最終段階として彼は最後のアヤカシを送り込もうとするが…。


<感想>
今回と次回はクリスマス決戦編ですが…えーっと、正月はともかくクリスマス回は一切やらないものだと思ってました(笑)
だって、和風モチーフの戦隊だから「クリスマスなど邪道だ!日本人といえば正月だ」な感じになるのかと思いきや、そこらへんは割と現代的。
まあ流ノ介や源太、ことははともかく、茉子と千明は割と洋風っぽい感じだからあんまり和風で全部を統一しなくてもいいのかなと。


そんな今回と次回の作戦ですが、まさかの日本真っ二つ作戦!


えーっと、クリスマス商戦やるならもうちょっと派手なの用意しません?なんで日本限定なの?どうせなら地球真っ二つにしましょうよ
ダイタニクスやバズー、バルガイヤーなんていつでも星をあっさり食うことができるので、どうしても外道衆側の作戦がショボく見えてしまいます。
ちなみに地球真っ二つといえば「ダイターン3」を思い出しますが、でもあれが大掛かりでやってることをアラレちゃんは軽くパンチ一発でできますからね。


そんなアクマロの作戦に対してシンケンジャーは二手に分かれ、丈瑠・茉子・ことはのハーレム組と流ノ介・千明・源太のむさ苦しいやろう3人衆に分かれるのであった…。
何だか物凄い悪意を感じる人選ですが、状況的には丈瑠が両手に花状態で、それこそ二次創作大好きなCP厨とかがウキウキしそうな状況なのに全然羨ましく思えないのはなんでだろう?
だってあの美人2人に挟まれる主人公とかめちゃくちゃ羨ましい状況のはずなのに、本作のストーリーや設定がハードだからか、キャラ付けのせいなのか寧ろ丈瑠にとっては苦しそうです。
私が丈瑠の立場ならな正直「面倒くさいのに挟まれた」なんて思ってしまうでしょうね…だってシンケンウィメンズは美しさや華やかさよりも男前さの方が際立つんだもの。
少なくとも「ギンガマン」のサヤといい「タイムレンジャー」のユウリといい、小林女史が手がける戦隊ヒロインって恋愛してもそんなに色気は出ないんですよね。


まあこれは小林女史に限った話ではなくて、そもそも「ウルトラセブン」のダンとアンナからしてそんなに色気のあるラブロマンスが描けていたかというと微妙です。
戦隊シリーズではちょくちょくメンバー同士の恋愛が描かれていて、特に荒川氏なんかはそれの典型みたいなもんで「メガレンジャー」でもせっせと瞬とみく、千里と耕一郎をデートさせてましたっけ。
ただ、じゃあそれが作品としての魅力に繋がったかというと微妙なところで「マジレンジャー」の麗とヒカル先生や「ボウケンジャー」のチーフとさくら姉さんも似たようなものです。
メンバー同士の恋愛って基本的に起こらないものですし、起こったとしてもそれをドラマチックに成立させるのってめちゃくちゃ面倒くさいですよ。


現に今書いてる「ジェットマン」の恋愛事情に関しても同じで、竜と凱と香の3人の恋愛だけ見ても「地球の平和そっちのけでこんなことようやるわ」と感心しました。
だからシンケンジャーも似たようなもので、丈瑠と茉子とことはの3人で戦うことになってもちっとも嬉しくないのはあくまで「殿と家臣」でしかないからなんですよね。
終盤に待ち構えている展開から逆算的に見ると、寧ろ茉子もことはも残りの流ノ介たちも丈瑠にとっては戦いに必要であると同時に縛りにもなってしまうものです。
丈瑠にとっては茉子やことはと一緒に戦うよりも、外の世界にいる見知らぬ一般女性と付き合う方がまだ安らぐんじゃないでしょうか?


まあそんな戦隊メンバーの恋愛事情にまで話を広げましたが、とにかくこの回はクリスマス決戦ということで、様々なロボットのバリエーションを見せました。
その上で十臓の裏正の正体も「十臓の家族の怨念」がこもったものであることも明かされ、アクマロ関連の目的もここで回収されています。
物語としてもボルテージが高まっていき、果たして日本が真っ二つに切られてしまうのか、次回へ持ち越しとなり、評価はS(傑作)です。

 

にほんブログ村 テレビブログ スーパー戦隊へ
にほんブログ村