明日の伝説

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「真の強さ」とは孤独に追い込まれた時にこそ立ち現れる

スーパー戦隊のレッドについて、昨日記事を書いたのですが、昨日どうしてスーパー戦隊シリーズでギンガレッド・リョウマがどうして一位なのかについては書きました。
しかし、どうにもまだ書き足りないなあと思っていて、その引っかかっていた部分を考えていたのですが、それが今日改めて自分の中で明らかになったのです。
スーパー戦隊シリーズのファンをもう20年以上も続けていながら、やっと今この事実に気がつくとは思いませんでした。
是非とも皆さんにもお考えいただきたいことなので、ご意見等あればどんどんお願いします。

 

 


(1)スーパー戦隊シリーズの本質は本当に「チームワーク」なのか?


私は度々思うのですが、スーパー戦隊シリーズで描かれる本質は本当に「チームワーク」なのでしょうか
「一人一人は弱くても、みんなで力を合わせて強ければそれでいい」という考え方が戦隊ファンの間ですっかりまかり通っています。
しかし、小林靖子女史の脚本ではどんな形であれ、必ずそれが本当に正しいかどうかを問う瞬間を必ず入れてくるのです。
まあ多くの場合はその白羽の矢が立つのが主人公の戦隊レッドなのですが、だからこそ小林女史の脚本は「主人公いじめ」と言われがちな傾向にあります。


しかし、小林女史はただなんの意図もなく主人公をいじめているのではなく、それはこちらの記事でも非常に具体的に書かれているのです。

 

www.jigowatt121.com


そう、この記事でも書かれているように、小林女史の脚本は「」をとにかく描き、人を描く中でその人物が抱えている本質や奥底の思いを浮き彫りにしていきます。

 


そうやって描かれる「人」の物語は、ものすごく計算された土壌の上で語られていく。観る者は、自然と身を任せ、いつの間にか心が締め付けられていく。そして最後には、なにか救いのようなものを見い出して涙する。「人」を描くということは「掛け合い」を描くということでもあるので、生きた人間同士の人間味あふれるやり取りも面白い。


確かにその通りです、あらゆる特撮の脚本家の中で小林女史ほど「人間」を描くことに優れている作家もおらず、これに匹敵するのはそれこそ井上敏樹先生くらいだと思うのです。
しかし、この記事は1つ失念していることがあり、それは「人」を描くことを通してヒーロー作品で何を描きたいのか、何を描きたいのかを明らかにしていない点にあります。
特にスーパー戦隊シリーズのファンの私としてはこの記事の脚本に半分は納得しつつ、もう半分は物足りないというかもどかしい思いを抱えていたのです。
小林女史の脚本はライダーのような単独ヒーローも十分いいのですが、むしろその魅力は戦隊シリーズのような「チームヒーロー」においてこそ立ち現れるものだと思います。


あの人はスーパー戦隊だと特に「仲間の大切さ」を浮き彫りにするために、1人ないし2人に限定して戦わせることがあるのです。
それは決してその人物をいじめたいわけじゃなく、戦隊の中で不文律・お約束とされる「1人1人は弱くてもみんなで力を合わせれば大丈夫」が本当にそうなのかどうかを問いたいからです。
だって、いくら「みんなで力を合わせれば敵を倒せる」と言ったって、その前提には「個がある程度独立した強さを持っている」が前提にあります。
1人1人がきちんと独立した個性を持っているからこそ、全員揃った時に素晴らしい立体感あるチームが出来上がるのであり、私が「傑作」「名作」と評価している戦隊はやはりそういう部分と向き合っているのです。
そして小林女史はそういう部分に対して、誰よりも意識的に向き合う脚本家だったのではないかと思うのです。


単に人間ドラマが描けるのであれば特撮ヒーロー以外でも、戦隊シリーズ以外でもいいわけですが、あの人は基本的に変身するヒーローものしか書きません。
それはヒーローものだからこそ描ける人間の本質に向き合って描きたいからなのです。


(2)三人寄れば文殊の知恵?いえ、三人寄ってもバカはバカです


そんなスーパー戦隊シリーズの象徴である「1人1人は小さいけれど1つになればご覧無敵だ」の台詞と同じような諺があります。そう、「三人寄れば文殊の知恵」ということわざです。
自分1人なら考え方もなんでも限界がありますが、3人揃うといいアイデアが出てすごくいい結果出るという意味なのですが、私の経験から言わせてもらうとそれはその三人が独立した強さを持っていることが前提にあります。
私が高校生の時の担任はある時、朝のホームルームでこんなことを言っていました、「三人寄れば文殊の知恵と言うじゃん?俺に言わせれば三人寄ってもバカはバカ」と。
その時はピンとこなかったのですが、今になると本当に痛いほどよくわかりるのす、そしてそれと似たようなことをある有名なビジネスパーソンもおっしゃっているのです。


皆様は勝友美氏というオーダーメイドスーツの会社を経営している凄腕のビジネスマンをご存知でしょうか?
私がすごく尊敬している方の1人なのですが、その方がふと「どんな人と仕事をすればいいのか?」という「チームワーク」のことについて、このようなことをおっしゃっていました。

 


半人前の人が0.5人として、0.5×0.5で0.25にしかならない
一人前の人が1として1×1で1である


これ、かなり意訳気味ですが、実はとても深く「チームワークとは何か?」「戦隊ヒーローとは何か?」という本質を伝えていると思いませんか?
そう、これも上記した「三人寄れば文殊の知恵と言うじゃん?俺に言わせれば三人寄ってもバカはバカ」というのを違う言い方で伝えているのです。
戦隊ヒーローも真のプロフェッショナルと言えるチームとは「1人1人が独立した強さを持っているチーム」のことを指します。
そこをきちんと考えないで「戦隊といえばチームワーク」と安易に考えて作っている作品のいかに多いことか、そしてそれが当たり前だと思っている戦隊ファンのいかに多いことか。
皆さんは一度でもこの辺りのことを考えたことがありますか?私は少なくとも何度も何度も作品を見ながら考えたことがあります。


(3)私がギンガレッド・リョウマを最も好きになった第二十一章「ひとりの戦い」


私がギンガレッド・リョウマをリアルタイム当時から今に至るまで最も好きな戦隊レッドにさせたエピソードがあります。
それこそが第二十一章「ひとりの戦い」でありこの話はギンガマンはおろかあらゆる戦隊シリーズエピソードの中で最も「戦隊とは何か?」「強さとは何か?」「ヒーローとは何か?」が詰まった話なのです。
この話でギンガレッド・リョウマは仲間達が戦闘不能にされて追い込まれ、1人で戦うことになりますが、そこに黒騎士ブルブラックが邪魔してきます。
ブルブラックの強さはリョウマよりも強く、言ってみれば彼は「暗黒面に落ちたヒュウガ」と言えるような存在でした。
その彼がリョウマが猫を守る様を見てこのようなことを言うのです。

 


「仲間と馴れ合い、守るものを抱え込んでいる限り、バルバンと対等に戦う事はできん! 貴様のこの弱さが、その証拠だ!」
「それだ……その甘さだ。守るものがある限り、それは弱点となる」


そう、黒騎士ブルブラックは単なる復讐鬼というだけではなく、リョウマへの批判を通してスーパー戦隊シリーズのお約束や不文律に痛烈な批判をしてくるのです。
しかし、リョウマも負けじと立ち上がり、こう言い返します。

 


「でも俺は今までそうやって戦ってきたんだ!そのせいで弱いなら、弱くったっていい!その代わり俺は何度でも立ち上がる、守りたいものがある限り!もかも犠牲にして勝ったとしても、その後に何があるんだ?あなたの戦い方では、終わった後に何も残らない!」


はい、このようなことを極限の状態に追い込まれて真正面から言える戦隊レッドが果たしてどれだけいるでしょうか?
いや、戦隊レッドに限らず、己の依って立つところを示しながら、戦士たる根拠やヒーローたる論拠をきちんと言葉にできるヒーローがどれだけいるかというと、そういないと思います。
少なくとも戦隊レッドの中でリョウマほど自分が持つ「力」の意味と使い方に向き合ってそれをきちんと実行してきたレッドはいないと思うのですよね。
私が初代のアカレンジャー・海城剛が大好きでリスペクトしていながらも、やはりリョウマに勝てないなと思ったところがここだったのです。
アカレンジャーはもう最初から自分の問いからの意味もポジションも理解できていましたし、それを言葉にせずとも行動できる人でした。


しかし、そういう人であっても、その強さゆえに道を踏み外すことがないとは言えませんし、彼らも人間ですからそうでないとは言い切れません
だから、ギンガレッド・リョウマは孤独な状態に追い込まれて、星の運命や仲間の命までかかった状況でさえなおこんなことが言えるのです。
それはもう戦闘力の強さとかそういうこと以前に、実はリョウマ自身の心の中にある芯の強さであり、そして同時にだからこそ彼はギンガレッドになれたのだろうと思います。
ヒュウガが言っていたリョウマの強さも決してアースや剣術の強さだけではなく、そうした心の強さもまた見抜いていたからこそ、星獣剣を託したのだと思うのです。


このエピソードを見ると、チームワーク、チームヒーローだからといって、必ずしも「みんなで力を合わせれを1人1人は弱くてもいい」とは口が裂けても言えないと思います。
個人が独立した一人前の強さを持ってた上にこそチームワークは成り立つのであり、そのことを逆説的に示したエピソードがこの「ひとりの戦い」なのです。
そして、人間の真の強さとはこういう極限の状態で孤独に追い込まれた時にこそ現れます…リョウマと同じ状況に追い込まれた時、あなたはブルブラックのような相手にこんなことを言える心の強さ、戦闘力の強さ、胆力はありますか?

 

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