明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)21・22話感想

 

 

第二十一幕「親子熊」


脚本:小林靖子/演出:加藤弘之


<あらすじ>
源太は烏賊折神を盗んだ「仮面ライダー」と名乗る男・門矢司を探していた。その一方で街に現れたナナシと応戦していたシンケンジャーはアヤカシの姿が見えないため、周辺の調査を行う。爺は腰痛を治すために丈瑠の勧めで病院へ行き、千明と茉子はファミレスデートに洒落込む。するとそこに何やら軽いノリの中年男性が顔を出したのだが、なんとその男は千明の父親だった。


<感想>
十五幕以来となる千明メイン回ですが、ここでようやく千明のバックボーンである家庭事情が掘り下げられ、どうして千明があのように育ったのかを描いています。
第二幕で流ノ介から「いい加減な親らしいな」と言われ千明は「当たってるだけに腹立つんですけど!」と返すのですが、その伏線回収に応える見事な内容です。
お話としては特別なひねりがあるというわけではないのですが、初めて直に絡むことになる茉子姐さんとの関係性も補強しつつ、いい内容に仕上がっていました。


こうしてみると、あの弱っている男をぎゅっと抱きしめるダメンズウォーカーみたいなことをしなければ、茉子って凄く優しいお姐さんなのだとわかります。
単に甘え下手なだけで、普通に距離感を取って話す分にはいい人だとわかり、そんな姐さんがことはとは違う意味で話しやすいのが千明ではないでしょうか。
ことはとはまあ「女の友情」みたいなものだとして、丈瑠や流ノ介とは基本侍としての使命以外であんまり話さないし(話すとアダルティな会話になる)、源太は陽気すぎてうざいし。
その点千明ってある意味一番人間としてもヒーローとしてもバランスが取れているというか、ウザすぎず空気すぎず、フラットにみんなと対応できるいい子なんですよね。


で、そんな千明の父親ですが…あー、うん、こりゃ確かに「いい加減な親」だわなと。ノリがいわゆる「ウェーイ」系のパリピで、こんなのが父親とか私なら絶対嫌です。
年甲斐もなくあんなに馴れ馴れしい感じで絡んでくる中年のおっさんとか絶対にこれ世間から浮くパターンじゃないですか。
しかも千明の迷惑とかを考えず勝手に相席しちゃうし…明るいのはいいんですけど、馴れ馴れしくて非常識なのは私は好きじゃありません。
そんな千明の父が今回どうして千明をああいう風に育てたのか、改めて茉子に語る場面があったのですが、この語りの演技がなかなか見ものです。

 


「いやあ、私……本当侍らしいこと教えてこなかったから。早くに亡くなった千明の母親がね、「とにかく明るい子に」って…名前も「千の明かり」で千明ってつけて…だから、武術っていうことより、なんかそういうことをね」


ここできちんと千明の父親があんな風に明るく、悪く言えばパリピっぽく千明を育ててきたのは「侍」であることより「人間」であることを優先させた結果だったのだなと。
千明から見ればいい加減に見えたとしても(まあ流石に昼間からあんな格好で街中ぶらつくのはどうかと思いますが)、内心はとても我が子思いのいい親ではあります。
少なくとも昨今で言われている「毒親」ではないし、千明が改めて自尊心の強い子として育てられたのはよかったんじゃないでしょうか。
序盤の段階では千明のそうした面って「侍には不要」なんて思わせ厳しくしつつ、しかしこの段階に来ると「それがむしろいい面もある」とバランスを取って来ました。


また、この父親の台詞によって、本作における「ヒーロー性」と「人間性」が反比例である、というのが改めて示されたと思います。
それは主人公の丈瑠を見ればわかると思うのですが、丈瑠は侍として圧倒的な「ヒーロー性」を強く持ちながらも、それとは反対に「人間性」はないがしろにして来た(そう育てられ来た)のです。
侍たるものとにかく厳しくあれ、弱音など吐いてはならない…確かに侍としてはそれで正しいけれど、人としてはどうなのでしょうか
同じようなことは流ノ介とことはにも言えて、流ノ介とことはも侍としての使命にはまっすぐな反面人間性という部分でかなり偏った育ち方をしたようです。
その点最も謎だったのが茉子なのですが、彼女は3クール目に解き明かされますので楽しみに…だからこのエピソードで実は千明が一番順当に成長しています。


そしてまた、そんな千明も千明で父親の剣術の凄さを見て、考えを改めるというところもよかったです。

 


「姐さん。強くなると、もっと強いのが見えるんだな。親父の剣、ずっと見てたのにさ、強さはわかってなかった」


ここで千明の言う「強さ」とは単純な剣術の技量や戦闘力のことではなく、もっと内面も含めた意味での総合的な「強さ」ということであり、千明のステージがまた1つ上がりました。
第三幕では丈瑠という目標を定め、第十幕では自分の中の「モヂカラ」とは何かを知って確立し、そして今回の話では父親の凄さを知って自分が目指すべき強さの道が見えています。
そこでEDの走る映像に合わせて他の侍たちがいるのはいいんですけど、個人的にどうも納得がいかないのはやっぱり源太…うーん、天才だから仕方ないとはいえ、千明の格上なのはどうなんでしょう?
今の所「丈瑠の幼馴染」「開発と居合術の天才」という便利キャラ以上の魅力が出てこないので、どうしても異物感が激しいのは否めず、改めてきちんと文芸面から源太の弱さを掘り下げて欲しいです。


そしてそんな千明の順当な成長を丈瑠と茉子もしっかり評価しており、また茉子にとってもそんな千明と父親の温かい関係性に憧れを持ったんじゃないでしょうか。
茉子は「お嫁さん」になるという夢を持っていますが、実はまだ内面らしい内面がこれといって描かれていませんから、素直に自分を出していける千明が羨ましいのかも。
惜しむらくはこの会話がファミレスの中というプライベート感のまるでないところで行われていること、そしてディケイドという横道まで挟んでしまっていることかなと。
加藤監督の演出もあるのでしょうが、どうしても中澤監督や諸田監督らに比べるとまだ演出が上手とはいえませんしね。


アクションや外道衆のやること自体には可もなく不可もなしといったところですが千明と茉子を使ってのサブエピソードとしてはよかったので評価はB(良作)でしょう。


第二十二幕「殿執事」


脚本:小林靖子/演出:加藤弘之


<あらすじ>
源太は常連客である松宮と名乗る男からある頼みごとをお願いされる。その頼みごととは屋敷に居た丈瑠とことはに松宮の婚約者と執事になってもらうことであった。侍の使命とは全く関係ない源太の依頼に2人は呆れつつも対応することになるのだが、最初は作戦だったはずの御曹司・松宮は作戦を遂行していく中でことはに惚れ込んでしまい…。


<感想>
前回が千明メイン回だったので今回はことはメイン回…というよりも丈瑠とことはの回
この2人に関しては第二幕で少しだけ関係性が示されましたが、今回改めて一対一でのやり取りで2人の関係性を浮き彫りにしてくれました
とてもよかったのがことはの苦悩・葛藤をきちんと丈瑠が受け止めていたことであり、徐々に柔らかさを見せるようになっていた丈瑠もきちんとことはの凄さを見込んでいます。
しかし、その上でどうしても引っかかっていたのがことはの自己肯定感の低さ…そこを丈瑠はなんとか払拭させて、前に進ませたかったのでしょう。


特によかったのが執事になったときの2人の会話ですが、役割とはいえ逆に丈瑠に跪かれるのが申し訳ないと思ったところでのこのやり取りです。

 


「あのなあ…あんまり俺を絶対だと思うな」
「え?」
「俺が居ても、お前はお前の立ち位置を持ってろ、自分の中に。あの流ノ介だってそうしてる。わかるか?」
「うち、あんまり……」
「そうか」
「だって、殿様は殿様やし」


ここで改めて丈瑠の方からことはの欠点である「家臣であること=丈瑠への依存」が指摘され、同じように忠義心の厚い流ノ介との違いが示されました。
流ノ介の忠義心に関しては第七幕→第十幕でかなりの段階まで消化されていますから、もはや自分への迷いがなくなりつつあるんですよね。
それに対して、未だに自分への迷いやコンプレックスが消えないことは…そこでこの助言ですから、これは相当に大きいでしょう。
とてもいい感じの流れに見えて、その後作戦とはいえことはは丈瑠に平手打ちをかますことになってしまいます。


丈瑠はもちろんこれが作戦であることを理解した上で、「よくやった」と褒めて頭を撫でるのですが、うん、天堂竜に欠けているのはこういうところだ
侍として厳しく躾けられすぎた丈瑠ですが、同じように完璧超人である(そうあろうとする)竜との違いはここにあるのかなと思います。
丈瑠は竜と違って「公私を混同するな」とか「お前は女だから」とかそういう性差別的なことや人の神経を逆撫ですることはしないんですよね。
陰性こそ強いですけど、侍としての戦い以外であんまり口を挟みませんから、稽古さえ真面目にやって結果を出してくれればそれでいいのでしょう。


そして、御曹司の松宮ですけど、うーん、演じてる役者に華が無さすぎて本当に御曹司なのかどうかが微妙なとこです。
ルックスそのものは悪くないんですけど、本作のシンケンメンズのビジュアルがレベル高すぎるせいで、全然イケメンじゃないのがキツい。
まあシンケンメンズに太刀打ちできるレベルのイケメンなんて、それこそ水嶋ヒロとか佐藤健とか、あるいは嵐の松本潤とか小栗旬とかじゃないと無理ですね。
それくらい本作の男性陣はビジュアルのレベルが歴代でも高いので、どうしてもやっぱり松宮とことはより丈瑠とことはのが全然絵になります。


それから丈瑠があんまり女っ気が無さすぎるせいで、ことはの忠義心や2人の関係性があんまり色っぽくならなかったのも逆によかったところです。
あくまでも2人は「殿と家臣」であって「友達」「恋人」ではありませんから、その辺りの線引きがきちんとなされていたのもいいところでしょう。
話としては「侍の使命は全然関係ない」のと、後この年に流行っていた「殿執事」という作品のパロディを本作でもやって見た感じでしょうか。
内容としてはほどほどにまとまっており、評価そのものは悪くはなくB(良作)といったところです。

 

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