明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ33作目『侍戦隊シンケンジャー』(2009)17・18話感想

 

 

第十七幕「寿司侍」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
外道衆の知らせをで街中へ偵察に来たシンケンジャーだったが、現場にアヤカシの姿は見受けられず引き上げることになる。その丈瑠たちとニアミスになった屋台を引く元気な江戸っ子がいて、丈瑠たちが帰ると「近日見参」と書かれた矢文が届く。志葉家には結界のモヂカラが貼られているため、侍でなければ矢文は不可能である。神経質にならないように気をつけた丈瑠だが、屋敷の中で何者かの気配を感じ…。


<感想>
さあ来ました、シンケンゴールド登場編。ここからまたしばらく小林脚本回が続きますが、小林女史メインライターの戦隊で追加戦士が明るい系なのはかなり珍しいのでは?
しかも「近日見参」という矢文を出して、わざわざ初登場をかっこよく演出しようとする出たがりなところなどを見るに「メガレンジャー」の早川裕作の系譜でしょうか。
更に江戸っ子気質や喧嘩っ早いちゃきちゃきした感じはメガレッド・伊達健太の系譜ともいえ、健太と裕作をハイブリッドに融合して寿司屋にしたらこうなりましたという感じです。
演じる相馬圭祐氏もまたスラッとしたかっこいい男で、こういう破天荒なキャラってやり過ぎるとただのウザいやつでしかないのですが、相馬氏はバランスよく演じていますね。


しかも単なる「いい奴」ではなく、脅迫とも取れる矢文をかっこいいと思って送りつけたり、正体を探ろうとした4人に強烈なわさび寿司を食わせたりと結構策士な面もあります
そこが同じ三枚目気質の流ノ介との最大の違いであり、流ノ介は生真面目な性格や忠義心の暴走ゆえに「結果として」三枚目になっているという感じです。
それに対して源太はもう根っからのバカ系というか、とにかく底抜けに明るてファジー、お祭りや楽しいことが大好きな徹底した「陽」としての三枚目属性。
おそらくこの辺りから「正統派熱血のかっこいい男」を流ノ介に、そして「ズッコケだけどかっこよく決めるコメディリリーフ」を源太に分担しようという狙いでしょう。


十二幕で家臣としての絆を結んだ辺りから流ノ介って露骨なネタキャラ感が減ってかっこいい成分が増していますし、シンケンジャー5人って基本どこか陰気じゃないですか。
だから、その圧倒的陰キャ集団の侍であるシンケンジャーに徹底した陽キャの源太をぶつけてくることによって、うまくバランスが取れるということでしょう。
そろそろ物語としても初期のジメジメした路線ばかりを続けるわけにもいかず、かといってギャグ回を回せるだけの強烈なコメディリリーフも前回まではいませんでした。
そこでそろそろシンケンジャー全体に勢いをつけて跳ねさせるだけの躍動感あるキャラが必要であり、そこでうまく追加戦士に寿司屋を持って来たのは見事です。


話はもうあってないようなもので、ドラマ的な見所は強いていえば、丈瑠とアヤカシのサスペンスかな…それから二手に分かれた時に流ノ介と茉子が組んでいたのも印象的でした。
かなり義務的な仕事上のやり取りだったのですが、「2人で手分けしよう。私と茉子は殿を、千明とことははあの寿司屋を」という指示の出し方が的確です。
実質的に丈瑠の二番手として認められてからは丈瑠が不在の時に家臣たちをまとめ上げる存在になっており、副将としての役割も描かれるようになります。
流ノ介が精神的に弱ったところを見せたりしなければ、茉子とはいい距離感のパートナーという感じで、シンケンジャーもいい感じのチームワークができていますね。
それからアヤカシの目的が妖術を使って志葉家に伝わる封印の文字の秘密を探ろうとする流れも納得であり、この辺りはまあスムーズで良かったかなと。


ただし、良かったのはそこまでで、やっぱり個人的にどうしても気になったのはシンケンゴールド初登場のシーン。


「一貫献上!俺が6人目のシンケンジャー!シンケンゴールドだ!」


う、うーん…これはかっこいいかっこ悪い以前にパチモン感が凄い!(笑)


書道フォンとシンケンマルはメチャクチャかっこいいのに、寿司チェンジャーと寿司ディスクの「高速サービスエリアの売店のお土産コーナーに売ってそうな玩具」感は何なの?
いや、シンケンジャーのかっこよさとは違った路線を出すのはいいんですけど、せめてもう少しマシなデザインにできなかったんですか
あのロボットがクソダサいと言われたトッキュウジャーですら6人目の虹野明のアプリチェンジャーはスタイリッシュでかっこよかったのに!
それからスーツデザインの金の光沢も安っちいというか、成金くさくて逆に悪趣味…どうして戦隊の「ゴールド」と名のつく戦士って微妙なデザインばっかなんだろう?


誤解のないように言っておくと、金ピカパワーアップとかはいいんですよ、例えば「ギンガマン」のギンガの光だったり「トッキュウジャー」のハイパーレッシャだったりは好きです。
しかし、いわゆる「金色の戦士」に関してはロクなのがいないというか、強いていえばズバーンが辛うじて及第点というところで、あとは全部悪趣味な感じがします。
前作のゴーオンゴールド、ゴーオンシルバーのウイングスも「お金持ち」の象徴なのかもしれませんけど、私は露骨な玩具感丸出しのデザインが好きじゃなかったですし。
つまり、「追加武装」としてだったら金色もいいけど、通常フォームでの金色は嫌だという単なる好みの問題です。


あとスーツアクターの次郎さん、あなたビール飲み過ぎです!変身前のあのすらっとした体型からどうしてあんなビール腹の戦士になってしまうのか?
岡元次郎さんの全盛期である仮面ライダーBLACKやBLACK RX、またメガブラックやギンガブルーを演じてた頃は違和感なくてよかったんですけどね。
アクションに関してはサカナマルを用いての逆手一文字という居合術で、シンケンジャー5人の正統派チャンバラとは違う感じを出してるのがよかったです。
どっちかというと侍というよりは岡っ引きとか忍者とかいうイメージが近く、スピーディーさを意識することで差別化を図っています。


まあ内容としては十分面白かったんですけど、巨大ロボ戦での無意味な苦戦は「ギンガマン」の時と変わらない短所ですね。
動くとかっこいいし、変身前も含めて源太のキャラクターは好きなだけに変身玩具とスーツデザインはもう少しならなかったのかと。
総合評価はA(名作)、気軽に見れる中にも小さなアイデアが詰まっていて好きです。


第十八幕「侍襲名」


脚本:小林靖子/演出:諸田敏


<あらすじ>
シンケンゴールドとして風のごとく現れた屋台寿司の正体は丈瑠の幼馴染・梅盛源太だったことが判明する。源太は実家の寿司屋が潰れて夜逃げし、烏賊折神を再会の約束に渡して消息不明となっていた。その源太が正式に侍戦隊として共に戦いたいと挨拶に訪れるが、一同は彼のズレたファッションセンスと言動に呆れてしまう。最終的にスシチェンジャーを没収されてしまったのだった。


<感想>
さて、ついにやって来た6人目の侍ことシンケンゴールド・梅盛源太ですが…うーん、個人的には何とも微妙な感じです。
総合評価の方でも書いたのですが、やっぱり「幼馴染だから」をエクスキューズとして源太の仲間入りを簡単に認めてしまうのはどうかと思います。
まあ丈瑠は結構押しに弱かったりするので、どうしても丸め込まれてしまうのでしょうけど、こんなにあっさり突破できるなら十二幕までで築き上げたあの重々しい積み上げは何だったの?と思いますし。
この辺りは賛否両論あって、「こまけえこたあいいんだよ」なのでしょうが、小林女史がメインを務める戦隊の追加戦士のドラマってすごく丁寧だったんですよね。


ギンガマン」の黒騎士ブルブラック、「タイムレンジャー」のタイムファイヤー、それから「トッキュウジャー」のザラムに関しても割と丁寧に描いていました。
その辺り、本作では侍たちの関係性を凄く丹念に描いた後だからということかもしれませんが、それでももう少し段取りは丁寧に組んで欲しかったところです。
無理に今回の話で6人目に加えなくてもよかったんじゃないかなあ…流ノ介が微妙に最後まで源太の仲間入りに反対していたのが救いでしたが。
まあ丈瑠がまたもや源太の仲間入りに反対したのは実はもう1つ巧妙に隠されたある事情があるからなのですが、家臣たちにも今の所それはバラしていません。


ただ、じゃあ面白くなかったかというと逆、「実は昔丈瑠は泣き虫だった」という崩しが入ることにより、これもまた終盤への伏線になっているからです。
完璧超人だと思われていた丈瑠を今回は過去回想という形で掘り下げていましたが、必要以上にギャグっぽくせず、しかし違和感のないようなキャラ設計にしています。
どちらかといえば源太の「幼馴染」という設定は丈瑠のソフトな面を引き出すために追加されたような設定であるように思うのです、悪く言って御都合主義な設定ではありますが。
単なるうるさいやつというだけではなく、陰キャ陽キャの絡みによって丈瑠の人間的な面がより付加されて魅力が増すのは良かった。


それから源太もただふざけているだけじゃなく、シリアスなところできっちり丈瑠に自分の思いを明かすシーンも名演技でした。

 


「馬鹿野郎!幼なじみを助けたら、何で強くねえんだ!水くせえぞ!俺だって覚悟決めてきたんだ、幾らだって命預ける!だから巻き込めよ俺を!!もう、ぐっるぐるにい!!」


普段明るいくバカやっている印象が強い源太ですが、こういうところではきっちりかっこよく決めに行けるので、メリハリがついてとてもいいですね。
できれば侍戦隊の仲間入りを果たす前に、もう一段階認められるようにするとか、輪に加われなくとも後ろで外道衆と戦うNPCみたいに描くとか、やりようはあったはずです。
つまり、企業でいう試用期間を設けて、「よし、お前も今日から本格的なシンケンジャー」という風にするという形でもいいのではないでしょうか。
思えば、本作の2年後に宇都宮Pと荒川氏が手がける「ゴーカイジャー」のゴーカイシルバーが「海賊見習い」という設定だったのはその辺りを考慮してのことかもしれません。
腕が立って料理ができても、あくまでも海賊としてのヒエラルキーは一番下であるという風にしたことで源太の時の反省点を生かしていると思います。


名乗りやアクションもかっこいいのですが、やっぱり6人の時より5人の時の方が名乗りの絵のバランスがいいので、源太が加わるとちょっとバランス崩れますね。
アクションシーンはまあ前回も見せてもらったものを改めて今回も見せてもらった感じで、可もなく不可もなしといったところでしょうか。
幼馴染として息の合ったコンビネーションはすごくよかったので、あとは彼が真の侍として迎えられるまでの過程を描いてくれることを願います。
その分、ラストで「寿司の味が普通」というところでオチをとってバランスを取り、丈瑠も爺も柔らかくなっているのを受け入れて次回へ。
評価としては高く見積もってもB(良作)であり、ドラマ的にもっと凝って欲しかったなあと思うところです。

 

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