明日の伝説

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スーパー戦隊シリーズ15作目『鳥人戦隊ジェットマン』(1991)13・14話感想

 

 

第13話「愛の迷路


脚本:井上敏樹/演出:蓑輪雅夫


<あらすじ>
竜が26歳の誕生日を迎え、スカイフォース基地内ではささやかな竜の誕生日パーティーが開かれていた。香は料理教室に通って竜のために手料理を振る舞うが、凱はそんな2人の仲睦まじい様子に耐えきれなかった。竜と凱は再びバーで激突し、香も香で竜にすげなくされてしまう。一方バイラムの方でも、グレイがピアノを引いているのを嘲笑うマリアがピアノを綺麗に弾くが、彼女は人間の心が残っている自分に困惑していた。


<感想>
1クール目までの立ち上がりを終えて、2クール目に入りました。7話〜12話までが箸休めのエピソードなので、実質は6話からの続編という形です。
前回まででそれなりにジェットマンの人間関係が出来てきたのでこのまま恙無く進行するのかと思いきや、やはりそこは井上先生、揺さぶりをかけてきます。
まず香が誕生日パーティーにかこつけて竜との距離感をグイグイ縮めようとしますが、竜からはその気持ちに応えられないとあしらわれてしまうのです。
そんな竜を見かねた凱は居ても立っても居られず、バーで改めて竜に対して奥底で溜まっていた本音をぶつけるのですが、ここでのやり取りに2人の心情がよく表されています。

 


「俺たちは戦士だ!俺も香も戦士なんだ…ただそれだけだ!」
「ふざけるな!てめえはいつもそうだ。なぜ本音を吐かねえ?俺たちは戦士である前に人間だ!男と女だ!それとも何か?お前、一度も女に惚れたことがねえってのか?」


来ました、凱の名台詞として取り上げられる「俺たちは戦士である前に人間だ!男と女だ!」…スーパー戦隊シリーズの歴史を大きく変えた瞬間です。
ただし、このセリフ自体はあまり大きな意味を持つものではなく、「〇〇である前に××だ」というのは詐欺師がよく使う都合のいい言葉だったりするので、あまりいい言葉ではありません。
むしろここで大事なのは前後の「なぜ本音を吐かねえ?」「お前、一度も女に惚れたことがねえってのか?」というセリフであり、凱はそれと知らず竜の急所を突いてしまったのです。
ここで改めて竜は心の奥底に仕舞っていたはずのリエとの愛し合った日々(半分以上記憶が美化されている)が思い出され、しかしそれを凱にいうわけにもいきません。


ここで切ないのは三角関係のように見せておきながら竜はただ2人の身勝手に巻き込まれただけで、本命はリエにしかなく2人のことは「戦う仲間」としか見ていないのです。
単なる喪失感から生じた復讐心で完璧超人を演じているだけではなく、割とマジでこの段階では凱のことも香のことも戦闘要員以上ではなく、プライベートでどうこうということはありません。
しかし、ここで竜にとって面倒臭いのはこの2人が自分の潜在意識の部分を突いてくることであり、あっさり躱そうとしても性格が不器用だからうまく回避できないことです。
逆に回避しようとすればするほど雁字搦めになってしまい、竜にとって自分の気持ちを包み隠さず明け透けに話す凱と香はそんな自分の無意識の部分を見せつけられる気持ちになるのでしょう。


1クール目である程度距離が縮まったと見せかけておきながら、それすらあくまでも表面上のものにすぎず、本音の部分できちんとぶつかって理解したわけではありません。
凱はその後やはりストーカーも真っ青な方法で香に強引に迫りキスしようとするのですが、やはり香からまた強烈な平手打ちを食らってしまいます。
R-18ならそのまま強姦コースに突入してもおかしくないのですが、凱って本当にワイルドにすぎるというか、イケメンを免罪符にして男として最低なこと次々やってますね。
そんなこんなでまたもや人間関係がねじくれてきたジェットマンですが、その後見るに見かねた雷太やアコですらもこの面倒臭い大人の会話に入ってくるのです。


また、敵組織のバイラムの方でもわずかながら動きがで始め、マリアがピアノを綺麗に奏で始め、それに感心するグレイと静かなグレイの一方的なマリアへの関係も示されています。
これもまた終盤に向けた大きな伏線となっているのですが、久々に出撃したマリアはカメラジゲンを繰り出して、ついに香をアルバムの中に閉じ込めてしまうのです。
思えばカガミジゲンといいい、マリアはこういう搦め手や幻術の類を駆使した戦い方が多いですね…そしてアルバムの中に閉じ込められたことでヒロイン力が上がる香。
果たして、ジェットマンはこのピンチを脱して香を救出することはできるのでしょうか?


こうして見ると、「ジェットマン」って実に敗北の8割以上が味方側の仲間割れであり、特に凱はセルゲームのベジータクリリン並の戦犯ですね。
もちろんこれで批判する人もいたでしょうけど、本作の場合は凱以外の竜と香も割と戦犯率が高いくやらかしが多いので、その分バランスは取れてます。
もっと竜がうまく対応できていれば丸く収まったはずなのですが、そこで簡単に収まらずどんどん拗れていくことによって彼らの人間性が炙り出されるのです。
評価はS(傑作)、第2クールの始まりとしてかなり良くできたエピソードになっています。


第14話「愛の必殺砲(バズーカ)」


脚本:井上敏樹/演出:蓑輪雅夫


<あらすじ>
カメラジゲンによって香が写真の中に取り込まれてしまい、なんとか助けようとするジェットマン。マリアがカメラジゲンに人々を襲わせているところに凱が現れ「香を元に戻せ」と言う。マリアは凱を挑発して凱は土下座するのだが、それすらもマリアは嘲笑って足蹴にしてしまう。凱のピンチに現れた竜たちにマリアは香を元に戻す交換条件を差し出すのだが…。


<感想>
ああ凱、コンプレックスが本当に切ない…報われないねえ(涙)


そんな感想を持った今回の話ですが、この前後編は凱および凱ファンにとっては辛い回だったんじゃないでしょうか、一切いいとこなしだから。
土下座したのにマリアに足蹴にされていいようにあしらわれ、竜と仕方なく結託してファイヤーバズーカを開発するまでは良かったのに、最後で美味しいところを竜に持っていかれてしまいました。
挙げ句の果てに助かったメンバーたちの中で、香はそんな凱の複雑な心情すら知らずに、こんなことを口にしてしまうのです。

 


「竜、私あなたが私のことをどう思おうと……私はやっぱりあなたが好きです」


凱のハートはここで完全にブロークン、失恋なんてレベルじゃ済まない凱のかませ犬っぷりをこれでもかと強調し、プライドがズタズタに傷つけられた凱はバイクスタントで派手に転んでしまいます。
竜が現時点では5人の中で圧倒的なヒーロー性を持っているため、竜が美味しいところを持っていくのはいいのですが、そのために凱は完全に引き立て役扱いです。
あれだけ必死に頑張ったのにそれが全部空回りで終わってしまい、香を助けることすらもできず、またそれを知らない香は凱のことなど眼中になく竜にご執心となっています。
しかもこの関係性が前回と今回の話の中だけではなく、きちんと第1話から第6話の序盤の立ち上がりで竜、凱、香の関係性を用意周到に構築した上でこれですから説得力が段違いです。


まあ凱はこれから少しずつかっこいいところも見せていくのですが、その前にまずたっぷり我儘な男としてのダメっぷりをこれでもかと強調する必要があったのでしょう。
正直この展開はやり過ぎではないかとも思ったのですが、ここでいい目を見ている竜にはその分後半〜終盤にかけて返す刀によるカウンターが待ち受けているので心配なく。
それにしても香も香で神経が図太いというか空気が読めないというか、どうして愛の告白をみんながいるところでしてしまうのでしょうか?
吊り橋効果によるものだったのかもしれませんし、これまでに積み重なった気持ちが堪えきれず爆発したのかもしれませんが、もう少し凱や雷太の気持ちも察してあげてください。


まあこういうところは世間知らずのお嬢様ならではの浮世離れぶりというところでしょうが、個人的に疑問だったのは「そもそもなぜ香は竜が好きなのか?」ということなんですよね。
農家の雷太や高校生のアコは所詮香にとっては下級国民なので(ひでえ)最初から相手にならないのですが、イケメンぶりや甲斐性でいえば凱の方が女慣れはしています。
どうしても香の竜に対する気持ちはわからないのですが、ここまでの話を俯瞰して判断するとやはり「頼り甲斐」「将来性」といったところなのかなと思うのです。
この辺りはまた4クール目に入った時に語らせてもらいますが、ある程度前倒しして語りますと、香のステータスに釣り合いそうな男性って確かに竜しかないんですよね。


竜って実家が漬物屋という設定ではありますけど、言って見ればそれは個人事業主の家に生まれた坊ちゃんタイプともいえ、しかも7話で出たようにお見合い相手もなかなかいい人でした。
その上でスカイフォース入隊までは生粋のエリートコースをずっと歩んでいて、ジェットマンになる前まではリエという最高のステディがいるという完璧なエリートコースだったわけですよ。
もちろん香はまだ竜にリエという恋人がいるということまでは知らないのですが、それを差し引いて「実は怠け者」という面を知ってもなお竜が好きなのはやはり「エリートだから」に尽きます。
諍いもあったとはいえ、やはり香にとって最も頼り甲斐があって将来を共に歩める、それが単なる希望的観測ではなく経済力などの社会的ステータスを加味しての現実的なものでそう判断しているのでしょう。
だから香の「好き」とは単なる乙女の憧れだけではなく、金持ちのお嬢様として「この人となら生涯を共にできる人生のパートナーとなれる」という女性としての本能があるように感じられます。


まあその竜はまだ全然香のことに意識が向かず心はリエにあるのですが、このすれ違いがここで丸く収まるのではなく後半にかけてどんどん悪化していくのでお楽しみに。
そんなジェットマンですが、一方でマリアとグレイの関係性にも変化が出ていて、グレイはレッドホークと一騎討ちになったことでキャラ立ちし、マリアもまたホワイトとブルーが攻撃したことでキャラが立ちました。
マリアに関してはここまでドSなところだけを見せてきたのですが、グレイとの関係性の中で徐々にヒロイン力を見せて奥行きを持たせているのがいいところです。
そして両者とも油断したせいで簡単にジェットマンに劣勢を覆されてしまうという、敵も味方もバラバラな状態で戦っているのが本作の特徴というのを引き出していますね。


総合すると、ここまではとにかく竜がヒーローとして圧倒的な強さを見せ、凱がメンバーたちを引っ掻き回し、そして香は弱さを克服した結果むしろ神経が図太くなっています
ヒエラルキーとしてはまだまだ竜が圧倒的優勢なのですが、その竜が人間的な脆さをこれから露呈させていく予兆はわずかながら伏線として貼っているのです。
本作の方向性をしっかり打ち出し、今後に向けた伏線と関係性の変化を打ち出したので総合評価はS(傑作)。そう簡単に彼らは丸く収まってくれません。

 

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